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『ドキドキ文芸部!』 キャラクター感想&考察(ユリ・ナツキ・サヨリ) ※ネタバレ注意 【DDLC】

2020/01/20
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美少女ギャルゲー×サイコロジカルホラーなノベルゲーム、『Doki Doki Literature Club!』(DDLC/ドキドキ文芸部!)に登場する3人、サヨリ・ユリ・ナツキに関する感想&考察記事です。ネタバレを含みます。制作者はTeam Salvato様。作品の公式サイトはこちらです。 → Doki Doki Literature Club!

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ドキドキ文芸部!

DDLCのメンバーは計4人。幼なじみのサヨリ、内気なユリ、勝気なナツキ、部長のモニカです。

誤解をおそれずに言うなら、いわゆるテンプレな属性を持つキャラ(ユリとナツキ)と、フックの効いた設定のキャラ(サヨリとモニカ)を2人ずつ配した布陣だと思います。そして、どちらの2人についてもそのキャラクター性が強く印象に残るのが見事でした。

今回は、モニカ以外の3人(サヨリ、ユリ、ナツキ)の感想を書きます。モニカメインの記事に引き続き、ネタバレをガッツリ含むので、未見の方はご注意ください。

ユリとヤンデレ

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ドキドキ文芸部!

ユリは引っ込み思案で臆病な女子生徒です。普段は物静かで読書に没頭していますが、詩作に関しては一家言ある様子。大人っぽい容姿の美人であり、性格上強調してはいないものの文芸部では一番スタイルがいい感じですね(本人はそれがコンプレックスらしいですが)。

ユリはDDLCの狂気部分を5割近くは担うキャラだと個人的には思っています。いわゆるヤンデレ枠のキャラであり、主人公に執着して性的に興奮し、お気に入りのナイフで自傷を繰り返した挙句に衝撃の最期を遂げます(そのあまりに派手な狂いっぷりを見たときは、性格的にはあまり似ていないですがひぐらしの詩音を思い出しました)。

2周目に初めてユリを攻略したプレイヤーは特に、(その生々しいアピールも込みで)彼女の狂気にドン引きするほかないんじゃないかなーとも思います。

もっとも、1周目でユリ寄りに進めた人であれば、2周目の発狂にそこまで動じずにいられるのではないでしょうか。「ソースは私」としか言えませんが、私はDDLCの狂気が巧妙に隠されている1周目でユリ一筋にゲームを進め、その過程で彼女の狂気に結び付くヒント(ナイフが好きとか血を舐めるとか)をいくつか発見しました。

同時に彼女の魅力や長所を知ってユリのことが好きになったので、2周目の斜め上にエキサイトする彼女には驚いたものの、「今回のユリちゃんノッてるなーヤバイなー」くらいの緩い姿勢で見守ることができたような気がします。

ユリの自己嫌悪

先ほど、ユリを「引っ込み思案で臆病」と表現しました。ユリは当初からおどおどとした態度の目立つキャラです。人と交流することが苦手で、話し出すにもよく考えをまとめてからでないとダメ。読書に耽溺しているのはリアルの人間関係から逃避するためでもあります。

ただ、ストーリーを追っていけばわかるように、ユリは単に気が弱いだけの女性ではありません。文芸に関しては水を得た魚のようによどみなく話すこともできるし、論争相手のナツキに対してはたびたび辛辣な発言も行います。つまりユリは、好きな分野に関しては確固たるプライドを持ち、それを主張するだけの度胸や頭の回転を備えている人物だと言えます。

では、なぜ普段のユリは消極的で自信のない態度をとっているのでしょうか。攻略を進めるとわかりますが、ユリの控えめで抑制的な姿勢は、実は彼女自身が意識して作りだしているものです。

ユリは主人公と親しくなると、「昔からつい過激で辛辣なことを周囲に対して言ってしまうことがあり、そのせいで距離を置かれる経験を味わってきた」と打ち明けてくれます。

ユリルートではありませんが、ナツキに嫉妬して主人公の態度を深読みし、その後自己嫌悪に陥ったとき(1周目)は以下のように言ったりもします。

「私はいつもこう……」
「話す前によく考えると、気まずくて嫌な気分になる」
「でもよく考えずに話すと、私の中にしまっていたものが出てしまって、みんな私の事が嫌になる」

ドキドキ文芸部!

「他人の発言の深読み」と「自分の発言の反省」がユリの目を引く特徴であり、素の彼女はけっこうキツイ発言もする子だと個人的に感じていたので、上記の告白は色々と腑に落ちるものがありました。

行きすぎたことを言って敬遠される経験を繰り返したからこそ、頭の中でよくよく考えないとまともに発言できなくなった。「相手は自分を嫌っているはず」と深読みして本当に嫌われたときの予防線を張るようになったし、自分の言動を過剰にマイナスにとらえるようにもなった。そうして現在の消極的でおどおどとしたユリができあがったわけです。

自ルート後半にもなると、ユリはかなり素直に自分の現状を打ち明けてくれるんですね。「ひとりきりで昼食を食べている」だとか、「本の中に友達はいっぱいいるけど……」だとか。特に3回目のイベントで語られる後者は聴いていてわりと泣きそうになりました。主人公と仲良くなれてよかったね、と心から思いました。

DDLCの4人はみなそれぞれ生々しい言動をすることがありますが、ユリは特にそう感じる場面が多かったです。ナツキと同じくらい自分の詩作スタイルにプライドを持っているためか、やや上から目線な物言いが目立つところとか(本人にも若干自覚はあるようです)。

ただ、そういうところもひっくるめてユリは好きなキャラクターです。現実を振り返ったとき、欠点のない人はそうそういないと個人的には思います(だからこそ何かしら隙のあるキャラの方が愛着が湧くのかもしれません)。そういう意味で、ユリについては人間らしくていいなあと感じました。

ナツキとツンデレ

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ドキドキ文芸部!

ナツキは主人公たちより年下の、かわいらしい容姿をした小柄な女の子です。趣味はお菓子作り。マンガが好きでお気に入りの漫画は『パフェガールズ』(元ネタはパワパフ?)。いわゆるツンデレ枠のキャラであり、なかなか素直になれない(でも本当は優しい)性格をしています。

ナツキははっきりと自己主張をする子です。(表面上は)性格から詩のスタイルまで真逆なユリと対立するシーンも何度かあります。しかしユリがおかしくなったときは彼女を真剣に心配するなど、根は友達思いの良い子です。モニカも「ナツキはワガママな子ではないし、言うことを聞かない人を嫌ったりもしない」と語ります。

ただそれだけに、2周目のDDLC(サヨリ消失後)でナツキ寄りに攻略したときの不憫さには泣けるものがありました。ナツキと親しくすると、ユリはもちろんモニカの当たりがあからさまに強くなるんですよね(特にバグ攻撃がひどい)。

例を挙げると、(昨日のケンカについて謝るナツキ)→ユリ「どうでもいいです」「自販機の下にある小銭でも探してきたらどうですか?」とか、(私はカップケーキを作ると言うナツキ)→モニカ「それ(カップケーキ作るの)だけは得意だものね」*……といった感じです。ナツキの反応も含めて正直見ていてひえーとなりました。

*ちなみに後者のモニカの発言は、ユリ寄りに攻略していると「……その意気よ。分かってもらえて嬉しいわ」と優しい感じになります(狂気の"play with me!"といい、2周目は分岐が細やかで見どころたっぷり)。

また、見た目に合わせてというわけではないと思いますが、ナツキは精神的にやや幼いところがあります。感情が高ぶるとついキツイことも言うし、自分をコントロールできずに泣いてしまうこともあります。そこはまあ、現実の女子高校生だったらと考えると微妙に感じる部分かもしれません。

ただ、ナツキの率直な告白にはハッとするというか、共感してしまう部分が多かったです。たとえば「たった一つ嫌なことがあるとすべてが台無しになったような気分になる」だとか、「周りが上手くいっているのを見ているとなんだか落ち込む」だとか。そういった素直な吐露を聞くと、「わかる」「そういうこともあるよね」とつい画面の前で頷いてしまいました。

詩作においては、ナツキは率直かつ平易で可愛い表現にこだわっています。ただし、評価としての「カワイイ」はあまり好んではいません。ナツキは詩にきちんと感情やメッセージを込めていて、その表現形式としてあえてシンプルなものを選んでいます。だからこそ詩の内容ではなくスタイルだけを取り上げられ、「カワイイね」と評価・判断されることが嫌なわけです。

また、可愛い言葉や事柄は好きだけど、「カワイイ」が嫌になることもある……という痛切な告白にも、個人的にはうんうんと同意してしまいました。

ナツキは詩に込めた思いや考えを他者にわかってほしいし、詩を通じて作者である自分と向き合ってほしいんですよね。その切実さがひしひしと伝わってくる3回目の詩の見せ合い、特に「わたしの詩が好きって言ってよ」にはグッとくるものがありました。

ナツキの父親に対する疑惑

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ドキドキ文芸部!

ナツキに関して1点残念だったのは、家族絡みの問題が匂わされるだけで掘り下げられなかったことです。いくつかの情報を見るに、ナツキは父親に虐待を受けているのではないかと思われます。

まず、ナツキの家は、母親の話題がまったく出ないことを考えても父子家庭のようです(たぶん父と二人暮らし)。ナツキは大事なマンガを自宅ではなく文芸部の教室に置いています。「パパに見つかったらどうなるかわからない」からだそうです。「パパが家にいると何もできない」とも発言しています。

また、2周目の改変DDLCでは、上記の発言に代わって「パパに見つかったら死ぬほどボコボコにされるし」*という不穏当な発言も飛び出します。

*サヨリ消失後の2周目DDLCでは、ユリやサヨリの発言が黒の囲み字で表記されることがあります(バックログ上では1周目と同じなのに)。モニカによる改変の可能性もありますが、黒の囲み字で表記される場合、キャラクターの本音(秘密)が強制的に開示されているのではないかと個人的には思います。

また、モニカは2周目に積極的にユリやナツキの情報を教えてくれます。そのモニカは、突然眠り込んだナツキについて以下のように説明します。

「ナツキのお父さん、お昼代を渡さないし家に食べ物もろくに置かないから、そのせいであの子はよく苛立ってるのよ……」
「そしてたまに元気が底を尽きて停止しちゃうの」
「さっきみたいにね」
「これはあくまで予想だけど、身体が小さいのも栄養失調のせいで発育を阻害されてるからだと思うの」

ドキドキ文芸部!

ナツキが気になるならお菓子を持ち歩くといい、子犬のようにしがみついてくるから、とモニカは茶化すように言うものの、上記の発言が事実なら虐待確定だと思わざるを得ませんでした。

また、進行に合わせてランダムに提示される特別な詩の中に、「パパの好きなところ」というものがあります。おそらく作者はナツキで、タイトル通り「~なパパが好き」と書き連ねられています。ただ、ナツキ自身の悩みやモニカの発言を踏まえると、「詩に書かれている『パパ』は現実のナツキの父とはまったく逆なのでは……」と感じてしまいます。

登場人物の発言や詩の内容も踏まえると、ナツキの父親は過干渉かつ支配的で、「しつけとしてやっている」系の虐待をしているのではないかと思いました。

ナツキのやることなすことをチェックし、プライバシーを与えず、気に入らないことがあれば怒鳴ったり暴力を振るったりする。家に食品を置かず、ナツキにお昼代を渡さない。晩御飯は作るとしても、家に帰る時刻はかなり遅く、帰宅時にナツキが寝ていても無理に起こす。よってナツキは大好きなマンガを自分の部屋に置くこともできず、常にお腹を空かせている。不確定な情報も含みますが、ゲームから情報を拾うとそんな父子関係が思い浮かびます。

もっとも、すべての情報がどこまで正しいのかは今ひとつはっきりしません。たとえばナツキは、「パパが晩御飯を作ってくれる」と改変前の1周目DDLCで話します。しかし現実の父親とかけ離れたことを書いたと思われる「パパの好きなところ」には、「夕食を作ってくれるパパが好き」とあります。

主観まみれですが、ナツキの食事をコントロールしたいのかなーと断片的な情報から感じたので、「パパが晩御飯を作ってくれる」のは事実ではないかと思います。食事にポリシーがあり、自分の手で作ったものを子供に食べさせたい系の親なんじゃないかな、と(だからお小遣いもお昼代もあげない。たぶんナツキ自身が主となって食事を作ることを許さない)。ナツキの趣味はお菓子作りですが、「手作りだから」ということでギリギリ許されているのかもしれないなと思いました。

ただ、うつ病や自傷癖について自ら明かすサヨリやユリとは違い、ナツキ本人は虐待疑惑に関して確定的なことを話してくれないんですよね。ナツキの父子関係はユリの自傷癖に相当する秘められた背景設定だと思うので、もう少し掘り下げが欲しかったなーと思いました(もっとも、あくまで匂わせに留まったのは、「ナツキ本人が虐待を虐待として認識していない」せいなのかもしれませんが)。

サヨリと「幸せ」

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ドキドキ文芸部!

サヨリは文芸部の副部長であり、主人公の幼なじみです。性格は明るく天真爛漫。主人公の幸せを願って彼を文芸部に誘い、主人公がほかの部員と仲良くなると嬉しそうに笑ってくれます。

恋愛ゲームでは鉄板と言ってもいい幼なじみ枠のキャラであり、癖のない性格的にも序盤の導入役というポジション的にも、いかにも「典型的」なキャラクターに見えます。

しかし、サヨリはテンプレキャラとは言いがたい事情を抱えています。サヨリをよくある幼なじみキャラだと思ったプレイヤーほど、彼女が「鬱病」や「孤独」、「絶望」といった単語に興味を示すことに驚くのではないでしょうか。彼女が2日目に書いてくる宿題の詩の不穏さにも驚くかもしれません。

そう、サヨリは重度のうつ病患者であり、明るい仮面の裏側で心を病んでいるキャラクターです。ドジっ子属性を強調するような「毎朝の寝坊」や、優しい性格を印象づけるような「他者の幸福を優先する姿勢」は、実は自分を無価値なものと信じる心の表れです。

痛々しい傷や派手な狂いっぷりを見せるユリに比べると、サヨリの病み方はより静かで内へ内へと向かうものです。彼女は自分という存在に何らの価値を見出せず、主人公がほかの女性と幸せになることが何より大切だと信じています。だからこそ、主人公への好意や独占欲、主人公が幼なじみである自分を大事に思ってくれている事実を、まっとうな形で受け止めることができないのです。

「こうあらねばならない」という強迫観念と、「こうしたい」という素直な心。2つの命令の板挟みになったサヨリは、第三者の介入もあって精神的に追い込まれ、自分の望みを完全に見失い、そして1周目の文化祭当日に衝撃の最期を迎えることになります。

サヨリはユリやナツキほど詩作に熱を入れていませんが、文芸部では副部長を務めています。最初はちょっと意外に思ったものの、ナツキとユリをなだめて場を和ませる様子を見ると、(モニカも認める通り)サヨリは潤滑油的な役割のできる子なんだなーと納得しました。

サヨリルートで何より印象的なのは、ユリとナツキが目に見えて仲良くなることでした。サヨリが円満に2人を取り持ち、火種になる主人公もサヨリルートでは中立を保つので、よけいな波乱が生まれないせいだと思います。3回目の詩の見せ合いとかナツキ&ユリのコンビが好きなプレイヤーとしては本当に胸熱でした(「これだけうまく事が進むのに、サヨリの雨雲は晴れないんだな……」とやるせない気持ちにもなりましたが)。

一方、サヨリを欠く2周目ではナツキとユリの対立を止める人間がおらず、互いを傷つけ合うレベルの口論が展開されます。サヨリの出番自体は1周目と4周目に限られるものの、シナリオ全体を眺めると、彼女の重要性・存在感はきちんと示されていた印象です。

もともと明るくてとにかく良い子なところに和まされていたので、サヨリが重いうつ病であると知ったときはもちろん驚きました。しかし不思議と違和感はなく、「そうだったんだ、じゃああれもこれも鬱病の伏線だったんだ」とするっと呑み込めた覚えがあります。チョイスする単語や、ハッピーなことだけではなく悲しいことも好きという印象的な発言、主人公に対するややぎこちない言動など、納得に至れるだけのヒントがシナリオ中に提示されていたからでしょうか。

また、運命の文化祭当日、扉を開けた先に変わり果てたサヨリが映るシーンは、恐怖以上に「どうしてこんなことに……」とひたすらショックでした。うつろではあるものの不思議とサヨリの顔が綺麗で、そこは唯一の救いだったかもしれません(現実ではひどいことになるらしいので。ただ、モニカからサヨリが息絶えるまでに起こったことを教えられたときは、マジでエグいなーと思いました)。

サヨリ寄りに攻略する(=サヨリのCGをゲットする)のは最後にとっておいたのですが、主人公との甘酸っぱい関係にいたるところでニヤニヤさせられました。主人公はサヨリに対してぞんざいで鈍感だなーと感じる部分もあったものの、それ以上にサヨリへのまっすぐな気持ちが印象に残りました。「幼なじみkawaii」と何度も思いました。

ただ、「主人公が告白するしないに関わらずサヨリはああなる」という事実はつらかったです。ゲームの都合上仕方ないとはいえ、サヨリにつきっきりでいてあげられないことが悔しくもありました。

併せて記憶に残っているのは、文化祭当日の「今朝まであの子を宙ぶらりんにさせちゃって」というモニカの発言です。サヨリに何が起こったかすでに知っているとはいえ、こうも露骨なことを言われるとさすがに血の気が引きました。周回プレイヤーの心をグッサリと貫く、エグいダブルミーニングだと思います。

日常から非日常へ、ゲーム世界からプレイヤーへ

個人的な印象ですが、サヨリは平和な日常を象徴するキャラクターだと思います。実際主人公は幼なじみの彼女について、たびたび「サヨリは変わらない」と言及します。だからこそ、サヨリのおかしな言動は順風満帆な学園生活のほころびとなり、彼女によるうつ病告白からの自殺はDDLCを一気に狂気の非日常へと導くのです。

言ってみれば、サヨリは平穏な日々の象徴であるとともに、その平和を崩壊させる(「幼なじみは変わらない」という主人公の考えを残酷な形で覆す)キャラでもあるわけです。いわゆるひぐらし展開(楽しい日々から一転して狂気の非日常に落ち込む)の導入役としては、理想的かつ完璧なキャラクターだなーと思います。

まとめると、サヨリは空気になりがちなテンプレ幼なじみと思わせておいて、「主人公に(親友として)大事に思われている」、「自分を度外視して主人公の幸せをいじらしいまでに願っている」、「鬱病に苦しみ自分の存在価値を見失う」、「黒幕に翻弄され悲劇の結末を迎える」……など、濃い役割を与えられたキャラクターでした。意外性もあり、あんなに可愛い子がああいう末路をたどるインパクトもあり、初見の印象とは違って存在感のある女の子でした。

個人的にはサヨリが一番好きだったので、終始「サヨリちゃん幸せになってくれー」と思いながらプレイしました。モニカの干渉によって転落するのはユリと同じですが、サヨリは気の毒な感じがひたすら強いんですよね。フィクションらしいというかカーニバル感の強いユリの発狂と違い、サヨリの病み方は妙にリアルというか、「どうにかしてあげたいけどどうにもできない」的なもどかしさとやるせなさを感じました。

そんな個人的な思い入れもあり、スペシャルエンドでサヨリがメッセンジャーを務めてくれたことは本当に嬉しいサプライズでした。

通常エンドでモニカの絶望と嘆きを見たからこそ、「部長権限」を受け継いだサヨリの、「みんなの幸せを最大限叶えてくれてありがとう」、「このゲームを愛してくれてありがとう」という言葉に救われました。プレイヤーだけではなく、すでにいないモニカへの労わりも感じられるエンディングだったと思います。

サヨリは当初から、「みんなに幸せになってほしい」と願っていました。だからこそ、彼女の願いがスペシャルエンドで息を吹き返す展開には感動もひとしおでした。

プレイヤーを非日常から日常へと導く。また、ゲーム世界から現実世界にいるプレイヤーにメッセージを届ける。出番は限られているものの、サヨリは要所要所で橋渡し役を任されたキャラクターだったという印象です。

もちろんDDLCのメインヒロインはモニカです。しかしサヨリもまた、単にシナリオの流れを変えるスイッチとして機能するだけではなく、ヒロインとしての確かな存在感を発揮してDDLCの幕を引いてくれたのではないかと思います。

欠点・難点を魅力に繋げるDDLCのキャラ描写

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ドキドキ文芸部!

今回記事を書いていて、DDLCはキャラ描写が巧いなーとあらためて思いました。特に欠点の見せ方が巧みです。

キャラクターを描き出すとき、欠点は当然ながら取り扱いが難しい部分です。完璧であることがアイデンティティーになる場合などを除き、欠点や脆さ、失敗、未熟なところが描かれないキャラは、読み手の心をガッチリと掴むには至らないことが多い気がします。悪い一面、良いとは言えない一面を見せることから逃げてしまうと、嫌われない代わりに熱烈に好かれもしなくなるというか。

しかし、欠点や弱みは描写の仕方によってはキャラのイメージを大きく損ないます。短所を描写すれば、当然そのキャラが読み手に批判・嫌悪される可能性も増します。

上記を踏まえてDDLCを眺めると、まず登場人物の悪いところや弱いところを真っ向から書いている点が好印象でした。かつ、マイナス面を描くときに保険をかけている点が巧妙だと思います。

たとえばユリは、2周目の改変DDLCではなかなかに弾けた言動を見せます。「主人公のペンで自慰をした」などの発言はその極みでしょう(察してはいたものの明言されたことに心底驚きました)。

ただ、ユリの暴走はモニカの干渉に負う部分が大きいことが示唆されています。実際1周目のユリは、時折怪しい言動は見えるものの基本的には落ち着いていて、普通に主人公と仲を深めてくれます。

つまり、2周目のヤバイ言動を一定通常状態とは切り離して考えられる形になっているわけです。「状況と場合によってはああなる」という風に、狂気モードをあくまで一つの未来・可能性として捉えることができるので、キャライメージが過剰に悪くなりにくいのがミソだと言えます。

また、ユリにしてもナツキにしても、仲良くなると向こうから弱みを打ち明けたり成長の姿勢を示したりしてくれます。たとえ欠点や難点が描かれたとしても、主人公と付き合うことでそれらが軟化・改善していく兆しが見えるので、むしろよりキャラへの愛着が湧くんですよね。

「あばたもえくぼ」と思わせる見せ方が上手いというか、短所をキャラの魅力になる形で書いている点が見事でした。

あと、それほど仲良くない場合に、キャラクターの欠点が主人公の目を通して指摘される点も巧みだと思います。DDLCの主人公はけっこう率直なので、親しくない場合は(「嫌いじゃないけど」と前置きをして)わりあい的確な人物評価をするんですよね(一方、幼なじみのサヨリに対してはかなりのバイアスがかかる)。

プレイヤーの分身である主人公がキャラの気になるところに言及してくれるので、あまりフラストレーションが溜まらない仕組みになっているような気がします。

まとめると、「さじ加減が絶妙」に尽きます。やっぱりDDLCはギャルゲーとしても素晴らしい作品だと思います。

*****

「サヨリ、ユリ、ナツキ、モニカの宿題の詩」について、感想・考察記事をアップしました。

・関連記事:サヨリ・ナツキ・ユリ・モニカの「宿題の詩」 考察&感想 ※ネタバレ注意

DDLCの感想・考察・攻略記事を他にも書いています。

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かーめるん
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