『冠を持つ神の手』 ローニカ 感想&攻略 その7
異世界ファンタジー育成系ADV、『冠を持つ神の手』(かもかて)に登場するキャラクター、「ローニカ」の感想&考察&攻略記事です。制作サークルは小麦畑様。
全イベントとエンドを見た上での感想なので、ネタバレしかありません。未見の方はご注意ください。考察みたいなものも書いていますが、あくまで個人的な考えです。主観まみれです。
◆ローニカ・ベル=ハラド
52歳の男性。主人公に仕える老侍従。物語冒頭で主人公の住む辺境の村を訪れる。
冷静で礼儀正しく、常に穏やかな人物。実は熟練した武芸者であり、その経歴には謎も多い。右も左も分からない主人公に対し、侍従として親身になって接する。
冠を持つ神の手
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ローニカについて
「ローニカ・ベル=ハラド」は、主人公付の老侍従です。担当パラは「礼節」。リリアノの命を受けて辺境の村を訪れた彼は、主人公の額の選定印を本物と認め、主人公を首都フィアカントの王城へと連れていきます。
ローニカは主人公が最初に出会う攻略対象キャラであり、ゲームのチュートリアルを担当するキャラでもあります。主人公付の侍従頭ということもあって、主人公にとって最も身近な人物であると言えるでしょう。
攻略対象キャラの中で最年長であるローニカは、なんと御年52歳です。14歳の主人公とは実に38歳差。モゼーラの感想記事でも少し触れましたが、グラドネーラの寿命は現代日本のそれより短いので、52歳のローニカはすでに老境に差し掛かっていると言えます。
ローニカは常に礼儀正しい態度で主人公に接し、何くれとなく世話を焼いてくれます。好友好愛は共に高いです。主人公が彼の孫と言ってもいい年齢であること、同じ平民出身であることが大きな理由でしょう。しかし、主人公を平穏な田舎から連れ出してしまったことへの負い目も、ローニカの態度にそれなりに影響を与えているようです。
ところでこのローニカ、実は謎の多い人物です。まず、侍従になる以前のローニカの経歴ははっきりとしません。当人がサニャに語ったところによると、ローニカが侍従として部屋付になる(特定の個人の側仕えをする)のは今回が初めてだそうです。
主人公に仕える前は王城で、もっと言うと6年前まではヨアマキス(リリアノの元夫の出身家、一応リリアノの本家でもある)の傍系であるトリプラト家で働いていた……と説明するローニカ。しかしヴァイルは、「自分(ヴァイル)が生まれるずっと前からローニカは城にいるのではないか」と怪しんでいるようです。
次に、主人公を「迎えに行く」役目がローニカ1人に与えられたことも、彼が一介の侍従として振舞っていることを思うと不自然ではあります。
2人目の寵愛者である主人公は、政治的な意味で国を割りかねない存在でした(実際とあるキャラのルートでは、主人公の存在を理由に「内戦エンド」に突入することもあります)。
ゆえに、国王リリアノはどの勢力よりも迅速に主人公の身柄を押さえ、「柔軟な対応」を取る必要がありました。しかし彼女は王城から動けない身です。だから主人公のもとに向かう人間は、誰よりも的確にリリアノの意を汲んで「適切な対応」をとることが可能な人間、つまり腹心の部下でなければならなかったはずです。
その結果、家臣でも役人でもなく、ローニカがたった1人で主人公のもとにやってきた。「侍従として振る舞うローニカ」および「ローニカとリリアノの関係」について、疑問を抱かざるを得ない事実です。
そして、主人公に護衛がついていないことも、城の人間からすれば理解しがたい状況のようです。主人公の守りは非常に手薄に見えます。「寵愛者」、「ヴァイルのライバル」、「四代と同じ平民出身者」など暗殺を誘発する理由は数多いのに、護衛らしき人物は皆無です。
この件に関して、タナッセとグレオニーがそれぞれに意見を述べるイベントがあります。彼らの意見を受けて、「リリアノはけして主人公を軽んじているわけではない」とローニカは語ります。しかし、実際に主人公の側仕えはローニカとサニャのみです。ローニカの発言の真意はどこにあるのでしょうか。
ローニカに対する様々な疑問は、結局たった1つの問いに帰結します。すなわち、「ローニカは何者なのか?」という問いです。
ローニカの正体は、代々王城に仕え暗殺や諜報、護衛等の仕事に携わってきた人間たちの長です。現王リリアノとは即位以前からの付き合いであり、ローニカは彼女に絶対の忠誠を誓っています。
リリアノと出会う前に彼が仕えていた人物。即位前のリリアノと出会った経緯。リリアノの臣下となった理由。ローニカが抱えるそれらの過去は、どれもかもかてにおける重大な秘密ばかりです。
王城における主人公の存在感が増すならば、おのずとローニカの裏の顔を垣間見る機会は訪れることでしょう。しかし、もう一歩踏み込んで彼のことを知りたいと思うのなら、ローニカの秘められた過去を知らなければなりません。
鍵を握るのは、ローニカにとって忘れがたい今は亡き人物です。リリアノとモゼーラの感想記事でも触れましたが、その人物とは、四代国王ネセレです。
ローニカはかつてネセレに忠誠を誓い、その思想に強く共鳴していました。同時に個人としても、ネセレに深い友情の念を抱いていたようです。しかし彼は、ある理由からネセレを裏切り、リリアノ側に寝返ったのです。彼の裏切りはそのまま、リリアノの命を狙った刃が今度はネセレに向けられることを意味しました。
ネセレのことを言い当てれば、ローニカは生前の彼について詳しいところを話してくれることでしょう。ただし、ネセレの死の真相を聞き出すには、ローニカの高い好友が必要となります。
このゲームの登場人物は、皆それぞれに人間臭いところを多く持ち合わせていると思います。ただ、私が一番強くそう感じたのは、なぜかローニカを攻略しているときでした。
「そもそもローニカってどういう人物だろう」と考えるたびに、私はいつも【礼法の意味】で彼が話したことを思い出します。このイベントの中で、彼は「人はなべて獣性を持ち、礼儀作法を以てその獣性を覆い隠している。だから自分は礼法を学ぶのが好きなのだ」と語ります。
この【礼法の意味】はローニカの正体や過去とは特に関係のない、序盤の方に通り過ぎるはずのイベントです。しかしこのイベントにおけるローニカの意見は、彼のありようをそのまま示しているような気がします。
ローニカはめったに穏やかな態度を崩しませんが、その立場や生い立ち上、尋常でないことを何度も体験してきた人間です。礼儀正しい表の顔の裏に、どれほどの凄惨な記憶やドロドロとした感情が存在しているのか。そのことを考えると少し怖くなりますが、同時に先ほど述べた人間臭さを感じます。
自分で思っている以上に、ローニカは人間らしい感情を様々に抱えています。過去への未練であったり、長年の片思いであったり。
しかし、その過去が明らかになるにつれ、ローニカは「道具」としての自分を強調するようになります。本当はそれなりに激情家であり、降り積もって割り切れない複雑な思いを抱えているのに、ローニカ自身はそれを無いもののように扱って表面上は冷静です。むしろ大事な場面ほど自分の気持ちを隠し通し、礼儀正しい侍従や非情な仕事人の仮面を被ろうとします。
ローニカは建前の多い人です。そういう頑ななところがかえって、私の目には人間臭く映るのかもしれません。
愛情
ローニカ愛情エンドは、トッズに二股をかけつつ攻略する愛情Aと、それ以外の愛情Bの2通りです。
愛情攻略で好まれる主人公は、村が好きで城に馴染めないながらも頑張る子です。一言で言えば、「可愛い孫」。礼節が低い状態でローニカに教えを請うたり、命を失うことや力を持つことを恐れたり、村での幸せな思い出を語ったり、比護欲をくすぐる系を目指しましょう。
ローニカは表向きよくできた人物です。しかし家族に縁のない生い立ちゆえに、真っ当な愛に馴染みが薄く、「自分には人間的に欠けたものがある」と考えている節があります。自分は道具であればいいという意識が強いのです。そのため、ローニカ自身に無邪気に懐き、彼の身を案じたり道具として彼を使うのは嫌だと言ったりすると、目に見えて好愛が上がります。
また、ローニカにとってリリアノは絶対的な人物です。彼女を意識すると好愛が上がりやすい場面があるかもしれません。
最後に、リリアノと同じく彼も年長者です。思慕が強くなっても、こちらが本気にならない限りは向こうから露骨に好意を寄せてくることはありません。つまり、好意が高まると、好愛の上限が印愛の数値に依存するようになります。したがって印愛はどんどん振りましょう。
攻略の流れですが、印愛20以上で【城下への用事】を起こし、「一緒に行きたい」と訴えるのがオススメです。ローニカの好愛が20以上の場合、中日にお忍びデートイベントが発生し、好愛が更に上がります。
どちらかと言えば愛情Aの方が特殊なので、まずは愛情Bについて説明します。愛情Bエンドを迎えるには、ローニカの裏の顔を必ず知る必要があります。好愛が十分であれば、あとは名声値を稼ぎさえすれば難しくない条件です。
難しいのはむしろ、【最後の日】の対応です。ローニカを焚きつけるのはいいとして、ほどほどで身を引き、「傍にいてほしい」と望みましょう。
次に愛情Aエンドですが、「ローニカかトッズか」という二者択一の【最後の日】で、ローニカを選べばOKです。
まずはローニカと並行してトッズの好愛も上げ、トッズを救って彼を護衛にしましょう(トッズの愛情攻略法は、トッズの感想記事に詳しく書きました)。両者の好愛を35以上にして【最後の日】を迎え、ローニカを訪問すれば、【想い人の正体】が発生します。
ローニカ愛情Bでは、ローニカが若干ヤンデレっぽいことを言い出したので初見は驚きました。ヤンデレというよりは殺伐と言った方が正しいのかもしれません。いきなりいちゃつかれても反応に困るので、本音を言うと安心しました。
愛し合うには年を取りすぎているし、手を汚しすぎてしまった人なんだろうと思います。人間らしい感情も愛も本当には知らないと自分に言い聞かせているし、今更そんなものに関心を持つべきではないと思い込んでいるというか。業が深いです。本当はけっこう人間臭い人なのに。
ローニカの正体と目的を知っても「愛している」と言い、ローニカの非情さを目の当たりにしても「傍にいてほしい」と言える主人公って客観的に見てすごいと思います。すごいというかヤバイ。愛情を通り越して依存の域に片足を突っ込んでいる気がします。ローニカもそれはさすがに放っておけないでしょうし、主人公の一途さの勝利といったところでしょうか。
そしてローニカ愛情Aですが、トッズがひたすらにいい仕事をした印象です。バレバレだったとはいえ、ローニカの想い人がリリアノであることが明言されたエンドでした。トッズに指摘されるだけでなく、ローニカ自身も「好きでした」と言うからびっくりしました。22年越しのほろ苦い恋だったのでしょう。
このエンドは愛情Bよりは健全というか、ラブコメチックな雰囲気がありました。「三番目の最期の主」と明言してくれたことは素直に嬉しかったです。
(ローニカの好愛が上がる性格の)主人公とリリアノってけっこう雰囲気が違うなと思っていたので、ローニカ自身が両者の違いに言及しつつ、主人公に好意を示してくれてよかったです。正直主人公とリリアノさまではアドバンテージが違い過ぎて、主人公に勝ち目がありません。
愛情Aはどちらかというと、ローニカとリリアノの別れの空気が印象に残るエンドでした。2人らしくさっぱりとしていて、しかしプレイヤーとしてはしんみりしてしまう別れ方というか。「新しい時代が始まる」感が漂う、寂しくも爽やかな余韻の残る終わり方だったと思います。
憎悪
ローニカ憎悪エンドは、【裏切りの誘い】からの1通りです。「たぶんこのゲーム一番の難易度」と制作者様はコメントされています。
ローニカもリリアノと同じく、正攻法で憎んでも憎悪を返してくることはありません。ローニカは基本的に、自分に向けられる悪感情に対する反応が薄いキャラです。主人公には一定憎まれても仕方がないと思っているせいでもあるかもしれません。では、どうすればローニカの憎しみをかき立てられるのでしょうか。
ローニカ憎悪攻略のヒントは、「彼の過去」にあります。主君兼友人であったネセレを裏切りリリアノに寝返ったことを、ローニカは未だに悔いて引きずり続けています。
そのウィークポイントを利用しましょう。つまり、もう一度ローニカに過去の苦悩を味わわせればいいのです。具体的にはリリアノを憎み、自分の側へ寝返るようにとローニカに裏切りを強要します。
仕える者としての誇り、リリアノへの敬愛、過去の後悔、そして主人公への友情と信頼……それらを完膚なきまでに踏みにじる主人公に対し、ローニカは憎悪をつのらせてくれることでしょう。
3つの"お断りポイント"を回避する
ローニカ憎悪攻略のポイントとなるのは、以下の3点です。
- 黒の月第五週に発生する【裏切りの誘い】
- 黒の月第六週に【おことわり】を発生させない
- 【最後の日】
上記3つのポイントで「そんなことはできません」と断ろうとするローニカを説得するorかわすことができれば、無事に憎悪エンドを迎えられます。ただし、この3つの「お断りポイント」を回避する方法を見出すのは相当難しいと思われます。
大前提として、「好愛は20~30程度必要」&「好友が好憎を上回ってはいけない」の2つは意識しておきましょう。特に後者の条件から、好友を最大にしてはいけません。
①【裏切の誘い】でNOと言わせない
第1のお断りポイントは、【裏切の誘い】です。このイベントは、ローニカの印友とリリアノの印憎を高め、ローニカの好友を上げて【闇に生きるもの】で彼の正体を知れば発生します。見るだけなら簡単なイベントです。しかし本当に見るだけでは、ローニカにさっさと断られてしまいます。
ここでのお断りを防ぐために、ネセレ落命の真相、つまり「ネセレを裏切りその命を奪ったのはローニカである」という事実を突きつけなければなりません。事前に【消えゆく彼の】を起こし、ローニカから決定的な告白を引き出しておきましょう。
今なお引きずり続けている過去の裏切りを持ち出されたローニカは、一旦返事を保留し話を打ち切ります。
②【おことわり】を未然に防ぐ
次に、【おことわり】を出さない方法について書きます。
【裏切りの誘い】後のローニカの好愛が-34以上である、つまり最終日の憎悪エンド条件を満たさない場合に【おことわり】が発生します。このイベントが発生した時点で憎悪攻略は失敗です。
【おことわり】の発生を回避するには、【裏切りの誘い】までにローニカの好愛をある程度高めておく必要があります。というのも【裏切りの誘い】において、ローニカは主人公への愛情を憎悪に転じた上で、更に憎悪の念に駆られるからです。
要するに、反転システムを使った上でさらに好愛をマイナスしてきます。だから事前にある程度好愛を高めておかないと、好愛-35という最終日の条件を満たせず、【おことわり】が発生するわけです。詳細な数値の話は控えますが、事故を避けたいなら好愛20~30が無難なラインかと思います。
③【最後の日】に寝返らせる
最後に、第3のお断りポイントである【最後の日】をクリアし、ローニカを主人公の側に寝返らせましょう。
【裏切りの誘い】クリアの前提条件としてローニカの高い好友が必要なので、憎悪攻略ではローニカの好友を高めてしまいがちです。しかし、これが最大の罠です。
もしも「好愛+好友が0以上」、つまり「主人公は憎いがそれ以上に友情を感じている」場合、ローニカはけして首を縦に振ってはくれません。たとえ「好愛が-50で最低」であっても、「好友が50で最大」ならば、ローニカは裏切りの誘いを蹴ってきます。
そのため、礼節の数値は100を超えないようにし、好友は30を超えたあたりで留めておくことを意識しましょう。この最後の関門を抜ければ、憎悪攻略は無事に成功。ローニカはリリアノを裏切り、憎くてたまらない主人公に仕えてくれます。
最高難易度と言われるだけあり、攻略の糸口を見つけるのが難しいエンドでした。スケジュールがカツカツなだけなら他にもっと難しいエンドはあります。しかしローニカ憎悪の場合、何をすればエンディングを迎えられるのかそもそも分からなかったんですよね。
ローニカルートはそれなりにやり込んだので、【裏切りの誘い】をクリアするのに苦労はしませんでした。【おことわり】も発生させずに通過。しかし鬼門は【最後の日】で、なかなか首を縦に振ってくれないローニカにかなり苦戦したことを覚えています。
最初はローニカの好愛を下げて好友を上げなければならないのかと思い、久々に「ネセレ」プレイをしました。しかし失敗。続いて今度は一心同体レベルに好感度を高めましたが、こちらも失敗。どうすればいいんだろうと途方に暮れ、適当に好感度を調整していったうちの1回で偶然成功しました。慣れていたのが裏目に出たのか、好友を高め過ぎていたのが良くなかったらしいです。
一度主君を裏切ったことに起因する苦悩を散々聞いておきながら、過去の過ちをネタにローニカに更なる裏切りを強要するエンドなんですよね、これ。主人公がローニカを憎んでいるならまだしも、ひたすらローニカに傍にいてほしい一心で動いているのだとしたら、あまりに残酷で鳥肌が立ちます。
「かしこまりました」から続く、ローニカの冷え冷えとした言葉を追うだけでうわーと思いました。「きっと今この瞬間、ローニカは心にトドメを刺されたんだな」、と。ボスの裏切りを知ったブチャラティの心境です、完全に(他作品ネタすみません)。
ローニカは、主人公のことを信頼してくれていたんだろうと思います。だからこそ、わざわざ最大のウィークポイントである「裏切り」を繰り返させようとする主人公の行いに絶望したのでしょう。
ネセレが好きだった、大切な友人だったとローニカは何度も話しています。晩年のネセレは焦りから疑心暗鬼を生じ、取り返しのつかない領域に足を踏み入れていました。ローニカにしてみれば、もう戻れないところにいる友人をせめて自分の手で……という思いだったのではないでしょうか。その決意をするにしても並々ならない覚悟が必要だっただろうし、手を下してから22年経った今も、ローニカはネセレのことを引きずり続けています。
ローニカは道具としてではなく、人として苦悩した末に友人のネセレを討ったはずです。そして、ネセレへの忠誠を捨てたことが仕える者としての誇りに背く行為だったからこそ、ローニカは二度と裏切りなどするまいと固く決めていたのでしょう。
ところがこのエンドのローニカは、「人としての気持ち」と「仕える者としての矜持」の両方をきれいさっぱり捨ててしまいました。もはや彼は本当に道具でしかないのです。
これって主人公は後々しっぺ返しを食らいそうだなと思いましたが、エンドロールの後日談を見るにそうはならなかったようです。ローニカは「寿命が尽きるまで主人公に仕えた」とあります。
このローニカ憎悪エンドを経たとすれば、のちにリリアノに刺客を差し向けた黒幕はおそらく主人公だと思います。そして、その刺客がローニカだったのかどうかはあまり考えたくない事柄です。しかし、愛情エンドや愛情派生殺害エンドでのローニカの発言を見るに、その可能性はけして低くはないような気がします。
友情
ローニカ友情エンドは3通りです。ローニカが城に残る場合、「最終結果:王」のときは友情A、「最終結果:王以外」は友情Bです。また、ローニカをリリアノについていかせると友情Cになります。
友情攻略では、(ローニカが唯一友情を感じていた人物である)ネセレに似た振舞いを意識しましょう。具体的には、自分が平民出身であることを忘れず、貴族への反感を示します。
また、「仕える者」、あるいは「仕事人」としてのローニカを信頼して親しく接すると好友が上がりやすいです。
その他、人の命に関わる会話では、ローニカが微妙な反応を返す選択肢を選ぶのがいいと思います。今は亡きネセレを思い返しているらしい反応を引き出せた場合、たいてい好友が上がっています。
愛情エンドとは違い、友情エンドではローニカの正体を知らなくてもエンドを迎えられます。【光と陰と】を見ているか否かでやや内容が変わるのは、「主人公が少なからず国政に関わる立場を目指しているか否か」の違いでしょうか。前者の場合、それは国を変えようとしたネセレの姿とローニカの中で被ります。
かもかての冒頭で主人公の前に現れるローニカ。彼は主人公の生殺与奪に関する大きな裁量権を与えられて辺境の村にやってきました。本来、継承の儀を1年後に控えたこの時期に2人目が現れるはずはありません。リリアノもローニカもそう信じていたからこそ、十中八九偽者であろう主人公を始末するつもりでいたのです。
ところがアネキウスも粋な悪戯をするもので、主人公は嘘偽りない本物の寵愛者でした。ネセレとリリアノの二代に仕えたローニカが、額に輝く選定印を見誤るはずもありません。主人公が本物だと知ったローニカはすぐさまリリアノに鳥文を飛ばし、自分を主人公の侍従につけるように願ったそうです。
ローニカが主人公の側仕えに志願したのは、愛情ルートでの告白通り、第一に主人公を見張り不穏な動きがあれば始末する為だったのでしょう。しかし、それはある意味建前であって、「ネセレの再来を誰より傍で見届けたい、見届けねば」という気持ちが強かったためではないでしょうか。リリアノもそれをわかっていたから、ローニカの願いを聞き入れ、侍従となることを許可したのだと思います。
ローニカは、平民出身の主人公にネセレの面影を殊更に見出しています。グラドネーラには輪廻転生の思想があるので、主人公をネセレの魂の生まれ変わりだと捉えていたのでしょう。そうでなくても、貴族の王から貴族の王へと王位が受け継がれようとしているときに現れた主人公を、ローニカはネセレと結び付けずにはいられなかったはずです。
ネセレとよく似た主人公は、ローニカにとって、友情と期待とかつての夢を呼び起こす存在でもあり、同時に恐れを抱かせる存在でもあったのだと思います。大切な友人が道を誤るのを見ていることしかできない苦悩、そしてその友人を失う体験を、再び味わわなければならないのではないか、と。
もちろん、ローニカがリリアノについていく友情Cも、それはそれでいい結末だと思います。リリアノはもともと退位後に暗殺者に命をくれてやるつもりでした。護衛のローニカは反対もしたのでしょうが、過去の事情を知っているぶん強く逆らうことはできなかったようです。
ところが、ネセレを思い起こさせる主人公の出現により、「リリアノは生きるべきだ」という気持ちがローニカの中で高まりました。かつて次代の王リリアノに出会ったときの衝撃を思い出した、ということなのでしょうか。そのため、友情Cではリリアノは命を落としません。
ただしリリアノの言う通り、それはローニカにとっての「逃げ」でもあります。ローニカは主人公をネセレと同一視し、再び起こるかもしれない辛い出来事から逃げようとしました。しかし主人公はネセレではないし、ローニカやリリアノもまた22年前の彼らと同じではないのです。
プレイヤーとしては、「ローニカには主人公を支えてあげてほしい」と思ってしまいました。主人公がネセレになるのではないかという恐れを打ち破り、悔いが残らないように次代の主人公を傍で見ていてほしい。そして主人公もまたローニカを必要とし、彼の夢と期待を背負って立ってほしい……と。そうすることでようやく、ローニカの最後の心残りは解決するのだろうと思うので。
王位を継承しないローニカ友情Bでは、「生きる意味を与えてくれてありがとう」と言われて涙腺が緩みました。
ローニカ友情Aの方でも時代が移ろい巡ることの不思議を年長者として語ってくれるので感慨深かったです。モゼーラルートと同じく、「しっかりとした王にならなければ」と背筋が伸びるエンドでした。
裏切
ローニカ裏切エンドは、【最後の裏切】からの1通りです。
リリアノと似た諦めの漂う反応ですが、より申し訳ない気持ちになりました。直後に主人公を庇って命を落としてしまうとあっては尚更です。
ちなみに、主人公を狙った下手人は例の魔術師です。誰に雇われてきたのかは知りませんが、個人的にその魔術師への腹立たしさが更につのる結末でした。ノリの軽さがまたアレです。本当にろくでもないなとつい真顔になってしまいます。
さすがのローニカも不意を打たれた状態で、しかも主人公を守りながら魔術師に対抗するのは難しかったのでしょうか。悲しみに心が鈍っていたのかもしれません。それでも死力を振り絞って主人公を守り抜いたローニカの愛情に胸を打たれました。
ところで、他のキャラの【最後の裏切】は「……よろしかったのですか、レハト様」というローニカの質問で締められることがほとんど*です。
今も確認のために立て続けにイベントを確認してかなりのダメージを負いましたが、このローニカのこの台詞を見ると、どうにも笑いが込み上げて心が和らぎました。天丼に弱いです。眉をひそめつつ律儀にこの定型句を言ってくれるローニカは、【最後の裏切】における不思議な慰めだと思います。
*「よろしかったのですか、レハト様」パターンの例外は、ルージョンとトッズです。ルージョンはそもそも【最後の裏切】が存在しません。トッズについてはローニカも当事者なので、まったくもってよろしくないのでしょう。
殺害
該当するエンディングは1通りです。好友か好愛が高ければ、ローニカはさっくりと受け入れてくれます。反転システムを利用してもこっそりと裏で憎悪をつのらせても、どちらでもOKです。
「主人公はローニカの一番にはなれない」という事実をまざまざと見せつけられるエンドでした。ローニカは友情をネセレに、愛情をリリアノにとっくの昔に捧げてしまっているんですよね。長生きしているキャラなので、たかだか1年でそれまでの時間の積み重ねを覆せるはずはありません。
ただ、プレイヤーとして「やるせなさ」を感じないわけではなかったです。この独特のやるせなさは、ローニカルートならではの感覚だと思います。
「愛情派生か友情派生か」によってこのエンドにおけるローニカの反応はかなり違います。実行を断念した場合に聞ける話も異なります。普段は絶対に話してくれないだろう過去の話や思いを聞かせてくれるので、かなり情報量の多いエンドだと思いました。
愛情派生エンドでは、主人公のモノローグがはっきりと提示されることが印象的でした。こんなにもエモーショナルなレハトは珍しいです。愛情は憎悪に変わった、彼の一番にはなれないからってなんというヤンデレ。
とはいえ、ローニカも主人公と同じように、想い人の命を奪ってしまおうと思ったことがあったようです。ザ・似た者同士。
このエンドの主人公はローニカの想い人の正体に気づいてしまったのでしょうか。ローニカは相当にわかりやすいから、察するのは簡単だったのかもしれません。リリアノさまについて嬉しそうに語るローニカを見るにつけ、プレイヤーとしても不思議とジェラってしまったので、主人公の気持ちはよくわかりました。思いが決して報われないというのはつらいことです。
この愛情派生では、この手で刺したローニカから「ありがとう」と言われます。嬉しく有り難いこと、あなたに会えて良かったとも言われます。主人公が堪らずその場を離れたのも納得の悲しい結末でした。
そして、友情派生エンドは、かもかての中でも群を抜いて業深いエンドだと思いました。
以前リリアノの感想記事で軽く触れましたが、四代ネセレの治世において、1人の寵愛者が生まれています。リリアノが生まれる数年ほど前のことです。この赤子は貴族の子であり、王城に引き取られた少し後になぜか亡くなりました。
ネセレの実子であるモゼーラも疑っていたことですが、ネセレはこの赤子の命を故意に奪ったようです。プレイヤーとしてそこに驚きはしませんでした。しかしこの友情派生で、ネセレは自ら赤子を手にかけたらしいとローニカに暗に告げられたときはさすがに動揺しました。
当時のローニカはまだネセレの配下になく、「自分がいたならネセレにそんな真似はさせなかった」と述懐しています。ネセレが戻れない道を進み始めたのはそのとき(おそらく、人の命を奪う感触を自分の手に覚えさせたとき)からだった、とも。
そして、このローニカの告白を引き出した時点で、図らずしも主人公はネセレと同じく自らの手を汚してしまっているのです。歴史は繰り返すというべきか、少しぞっとしました。カルマが重い。「主人公ならそれでも違う道を行けるはず」とローニカは言ってくれます。しかしエピローグを見る限り、とてもそうは思えないのがつらいところです。
ちなみに、刺すのを断念すると、ローニカはネセレが「ある人物」を憎むあまりに道を誤ったことを話してくれます。「ある人物」というのはおそらく、ネセレの養父であった三代ファジルなのでしょう。
ローニカは主人公によって命を絶たれるこの幕引きを喜んでいた節があります。そういう態度にまたやり切れない気持ちになりました。「主人公に思いを遂げさせてあげるなんて優しいな」と最初こそ思っていましたが、よくよく考えるとそうじゃないんだろうな、と(主人公の罪を隠蔽するのは紛れもない情けだと思いますが)。
ローニカは、ほとんどのエンドで城仕えを辞して故郷に帰ってしまいます。亡くなりはしないことに最初はほっとしていました。しかし、主君であるリリアノに捨て置かれた時点で、ローニカは過去への未練を引きずりつつリリアノの訃報を待つしかないんですよね。
仕える者、道具としての自分にプライドを持ち、リリアノにことさら思い入れのあるローニカにとって、それはもはや命を失ったも同然の状態なのではないかと思います。「在り続ける意味を失ったときに人は山へと旅立つ(=この世を去る)」と彼が話していたのを踏まえると尚更です。それを思えば、上記の2つのエンディングはそう悪い結末ではないのかもしれないとも感じます。
ところで、このエンドにはリリアノが登場します。彼女はローニカの命を奪った者の正体を察した上で、「主人公はやはりヴァイルよりも王に向いた存在だったのだろう」と言います。
これは、「前の王は次の王に食い尽くされるべき」という彼女の思想に基づいた発言なのかなと思いました。リリアノにとってのローニカは、ネセレ暗殺の過去を共有する相手でもあり、長年付き合ってきた腹心の部下です。ローニカへの攻撃は、そのまま彼女への攻撃になる。それくらいには親しい間柄の2人だと思います。
あるいは、単に誰かの命を奪うことを指して「王に向いている」と言っているのかもしれません。手を汚すことで道を切り開く、ネセレもリリアノもそうやって王として生きてきたわけですから。ただし、主人公もいずれはリリアノやローニカのように、かつて汚した手のせいで負の感情にとらわれることになるのでしょう。
「我ら」と自分とローニカをひとくくりにしたり、「この世を去ったらローニカに言伝をする」と言ったり、リリアノのローニカに対する信頼と哀悼が強く伝わってくるエンドでもありました。
「ネセレ」プレイについて
主人公の名前はゲーム冒頭で自由に決定可能です。しかし、攻略対象キャラの名前を名乗ることはできません。また、神の名である「アネキウス」を名乗るのもアウトです。ローニカに呆れられます。
では先代国王の名前、つまり「ネセレ」を名乗るといったいどうなるのでしょうか。
結論を言うと、名乗ること自体は可能です。ただし、ネセレに深い思い入れを持つ者たちの好感度が大きく変化します。具体的には、ローニカ、リリアノ、モゼーラの好感度が変動します。
ローニカとリリアノは好友アップかつ好愛ダウン、モゼーラは好感度全体がアップします。知っておくと何かしら攻略に役立つこともあるかもしれません。
「ネセレ」プレイをすると、【あの日の面影】【馳せる思いは】【どうしてこの城に】といった四代ネセレ絡みのイベントが若干むずがゆい感じになります。同名の違う人物の名前が連呼されるのは居心地が悪いものですね。お前は「ネセレ」ではない、お前はネセレだ……というリリアノの言葉は哲学チックで好きですが。
とはいえ、近い時代の偉人と同じ名前をそのまま名乗るのってどうなんだろうと思わなくもないです。リタントでは名前が完全一致するのは大問題*らしく、名前をかけた決闘が起きることもあるそうです。故人であれば名前を頂戴してもかまわないのでしょうか。貴族たちがあからさまに戦々恐々としただろうことを思うと、「ネセレ」プレイは痛快ではありますが。
*ただし、尊敬する人物や近縁者の名前の一部を貰って子供に名づけるのはアリらしいです。たとえば二代国王の「ノイラント」は明らかに初代国王のルラントにあやかった名前でしょうし、NPC間の話をすれば、ユリリエは義理の伯母であるリリアノから名前の一部を貰っています。
※後でグラドネーラ事典を確認しました。過去の人物と名前が同じだった場合、その人の生まれ変わりとして扱われることがあるようです。また、「偉人の名を貰うとその名に滅ぼされる」と言い伝えられているので、偉人の名を付ける例は少ないそうです。
そうなると、主人公をネセレと名付けるのは色々な意味で挑戦的であり業深いですね。ネセレプレイでローニカやリリアノの殺害エンドに行き着いた場合、主人公がその名に滅ぼされたと言えなくもない気がします。神視点のプレイヤーだからこそできるお楽しみ、ということになるのでしょうか。
イルアノについて
リリアノの弟であり、ヴァイルの父親であった、ランテ家の前当主。それが「イルアノ」です。彼は7年前に魔の棲む場所である海へ船出し、それ以降消息を絶ちました。
名前自体は何度か出てくるものの、イルアノはネセレと同程度か、ひょっとするとそれ以上に謎に包まれた人物です。その生い立ちや出奔した理由を知る者たちにとっては、イルアノの話を他人と共有したいとはとても思えないのでしょう。
謎に包まれたイルアノのエピソードは、一人息子のヴァイルと兄リリアノ、そしてローニカのとあるイベントにおいて明かされます。この項目では、それらのイベントからイルアノに関する情報を拾ってみました。外伝小説ではなく、あくまでゲーム内情報に沿って書いています。※参考:【いつかあの海へ】【約束の最後】【ランテの血】【弟の想い出】【かつての面影】【ただ一度の過ち】
イルアノはリリアノの1つ年下の弟です。2人の兄弟は、ランテ領の海辺の屋敷で双子のように「似せられて」育ちました。
これは、イルアノがリリアノの影武者として育てられていたからです。イルアノの額には偽の選定印が描かれました。そもそも「イルアノ」という名も成人の際にようやく与えられたもので、それまでの彼は「もう一人のリリアノ」でしかありませんでした。
幼いイルアノは、ただ寵愛者である兄のために存在していたようです。その方針を定めたのは、リリアノとイルアノの祖父であり当時のランテ家の当主であったファジルなのでしょう。
そんなファジルが亡くなり、リリアノが即位した後、イルアノは成人してランテ家の当主となります(リリアノがクレッセとの婚姻を契機にランテの継承権を放棄したため)。イルアノが妻に迎えたのは、ランテ領の隣に所領を持っていた貴族の娘でした。2人はひっそりと暮らしていくことを望んでいたようです。
ところが第一子のヴァイルが寵愛者であったため、イルアノとその妻は次代の王父王母として表舞台に引っ張り出され、王城での生活を余儀なくされます。特にヴァイルの母にとって王城での暮らしはストレスになったようです。第二子を身ごもった彼女は、せめてランテ領での静養をと願い出て、いったん屋敷へ戻りました。
しかし、ここで悲劇が起こります。ヴァイルの母は屋敷の裏手から海に落ち、お腹の子もろとも命を落としてしまったのです。彼女の遺体はついに発見されませんでした。12年前、ヴァイルが2歳の頃の出来事です。
そして、妻とまだ見ぬ我が子が世を去ってから5年後、つまり今から7年前に、イルアノは7歳のヴァイルを残して海へ行ってしまいました。後にヴァイルが彼に贈った飾り帯が海辺に流れ着いたそうで、7年経った現在、その生存は絶望視されています。
イルアノの出奔について、関係者はそれぞれに罪悪感と自責の念を抱えています。たとえば息子のヴァイルは、寵愛者である自分のせいで父は不幸になり、自分が寵愛者であったから父についていくことが許されなかったと認識しているようです。
リリアノによれば、イルアノは息子のヴァイルに祖父ファジルの面影を見出していました(輪廻転生思想の影響か)。幼い息子への愛を曇らせるほどに、イルアノにとってのファジルは恐れの対象でした。
幼いヴァイルも父の複雑な感情を察していたのか、父と目を合わせても自分のことを見てくれてはいないような、そういった違和感を覚えることがあったようです。
ところで、ヴァイルはイルアノが隻眼であったことを教えてくれます。過去の事故のせいでそうなったらしい、と。
実はこの「過去の事故」こそが、イルアノとローニカの唯一最大の接点です。22年前、リリアノの命を狙ってランテの屋敷に赴いたローニカは、誤って影武者であるイルアノを失明させてしまったのです。
ローニカはこれを【ただ一度の過ち】として引きずり続けました。イルアノを傷つけてしまったこと自体に対してではなく、無関係の人間を害した道具としてあるまじき失敗を悔いる気持ちがあったからだ……と本人は言います。
イルアノは生い立ちに見合わず優しく穏やかな人物で、自分を傷つけたローニカにもわだかまりなく接しました。しかし彼は、幼い我が子を残して突然海へと行ってしまったのです。自分が彼の光を奪い破滅に追いやった、ローニカはそう思わずにはいられなかったようです。
誰がイルアノを殺したと思うか。イルアノのことを尋ねると、リリアノはそんな問いを投げかけてきます。
イルアノ本人、ヴァイル、ローニカ……選択肢は様々にありますが、リリアノ自身は、自分がイルアノを破滅させたと思っているようです。イルアノから様々なものを奪い続け、果ては命までも奪ってしまった、と。
ランテの屋敷に閉じこもって育ったリリアノにとって、弟のイルアノは唯一の友達であり、平穏で楽しい幼少期の思い出を共有する相手でした。しかし、イルアノにとってのリリアノは必ずしもそうではなかったのです。
海に行く直前、イルアノはずっとリリアノを憎んでいたと告白したそうです。リリアノは弟の告白に納得しました。しかし理屈ではない感情として、ショックを受けずにはいられなかったと思います。イルアノの苦しみが「選定印」というリリアノにはどうしようもないものに端を発しているだけに、やるせない思いは尽きなかったことでしょう。
イルアノは、息子であるヴァイルに自分の闇を刷り込みたくないとも言っていたそうです。その闇をイルアノに背負わせたのは自分だと感じたからこそ、リリアノは海に惹かれる弟を引き止めることができませんでした。
誰が善い悪いという話は簡単にできるものではありません。しかし大元を辿れば、結局はファジルがアレだったのではと私は思います。後代まで続く歪みを引き起こしまくりのファジルさん、王としては抜群に優れていても、家庭人としては微妙です。自分に対する厳しさを他人にも向けた彼のせいで、ネセレやイルアノは悲劇の渦中に放り込まれた気がします。まあそれも結果論でしかないわけですが。
イルアノは「ランテの悲劇の象徴」であり、作中における「どうしようもないこと」の象徴でもあるんだろうと個人的には思います。
嫉妬・夢イベント/ヴァイル憎悪監禁エンド
ヴァイル嫉妬のローニカの大人げなさには笑いました。表面上はにこにこと真っ当な言動を貫いているのが尚更面白い。タナッセやトッズには当たりがきつく、リリアノ相手にはすっと身を引いて悲しいことを言うのも彼らしいです。やっぱりローニカさんは人間臭い。
ただ、それ以外の人達には嫉妬している感じはありません。相手の立場を主人公に確認しつつ、忠告したり背中を押したりする流ればかりでした。同じ仕える者のよしみからか、サニャやグレオニーには優しい対応だった気がします。モゼーラに関しては、主人公との関係を喜ばしく思っている様子ですらありました。さすがは年長者。
とはいえローニカの場合、それは余裕というより諦めなのだろうと思います。年齢のこともありますが、基本的に愛に馴染みのない人だからでしょうか。
夢イベントについて。まず、【愛しき夢】は、ローニカと一緒に気まずい気分になりました。慌てる姿は新鮮でしたが。
【親しき夢】は、ローニカのものが一番好きかもしれません。本当に親しげに話しかけてくれるんですよね。友情エンド後のローニカはこういう風に打ち解けてくれるのかな~と少し思いました。子供の頃は木登りが大得意だった、と自慢げに話してくれるのが微笑ましかったです。
ヴァイル憎悪監禁エンドと愛情エンドを並行しました。新王によって部屋付を外されたものの、その後も城で姿を確認されることがあったらしいです。
ヴァイルはもともとローニカを怪しんでいたので、納得のいく処遇ではあります。老い先短いとはいえ気の毒でならないですが、傍に居続けるという約束を守ってくれたことは嬉しかったです。
ローニカもリリアノ並に感想をまとめるのに手こずりました。やはり長く王に仕えて生きているだけあって、他の人との繋がりが多いキャラなんですよね。主人公の侍従という立場上出番が多く、同僚のサニャや、本来の仕事の関係からトッズ&グレオニーとの絡みも存在する。リリアノとの関係は言わずもがな、タナッセやヴァイル、そしてモゼーラとも意外な接点があったりします。
初見プレイ時は、ヴァイルの次にローニカに挑みました(友情狙い)。そしてヴァイルの時と同じく玉砕したことを覚えています。好意的だがガードが固いというのが当初のローニカの印象でした。
個人的には、過去を紐解きながら進められるのがローニカ攻略の醍醐味だと思います。たとえばネセレの名を言い当てる場面などは、本当にドキドキしながら文字を追いました。
記事を書いていて改めて思いましたが、ローニカはファンタジーな部分と人間臭い部分のギャップが激しいです。そして後者に触れると、少なくない心理的抵抗感を覚えます。
これはおそらく、プレイヤーとしての自分がローニカに親しみを持っているせいだと思います。なんだかんだ言ってこのゲームで一番接する機会が多いのはローニカです。ローニカの愛情攻略に若干の抵抗を感じるのは、家族が恋愛する姿はなんとなく見たくないという感覚に近いものがあると思います。生々しいんです、他キャラ以上に。年齢的な問題もあるのかもしれませんが。
とはいえ、ローニカのことは大好きです。物事のとらえ方や複雑な心理状態など、テンプレっぽい悟りきった年長者キャラではないのがとてもいい。生い立ちや生業からくるドライさと、過去を引きずるウェットなところが絶妙なバランスで成立しているキャラクターだと思います。
個人的には、タナッセやクレッセについて愚痴を零さずにはいられないところが好きでした。トッズに青筋立てているところも。ヘイヘイローニカ怒ってるぅ~と茶化したくなります。けっこう大人げないところがあるキャラだと思うので、そういう一面を見られるのはとても楽しいです。
その8は、ローニカと同じく主人公の侍従であるサニャについての感想記事です。
次回:『冠を持つ神の手』 サニャ 感想 攻略 その8
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