『Her Story』 感想 考察 ※ネタバレ注意

かーめるん

新感覚サスペンスADV、『Her Story』の感想と考察(時系列など)です。

制作者はSam Barlow氏。作品の公式サイトはこちらです。 → 『Her Story』



herstory タイトル画面



警察のデータベースを用い、過去の殺人事件と一人の女性の真実を探るゲームです。
ゲームの仕様から、所要プレイ時間はプレイヤー次第です。


少し前にSteamでダウンロードしてプレイしました。

"Her Story"、「彼女の物語」。

ゲームを終えたとき、そのタイトル名のふさわしさをしみじみと感じてしまう作品でした。
非常に印象に残る作品で、聞いていた通りに新感覚です。

映画的でありながらプレイヤーによってプレイされることを常に意識している、とてもインタラクティヴなゲームでした。まとまった時間が取れたこともあり、それこそじっくりとプレイしてしまいました。

・自分なりのゲーム体験を強く求める人
・レスポンスの細やかなゲームが好きな人
・あれこれと想像を膨らませて物語を作っていくのが好きな人


にオススメだと思います。


私の場合、「自分だけの体験」を求めてゲームをプレイしているところがあります(だからジャンルとして、自由度の高いRPGやストーリー性の強い戦略SLGが好きなのかもしれません)。

『Her Story』は、その欲求をあらためて呼び起こしてくれたゲームでした。

どのように進めたか、どこで何に気づいたか、そのとき何を想像しどう考えたか……そういった自分なりの鮮烈な体験を、存分に味わわせてもらいました。遊んでいてとても楽しかったです。


以下は作品の感想や考察です。事件の概要・真相や登場人物の過去のネタバレ、個人的な解釈や解説などを含みます。
ゲームの性質上ネタバレは致命的なので、未見の方はご注意ください。



*****



この記事の内容は以下の通りです。



「あらすじ」より下には、ストーリーの核心的なネタバレが含まれます。ご注意ください。






あらすじ



まず、『Her Story』のあらすじを書きます。

1994年、英国で一人の男性が殺害されました。

警察はある女性を重要参考人とし、数日間にわたって事情聴取を行います。
その一部始終は録画され、のちにデジタル化されました。

プレイヤーは、この事件のデータベースにアクセスする権利を得ています。データベースを検索することで、プレイヤーは膨大な数のビデオクリップを一つ一つ閲覧することができるのです。



herstory スクショ1 イヴ



「彼女」はなのか?
事件の犯人はなのか?
このデータベースにアクセスしているのはなのか?



断片的な映像群を通じ、プレイヤーは事件「彼女」の謎に迫ることになります。






『Her Story』の面白さ



『Her Story』はそのユニークさゆえに具体的な感想を出しにくい作品だと思います。
ただ、「面白いよ、プレイすればわかる!」で終わるのもどうかと思ったので、この項目では『Her Story』の面白さについて自分なりに考えてみました。


今回は、

①自分だけの体験
②「彼女」との対話
③物語の構築と想像


という3つのテーマについて感じたことを述べたいと思います。





①自分だけの体験



①については、検索履歴がずらっと残ることに象徴されているかもしれません。

『Her Story』は、「検索」によって話が進むゲームです。
検索こそがプレイヤーが行い得る唯一最大のインプットの手段です。


このゲームを開始したプレイヤーは、PCのディスプレイの前にポンと放り出されます。

「ここに事件のデータベースがあります。単語を検索するとヒットしたビデオのクリップが表示されます。どうぞご自由に調査なさってください」


……そんな声なき声に誘導され、プレイヤーは手探りで検索を始めるわけです。


しかしインプットの手段が限定的であるのに、『Her Story』はとても自由度の高いゲームだと言えます。

それは、どの単語をどの順で検索にかけたのか、どのタイミングで重要な手がかりをつかんだのか、どのように「彼女の物語」を想像し真相にたどり着いたのか……といったプロセスが完全にプレイヤーに委ねられているからです。

加えてこのゲームに強制的なエンドはありません。

プレイヤーなりに「彼女の物語」を構築できたと感じたら、自主的にゲームを終えることができます。

つまり、ゲームをクリアするタイミングもプレイヤー次第なのです。
明確なクリア条件と言えるものはありません。


したがって、自分なりに試行錯誤してプレイするのが好きな人には楽しいゲームだと思います。

上で述べた「検索履歴」ですが、クリア後に見返すのがとても楽しいんですよね。
ああ、ここでこのビデオを見て怖かったな、とか。

たとえば私の場合、「殺人」→「サイモン」→「弁護士」→「逮捕」→「運転」と辿ったところで、「彼女」は本当に一人の人間なのか? と疑い始めました。

単語一つとってみてもそのチョイスはプレイヤー次第です。そして検索の結果表示されたクリップの中で拾い、次に検索してみる単語も当然違ってきます。
この単語ならヒットするかな? という予想ももちろんプレイヤーによって異なることでしょう。

そういった紆余曲折が、プレイヤーひとりひとりに固有の体験を与えてくれるわけです。


『Her Story』における検索は、思考と試行の不断なる繰り返しだと言えます。
最終的に完成する絵はほぼ同じだとしても、パズルピースのはめ方の違いによって、プレイヤーは彼/彼女だけの体験を得られること請け合いです。




②「彼女」との対話



このゲームはレスポンスが細やかという以上に、「対話的」と言ってしまってもいいと思います。
この「対話的」("interactive")というのは、公式サイトに掲載されている批評の一つから引用しました。


プレイヤーが初めてデータべースと向き合ったとき、そこにはあらかじめ3つの映像が表示されています。
そしてその中で、「彼女」は謎めいたことを話しています。

この3つの映像が「彼女」からのファースト・コンタクトです。

「いったいこの女性は何者なんだ」「何が起こったんだ」

……そう思いながら、プレイヤーはとりあえずデータベースを使用することでしょう。映像の中の言葉にヒットする単語を打ち込めばいいのかと考え、たとえば「サイモン」と検索してみたりするのです。

これは、プレイヤーから彼女への最初の問いかけです。


すると「彼女」は、映像の断片によってその問いかけに答えてくれます。それはプレイヤーの望む応答ではないかもしれないし、プレイヤーの予想を上回るような答えであるかもしれません。

映像の中の「彼女」は、実に自由奔放です。ヒステリックに席を立つこともあれば、リラックスしきってギターで弾き語りを始めることもあります。



herstory ギター イヴ

即興でギターの弾き語り。事情聴取中とは思えない楽しい光景




声、ジェスチャー、表情、服装……そういったものすべてによって、彼女は彼女自身の物語を語り続けます。
その紋切り型ではない反応にプレイヤーは翻弄され、ドキドキし、じれったい気持ちになって検索を続けます。
答えを求め、彼女に問いかけ続けるのです。

それでも提示される映像のすべては断片的だから、プレイヤーはひたすら、「彼女」の応答の意味と事件の全体像を考え続けるしかありません。
そしてすべてのクリップを集めてなお、「彼女」のすべてがわかることはないのです。謎は謎として残り続けます。


このゲームをプレイしていると、大げさな話ではなく実際に一人の女性と対面しているような気持ちになりました。だからこそ、解かれ得ない謎が残る『Her Story』のオチは絶妙だと感じました。

人は他者のことを完全には理解できません。人間関係とはそういうものであり、それでいいのだと個人的には思います。
「彼女」をいつしか生身の人間のように感じるようになったからこそ、私にとってこのゲームの終わり方はとても納得できるものでした。




③物語の構築と想像



③については、「提示される情報があくまで断片的である」ことと関係があります。

このデータベース、警察側の反応は一切映っていません。カメラは終始「彼女」だけを映し続けます(どうやら警察側の発言を映したビデオもあったらしいのですが、大人の事情でデジタル化されなかったようです)。

もちろん「彼女」の反応から前後の警察側の発言を窺い知れる部分もあります。しかし、それはあくまで想像です。完全な形で「彼女」の話を聴くことはできません。できないようにあらかじめ設定されているわけです。

だからプレイヤーは、脳内で警察側の応答を補って映像を眺めることになります。

また単語で映像を検索するため、結果として提示されるクリップは順序も日にちもてんでバラバラです。
何気なく検索した単語で、いきなり核心そのもののクリップがヒットすることもあります。

ゆえにプレイヤーはひとつひとつの映像にタグを付け、時刻をチェックし、(過去と現在の)時系列を考えながら検索を進めていく必要があるわけです。


そして『Her Story』は、そうやって脳内で物語を構築していくのが最高に楽しいゲームだと思います。

「彼女」の内面についての考考、「彼女」のやったこととやらなかったことの解釈などによっても、プレイヤーが心に描く物語は微妙に異なってくるのだろうと思います。




以上、個人的に面白いなと思ったポイントを挙げました。

ゲームデザインが優れているのはもちろん、それにまったく引けを取らない主演女優さんの演技がまた素晴らしいんですよね。

主演のViva Seifertさんは、しっかり者/内気/疲れた表情を見せるハナと、愛嬌がある/あけすけ/ときどき寂しげなイヴを見事に演じ分けています。

根本的に同一でありつつも別個の人間である……そんな双子のバランスのとり方が絶妙で、ニュアンスの表現が本当に巧いなあと思いました。





疑問点と演出の巧さ



もちろん、このゲームにもまったく粗がないわけではありません。

すべてのデータを揃えてみると、このゲームのストーリーはけっこうツッコミどころが多いです。
主に双子の入れ替わりの杜撰さという点で。

トリック的な意味で双子の入れ替わりは単純というか禁じ手っぽい気がするのはともかく、そもそも事情聴取を交代で受ける意味はあったのか疑問です。交代するにしても、髪型・服装・嗜好・態度・明かす情報の範囲については、事前に打ち合わせてある程度統一しておくべきではないでしょうか。

たとえばハナがそれまで二の腕(タトゥーなし)の見える服を着ていたのに、7月1日に(不可抗力とはいえ)二の腕(タトゥーあり)を晒してしまうイヴは迂闊すぎるだろうと思いました。

質問を受けた内容や刑事と交わした会話についても、当然共有しておかないといけないはずです(しかし、たとえば違う日にまったく同じ質問を投げかけているシーンがある)。


以上、ぶっちゃけ双子とバラしたくて交代していたようにしか思えませんでした。
まあもちろん、プレイヤーへのヒントとしてあえて入れ替わりを徹底させないようにしているのでしょう。

ただ個人的に一番気になったのは、双子が一人の人生を共有し始めた経緯です。

すなわち、フローレンスが死んだ時点で、どうしてイヴはハナの姉妹として実家に戻らなかったのか? ということです。

顔を見ればイヴがハナと双子であることは一目瞭然なのだから、屋根裏に隠れ住むのではなく、普通に事情を話して家に戻ればよかったんじゃないか? と思いました。

情報は少ないですが、ハナの両親はもう一人の娘を疎ましく思うようなひどい人たちには見えません。
だから、イヴがハナ・スミスとして生きようとする動機がちょっと弱いのではないかと思いました。


とはいえ、このゲームにおいて全体像の粗はあまり意識されないと思います。

というのも、そういった粗が目立たない演出と構成になっているからです。


もし『Her Story』が、時系列順に並んだ映像を見ながら進められるゲームだったとしたら、上記のようなツッコミどころがはっきりと目について白けていたかもしれません。「これ絶対に二人いるやつ」と。

ところが映像がフラグメントとしてごちゃまぜに提示されることにより、そのツッコミどころはうまくカバーされています。

プレイヤーはどんどん追加・更新されていく情報を整理・比較するのに没頭するので、細かい疑問点はスルーすることになるからです。
リソースをそこには割けないというか、ツッコむよりも驚くべきポイントの方が多く、その一つ一つのポイントのインパクトがどうしても大きくなります。

また、プレイヤーにとって「彼女」は反応を予想しがたい、いわば生身の人間です(語弊はありますが)。
漫然と時間にそって流れていく映像の中の女性ではありません。

だからプレイ中は「彼女」への問いかけに集中してしまい、どうしても客観的or俯瞰的に全体を見通せないところがあります。


ゆえに、プレイヤーは「客観視」よりも先にいわば「主観視」(変な言い方ですが)を徹底させることになります。
ただただミッシングリンクを探り、「彼女」に感情移入し、隠された物語を解明することに夢中になるのを優先させてしまうわけです。

上記のような意味で、『Her Story』は冷静さを捨てた方が楽しいゲームです。

かつこのゲームをプレイして、冷静さを捨てて夢中にならないプレイヤーはあまりいないのではないでしょうか。

つくづくプレイヤーを没頭させる設計に優れたゲームだと思います。






二人の「彼女」について



ハナとイヴは、どっちもどっちで怖い女性だなと思いました。
二人の複雑な関係と、互いへの執着や温度差は興味深いです。

人間的にはイヴの方に惹かれますが、ハナに対するイヴの執着には常軌を逸したものを感じます。

ハナが流産したときのことを語るイヴの嬉しそうな表情には、若干の狂気を感じました。
結婚したハナはサイモンをシェアさせてくれなかったという嘆きにも、そりゃそうだろうとぶっちゃけ思いました。

子供時代には濃密な関係性を築いていたとしても、大人になっても兄弟姉妹とべったりくっついたままというのはキツイよなあ、と。


すべてを共有するという双子間のルールは、たしかにイヴやかつてのハナにとっては絶対的なものだったのだと思います。滔々と語られる双子の結びつきとイヴの生い立ちを聞いていると、プレイヤーとしてもそのルールを自明視してしまいがちでした。

しかしよくよく考えれば、イヴのルールは社会的に見て当然のものではありません。

だから大人になって伴侶を得たハナがそのルールを退けたとして、それは非難されるべきことなのかなと思いました。イヴを捨ててサイモンに走ったことについても、それは単に子供時代との決別と捉えてもいいんじゃないか、と。


クリップを追っていると、ハナとイヴの温度差が非常に印象的なんですよね。
サイモンよりハナが大事と言い切るイヴに対して、いつでもサイモンを優先してきたハナを酷薄だとする見方もできると思います。

ハナはイヴに対して複雑な愛憎を抱いていました。ただ、イヴにとってのハナほど、ハナにとってのイヴは必要な人ではなかった……双子のすれ違いは、それに尽きるのではないかと思います。

そして、イヴのハナへの執着が興味深くても現実味のないものであるがゆえに、ハナのイヴへの一歩引いた感情の方に共感してしまう部分が多かったです。
もちろんハナの抜け駆け行為はイヴへの決定的な裏切りだったのであり、寄る辺ない境遇で捨て置かれたイヴを気の毒には思いましたが。


イヴは、ハナが自分の鏡ではない(自分とまったく同じではない)ことはちゃんと理解していたと思います。

それでも、「もう一人の自分と一つになりたい」という幼い頃に抱いた幻想を、大人になっても持ち続けていたのではないでしょうか。
イヴにとって、「自分のあるべき場所」は結局ハナの隣にしかなかったのではないかと感じました。



その上で気になったのは、7月3日の「彼女(ハナ)は消えたわ」「もう二度と戻ってこない」というイヴの発言でした。

最初は、ハナは行方をくらませたのかと思っていました。
しかしクリップを回収する中で、もしかしてイヴがハナを……という疑念が頭をもたげるようになりました。


イヴの周囲では、これまでも何人かの人間が不審死しています。
イヴを誘拐し育てていた助産師フローレンスや、ハナをサイモンと結婚させた両親などです。

フローレンスは階段からの転落死、両親はキノコによる中毒死とされ、他殺を疑われることはありませんでした。
しかし、本当に彼らの死にイヴは関与しなかったのか? と個人的には疑問に思います。

フローレンスにしても両親にしても、イヴからハナを引き離した人たちです。
そしてフローレンスが死んだ後も両親が死んだ後も、イヴはハナに再び接近しています。

7月27日の嘘の証言を見てもわかるように、イヴは演技の上手い女性です。
彼女の身近な人々の死について、イヴの話を完全に信じることにはためらいを感じます。


ただしその執着の対象であるハナをイヴが手にかけるかというと、そんなはずはないと言いたいです。
というより、可能性があるからこそそういう風に思いたくないと言った方がいいかもしれません。

しょせんビデオ越しなので、イヴが本当に思っていることは測りようがないんですよね。
でも、イヴのハナへの一途さだけは嘘のないものとして信じたい気持ちがあります。

あと、イヴは双子の同一性を重要視してきた女性です。もし彼女がハナを手にかけたとしたら、自らも命を絶つんじゃないかと思います(お腹に赤ちゃんがいるので断言はできませんが)。






「彼女」の人生(=時系列)の考察



このゲームの日付や曜日は、だいたい現実のカレンダーに沿っているようです。
たとえばダイアナ妃やグレース・ケリー、ボブ・ディランの話は現実とリンクしています(一部異なる)。

この項目では、映像の日付や「彼女」の話に基づき、作中イベントの時系列を考えてみました。あくまで一プレイヤーのまとめです。抜けやミスがある可能性が高いです。

また、核心的かつ詳細なネタバレが含まれます。再三ですが、未クリアの方はご注意ください。



大前提
・ハナとイヴの誕生日は6月17日(双子座)
・二人の実家はポーツマスのグラッドストーン・ストリートにある




*時系列*


時期不明:助産師フローレンスの夫が戦死

※未亡人になったとき、フローレンスは20代の若さだった。世間体を気にしてか再婚はできなかった(そういう時代だった)。子供を欲していたフローレンスは精神的におかしくなっていく。


1966年【0歳】
・6月17日:ハナとイヴの誕生

※お産を手伝ったフローレンスは、双子のうち一方は死んだと嘘をつく。そして赤ちゃんをこっそりと自宅に連れ帰り、「イヴ」と名付けた。フローレンスは以後、けして家の外に出さないようにしてイヴを育てた。


1971年【5歳】
・6月17日:イヴが初めてハナを双子の片割れとして認識する

※窓越しに互いに手を振り合った。ハナは誕生日パーティーのための帽子を被っていた。イヴが自分の誕生日を知ったのもこの日。


1974年【8歳】
・フローレンス死亡、イヴがハナの家に住み始める

※フローレンスは階段から落ちた。事故だったらしい。イヴはフローレンスが自分を誘拐した事実をすでに知っていたので、彼女の日記を焼き捨て、向かいの家のハナを訪ねた。
ハナはイヴを屋根裏に匿った。屋根裏はハナの遊び場で両親は立ち入らなかったという。二人は頻繁に入れ替わり、一人の人生を二人で共有して生きていくことになった。


時期不明(1979~1981?)
・6月17日:双子の家出

※誕生日に家出してロンドンへ行き、ボブ・ディランのツアーバスに乗り込もうとした。タクシー運転手が二人の幼さに気づき、二人は警察の厄介になってポーツマスに連れ戻された。ハナはイヴに両親に叱られる役目を引き受けさせたらしい。


1981年【15歳】
・カールと付き合い始める

※カールは当時17歳、バンドをやっていた。素行は悪かったらしい。イヴはカールに処女を捧げた。そうなるとハナのターンに不具合が生じるので、ハナもイヴに手伝ってもらって経験を済ませた(ヘアブラシで)。カールが飽きたことで交際は終了。カールとの破局によって、イヴは「家族」の大切さを知ったという。

※カールと別れた後も二人は何人かと付き合った。だいたいは内気なハナが先に相手に惚れ、イヴが相手へのアピールを担当していた。


1982年【16歳】
9月14日:グレース・ケリーが亡くなる


1983年【17歳】
・6月17日以降:サイモンと付き合い始める

※サイモンとの出会いは、グレース・ケリーの死の翌年のことだった。ガラス屋のアルバイトで知り合ったらしい。ハナの発言より、アプローチしたのはやはりイヴ。

※最初のデートではオデオン座に行って『卒業白書』*を観た。双子はデート中も入替り続けた。

※二回目のデートはイヴだけのターンだった。イヴはカールのこともあって慎重になっていたので、キスだけでデートを終えた。その次のデートはハナだけのターンだったが、彼女は双子の間のルールを意図的に破った。サイモンを独占するために彼と寝たのだ。その一回だけでハナは妊娠した。

*『卒業白書』の英国での公開は1984年3月23日らしい。しかし「1984年の夏までに妊娠8か月で流産」という事実から、初デートが1984年3月以降では計算が合わない。アメリカでの公開は1983年8月5日らしいから、そちら準拠なのかも。


時期不明:ハナとサイモンの結婚【17歳】

※ハナの妊娠発覚後、両家の親の計らいで結婚。サイモンは学校を辞めてガラス屋に就職し、ハナはサイモンの両親の実家へ移った。ハナは式でダイアナ妃のようなドレスを着て、サイモンと一緒にブライトンのホテルに泊まった。イヴはおそらく参加せず、のちに写真で式の模様を知ったようだ。

※ハナは、子供に「サラ」と名付けるつもりだった。一方、サイモンは「エヴァ」と名付けたがっていた。ハナは左右対称のスペリングになるから、とエヴァ("AVA")という名を嫌がっていた。ハナとイヴのスペリングは、それぞれ"HANNAH""EVE"で左右対称である。

※その頃、片割れと引き離されたイヴは絶望。金髪のウィッグをつけ、自身も妊娠しようとして行きずりの男たちと何度も性交渉を持った。しかし、性病にかかって断念することになる。

※しばらくしてハナとイヴは隠れて顔を合わせた。やせこけた自分と太ったハナの違いがイヴには辛かったという。とはいえ二人とも別々の人生を歩むことは考えなかった。ハナとサイモンが自分たちだけの家に移り次第、イヴもそこに合流することになった。


1984年【18歳】
①ハナが妊娠8か月で流産
②ハナとイヴの両親が死亡
③ハナはサイモンと実家に移る


※ハナの流産のすぐ後に、双子の両親は寝台の中で死亡した。警察はキノコによる中毒死と判断した。双子の父は地下でキノコ栽培をしていた。
しかし、ハナもイヴも父の知識の深さを知っているため、この警察の見立てには納得していない。警察は屋根裏を覗きもしなかったとイヴはコメントしている。屋根裏にこもっていた彼女は両親の死に気づかなかったらしい。

※両親の死後、法的手続きを終えたハナは、サイモンと一緒に実家に引っ越した。時期的には流産した数か月後のこと。サイモンは休みを貰って家のリフォームを始めたが、ハナは屋根裏には手をつけさせなかった。

☆1983~1984年のスケジュール考察
流産の時期が1984年夏の少し前(初夏?)、映画デートが1983年8月以降だとすると、妊娠時期は1983年の9~11月? 妊娠が発覚したのは1984年の初頭?
1983年10月頃にハナが妊娠し、1984年6月頃に流産。7~8月に両親が死亡し、秋頃(流産から数か月後)に実家へ引っ越し……と考えるとある程度しっくりくる?



1985年【19歳】
時期不明:イヴの家出

※おそらく年があらたまってからの出来事。イヴは戻ってきたハナを歓迎したが、ハナはけしてサイモンにイヴを近づけさせなかった。以前とはルールが変わったことに気づいたイヴは、屋根裏に隠れ住む自分に疑問を覚え、6か月ほどして家出。バーで歌って生計を立てつつひとり暮らしを始める。


1986年【20歳】
時期不明:タトゥーを入れる

※「8年前くらいかな」という1994年時点の発言から。


時期不明:イヴとサイモンの再会、浮気スタート

※サイモンはたまたまバーでイヴを見つけ、妻とそっくりの彼女に驚く。しかしイヴの正体には気づかなかった。イヴは葛藤したものの、サイモンがまったく家庭(ハナ)のことを語らなかったので関係を継続。ハナのかつての裏切りが念頭にあったのかもしれない。

※二人はデートを重ね、サイモンがオックスフォードへ出張したときに初めて肉体関係を持った。



1994年

時期不明:イヴの妊娠
※6月時点でお腹が目立っていないので、おそらく1994年に入ってからだと予想。
サイモンはこっそりとイヴを自宅(つまりハナとイヴの生家)に招いた。サイモンのベッドでの性行為で、イヴは妊娠したらしい。


6月17日金曜【28歳】
①イヴ、ハナに妊娠の事実を伝える
②ハナはサイモンと口論になり、イヴとも喧嘩をする
③イヴは車でグラスゴーへ
④ハナがサイモンを殺害


※6月17日はハナとイヴの誕生日だった。イヴはサイモンのことは伏せ、妊娠したことをハナに伝えた。ハナはこれを喜んだものの、自分ではなくイヴに子供ができたことを残念に思ったようだった。

※ハナは帰宅したサイモンから、プレゼントとして綺麗に装飾した鏡をもらう。ハナはサイモンに、自分には双子の妹がいて彼女が妊娠していること、赤ちゃんの世話のためにこの家に住ませたいということを話した。その瞬間サイモンは自分の浮気相手の正体に気づき、ハナもまたサイモンの表情から真実を悟った。

※ハナは怒ってサイモンを追い出し、その後家に来たハナと取っ組み合いのケンカをした。そのときイヴは金髪のウィッグをもぎとられた。

※イヴはスペアキーを持っていたので、家を飛び出し車を北へと走らせた。そしてグラスゴーでタクシーと接触事故を起こした。ごく軽いものだったが、お腹の子を案じて病院で診察を受けた。異常はなかった。その後、車の中で眠ったらしい。

※一方ハナは、イヴの服とウィッグを身に付け、サイモンを出迎えた。最初はイヴを装っての会話を楽しんでいたが、サイモンがイヴと一緒になりたいと言い出したことで事態は急変する。サイモンはハナに贈ったものと同じ鏡をイヴにも用意していた。ハナは我を失ってその鏡を割った。サイモンと口論の末にぶたれたハナは、意図せずに鏡の破片でサイモンを殺害してしまう。


6月18日土曜
①イヴは家に戻り、サイモンの遺体とハナを発見
②事件の工作
③警察で事情聴取


イヴ:カップが一つ、ブラックコーヒー、ネックレス、髪を下ろしている≫


※ハナに電話しても出ないので、イヴはグラスゴーから家へと戻った。3時頃に家に入り、サイモンの遺体と放心状態のハナを発見する。

※お腹の赤ちゃんを優先することで一致した二人は、サイモンの死体を地下室に隠し、事件の痕跡を隠した。イヴは、サイモンの時計とグラスゴーでの病院の受診記録をアリバイ工作に利用しようと考えた。サイモンの両親(ダグとエレノア)に電話してから、サイモンが行方不明になった、と警察に通報に向かった。


6月25日土曜
午後:警察で事情聴取

≪ハナ:カップが二つ、紅茶、装身具なし?、髪をまとめている、タトゥーなし、頬にアザ≫



6月27日月曜
夜:警察で事情聴取

≪イヴ:カップが一つ、グラスゴーでコーヒーを飲んだと語る、ネックレス、つわり、髪をまとめていたが下ろす、頬にアザなし≫


※遺体発見直後の事情聴取だと思われる。偶然見つけた風を装って通報したらしい。


6月30日木曜
午後:警察で事情聴取

≪ハナ:カップが二つ、紅茶、装身具なし、髪をまとめている≫


※警察の捜査により、謎の人物の指紋毛髪が発見された。ハナ・スミスではない第三の人物の存在を警察は疑っている。


7月1日金曜
午後:警察で事情聴取

≪イヴ:カップが一つ、ブラックコーヒー、髪を下ろしている、タトゥー、ギターで弾き語り≫



7月2日土曜
午後:警察で事情聴取

≪??:カップが二つ、砂糖とミルクをコーヒーに入れる、ネックレス、髪を下ろしている≫(この日の彼女の正体について後述


※犯人の有力候補であることを告げられ、双子トリックを指摘されて動揺。逮捕の話をされて感情的に取り乱す。


7月3日日曜
・警察で事情聴取(それまでとは違う部屋で)

≪イヴ:カップが一つ、ネックレス、髪を下ろしている≫


※生い立ちから事件の詳細まで、イヴはすべてを赤裸々に語る。その左手には結婚指輪がない。

「彼女(ハナ)は消えたわ」「二度と戻ってこない」と不敵にイヴは告げる。殺人の証拠も凶器もない、すべてはただの作り話("Story")だ、と。


1999年【イヴ:33歳、サラ:4~5歳】
・オリジナルのビデオがデジタル化される

※ポーツマスの凶悪事件として。世情や天災により、刑事側の発言を録画したビデオはデジタル化されなかったらしい。


2018年6月16日【イヴ:52歳、サラ:23~24歳】

・現在、サラがデータベースを検索中(Now!!)

※SBという友人が、情報公開法にのっとってサラのアクセス権を獲得してくれたらしい。彼とはチャットで会話することができる。
会話内容によれば、「サイモン殺人事件の犯人=イヴ」かつ「イヴ=サラの母」であることを、SBもサラもすでに知っている。







ハナ or イヴ? 7月2日の「彼女」



7月2日の「彼女」はハナかイヴかはっきりしません。どちらとも取れる言動や外見をしているからです。

ただ、個人的にはハナかな? と思いました。その理由を以下に書きます。



herstory ハナ



7月2日の「彼女」は、パッと見はイヴに見えます。

・髪を下ろしている
・ネックレスを身につけている
・コーヒーを頼んでいる

上記は、7月1日以前のクリップから見て取れるイヴの特徴です。


ただ、引っかかることやイヴにしては妙な言動がいくつか存在します。主に以下の4点です。




①ここまでイヴ→ハナ→イヴ→……と順番に入替っている



ラスト3回の事情聴取は3日間連続であり、7月3日のイヴは「ハナは消えた」と話しています。

しかし7月1日、2日、3日の「彼女」をすべてイヴとすると、全体でハナ2回/イヴ5回です。

これは回数的にバランスが悪いような気がします(若干メタい)。




②コーヒーにミルクと砂糖を入れている



イヴが好むのは「ブラックで濃い」コーヒーです。1日1杯は飲むほどコーヒーを愛飲しているようです。

しかし、7月2日の「彼女」はコーヒーを頼んだものの、ミルクと砂糖を入れています。
ここまで飲み物に何かを混ぜていたのは、イヴではなくハナの方でした。

6月25日、6月30日の「彼女(=ハナ)」の前には、必ずカップが二つ(コーヒーの入ったカップと、砂糖が入ったカップ)置かれています。
そして、7月2日の彼女の前にも、同様にカップが二つ置かれています。

もっとも、ハナはコーヒーではなく紅茶を好むようです。
だから「コーヒーを頼むのはあくまでイヴ」と解釈することもできると思います。




③指紋の持ち主



この日の警察は双子説を持ち出し、指紋について何らかの言及をしました。
それに対して「彼女」は、自分が今使っているカップの指紋と比べてみればいい、一致するからと強い口調で言い返します。

今日の「彼女」の指紋と誰の指紋を比べるのでしょうか。
データベースには警察側の発言が一切記録されていないので、前後の流れを掴めないのがネックではあります。

しかしここで、6月25日にハナは指紋を採られていることを思い出しましょう。

話の流れから、指紋が一致すれば双子説は否定されると「彼女」は主張しています。
つまり、警察に保管されているハナ・スミスの指紋と、今ここにいる自分の指紋を比べれば一致する……と「彼女」は言いたいのではないでしょうか。

おそらく警察は直前に、「今のあなたは本当にハナ・スミスなのですか?」といった問いかけをしたのではないかと予想します。

そしてこの日の「彼女」がイヴならば、わざわざ自分の指紋を採らせるように誘導するでしょうか。

警察が持っている指紋はハナ・スミスの指紋だけではありません。スミス家にあった謎の人物の指紋(イヴの指紋)も、警察はすでに確認しています。
もしもこの場で自分(イヴ)の指紋がハナ・スミスのものと一致せず、むしろ謎の人物の指紋と一致することが明らかになれば、厄介なことになるのは明らかです。

だからこの場で「自分の指紋を採ってみろ」と言えるのは、すでに警察に指紋データを提示しているハナの方ではないかと思いました。




④逮捕を匂わされたときの反応



7月2日の「彼女」は、(私を)逮捕する? とやけくそ気味に尋ねたあと、弁護士に突っ込まれて笑い者になるのはあなたよと息巻きます。

しかし翌日(7月3日)、イヴは聴取の冒頭で自分から逮捕の話題を切り出して微笑みました。
そして弁護士は必要ないと冷静に告げます。
警察に確認されても、必要ない、それより逮捕の理由は? と繰り返すだけです。

単に覚悟ができただけかもしれませんが、この態度は7月2日のものとは違い過ぎるような印象を受けました。
これについてはほぼ主観と直感です。




以上の4点から、7月2日の「彼女」はハナじゃないかなーと個人的には思いました。


とはいえ「彼女」がイヴであってもまったくおかしくはないんですよね。
というのも、ハナは7月3日時点で「消えた」と説明されています。

6月30日時点で警察側はハナ・スミスへの疑いを強め、第三者の介入を疑っています。だからある程度警察のマークが入っていたのではないかと思うわけです。
もし7月2日にハナが警察署に来たとして、その後すんなりと身を隠せたのか(あるいはイヴがハナをどうこうできたのか)は怪しいところです。

金髪の人工毛や指紋について問われた6月30日時点でヤバいと勘づき、7月以降はイヴに任せてハナは行方をくらました……という流れの方が自然かもしれません。




*****



以前、フリゲの『666laboratory』(PC越しに患者のカウンセリングをする一風変わったゲーム)を遊びました。
そのときに、ゲームのシステムや仕様が『Her Story』に似ているという感想を小耳に挟んだんですよね。そこで興味を持ち、今回『Her Story』をプレイしました。

以下、『Her Story』のオチについてのネタバレを含みます。




データベースを検索していた人物がサラだった、というオチには本当にびっくりしました。

わざわざデータベースを検索しているということは、サラは現状母であるイヴに接触できないのでしょうか。イヴとハナの生死について想像をかき立てられる設定だと思います。

また、イヴが娘に「サラ」と名付けたことにちょっと感動しました。サイモンが名付けたがっていた「エヴァ」ではなく、ハナが考えていた「サラ」の方を付けたんだな、と。
「サイモンよりハナの方が大事」というイヴの発言が、真実味をもって脳内でリフレインしました。

左右対称のスペリング(イヴやハナと同じ)を回避したという点でも、サラには複雑な双子の関係に翻弄されずに生きてほしいと思います。


もっとも、サイモンにとっては悲しい話かもしれません。双子を見分けることもできず、ハナには殺されイヴには切り捨てられるという。
とはいえ彼が最も重要なキーパーソンであることは揺るがないと思います。

イヴはハナとの同一性にこだわっていましたが、サイモンは双子を別の存在に分けた人物と言えます。
一度目はハナの妊娠によって、二度目はイヴの妊娠によって。

一方ハナは、イヴとは異なる自分を追い求めていました。しかし彼女に突きつけられたのは、愛する夫が妻の自分と浮気相手のイヴとに同じ鏡を用意したという現実でした。

それぞれのウィークポイントを意図せずについた結果が、あの事件だったのかなーと最終的には思ってしまいました。
やっぱり生身の人間が王子様になるのは難しかったのかもしれません。


評判通りのとても面白いゲームでした。プレイしてみて良かったです。
今後も面白いSteamのゲームをプレイしたら、感想記事を上げようかと思います。



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