『冠を持つ神の手』 感想 考察 その1

かーめるん

異世界ファンタジー育成系ADV、『冠を持つ神の手』(かもかて)の感想記事です。レビュー要素も含みます。

制作サークルは小麦畑様。作品の公式HPはこちらです。『冠を持つ神の手』



冠を持つ神の手 タイトル画面スクショ



小麦畑様制作のゲーム作品は、『マヨヒガ』『オシチヤ』『デンシャ』『ダンス・マカブル』などほぼすべてプレイさせてもらっています。

民間伝承、風俗、宗教といった題材がゲーム内容に深く絡むことが多く、個人的な興味との合致もあって、小麦畑様の創り出すゲームの世界観にはいつも強く惹かれます。音と絡めた画面の演出から感じる独特の感性も好きです。平たく言うとどの作品も大好きです。

そしてその中でもとりわけ好きなのが、今回感想を書こうと思っている『冠を持つ神の手』です。「かもかて」と略されることも多いこの作品には、熱烈かつ根強いファンが多いようです。


※かもかての感想記事は、「その1」~「その11」まで書きました。「その2」以降が、攻略キャラ11名の個別感想記事です。以下のリンクから各記事に飛べます。




フリゲの中でも、特に好きな作品が3つあります。先日記事を上げた『Ruina 廃都の物語』もそうですが、この『冠を持つ神の手』もその3作品のうちの一つです。

≪関連記事:『Ruina 廃都の物語』 感想 考察

未だにデスクトップに残っていて、使用されている音源を作業用BGMに使っていたりもします。終えたくない作品というものは往々にしてありますが、『冠を持つ神の手』は私の中でその筆頭です。


以下、システム中心にゲーム内容の話です。物語自体のネタバレは含まれません。








世界観とあらすじ



最初に、かもかての世界(観)設定主人公の置かれた状況について書きます。

物語世界はグラドネーラと呼ばれる異世界です。

建物や服飾を見るにファンタジーな中世ヨーロッパ風。文明レベルはさほど高くはなく、連絡手段に鳥、運搬手段に荷馬車のようなものを使っています。

・一年が六カ月、一カ月が六週、一週間が十日で構成される
・太陽と同一視される神、アネキウスが広く信仰されている
・海は魔の棲む不吉な場所であり、真水で満たされ生物はいない


……といったあたりが大事なポイントでしょうか。


そのグラドネーラにおいて、「三足族」という種族が治める「リタント王国」が物語の舞台です。

まず三足族についてですが、彼らには特異な性質が一つあります。それは、生まれた時点で雌雄がはっきりしていないというものです。
三足族は性別を持たずに生まれ、十五歳の成人時に性別を選択して望んだ性に分化します。そのためか、男女観はごくフラットです。

次にリタント王国についてですが、建国後120年ほどの若い国家であり、現在の王で五代目です。

百数十年ほど前に他種族との間に戦争がおき、様々な奇跡もあいまって虐げられていた三足族が勝利し、リタントを建国しました。そしてその建国の経緯から、この国は特殊な王位継承ルールを採用しています。

次の王になる資格を保証するのは、王家の血筋でもなく国民の総意でもなく、神の授ける「選定印」のみである……というものです。


選定印とは、三足族の特定の人間の額に現れる不思議な徴です。

初代国王は、この選定印を神から授けられ建国を成し遂げたと言われています。初代国王が消えた後も選定印を持って生まれる者が現れ、二代国王によって正式に、選定印=王の証と定められました。

選定印を持つ者は「寵愛者」と呼ばれ、優れた才能と健やかな身体に恵まれます。印の出現条件はその者の身分に関わりないようで、寵愛者が生まれれば王城に引き取られ、次王としての教育を施されることになります。

三代国王のとき、国王は新しい寵愛者が成人すれば退位し王位を譲ることと定められました。

ここまでが物語世界の基本的な情報です。


『冠を持つ神の手』は、五代国王から六代国王への譲位の儀が執り行われる一年前に始まります。

五代国王リリアノの耳に、もう一人の寵愛者が出現したという情報が入ったのです。まさかと思い確認させるも本物の、しかも六代国王候補のヴァイルと同じく十四歳の寵愛者でした。

その寵愛者こそ、私たちプレイヤーが操作する主人公です。デフォルト名をレハトといいます。

レハトは自身が寵愛者であることをつゆ知らず、母の言いつけにしたがって額のアザを隠し、ひっそりと生きてきました。しかし事故で母が急死し、額を隠すのを忘れたところを目撃され、真実が露見したわけです。

同い年の寵愛者が二人並び立つなど前代未聞。リリアノは考慮の末、レハトを王都フィアカントの王城へ招きます。

かくして物知らずの田舎者であったレハトは、権謀術数渦巻く王の城へ突然放り込まれ、成人するまでの一年の間を城に住む人々に翻弄されて過ごすことになるのです。






かもかてとの出会い&攻略支援版について



私は数年前にこのゲームを知り、十数時間ほどプレイした後、攻略支援版を購入しました。「これは絶対コンプしたい、しなきゃ損だ」と思ったからです。そしてブランクを経て現在もプレイし続けています。

どういうことかというと、まだイベントコンプし切れていないのです。イベントを100%コンプしていないキャラクターが数人、その数人も90%以上埋めてはいますが、それでも道は遠い。
※記事を書くにあたってコンプしました。ラストはトッズの占い関連イベントでした。

これはそのまま、このゲームの分岐と量が膨大だということの証左ではないかと思っています。


フリー版をプレイして「面白い」「やり込みたい」と感じた方には、攻略支援版でプレイすることをオススメします。攻略支援版には、

・能力値支援:ステの上昇具合アップ
・好感度表示:相手の好感度が分かる
・天候操作:デフォで雨乞い人形所持)
・回想モード:一度見たイベントを鑑賞可能

……といった非常に便利な機能が実装されています。とことん時間泥棒される完成度の高いゲームですが、上記の機能のおかげでより長く快適にプレイすることが可能です。
特に、「回想モード」条件を操作して異なる分岐を見ることもできる、個人的にはありがたくて仕方のない機能でした。

攻略支援版の詳細は、公式HPの「ダウンロード紹介ページ」から飛べる「攻略支援版概要ページ」に記載されています。






かもかてでできること



『冠を持つ神の手』は、「異世界ファンタジー育成系ADV」です。ただ、内容をわかりやすく説明するのが難しいゲームだと思います。

育成シミュ要素と恋愛・友情シミュ要素が含まれているものの、同じく主人公にパラメータが存在するときメモシリーズのように、両者が完全に結びつく(キャラ攻略にパラメータが大きく影響する)わけではありません。
選択肢によって主人公の行く末が大きく左右されるので、ADV要素は強いです。


大きく分けると、主人公にできることは以下の2つです。


①パラメータを上げて国王を目指す(別に国王にならなくてもいいし、パラを上げなくてもいい)
②城の人々と仲良くなったり憎み合ったりする(こちらも必須ではない)


見てわかるように、かもかては自由度の高いゲームです。

パラメータ関連を突き詰めて主人公を万能の神の使者にするのもいいでしょう。キャラ攻略方面で二股三股プレイをするのも、逆に1周でどれだけのキャラを葬れるか試すのも面白いと思います。






ユニークな印象/好感度システム



このゲームの大きな特徴は、「主人公から相手への印象」を決定できるシステムの存在です。

それに関連して、キャラエンドは愛情、友情だけでなく、憎悪、裏切、殺害など多岐に渡ります。


普通の恋愛シミュにおいて、主人公が攻略対象に接近する理由は、基本的に「仲良くなるため」だと思います。

相手は主人公に嫌悪から恋慕まで幅広く変化する感情を持っていたとしても、「主人公から相手への印象」は(多くの場合は好印象に)固定され、重要なのは「相手から主人公への印象」であることがほとんどでしょう。

ところがこのゲームでは、「主人公から相手への印象」を自由に決められるのです。そしてその印象によって、選べる選択肢や相手の対応が細かく変化します。

このゲームにおける印象は、憎悪⇔愛情嫌悪⇔友情の二軸によって決定されます。

たとえば、愛情高かつ友情高の場合、「異性として愛しているし友人として深い共感を覚えてもいる」ことになります。価値観のよく似た友人に恋している感じですね。

また、憎悪高かつ友情高の場合、「憎くて堪らないが共感はできる、同族嫌悪」という心象になります。

愛憎は、許容を司ります。どちらに傾いても相手を無視できないという感情と言ってもいいです。
一方友嫌は、共感を司り、嫌悪が高ければ相手を視界に入れるのも嫌になり避けるようになります。

この印象の決定方法は、主人公と攻略キャラの両者に共通です。


そして、「主人公の相手への印象」によって様々な分岐が発生します。

たとえば、印象を憎悪に振っている場合、相手に好意的な選択肢は選べません。
お茶を濁したり、はっきりと意地悪な選択肢を選ぶことしかできないのです。相手のことが憎いわけですから、これは当たり前と言えば当たり前です。

そして相手も、自分への主人公の印象の良し悪しを感じ取り、対応を変化させることがあります。

ひとつ例を挙げると、それほど好きでもない相手におもねるようなことを言ったとき、向こうは主人公の感情を読み取って「本当はそんなこと思ってないくせに」と突き放してくることがあります。

また、自分に向けられる好悪を感じ取り、それにつられて主人公への好感を上下させるキャラも存在します。自分のことを嫌っている人のことは自分もなんとなく嫌いになるし、その逆もまた然りということです。


以上、印象と好感システムについてさっくりと書きましたが、実際にプレイするとその分岐と変化の細やかさに圧倒されます。

相手から主人公への印象だけでもさまざまなのに、主人公から相手への印象まで掛け合せると、その分岐は何周しようと拾い切れるものではなくなります。ここに能力値や前後のイベントが絡むと、誇張でなく分岐は無限大です。

プレイヤーの選択が非常に細やかに反映される。

それがこの作品の大きな魅力であり、懐の深さだと思います。






世界観とキャラ設定の秀逸さ



また、優れた世界観設定とキャラクター造形も『冠を持つ神の手』の魅力の一つです。

世界観設定とキャラ造形を並べたのは、物語世界を描写することを前提にキャラクターが存在する節があるからです。つまり、キャラクターを攻略することがそのまま物語世界への理解の深化に繋がります。

実際、攻略キャラの人数は必要なことを描写するために当初から決定されていたそうです。


舞台となる王城には、多種多様な人間が集まっています。

国王貴族、平民出身の侍従衛士貴族に否定的な立場を取る官吏、独立した立場を保つ宗教勢力の関係者第三勢力の刺客

キャラクターの身分・職業・年齢・性別は様々に異なり、彼らを通して、プレイヤーは異世界グラドネーラと王城のまったく異なる側面を知ることができます。
貴族の見るもの、田舎出身の平民の見るもの、官吏の見るものはそれぞれに違うということです。


とはいえ、攻略キャラクターは単に世界を見るための窓であるだけではありません。彼らなりの過去であったり思想であったり、確固とした人格を有しています。

このゲームのキャラクターと接して抱くのは、人には良いところも悪いところもあるというある意味当たり前の感想です。裏のない人の好いだけの人間なんて存在しません。

かもかてのキャラには、良くも悪くもそのあたりに存在しそうな生々しさがあります(特に女性陣)。そして、プレイヤーに良いところも悪いところもすべて見せてくれます。

そのキャラが誰かを愛したときの顔を見ることもできれば、誰かを心から憎んだときの顔を見ることもできるのです。場合によっては、憎悪ルートでのみ本音を聞かせてくれるキャラクターもいることでしょう。

一人ひとりのキャラクターにみっちりと情報量が詰まっていて、このゲームほど攻略キャラをしゃぶりつくすことのできるものは中々ないのではと個人的に思います。


人としての現実味二次元のキャラクターとしての造形のバランスの取り方が絶妙で、私はどのキャラクターも大好きです。



*****


慣れるまでは何をしていいやら、とっつきにくいゲームかもしれません。私も何周かしてようやく王様になり、キャラエンドを迎えたのはそのまた数周後……という具合でした。

非公式の攻略情報が充実しているので、無理せずに参照した方がコツがわかって楽しめるかもしれません。

一旦のめり込めばそれこそ抜け出せない、魅力とボリュームと歯ごたえのあるゲームだと思います。大好きです。


キャラクターの感想や攻略については、その2以降に続きます。

関連記事:『冠を持つ神の手』 ヴァイル 感想 攻略 その2


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