「神の代理人」か「魔術師の同胞」か? ルージョンイベント「建国王の仕掛け」に見る初代ルラントの正体 【冠を持つ神の手/かもかて考察】
『冠を持つ神の手』(かもかて)のルージョンルートにおけるイベント、【建国王の仕掛け】を手がかりに、初代国王ルラントの正体を考察する記事です。制作サークルは小麦畑様。文章および画像によるネタバレを含むのでご注意ください。
冠を持つ神の手
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※元の記事:『冠を持つ神の手』 ルージョン 感想 攻略 その11
「【建国王の仕掛け】から考察する初代ルラントの正体」は、以前ルージョンの感想記事の中で取り上げたトピックです。独立性が高くボリュームがあることから、切り離して一記事とし再掲させていただきます。内容自体に大きな変更はないですが、細部の情報(例:ルラントの片腕セッカナについて)を追加・更新しています。
【建国王の仕掛け】の概要
冠を持つ神の手
太陽神アネキウスを信仰するグラドネーラ世界の人々にとって、魔術師は神に仇なす忌むべき存在です。攻略対象キャラの1人である魔術師ルージョンは、その身分と過去ゆえに神という存在を憎み、神の代理人たる寵愛者にも疑惑の眼差しを向けています。
【建国王の仕掛け】は、そんなルージョンと一緒に王城の宝器庫を探検する楽しいイベントです。最初にことわっておくと、以下の内容には妄想と憶測が多分に含まれています。
同イベントの要旨を簡潔にまとめると、「建国王ルラントはどうもクサい」です。イベント内では以下のような事実が判明します。
・宝器庫の内扉は、印の流れ(=魔力)に反応して封印が解かれる仕組みになっている。
・宝器庫に保管されている多くの品物は、魔力を持つ者が扱うことで効力を発揮するマジックアイテムである。
設備自体から中の宝物に至るまで、宝器庫は魔術のびっくり箱です。つまり、仕掛け人の建国王ルラントは魔術師の協力を得ていた可能性が極めて高いと言えます。
しかし、国王や神殿の人間は、宝器庫とその中の宝物が魔術と深い縁を持っていることにまったく気づいていません。ルージョンはそのことを指摘した上で、さらに以下の事実に引っかかりを覚えています。
・宝器庫の内扉は魔術師にも開けられる。
→ルラントはなぜ魔力頼りの不確かな防犯システムを改善しなかったのか?
・宝器庫の品物は魔術師にも扱える。
→ルラントはどうしてそんな危ういものを王の象徴として大事に保管したのか?
先ほども書いた通り、現代に至るまで魔術師は異端者として忌避されています。それにもかかわらず、ルラントが導入した魔法の仕掛けは今に至るまで王の象徴の一つとして機能し続けています。ゆえに、「当時ルラントは一体何を考えていた?」、「というかそもそもルラントってどんな人だったの?」ということが大きな問題となるわけです。
初代国王ルラントは何者だったのか
建国王ルラントは何者だったのか。これがまた悩ましい問題で、ひとしきり考え込んでしまいました。ルラント関連はかもかてで一、二を争う答えの見つかりにくいトピックではないかと思います。まさに「昔のことだ、憶測にしかならない」からです、ルージョンの言う通り。
とりあえず、ルラントについてわかっていることを簡単におさらいしてみます。
- リタント王国の初代国王。
- 突然歴史に登場し、反乱軍を率いて国を興し、子を成さずにある日忽然と消えた。
- 性別・容姿・血筋・性格・思想などのプロフィールはほぼ不明。
- 確定的なのは、額に選定印があり、魔の草原に近い南方の集落の出身であったこと。
- あまりに偉大かつ謎なので「アネキウスの化身だったのでは」とまことしやかに囁かれている。
上にざっとまとめてみましたが、この明らかな情報の少なさについては誰しも不思議に思うのではないでしょうか。
ルラントが生きていたのはせいぜい120年ほど昔のことです。偉大な建国王のひととなりを伝える書物、あるいは肖像画の1つや2つあってもおかしくはないはずです(グラドネーラ人の寿命は現実世界と違って短く、120年前というと6~5世代ほど遡ることになるとはいえ)。というか「仮にも王様が『忽然と消える』なんて可能なのだろうか」と疑問にも思いました。
ミステリアスなルラントの正体についてルージョンはある考えを持っているようで、イベント中様々なヒントを語ってくれます。しかし、核心的なことはまったく語ってくれません。これが非常にやきもきするポイントで、「出し惜しみしないで教えてくれルージョン!」と何度思ったか知れません。
「つまりどういうことだってばよ?」と某忍者ばりに言いたくなる気持ちを抑え、ルージョンの示唆を簡単にまとめると以下のようになります。
- 不意に現れ不意に消えたルラントの正体を知る者はいない
- 実は同じものと言えなくもないのに、なぜ寵愛者は敬われ魔術師は排斥されるのか
- ルラント自身は魔術師をどのように評価していたのか(現在の状況と宝器庫の中身が釣り合わない不思議)
- ルラントは宝器庫の品物がマジックアイテムだと知っていたのか否か
- 知っていたなら、どうして姿を消す前に始末しなかったのか(「便利さに負けたのか、始末する時間がなかったのか。それとも、もしかすると……」byルージョン)
けっこう恣意的なまとめ方だと自分でも思います。というのも、まとめている途中にある考えが思い浮かんだからです。それは、「ルラントって親魔術師派だったか、あるいは自身が魔術師だったのかも?」というものです。
ルラントは魔術師(の関係者)だった?
ここから、「ルラント=魔術師(の関係者)説」について、順を追って考えてみます。以下は個人的に作成した大陸グラドネーラの簡易な地図です(公式サイトに掲載されている地図を参考にさせていただきました)。
ルラントの出身地と魔法王国テラーソー
まず数少ない重要な情報として、ルラントは「魔の草原に近い集落の出身」であったと伝えられています。ここで、公式サイトに掲載されている、「魔の草原」(上の画像では中央下の緑色の部分)に関する説明を引用させていただきます。
聖山山脈を越えた先に広がる、呪われた土地。魔物が跳梁跋扈し、足を踏み入れた者は生きて帰らないとされる。
グラドネーラ事典[自然](下線は引用者)
かつて、その向こうには魔法使いの治める魔法王国テラーソーが存在していたが、神の怒りによって滅ぼされた。その時の魔法王が死ぬ間際に呼び出した魔物が棲みついたのだと伝えられており、アネキウスの加護のために、魔物たちは草原から北へは出てこれないともされている。
ポイントは、草原の向こうにあったとされる“最後の魔法王国”テラーソーです。神に滅ぼされたこのテラーソーについては、「実は三足族の国だったのではないか」という疑いがもたれています。三足族がダリューラ時代に差別されていた理由の一つでもあるようです。
もともとダリューラ時代に三足族は魔の草原の近くに追いやられていたので、ルラントの出自自体にとりたてて不審な点はありません。が、引っかかると言えば引っかかります。
≪人を喰う法≫と選定印、急逝したセッカナの謎
次に、おなじみ「選定印」について考えます。
【神の業、人の業】でのドゥナット曰く、選定印は「魔術師が編んだもの」です。これを真としたとき、ルラントの額に輝いていた印もまた「魔術師が編んだもの」ということになります。ルラントが仕掛けたらしい宝器庫の封印解除システムは、現代においても問題なく作動するからです(つまり、現代の選定印とルラントの選定印は同質のものだと言える)。
言い伝えによれば、ルラントは選定印を「神から」授かりました。その印は三足族を奮い立たせ団結させる旗印として大いに機能したそうです。となると、ルラントは程度の差こそあれ自ら望んで「神(=魔術師)」に選定印を編んでもらった(あるいは自分で編んだ)のではないかと思います。よって、そこにルラントと魔術師の密接なつながりを見出すことは可能です。
ところで、ルラントに選定印を刻んだ人物を仮に「同時代の魔術師」だとすると、気になることが1つあります。それは、≪人を食う法≫と選定印の出現との関連性です。
≪人を食う法≫は魔術の技法であり、対象の人間(魔術の素養を持つ者が望ましい)の“力”をそっくり奪って自らの力とする業のことです。
【神の業、人の業】での描写より、この技法を用いることで選定印を他の人間に編み直せる可能性があります。ただし、同じく神業イベントやルージョンルートを見るに、≪人を食う法≫によって完全に力を奪われた者は死に至ります。
実は、ルラントには「セッカナ」という片腕的人物がいたそうです。しかしおそらく戦とは関係のない理由で、セッカナは突然亡くなってしまったらしいのです(【読書の楽しみ・英雄伝】)。
ここから、セッカナの急逝と≪人を食う法≫を結びつけるとしっくりと来ました。つまりセッカナが食われ、ルラントが食ったのではないか、と。パッと思い浮かんだのは、以下の3つのストーリーです。
- ルラントがセッカナの力を(おそらくその同意の下に)奪って自身の額に選定印を刻んだ
- セッカナが自分の命と引き換えにルラントの額に選定印を刻んだ
- 第三者が仲立ちしてセッカナの力を奪いルラントの額に選定印を刻んだ
①はかつての老魔女タイプ、②はルージョンタイプ、③はタナッセ&ドゥナットタイプですね。食われる者は相応の魔力を持つ方が望ましいことや、「突然現れたルラントの片腕と称されていた=旗揚げ前から付き合いがあった?=同郷(魔の草原近くの集落出身)?」という連想から、「セッカナ自身も魔術師かその類だったのではないか」と個人的には思っています。
ただ、選定印を編む業について、ドゥナットが「古い魔術師」によるものと発言していることはやや気にかかります。アネキウス歴7403年を数えるあの世界において120年前は「古い」に当たるのか。また、ダリューラ時代以前にすでに魔術師は滅びた(と考えられていた)ので、ルラントの時代に魔術の技術レベルが高かったとは言い難い気もします。
とはいえ、たとえばルラント一派は上に書いた魔法王国テラーソーの末裔で、選定印の技法自体はテラーソー時代に編みだされたもの……など、多少強引にでも理屈はつけられるかなーとは思います。
※追記:ルラントの片腕であったセッカナの来歴
『かもかてクイズ』(かもかてカルトクイズゲーム)をプレイ中に、「ルラントの片腕だったと言われるセッカナは、元は神殿衛士だった」という記述を見つけました。
「神殿が不遇の三足族を囲い込んでいた」という話題を踏まえると、セッカナが神殿に属する人間だったのは納得の行く話です。片腕と称されるセッカナが元神殿衛士だったからこそ、ルラントによる古神殿包囲は成功したのかもしれません(もしかするとセッカナこそが、ルラントとのちの大神官長メネデラードを結ぶ人物だったのかも)。
セッカナが神殿衛士だったとしても、上記の「ルラント&セッカナ同郷人説」には支障ないかなーと思います。ただ、セッカナ魔術師説はちょっと危うい気もします(もっとも、魔術師としての訓練を受けていなくても素養が十分という可能性はある)。あと、「元は神殿衛士だった」という言い回しの「元は」がどのタイミングを指すのか気になるところです。
魔術の所産である宝器庫から推察するルラントの意図
さらに注目したいのは、先述した宝器庫の仕組みとそこに保管されているマジックアイテムです。
ルラントは宝器庫を守るギミックに魔術の産物である選定印を組み込み、宝器庫内部にマジックアイテムを多数保管しました。儀式で用いる王の権威を左右する宝器の管理に魔術師を深く関与させたわけです。仮に宝器の便利さに惹かれたせいだとしても、相当魔術師に信を置いていないとできない決断ではないでしょうか。
そもそもルージョンも言う通り、ルラントが宝器庫の仕掛けに着手したのは、おそらく分裂戦役に一段落ついた建国後のことだと思われます。火急の時期なら忌まれるべき魔術師とも組むでしょうが、国の礎を築く段階に移行した後も魔術師の力を必要としたのはなぜなのでしょうか。
あるいは、戦争中に急場しのぎで宝器庫を作らせたのだとしても、どうして国内が落ち着いて以後も魔術システムを排除しようとしなかったのでしょうか。
ルージョンは、「魔術師は戦争に体よく利用され、終わった後に使い捨てられたのだろう」と言います。建国の英雄ルラントが魔術師を正当に評価しなかったからこそ、今に至るまで魔術師の扱いは変わっていないのだ、と。しかしルージョン本人も違和感を覚えているように、それは宝器庫に施されている仕掛けと食い違う推測です。
ルラント自身はおそらく魔術師を正しく評価していたし、その後も国家の運営に魔術師を登用していこうと考えていたのではないでしょうか。ひょっとすると、自ら魔術を用いて宝器庫システムを作り上げた可能性さえあるかもしれません。
なぜルラントは「見えない王様」になったのか
冠を持つ神の手
しかしながら、いくら「初代ルラントは魔術師に好意的だったのではないか」と推測してみても、現代において魔術師の扱いが好転していないのは事実です。
ここで、「建国王であるルラントのプロフィールがことごとく抹消され、後代に伝わっていない」事実を今一度見つめ直す必要があると思います。
私の推測は、「魔術師との強い繋がり、あるいは自身が魔術師であることが露見したため、ルラントは秘密裏に、かつ完全に抹殺されたのではないか」というものです。以下、その(妄想強めな)推測に基づいた話です。
魔術師一派は神の敵なので、国のトップにしておくわけにはいきません。しかし大っぴらに裁くには、ルラントの業績は偉大過ぎたのではないでしょうか。
リタントの建国経緯とその正統性は、建国王ルラントその人(とその選定印)と切っても切れない関係にあります。「神の代理人」として国を興した人物が、実は「神に仇なす魔術師(の関係者)」だった……と明らかになれば、建国直後のリタントは計り知れない打撃を被ることになったはずです。
ルラントを国王にしておくわけにはいかない。しかし、彼の正体を暴き立てるわけにもいかない。赦されない罪人に裁きを与えつつ、その偉業自体には泥を塗らず……という難しい要請に応えた結果、ルラントはごく秘密裏にその命を奪われ、死の事実すら伏せられて伝説化されるに至ったのではないでしょうか。そして、宝器庫を始めとするルラントの遺産は、彼の急死によりそのままの形で残されることになったのではないでしょうか。
その場合、どの陣営が手を下したのかについては、安易ですが神殿勢力かなーと思います。教義上その動機はどの陣営よりも強く、窮迫性も高いはずです。
神殿の強みはなんといっても、その「権威」と「上下の統率」、そして「特別自治権」です。計画実行時においてもその後の長期的なフォローにおいても、うまく立ち回れるポテンシャルを秘めているのではないかと思います。
たとえば、リタントの各村々に神官(=村人の教化・指導に従事)を置いているので、ルラントのプロフィールを消しつつ「見えない王様」に仕立て上げていく作業を効率的に行えそうです。あと、大神官長メネデラードがやっぱり名前からして怪しい(偏見)。
ルラント排斥に際しては、他の大貴族も一定関与したのではないかと思います。ルラントのプロフィールを一切消すのは上記の神殿の草の根運動だけでは無理で、神殿を含めた国の上層の人間たちが結託しないと難しいはずです。
ただしその場合でも、「選定印=魔術の所産」という事実を握っているのは神殿だけだろうと思います(そうでないと二代ノイラントと三代ファジルの政争の経緯に矛盾が生まれる)。
今なお神殿が選定印を神の徴と見なしていることについては、「大事な秘密が大神官長にしか伝えられていないから~」でクリアできる気がします。当代の大神官長キアノーは選定印にさほど執着を見せず、妙に意味深な発言をしているので。そもそも、選定印もまたルラントと同等に神格化されていたために、完全に葬り去ったり覆したりすることはできなかったのではないでしょうか。
※追記:大神官長メネデラードに対する「疑惑」
わりと真面目にメネデラードは気になる人物です。そもそもゲーム中に名前の出る建国期の大物がルラント、セッカナ、メネデラード(+ランテなどのちの大貴族、ただし家名のみ)くらいなので、当時の具体的な関係図を推し量るにも限界があります。とはいえ、ルラントとセッカナとメネデラードは少なくとも反乱早期から親交があったのではないかと個人的には思います。
ポイントはやはり、「古神殿包囲」事件です。ティントアの感想記事でも触れましたが、リリアノは反乱早期に発生したこの事件を独立戦争勝利の重要な要因として挙げています。内部の三足族の手引きによって宗教的権威である古神殿を掌握し得たからこそ、ルラントたちの反乱は耳目を集め、一気にその勢力を増したのだ、と。
そして、ルラントの片腕だった元神殿衛士セッカナ、および戦後に大神官長となったメネデラードが、その反乱のターニングポイントとも言える局面に関わっていないはずはないと思います(その場合、先ほども書いた通りルラントとメネデラードを仲介したのがセッカナなのでは?と妄想してしまいます。たとえばセッカナとルラントは昔からの知己で、セッカナとメネデラードは同じ神殿に所属する者同士だった、とか)。
だから少なくとも上記3人は反乱初期から付き合いがあったのでは……と思うわけですが、ここできな臭く感じるのは、メネデラード以外の2人の逸話がはっきりと後世に伝わっていないことです。
セッカナは反乱終結を待たずして突然亡くなり(理由は今もって不明)、ルラントは建国という偉業だけを果たして忽然と消えました。一方、メネデラードは戦後に神殿陣営のトップとなり、その名を王城の神殿の壁にしっかりと刻んでいます。
メネデラードがおそらく戦後も活躍し続け、死後は「聖徒」として名を遺している事実を思うと、彼と繋がりがあっただろう他2人の情報がほとんど残されていないことがやや怪しく思えてきます。
ここで言う「怪しい」とは、単に「メネデラード=ルラント抹殺の首謀者説」に限った表現ではないです。ルラントを排除したか否かを脇に置いても、メネデラードがルラントの真実(素性や選定印の正体など)を知り得ていた可能性は高いのではないかと個人的には思います。
もちろん、メネデラードがルラント陣営とどこまで関わりを持っていたのか、またルラントの額に選定印が刻まれたタイミングがいつだったのかはわかりません。以上は推測というより妄想に近い話です。ただ、もしかすると古神殿の奥深くには、ルラントたちの実像を伝える貴重な史料が存在するのではないか……とか想像してしまいます。
選定印を与えたのは神か人か
以上のようにつらつらと書いてきましたが、「最初の選定印を与えたのは神ではなく人」だと仮定すると、「じゃあルラントより後の寵愛者に印を与えたのは誰?」という嫌な問題にぶち当たります。二代ノイラント以降の寵愛者はおそらく先天的に印を持って生まれています。しかし、その印をいちいち魔術師が編んで回ったとは考えにくいですよね。
なんとなく、ルラントとそれより後で選定印の出どころが違うような気はします。たとえばイベント【選定の印】にて、タナッセは「選定印の授受は本来ルラント一代限りの約束だったのではないか」と考えている様子でした。
「ルラントの選定印=魔術師由来の人為的なもの」とするなら、タナッセの推測は当を得ています。選定印は人の業の所産であり、けして自然に得られるものではないわけですから。しかしノイラント以降の選定印はどうもランダムに表れているらしく、そこにはもはや神の手が及んでいるようにしか見えません。
色々と考えていると、「やっぱりルラントはアネキウスってことでいいや、約7400年前のように地上に降臨して不遇な三足族を救って姿を消したんだよ」で片付けてしまいたくなります(その場合、やはり聖山の頂上から天に戻ったのでしょうか)。
とはいえ、「ルラント=魔術師一派説」は、少なくともルージョンの考えとは近いんじゃないかなーと思います。彼女は魔術師と寵愛者の根底の同一性に注目していて、そこから初代ルラントの正体についてもしや……と疑いを持ってしまったらしいので。
これは余談ですが、主人公の魔力を高めていると、リリアノ【宝器庫】で魔法を使って扉を開けることができます。額をつけずに扉の封印を解いた主人公をいぶかしんだ後、リリアノは次のようなことを言います。
ここの扉はそのようにして開く。言うなれば、印を持つ者自体が鍵だ。従い、神の扉とも呼ばれている。
【宝器庫】、冠を持つ神の手(下線は引用者)
リリアノによれば、宝器庫の内扉は「神の扉」とも呼ばれているようです。神の代理人たる寵愛者にしか開けられないことが名前の由来でしょう。しかし実際は額の印に明らかな魔力の素養こそが鍵であり、魔術師にも開けられることは先にも述べた通りです。
ここで思い出したいのが、友情Bにおけるルージョンの話です。もし神がいるとするなら、神と魔術師は同じところから来ている……という印象的な語りですね。
神=魔術師、つまり「神の扉」=「魔術師の扉」。ルージョンはおそらく内扉の別名を知りません。しかし、ルラントに対する「“神の代理人”か“魔術師の同胞”か」という疑問と出来すぎなくらいに符合しているように思えます。
最後に深入りしない方がいいと匂わせるのを見ても、ルージョンがルラント魔術師一派説を念頭に置いている可能性は高いのではないかと感じました。
*****いったいルラントとは何者だったのか。主人公が大神官長にでもならない限りその謎に手が届くことはなさそうです。答えが示されないのはもどかしいものの、あれこれと自由に想像できてすごく楽しかったです。
※関連性の高い記事
・元記事:『冠を持つ神の手』 ルージョン 感想 攻略 その11
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