『大逆転裁判2』が拓いた新境地 感想 考察 レビュー ※ネタバレ注意 その2

かーめるん

大法廷バトルADV、『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の感想、考察記事(その2)です。ネタバレ情報を含みます。



大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覚悟
大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟- CAPCOM



記事その1に引き続き、各話の共通点や最終話キャラ配置の考察、主人公・成歩堂龍ノ介に関する感想、画集のネタバレを含むキャラ雑感、「大逆転裁判」シリーズの拓いた新境地など、総括的な内容が中心となります。また、旧逆転裁判シリーズとの比較も内容に含みます。

前作『大逆転裁判』や第1話~第5話の個別感想は、前半の記事その1:『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』 1話~5話 感想 ※ネタバレ注意 の中で書きました。

※限定特典のダウンロードコンテンツ、「遊べる! 大逆転物語」の感想記事も書いています。

≪関連記事:『大逆転裁判2』 特典DLC 「遊べる! 大逆転物語」 感想 ※ネタバレ注意


以下は、ストーリーやエンディングのネタバレを含む詳細な感想と考察です。『大逆転裁判』シリーズのみならず旧作についても、既プレイの方を前提に記事を書きます。作品の性質上ネタバレは致命的なので、未見の方はご注意ください。



*****



この記事の内容は以下の通りです。








『大逆転裁判2』 まとめと雑感



ゲーム全体の感想として特筆したいのは、前作の課題が徹底的に克服されていることです。

ストーリーのボリューム、テンポの良さ、キャラの掘り下げ、モーションのキレ。

どの要素をとっても、前作の反省を踏まえてきっちりと改善されていました。かつその方向性が的確であり、作品のクオリティーを高めることに成功しています。
改善だけでなく新要素が追加された箇所もあり(例:調査パートのナビゲーション)、それらも総じてプレイのしやすさに繋がっていました。

共同推理陪審員制度といった前作で賛否両論だったシステムに関しても、演出と分量がずいぶんとブラッシュアップされていた印象です。

共同推理については、カメラとモーションが改良されて凝ったものになっていました。失敗選択肢も今作はほぼすべて違う反応になっていて楽しかったです。

また、陪審員制度については、前作に見られたような審理に不誠実な陪審員が目に見えて減りました。基本的には市民の義務を果たすべく意欲的に審理に参加してくれるので、不快感を覚える場面がほぼありませんでした(トウモロコシ娘は除く)。3話の陪審員3号・4号など、経歴を活かして専門的な意見を述べてくれる点も面白いなと思いました。

その他、陪審員が証人になったり次の事件の依頼人になる展開も、変則的ですがキャラの活かし方として良かったんじゃないかと思います。





大衆の恐怖



全編を通じて感じたのは、「大衆」のマイナス面がピックアップされているなーということでした。もっと言えば、「大衆の恐ろしさ」が隠れテーマだったような気がします。

たとえば、2話のビリジアン・グリーンと3話のイーノック・ドレッバーは、どちらも「センセーショナルな出来事に飛びつき騒ぎ立て、熱が去った後は一顧だにせず風化させる」大衆に傷ついた経験があります。

ビリジアンは恋人の死がおどろおどろしい怪談として消費され、すぐに忘れ去られたことを嘆いていました。

一方ドレッバーは、過熱したメディアの実名報道によって科学者としての将来を絶たれ、元記者のメニンゲンに10年越しの復讐を遂げようとしました。多くの人が当時のことを思い出さなくなっても、ドレッバーの中では10年前の事件は終わっていなかったわけです。


また、2話の全体にシェイクスピア作品の引用が散見されたことも示唆的だなと思います。いくつかの作品の中で、シェイクスピアはコロコロと意見を変える暴徒化しやすい大衆を描き、鋭い警句を発しています。

「大衆の恐ろしさ」を前提に見るならば、他人を意のままに操る天才と称され、見事なアジテーションを披露したヴォルテックスが今作ラスボスであるのも大いに頷けます。
記事その1の5話感想の中でも触れましたが、ヴォルテックスは大衆を見下しつつも彼らが喜ぶ筋書きをよく理解し、巧妙に利用するデマゴーグ型のラスボスでした。

≪関連記事:『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟』 1話~5話 感想 レビュー ※ネタバレ注意


その他、大衆の出現(in近代)との繋がりか、メディア関係者が要所要所で存在感のあるポジションに回っていた印象です。例を挙げると、2-1のマメモミ2-3のメニンゲンです。

メニンゲンは具体的な性格描写がないので置いておくとして、マメモミが独善的なくらいに正義感の強いキャラであり、それが高じて殺害という形の制裁に及んだのは面白いポイントだなと思いました。被害者が今作でも煽りと侮蔑に余念のなかったジェゼール嬢なので、自業自得感は否めないところですが。





因果は巡る



10年前のプロフェッサー事件と、4、5話の事件。10年という区切りの良さもさることながら、メタ的に「役者」の配置が巧妙であることも巧いなーと唸らされたポイントでした。

『逆転裁判3』逆転裁判3 NEW Best Price!2000でも“「過去」と「現在」が結び合う、たったひとつの真実” にワクワクさせられましたが、今作は出来事と関係性の連鎖具合に更に磨きがかかっていました。


まず、亜双義父子バンジークス兄弟の、立場を入れ替えつつの悲劇が挙げられます。

10年前にクリムトが死に、亜双義玄真がプロフェッサーとして逮捕され自供しました。バロック・バンジークスは友の裏切りを憎み、事件の担当者であったヴォルテックスに頼んで検事席に立ちました。ゲンシンは粛々と裁かれ、世紀の大罪人の汚名を着せられた上で、死刑囚として(結果的には)殺害されました。

それから10年後、今度はバンジークス自身が被疑者として逮捕され、二重の冤罪を着せられることになります。検事席に立ったのは、バンジークスが訴追したゲンシンの息子である亜双義一真。亜双義もまた父の裁判で検事を務めたバンジークスを憎み、ヴォルテックスにかけ合って検事席に立った身でした。


バンジークス卿も獄中で痛感していましたが、まさに「ねじれたカルマ」と形容するのがピッタリなシチュエーションだと思います。かつて起こった悲劇が、役者を代えて再び繰り返されるわけですから。

ゲンシンを罪人として追い詰めたバンジークスは尚更、自分を憎んで罪に問おうとする亜双義に、ある種の因果の巡りを見てしまったのではないでしょうか。


個人的に巧いと思うのは、バンジークスも亜双義もヴォルテックスの掌の上で言いように操られていることです。

本当に憎むべき相手を捉えられず、むしろ「許可を出すから仇を討ってこい」と背中を押されている構図なわけですね。さすがはヴォルテックス卿、だてにパッケージで「Y」しているだけの人ではなかった(今作のパッケージ絵は10年前の事件を念頭に構図や色調が練られているような気もして、プレイ後に見返すのが楽しかったです)。彼にかかれば、「人はみな役者」なのかもしれません。


また、10年前と現在(1900年)の違いとして弁護士・成歩堂龍ノ介の存在が挙げられます。

10年前の事件には、検事も刑事も判事も法医学者も顔を揃えていました。しかし、「弁護士」の影は(ストーリー上)まったく見えませんでした。
ヴォルテックスとの取引もあってゲンシンはけして口を割らなかったと思いますが、そもそも彼が頼ることのできる弁護士自体、当時は存在しなかったのでしょう。

「もしも龍ノ介がいなかったら」というIFストーリーを考えてぞっとするのは、おそらく龍ノ介なしに亜双義やバンジークスを縛るカルマは解けなかっただろうと思うからです。

言ってしまえば、10年前には不在だった弁護士(成歩堂龍ノ介)という切り札があってこそ、10年越しにプロフェッサー事件は解き明かされ、関係者たちはがんじがらめの呪縛から解き放たれたのだと思います。
司法に失望していたバンジークス卿の信頼を勝ち得たのも、憎しみに目が曇っていた亜双義を正気に戻したのも、やはり龍ノ介でした。

もちろん龍ノ介がヴォルテックスを追い詰められたのは、亜双義やバンジークスを始めとする関係者や遺族の協力があってこそです(ちょっと脱線しますが、ミコトバ教授はかなり重要なポジションのキャラでしたね。プロフェッサー事件に関して、彼経由でなければ出てこない情報がたくさんありました。直後に日本に帰国したからよかったものの、あのまま英国にいればヴォルテックスに目を付けられる可能性もあったのではないかと思います)。

しかし龍ノ介が今作で成し遂げた大仕事を思えば、彼がまさにキーパーソンであったことは疑いのないことです。親友・龍ノ介の才能に賭けて同行を頼んだ亜双義と、龍ノ介をこれぞと見込んで導いたホームズは、どちらも最良のアシストをしたと言えるのではないでしょうか。







感情移入の問題 ~成歩堂龍一と比較して~



『大逆転裁判2』をプレイして、ひとつ不思議に思ったことがあります。

それは第4話から第5話にかけて、主人公の龍ノ介にあまり感情移入できなくなったことです。龍ノ介の言動にプレイヤーとして齟齬を感じるようになった、とでも言えばいいのでしょうか。

ちなみに具体的に言うなら、「法廷パートの龍ノ介」に対してです。5話法廷パート終了後の龍ノ介とは、元通り距離が縮まったように感じました。


「龍ノ介がよくわからない」ということについては、理由を色々と考え、記事その1にも様々に書いたと思います。

≪関連記事:『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』 1話~5話 感想 ※ネタバレ注意





どうして終盤の龍ノ介と距離を感じたのか?



ここで一つ新しい理由を挙げるなら、成長っぷりが凄まじくてキャラがつかみにくくなったという点でしょうか。

終盤の龍ノ介はなんというか、有能すぎるほどに有能です。かつ、真実原理主義者として頑ななまでの態度を貫きます。半年近く根を詰めて勉強していたとはいえ、いくらなんでも才能が圧倒的すぎるなー……と、主人公の背後にいるプレイヤーとしては一歩引いて活躍を眺めてしまいました。


もちろん急成長してスゲーキャラになったというだけなら、「なるほどねー才能があるって話だったもんね」でまだスルーできたと思います。

しかし急激な成長に伴い、元々片鱗のあった「悟った(達観した)態度」までもが目立ってきたことが個人的には受け入れがたかったです。
なぜかと言えば、キャラ描写の一貫性のなさが苦手だからです。ギャップに弱いからこそ、キャラの性格の異なる一面同士が整合的に見えない場合、どうしようもない据わりの悪さを感じます。

終盤の龍ノ介は有能になり、(真実を追い求めて)大事な場面では悟った行者のような対応をするようになりました。しかし一方で端々の反応は元のまま、つまり語尾に「~!」が付くような、ゴートリのミサイルみたいなテンションのままだった印象があります。

「有能」かつ「悟りキャラ」、あるいは「有能」かつ「フレッシュマン」なら、キャラ描写に特段の食い違いは感じません。
しかし、「有能」かつ「悟りキャラ」かつ「フレッシュマン」……と三つ揃うと、後者二つにギャップというより一貫性のなさを感じてしまい、「これからどういうキャラで行くつもりなんだ? まだまだ場に慣れないフレッシュマンなのか、達観して揺らがない真実絶対主義者なのか、いったいどっちなんだ?」と戸惑ってしまいました(あくまで法廷パートについてです)。


こういうことを書くと「旧作ファンはこれだから」と言われるかもしれませんが、成歩堂龍一に対しては「感情移入できない」と感じたことはありませんでした(便宜上、成歩堂龍一を“成歩堂”と呼びます)。

成歩堂はどちらかと言えば才気煥発、ひらめき重視の天才型主人公だと思います。案外冷めた性格でシビアなところがあり、親しくなった人にとことん入れ込む情熱家な一面もあり、裏切られた(と感じた)らまた極端へ突っ走る頑なさと危うさもあり……と単にプレイヤーの分身に留まらない、濃いキャラクターを持つ主人公でもありました。

しかし今作をプレイして感じたのは、「成歩堂はプレイヤーに寄り添う系の主人公だったのかもしれない」ということでした。

腹の立つ態度を取る証人に対しては内心でイライラ&悔しがり、窮地に追い込まれた場面ではダラダラと汗を流し、ツッコミたくなる場面では鋭くぼやき、してやったりな場面では胸を張って勝ち誇り……旧作を思い返すと、成歩堂の反応はプレイヤーである私の心情と密接にリンクしていました。そのリンク具合は、成歩堂が弁護士として成長し、シリアスさが増す3-5に至っても変わることはなかったです。


一応龍ノ介についても、前作1-2や1-4、1-5ではガッツリと感情移入して推移を見守りました。

亜双義が弁護を申し出てくれて嬉しかった、でも最初はこいつも僕を疑っているんじゃないかという不安があった……という吐露には、プレイヤーの共感を大いに誘う等身大の青年感があったと思います。悲しみを乗り越え、周囲に支えられて成長していく主人公っていいなあ、ごく普通の感性を持っているのもいいなあと思っていました。

でもよくよく考えれば、前作では龍ノ介を取り巻くドラマに感情移入した部分が強かったのかもしれません。例えて言うなら、映画の登場人物の独白を聞かされて感じ入るようなタイプの感情移入です。

自分のペースでポチポチと読み進める中で、「うんうんそう思うよ」と自然とシンクロするタイプの感情移入ではありませんでした。


もちろん、以上に述べたこと(どちらの主人公に感情移入しやすかったか)は個人の好みだと思います。単に私にとって、龍ノ介より成歩堂の方が思い入れがあって馴染みやすいというだけの話かもしれません。
実際、同時期にプレイした友人(旧作プレイ済)は、どちらかと言えば龍ノ介の方が好き(かつ大逆転裁判シリーズの方が好き)と話していました。





法廷バトルと道徳的な主人公



個人的な感覚ですが、『逆転裁判4』逆転裁判4 コレクターズ・パッケージ - 3DSの主人公・オドロキのまっすぐな気性に、いいとこのお坊ちゃんっぽい人の好さのんびりとしたところを足すと、龍ノ介になるのかなーと思っています。年齢のせいもありますが、ややシニカルな成歩堂より、苦労人ではあるものの冷めきってはいないオドロキの方が龍ノ介に近い印象です。

おっとりとした気質やとぼけたところ、証人に対する穏やかな態度から、性格と育ちの良さが滲み出ている気がするんですよね。「金持ち喧嘩せず」に近いオーラがあるというか。

それに加えて2-3で感じたのは、龍ノ介は道徳的な主人公だなということでした。若さゆえでもあるのでしょうが、「正しい」ことを臆せずに言います。裁判後の犯人への一言は、その表れのような気がします。


ぶっちゃけ3話の犯人(未遂の方)への一言には、「法廷バトルゲーム」の主人公に“そういうノリ”は求めてないかなーという感想を抱きました。まるで金田一(孫)みたいなことを言うなあ、と(一応、はじめちゃんはあのノリだからこそ良いのだと思っています)。2話の犯人へのフォローは、タイミング的にも内容的にもすごく良かったのですが。

そういう風に思ったのは、私個人が法廷パートをある種のプロレスだと思っているからです。

法廷パートにおいて、最終的に勝つのは弁護士、対戦相手は検事や証人です。喧々諤々のやりとりの後、打倒すべき真犯人を弁護士がノックアウトし、裁判長が無罪判決を下して終了……という、いわば予定調和な展開があらかじめ想定されています(シナリオ構成上、あえて予定調和な結末ではなかった旧作の2-4や3-4は除きます)。


では、法廷パートにおける真犯人の最大の見せ場はどこでしょうか。豹変の瞬間でしょうか、それともいわゆるブレイク時でしょうか。

人それぞれ意見は異なると思いますが、私は看破されてバトルが終了した後の態度が重要ではないかと思います。

悔しさをぶちまけてもいいし悲しみを吐露してもいい、そこだけは犯人の独壇場です。この最後のステージでどれだけ輝けるかによって、その犯人のキャラクターがどれだけ印象深くプレイヤーの胸に刻まれるかも決まるものだと思います。


3話の犯人についても、どういう反応をするんだろうなと気になって見守っていました。だから、龍ノ介が「そんなことするべきじゃなかった」と発言したときはズコーとなりました。

せっかく犯人のオンステージが始まるかもしれないのに、弁護士が訓示を垂れるのはちょっとKYだと思います。対応として雑です。芸人のボケに対し、「それってどういう意味ですか?」と素で正論を言ってネタを潰すようなものです。
あんな正論を言われたら、犯人としては逆切れするか押し黙るかの二択しかないじゃないですか。犯人が正しいか悪いかで言えば悪いに決まっているんですから。

ゆえに、「そんな誰でも分かることを、今わざわざツッコまなくてもいいんじゃないか」と反射的に思ってしまいました。


もっとも、3話時点で上記の龍ノ介の発言がそれほど気になったわけではありません。龍ノ介のまっすぐさや青さの表現だろうと思って流していました。性格上、傷ついたドビンボー博士のために一言言わずにはいられなかったんだなと感じたので。

ただ、上でも述べましたが、4~5話の龍ノ介は真実第一主義に目覚め、ちょくちょく悟りモードに入るようになりました。達観した姿勢と青臭さが微妙に噛み合っていないなとプレイヤーとしては思ったので、翻って前者の片鱗と言える3話の諭しも、イマイチ好かないなと感じるようになったのかもしれません。

私個人としては、弁護士の反応は「勝った!」(ザマミロ&スカッとサワヤカ)くらいの方が好きですね。結局のところ。プレイヤーとしては、主人公と一緒にいったん勝ち誇った後、気持ちを切り替えて犯人の反応をじっくりと見守りたい気持ちがあります。


とはいえ、私のそういった期待(熱く燃えて最後はスッキリする法廷バトルが見たい)は、逆転裁判にエンターテインメント性を期待しているがゆえのものです。

ここが一番言いたいことですが、大逆転裁判シリーズ、もっと言うと『大逆転裁判2』は、エンタメ重視からドラマ重視の方向に舵を切った作品なのだと思います。だからこそ主人公・龍ノ介のスタンスや犯人との関わり方も、相応に旧作とは異なっているのだろうと今は思っています。

つまり、大逆転裁判シリーズの醍醐味はザマミロ&スカッとサワヤカなバトル感覚ではなく、重厚でしっとりとしたドラマ性にあるのだと個人的には考えています。方向性が違うわけですね。

そのことに関して、次の項目で簡単に触れます。






ドラマ性の重視 ~大逆転裁判2が拓いた新境地~


(土壇場での派手系モーションのお蔵入りの頻発について)なぜなら今作に於いてはその重厚なストーリーラインを最大限に盛り上げる事が最大のテーマでもあり、ドラマに寄り添う誠実な演出を施した結果なのだから。そして『大逆転裁判』はちょっと“骨太”な演出とドラマを獲得し、逆転裁判シリーズのDNAを引き継ぎつつも、独自の“未来”を感じさせるものになったと感じました(p.140)。

――『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟 公式原画集』より(引用文カッコ内は引用者による補足)


2の公式原画集を読むと、塗さんたちがシナリオ担当のタクシューさんに積極的に意見を出したことがよくわかります。あれもこれもそういう改善案あっての最終形だったのか、と正直びっくりするレベルです。

『大逆転裁判2』のクオリティーの高さは、まさに制作陣が一丸となって作り上げたものだったんだなーと感銘を受けました。


やや脱線しますが、『大逆転裁判2』面白かった! という方には、ぜひ一度公式原画集に目を通していただきたいです(発売から1年経っているので、今更感が半端ないダイマですが)。あの世界設定やキャラクターが好きという方なら特に、読んでまず損はないと思います。イラスト一つとっても細部まで設定が練り込まれていて、ファンとしては感動するばかりでした。

たとえば2のパッケージ絵では、下から吹き上げられるようにして桜の花びらが散っていますよね。あれは単に画に彩りを添えるためのものではなく、ある事柄の象徴として描き込まれたものです。その設定を知ったときは、「画集買ってよかったー」と心から思いました。そういう「買ってよかったー」な情報が随所に存在する満足度の高い一冊なので、興味のある方にはぜひ実物を手に取って読んでいただきたいなと思いました。

ちなみに、個人的なイチオシの「読んでよかった」ポイントは、「若き日のホームズ&ミコトバ」「その後のバンジークス&アソウギ」を描いた2枚です。どちらも描き下ろしですが、この2枚を見られただけでも画集を買った価値があったなーとしみじみと思いました。



大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟- 公式原画集
大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟- 公式原画集




話を元に戻します。公式原画集を読んでしっくりときたポイントがあります。それは、「ドラマ部分が今作のキモ」という塗さんのお話でした。

個人的な印象ですが、旧作はエンタメ≧ドラマだったと思います。(もちろんストーリー部分の出来の良さではなく、あくまで重視の度合いについての話です)。
しかし今作の場合、比重がエンタメ=ドラマだったように思いました。ひょっとするとエンタメ≦ドラマと言ってもいいバランスかもしれません。

たとえばビリジアン・グリーンやコートニー・シスに派手なブレイクモーションがなかったのも、ストーリーとの調和を考えればしっくりくる演出だったと思います(個人的な好みとして派手で痛々しいブレイクは求めていないので、この路線は歓迎でもあります)。

また、上の方で龍ノ介のキャラや言動について色々とツッコミを入れましたが、なんだかんだそれらはドラマ重視の大逆転裁判のカラーにはふさわしいものだったのでしょう。

(個人的に)龍ノ介と言動がシンクロしにくかったのも、彼が主人公である前に、ドラマの渦中にある一個のキャラクターであったからかもしれません。


あらためて、項目冒頭で引用させてもらった塗さんのお話は、大逆転裁判シリーズの特徴を的確に表したものだと思います。

ヴィクトリア朝末期の英国という詳細な舞台設定をしている以上、「コミカル&テキトー」な逆転裁判シリーズとは違い、骨太な演出とドラマにこだわった方が確かに面白くなるだろうなと思います。実際、『大逆転裁判2』はそういう方向に舵を切って大成功しました。

あまりに見事にすべての謎を解き明かしたがゆえに、続編の望みが限りなく薄くなったことが、『大逆転裁判2』の最大の欠点かもしれません。

とはいえ、この完成度の高い世界で展開される重厚なドラマをもっと見たいので、続編が出ることを心から期待しています。






キャラクター雑感



この項目では、気になったキャラ数名について簡単に感想を書きます。逆転裁判シリーズや公式原画集のネタを含みます。

ちなみにDLCの記事にも書きましたが、メインキャラクターの中で特に好きなキャラは、アイリス、バンジークス、亜双義です。

今作の脇役だとやっぱりミテルモン夫人一強でしょうか。アルタモント夫人やビーナスちゃんもけっこう好きだし、ド・ジッコやビリジアン・グリーンの丸いフォルムも可愛いなと思います。





アイリス・ワトソン



今作でもアイリスは可愛かったです。スクショが捗りました。可愛すぎる。外出着のフォルムが夢の国のマスコットネズミのようで笑いましたが、あれはあれでキュートでした(たぶんネズミではなくクマモチーフですよね、あの形状)。アイリスの有能さと子供らしさのバランスは本当に絶妙だなと思います。

今作で明かされた意外な真実により、アイリスが成長したらどうなるんだろう……とすごく思いました。たとえば血筋的にかなり背が高くなるんじゃないか、とか。
今の髪型もバツグンにカワイイですが、髪を下ろしたくせっ毛アイリスも超キュートなので、髪下ろし+成長バージョンのアイリスをいつか見てみたいなーとすごく思っています。

また、アイリスの名前の元ネタが「あやめ」なのは、ちょっとびっくりしました。『逆転裁判3』逆転裁判3 NEW Best Price!2000の彼女との関連で、おっとりとした清楚な大和撫子を連想しました。
犬といえば「ミサイル」というお約束(例:『逆転裁判』逆転裁判 蘇る逆転 Best Price!『ゴースト トリック』ゴースト トリック NEW Best Price! 2000)と同じような感じで、「あやめ」はタクシューさん的に思い入れのあるネームなのでしょうか。

ちなみにアイリスの花言葉を調べてみたら、「希望」「吉報」「良い便り」などいかにもアイリスっぽい意味があって嬉しくなりました。

真面目な話、アイリスはプロフェッサー事件が残した「希望」なんだろうなと思います。いずれ彼女も真実を知るのでしょうが、過去に縛られることなく、ホームズやバンジークスに見守られて健やかに成長してくれることを願っています。





バロック・バンジークス



具体的な感想はだいたい記事その1の中で書きました。

≪関連記事:『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』 1話~5話 感想 レビュー ※ネタバレ注意


バンジークス卿は、前作で一番好きになったキャラでした。グラスパリーンボトルガシャーンカカトドーンの上での、まったく謝る気のない謝罪に大いに笑わせてもらったので。
まだ大事なところが何も判明していないのに良い人感がにじみ出ているところとか、寄り目できないんだろうなあってところにも笑いました。マジメであるがゆえに面白いキャラって大好きです。

そういうわけで、今作でガッツリとバンジークス卿の掘り下げがあって嬉しかったです。過去だけでなく、趣味やこだわりも一気に開示されましたね。
個人的には、≪神の酒≫へのこだわりっぷりが印象に残りました。あの重そうな樽を入れ替え続けているのなら、ムキムキな体つきにも納得しかないなーと。

全体として、素の言動がボケ寄りなのにマジメさゆえにツッコミもこなせるところがフィーチャーされていて、更に好感度が上がりました。

今作で描写されなかった「額の傷がついた経緯」については、今後明かされるのかどうかが気になります。また、DLCでチラッとあったアイリスとの絡みに大いに和ませてもらったので、2人が交流する後日談が見たいところです。





亜双義一真



前作で退場したときは不意打ちすぎて絶望したことを覚えています。リアルに動悸がヤバかったです。

1話序盤で「千尋さんポジのキャラだ」とはっきりわかっていたのに、師匠キャラ以上に男前な親友キャラが印象として先行して、そのへんのお約束が頭から吹っ飛んでしまったんですよね。だから、旧作で千尋さんが退場したとき並みのショックを受けました。

前作の2話終盤最終話など、龍ノ介が亜双義を回想するシーンでは必ずと言っていいほど涙腺を刺激されました。
とはいえ、いかんせんキャラ描写に隙が無い上に退場が早すぎたので、そこまでキャラクター自体に入れ込むことはなかったです(千尋さんのようにその後ちょくちょく登場することもなかったので)。作品のムード(時代性、雰囲気など)を象徴するキャラとしては非常にイイなと思ったのですが。

しかし今作をプレイして、一キャラクターとして大好きになりました。公式原画集を読むと塗さんの亜双義へのこだわりが伝わってきて、2でああいう形で復活が実現したことをあらためて嬉しく思いました。


亜双義についても、具体的な感想はだいたい記事その1の中で書きました。

≪関連記事:『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』 1話~5話 感想 レビュー ※ネタバレ注意

この項目では、旧作と絡めつつの話をします。ここからはガチの個人的な感想です。全文に「個人的には」をつけるくらいの気持ちで書きます。


『大逆転裁判2』での亜双義を見ていると、『逆転裁判2』逆転裁判2 NEW Best Price!2000のライバル検事である狩魔冥を思い出しました。というか、「2人ってけっこう似てない?」と思いました。

共通点を挙げてみると、

お父さんリスペクト、「復讐者」的要素、異国の地に乗り込むほどの強い執念、やや暴走気味、得物を所持、目的のために手段を選ばないところがある、良くも悪くも周囲を振り回すタイプ

……などでしょうか。主観多いですね。


一方、成歩堂龍一のライバル兼親友である御剣怜侍と亜双義の共通点を挙げてみると、

主人公の親友、イメージカラーが赤、モチーフが刀とサムライ、死亡したと思わせて終盤で復活、そのまま裁判で対決、BGMタイトル(御剣『大いなる復活』/亜双義『大いなる帰還』『復活の検事』)、赤と白の検事コスチュームwithヒラヒラ、父を殺された、親友の助けを得て過去の事件から解放される、かつては弁護士を志望していた、自罰的な理由から検事を志す、亜双義の初期案の名前が御剣っぽい

……など、色々と思いつきます。

両者に共通する要素の多さを踏まえても、亜双義は旧作主人公・成歩堂のライバルであった御剣ポジションのキャラであり、ミツルギ的要素を多く持つキャラなのだろうと思います。


しかし今作をプレイして、性格的にはバンジークスの方がミツルギっぽいなと感じたんですよね。

肉親絡みの事件のせいで暗い性格になった、何かと巻き込まれ型、最終話の被告人、弁護の申し出を最初は拒否、古風な言葉遣い、ちょっとズレたところがある……といったあたりが特に。

一方の亜双義については、2をプレイし終えると、狩魔一族的な要素が案外強いように感じました。これは、亜双義が単純な正義漢ではなく執念の男であったこと、亜双義家と狩魔家に意外なつながりがあったことが判明したせいでもあるかもしれません。


「亜双義と狩魔冥は似ているんじゃないか説」が私の中でホットになった大きな理由の一つは、悔しがるモーションです。あの両手で拳を作って机にすがる動作を見た瞬間、「これすっごくメイちゃんっぽい」と思いました(あとでガリュー検事っぽくもあるなと気づきましたが)。

あとダメージモーションの、「あれ、なんか普通にダメージ受けてる」な感じ(なんとなく見てはならないものを見てしまった感)も似ている気がします。

また、重要な場面でショッキングな演出があり、「こんな顔もするんだ」……と強烈なギャップを感じたことも大きいです。

悔しがるモーションと地続きですが、亜双義の慟哭シーンを見たとき、『大逆転裁判2』で最大級の衝撃を受けました。でも同時に、亜双義のことが一気に好きになったんですよね。あそこまで崩れるとは思わなかったので素直にショックでしたが、精神的にいっぱいいっぱいで脆い一面にグッときました。

あとでよくよく考えて、あれはまさに『逆転裁判2』ラストの衝撃シーンと同じ類のものだったなーと確信しました。
「なにその反応」とショックを受けつつも、ガッチリと心を掴まれるあの衝撃。あの得難い体験を再び味わえるとは思いもしませんでした。


ここまで書くとバレバレですが、旧作キャラの中では狩魔冥が一番好きです(かつ『逆転裁判2』が一番好き)。これに関しては初めて旧三部作をプレイした頃から一貫しているので、たぶん今後も変わらないだろうと思います。

欠点が少々、いやだいぶん多いキャラではありますが、そこを含めて大好きです。『逆転裁判2』での情緒不安定さMAXなところも、『逆転裁判3』での精神的にやや落ち着いたところも魅力的です。『逆転裁判ファンブック なるほど逆転裁判!』逆転裁判ファンブック なるほど逆転裁判! (ドリマガBOOKS)でちょくちょく日本に遊びに来ているエピにはファンとしてすごく和みました。

亜双義はメイちゃんほど横暴でも暴力的でも攻撃的でもないですが、2でようやく人間くさいところを色々と見せてくれたと思います。だからこそ今作で亜双義がすごく好きになったし、なんだかメイちゃんに似てるなーと思ったのかもしれません。




*****


後半の記事ではより俯瞰的な、かつ細部に突っ込んだ感想を書きました。

『大逆転裁判2』は、あらゆる意味で思い出に残るゲームになりました。シリーズの一作品としても、単体の作品としても。

これだけカッチリと舞台背景が作り込まれている(シナリオ的にもヴィジュアル的にも)と、プレイ後の余韻が長く尾を引くほか、「物語のその後」が本当に気になるんですよね。
物語自体の緻密さと、それゆえの奥行きの広さ(想像の余地の広さ)を兼ね備えた作品は、名作と呼ばれるに足る魅力を持っていると思います。そういった観点から見れば、『大逆転裁判2』は本当に魅力的なゲームでした。

最後に言いたいことを簡潔にまとめると、「続編が出るといいなあ」に尽きます。もう少し長く大逆転裁判のキャラクターたちの活躍を見たい、と発売から1年経った今でもそう思っています。
『大逆転裁判2』は希望に満ちた作品でした。だからこそ、「大逆転丸」の新たな冒険を見たい……わがままな望みですが、一ファンとしてはそう期待せずにはいられません。

というわけで、「大逆転裁判」シリーズの新作の感想記事を書けることを願ってこの記事を締めます。

また機会があれば、簡単な明治村レポなども挙げるかもしれません。



   


関連記事:
『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』 1話~5話 感想 レビュー ※ネタバレ注意(『大逆転裁判2』 第1話~第5話の感想、および前作『大逆転裁判』の感想)
『大逆転裁判2』 特典DLC 「遊べる! 大逆転物語」 感想 ※ネタバレ注意(『大逆転裁判2』の数量限定特典DLCの感想。大日本帝国編&大英帝国編の2本立て)


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