『盲愛玩具』 感想

かーめるん

探索ホラーADV、『盲愛玩具』の感想、考察記事です。

制作者はあうぐ様。制作者様のサイトはこちらです。 → 共食いうさぎ

盲愛玩具 タイトル画面 スクショ

養い親のもとで幸せな生活を送っていた少女メイベルが、「少女たち」に導かれ、真実を知るお話です。
エンディングは2通り。所要プレイ時間は約30分。私はプレイ中にすっかりビビってしまったので、1時間弱かかりました。

あうぐ様の作品の中で一番にプレイしたのが、『盲愛玩具』でした。怖さと悲しみが絶妙に溶け合った作品の世界観に強く惹かれたこともあって、いまだに思い出深い作品です。

以下は物語の詳細なネタバレを含む感想です。未見の方はご注意ください。

あらすじ

最初に、『盲愛玩具』のあらすじを簡単に書きます。

主人公はメイベルという名の少女です。彼女が養い親である「バートランドさん」の家に引き取られてから、明日でちょうど1年が経ちます。そこでバートランドさんはメイベルに、「ささやかなパーティーをしよう」と提案します。

明日に備えて眠りにつくメイベル。しかしその眠りは真夜中に、奇妙な少女の声によって妨げられました。その声はメイベルに語りかけます。

つらくても生きたいのか、それとも少しでも楽しみたいのか。
私たちはあなたの答えが知りたい。

盲愛玩具 ゲーム画面 スクショ1

声に導かれ、暗い屋敷の中で探索を始めるメイベル。はたして、彼女に突きつけられる真実とは……。

生まれたことの悲しさ

『盲愛玩具』では、愛にすがって生きるしかなかった少女たちの悲しみが描かれています。たとえ玩具に向けられるような愛だとしても、彼女たちにとっては得がたく、安心と幸せとを与えてくれるものだったわけです。

嫌な話ですが、この世に生まれてきたこと自体が悲しい子供たちというものは存在します。その子たちにとっての幸せってなんだろうと考えてしまうゲームでした。

バートランドに今殺された方がいい、その方が幸せだと考えざるを得ないほど、メイベルや少女たちは荒んだ環境で生きてきたのです。エンディングは2通りありますが、明確にバッドエンド・グッドエンドと区分されていません。メイベルにとって本当に良い結末はどちらなのか……プレイヤーにそれを考える余地を残してくれたのかなと思いました。

ちなみに、「悲しい」というのは生まれなければよかったというニュアンスではなく、生まれたその最初から周囲の環境があまりに過酷であることを指して書いています。当人に何ら責はないのに、その過酷な現実を背負わなければいけないというのは悲しいことだな、と。

ドキュメンタリー映画やノンフィクションの書籍で例を挙げてみると、以下の2作品に登場する子供たちは、「悲しみ」を背負って生まれていると思います。

また、架空の話ですが、スティーヴン・キングの『スタンド・バイ・ミー』スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)に登場する少年たちも同じ類の悲しみを背負って生きています。

スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編

海外に限らず、そういった悲しさは国内の至るところにあるのだろうとも思います。

また、実は上の言い回しには元ネタがあって、ジョジョ5部『黄金の風』の文庫版ジョジョの奇妙な冒険 第5部(30〜39巻)セット (ジョジョの奇妙な冒険) (集英社文庫(コミック版))の後書きで、荒木先生が書かれていたことの受け売りです。ジョジョ5部の主要キャラクターもやはり、生まれ育つ過程で社会や家庭から爪弾きにされ、見捨てられた人たちばかりでした。

エンディングについて

メイベルにバートランドの真実を見せ、拳銃という選択肢を与えたのは、殺された少女たちの未練だったのだと思います。自分に選択肢が与えられたならどうしたのか、という。

今までに殺された少女たちは、まさにバートランドの望むように、愛してくれた人に裏切られ絶望して死んでいきました。しかしメイベルはその一足先に真実を知ってしまいます。その上で対抗手段も授かりました。

つまり、バートランドを受け入れて殺されるか、バートランドを殺して孤独で惨めな生活に戻るか選択をしなければならなくなったわけです。

人生は選択の連続とはいえ、どちらを選んでも愛と幸せを失うわけですから、究極の選択だと思います。メイベルは少女たちの中で一番バートランドと良い関係を築いたらしいので、彼女にとっては尚更絶望的なシチュエーションだったことでしょう。

もっともメイベルは一切喋らないため、何を思っていたのかは分かりません。背景設定は作り込まれているだけに、想像の余地があえて残されていたのは嬉しかったです。

その他印象的だったところ

ガチの脅かし要素(グロい絵、流血シーン、大きな音など)はあまりありません。しかし雰囲気づくりや細かいギミックや演出が巧く、体感的にかなり怖かったです。たとえば、バートランドが突然出てきたときはリアルに心臓が止まるかと思いました。

ゲームを進めるのがじわじわと怖くなって堪らなくなるんですよね。「怖い」という感情が途切れることなく増幅し、常に緊張状態に置かれるというか。

例を挙げると、有名なフリーホラーゲームである『魔女の家』は、一回一回の脅かしがインパクト大でグロいシーンも多いです。しかしその構成上、常時ビビるということはありませんでした。一方このゲームでは、「怖いなーホントに怖い」とか口に出しながらプレイしないと耐えられなかったです。

また、これは『カルィベーリ』の感想記事でも書きましたが、ヒントの落とし方が巧妙でした。おつかいをさせられている感じはないのに、適切にプレイヤーを導いてくれるので一切迷いませんでした。演出の関係上、無軌道にフラグを立てさせるわけにはいかなかったという事情はあるにせよ、プレイヤーのコントロールが本当に上手いと思います。

≪感想記事:『カルィベーリ』 感想 考察 ※ネタバレ注意

その他、書斎の本など細部の作り込みも好きです。書斎の本は、種類雑多なようでどれも示唆的です(数式は最後にどちらの選択肢を選ぼうと結末は同じということを示唆しているのでしょうか)。

あと、PC内容のおぞましさもいいですね。印象的だったのは、バートランドに殺されるエンドのクレジットがPC画面風になっていたことです。最後はそのまま少女たちのリストに移行し、メイベルの欄に"consumption"と書き込まれる演出には背筋が寒くなりました。

『AMANI』との関連

※以下、同制作者様の作品、『AMANI』のネタバレを含みます。

バートランドのPCの購入・消費リストに、"eu"/"white white 125$"という記述がありました。10人目に買われた少女の「名前」と「外見特徴」と「値段」を示したものです。リストによればその少女は、"eu"という名前の白人で、髪が白かったようです。

白人種の少女は他にもいますが、「白い髪」を持っているのはこの"eu"という少女だけです。だから、その特異な外見が頭に引っ掛かっていました。

その後、同制作者様の『AMANI』をプレイしてハッとしました。もしかしてこの少女は、『AMANI』の主人公であるイマナの姉、エウぺなのではないか、と。

エウぺはアルビノの少女であり、人買いによってイマナの家から連れ去られています。"eu"という少女は他の少女の約1.4倍の値段でバートランドに買われています。そして『AMANI』の人買いも、アルビノは高く売れると話しているのです。

これだけ符合していると、確定ではないとはいえ"eu"=エウぺではないかと思ってしまいます。そしてその場合、エウぺはバートランドに「消費」され、すでに亡くなっていることになります。

姉が連れ去られた現実を受け入れられずに狂っていったイマナのことを思うと、あまりに酷い話で気持ちが落ち込みました。

*****

『盲愛玩具』はホラーゲームではありますが、現実寄りの心に重くのしかかる恐怖(ホラー)が印象に残ります。プレイ後に悲しい余韻とやり切れなさが残る作品でした。いまだに心に引っかかって考えさせられるゲームでもあり、私にとって今後も印象深い作品であり続けるのだろうと思います。

やはり、制作者様の作品には、心に染み入るような怖さと悲しさがあると思います。そういうところが大好きです。

あうぐ様の他の作品についての感想記事も書いています。


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