『雨雲』 感想

かーめるん

ノベル形式のサスペンスADV、『雨雲』についての感想です。

制作者はちゃんとする/サム様。作品の公式サイトはこちらです。



雨雲 タイトル画面 スクショ



連続女性失踪事件の真相と、ある女性の謎を追う物語です。
クリアまでの所要時間は2時間前後。

※R15です。流血シーン暴力的・犯罪的表現が含まれています。
一部グロくてホラーチックな場面があるので、苦手な方は心構えをしてからプレイした方がいいかもしれません。


「サスペンスアドベンチャー」という説明に惹かれてプレイさせていただきました。
サスペンスものってかなり好きです。

『雨雲』は、起承転結を踏まえたストーリー展開的確な演出生き生きとしたキャラクターなどが印象に残る作品です。

血と弾丸が入り乱れるド派手な事件が発生するわけではないですが、「日常に潜む殺人鬼」や「生活感のあるホラー」といった要素が好きな方には楽しいゲームだと思います。私自身ものめり込んで話を追ってしまいました。


以下、ゲーム内容やエンディングについての詳細な感想を含みます。未見の方はネタバレにご注意ください。



*****



この記事の内容は以下の通りです。



※「『雨雲』の概要」から下には、犯人のネタバレも含まれます。ご注意ください。






『雨雲』の概要


まず、ゲームの概要を簡単に説明します。

『雨雲』ノベル形式のADVです。
物語は序章~終章までの5つ(番外編を含めると6つ)の章に区切られ、おおむね章ごとに視点人物が異なります。

途中の選択肢によって、エンディングは4つに分岐します。エンディングの分岐については、下にまとめました。


物語の本筋では、相次ぐ女性失踪事件の真相とその影に潜むある女性の謎に迫ることになります。

序章から2章まではその「ある女性」の掘り下げパートです。

3章は失踪事件の解決パート、なんとか事件を解決して終章へ……という流れになります。



雨雲 スクショ2

三章の探偵役二人。二人の偶然の出会いが失踪事件解決の糸口に。



ポピュラーな探偵ものとは違い、犯人と目される女性の掘り下げ>事件解決であることがこのゲームの特徴です。

たとえば物語の構成も、犯人の手口や日常や過去の説明→探偵役のキャラ登場……という風になっています。

事件があって、探偵役がいて、調査をする中で犯人が浮かび上がる……という形式ではありません。






印象に残った3つのポイント


上にも書きましたが、

①ストーリー展開
②演出
③キャラクター

の3点が特に印象的で面白いと感じたポイントでした。

以下、文字と画像でのネタバレを含みます。




①ストーリー展開



①に関しては、全体の物語が起承転結をしっかりと踏まえて作られていたことが理由として大きいです。

不気味な序章でプレイヤーを引き込み、第1章で穏やかな日常の中にも不穏な空気を引き継ぎ、第2章の過去編でガラッと雰囲気を変えつつネタばらしをし、第3章・終章で事件を解決し物語をまとめにかかる。

きれいで明快なストーリーラインだと思います。
話の続きが気になって、最後まで集中してプレイできました。

平穏な日常の描写と狂気的なシーンの混在により、物語に緩急がついているのも読みやすくていいなと思います。




②演出



『雨雲』は、演出が巧妙なゲームだと思います。

個人的に印象に残ったのは、ホラーシーンと推理パートでした。

前者のホラーシーンは、とにかく怖いの一言に尽きます。
BGMが消えて無音になる瞬間、一瞬の絵の変化とそれに合わせたメッセージ送り、豊富なイラスト差分など、ゾクゾクしたりハラハラしたりするシーンが非常にうまく演出されていました。

一押しシーンは、やはり第3章終盤の「犯人と目が合う」場面でしょうか。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、あれには本気でゾワッとしました。


後者の推理パートについては、警察の独自システムの説明から始まり、雰囲気やBGMや画面の構成をガラッと変える演出に引き込まれました。

視点が交代したことや事件の核心に迫っていることをはっきりと示すという意味でも巧かったですが、何よりプレイヤーとしてはノリノリな気分でプレイできて楽しかったです。



雨雲 西久保パート スクショ3

西久保パートでは失踪事件の情報を集めて考察できる



個人的に、システマチックに事件を考察して情報をまとめていくようなゲームが好きです。

『雨雲』の推理パートをプレイしていてふと思い出したのは、『THE 鑑識官』シリーズでした。



THE 鑑識官 DS
SIMPLE DSシリーズ Vol.8 THE 鑑識官 ~緊急出動!! 事件現場をタッチせよ~



事件の概要を視覚化してまとめつつ推理していく流れに似たものを感じて懐かしくなったのかもしれません。




③キャラクター



③については、実際にプレイしてみるのが一番だと思います。

個人的には、第1章の児島や古畑第3章の三森の描写が印象に残っています。
それぞれの現在の状況やひととなりなど、短い時間にそのキャラの個性が伝わるようにしっかりと肉付けされていました。

日常面の描写は難しいと思うので、尚更素晴らしいなと思います。

ちなみに好きなキャラは、三森と西久保です。いいコンビだと思いました。


以下、犯人のネタバレを含みます。



犯人の半田はいい意味で怖いキャラクターでした。
理解できないところもあり同情できるところもあり、なかなか複雑。

このゲームの(裏)主人公と言ってもいい存在なんでしょうね。
「隣の部屋にいる殺人鬼」としてのホラー感は十分に出ていた気がします。

個人的には、飯塚さんだけは私のことを見てくれている→実は半田を通して引きこもりの姉を見ているだけだったというすれ違いを一番痛ましく思いました。

もっとも半田はちょっと可哀想な描写が多すぎたような気がして、そこは引っかかりました。
末路を考えるとバランスは取れているのかなとも思いますが。

被害者キャラの方々が本当の意味で一番気の毒ですね。
特に飯塚彩夜奈の死はかなり悲しかったです。






エンディングの分岐と感想



第3章の三森パートでの選択によって、4つのエンディングに分岐します。
終章(ゲームクリア)へと繋がるエンディング以外の3つはアナザーエンドです。

ちなみに「推理パートで集中力ゲージが0になる」、あるいは「V.S.半田のときにミスをする」と単にGAMEOVERになります。


選択肢による分岐をざっくりとまとめました。



・食欲が勝る→戸締り確認○  「何も知らない」
・食欲が勝る→戸締り確認×  「邪魔者」
・責任感が勝る→戸締り確認○ 「破滅の始まり」

・責任感が勝る→戸締り確認×   ゲームクリア!(※推理や戦闘を完遂)




以下はエンディングごとの感想です。ネタバレを含むのでご注意ください。


「何も知らない」

西久保と知り合わず、半田とも再会しなかった場合のエンディング。

三森は無事に新社会人としての生活を続けていくことになります。隣の部屋はいつの間にか空き家になっていたので、金杉に成り代わった半田は、早々に引っ越したのでしょうか。
三森にとっては間違いなくハッピーエンドですが、今後も半田の凶行が続くことを思うと、一概には喜べない結末でした。


「邪魔者」

西久保と知り合わず、半田と再会した場合のエンディング。
三森は半田に騙され、まんまと口封じされてしまいます。おそらく最悪のパターン。


「破滅の始まり」

西久保と知り合い、半田と再会しなかった場合のエンディング。

三森は西久保と仲良くなり、何度か食事をする仲に。
一方西久保たち警察は、女性(金杉)の遺体の発見を皮切りに、いくつもの遺棄死体を発見。

ついに連続殺人事件が露呈します。おそらく半田は遠からず、被疑者として捜査線上に浮かびあがるのではないでしょうか。半田のわりと大胆な犯行はもっと早くにバレそうなものですが。


終章、ゲームクリア

西久保と知り合い、半田と再会した場合のエンディング。
三森は九死に一生を得、半田によって引き起こされていた一連の事件に終止符が打たれます。

森と西久保の意見の対比がいいなと思いました。

三森は半田が犯罪に手を染めていった時期の彼女を知っていて、本人から直接に詰られたり助けを求められたりしています。殺されかけたとはいえ、責任を感じて打ち沈むのも仕方のないことです。

しかし西久保は、たとえ事情があってもそれを理由に誰かを傷つけていい訳はないときっぱりと断じます。そして、人には出来ることと出来ないことがあると三森を諭します。さすが西久保さん。

実は、終章で提示される報道が半田自身よりも彼女の家庭を責めるものに偏っていたのが気になったので、西久保が半田本人の責を指摘してくれてなんとなく安心しました。バランスが取れたと感じたからかもしれません。

警察官として社会人として、また三森のそれに対峙するものとして真っ当な意見だったと思います。

幸せは結局自分の認識次第という三森のモノローグには、半田の人生を思い返してつい感じ入ってしまいました。
てっちゃんは普通の感覚を持った普通の人ですが、それが彼女の強さなんだろうだと思います。

前向きで明るい締め方と、エンディングで広がる快晴の空がとても印象的でした。


ところで、てっちゃんと西久保さんは本当にルームシェアする気なのでしょうか。西久保さんやるぅ。
2人の今後も気になるなーと思いました。




*****



物語以外のことについてですが、クリア後に閲覧できるボーナスコンテンツ内の充実ぶりが嬉しかったです。

キャラ説明はもちろん、アーカイブミニゲーム特典CGまで。
ミニゲームはドットで打たれていたりと非常に凝ったつくりでした。


他人に成り代わって生きるって怖いテーマだと思います。ちょっと前に『火車』(宮部みゆき)を読んだので、よけいにそう感じます。



火車 宮部みゆき
火車 (新潮文庫)



「○○さんは実は○○さんじゃなかった」って、現代社会においては、暗い夜道でお化けに会うことよりも身近にあるホラーではないでしょうか。

そういう意味で、『雨雲』は現代的な恐怖を的確に表現した作品だと思います。



サスペンスや犯罪を題材にした作品について、いくつか感想記事を書いています。

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