【クトゥルフTRPG編】 TRPGサークル「BGB」のリプレイ動画はガチで面白い その1
ニコニコ動画を中心に活動するTRPGサークル・「BGB」が制作したリプレイ動画の紹介&レビュー記事です。感想も含みます。今回は複数存在するシリーズのうち、クトゥルフTRPGのリプレイ動画4本に絞って書かせていただきました。
・同サークル様の投稿用アカウント:[二人組を作る](ニコニコ動画)
・広報用アカウント:BGB広報用アカウント(ツイッター)

Photo by Jorge Franganillo on Unsplash
2019年7月6日に、BGB様(以下敬称略)の新作リプレイ動画、「【クトゥルフTRPG】血が導く悲願 その1」(ニコニコ動画)が投稿されました。「『竜殺しの英雄譚』以来の新作シリーズだーやったー!」と超テンションが上がりました。即マイリスしました。
現在その2まで投稿されていますが、もうすでにめっちゃ面白いです。「タンタンの冒険」シリーズも好きなので、タンタンオマージュの展開やイラストも嬉しい限りです。
というわけで、舞い上がった気分をそのままに、BGB制作のリプレイ動画に関する紹介&レビュー記事を書かせていただきました(感想も含みます)。
前提として、[二人組を作る]様のアカウントで投稿されているリプレイ動画はすべて視聴済です。今回はそのうち、【完結済みのクトゥルフTRPGのリプレイ動画】に焦点を当てて書いていきます。
具体的には、「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」/「風変わりな旅行」/「ラフヘローの結末」/「脳髄倶楽部」の4つのシリーズです。
紹介記事なので、シリーズの根幹設定や核心的な秘密、PC・PLの言動に関する詳細な言及は避けました。つまり、初めて視聴する方の楽しみを削ぐようなネタバレはできるだけ省いたつもりです。
ただし、「シリーズのあらすじ」/「特徴や見どころ」/「イチオシキャラ」などには触れています。よって、シナリオの大づかみな内容やPC(プレイヤーキャラクター)・PL(プレイヤー)情報に関するネタバレが若干含まれています。特に各シリーズのpart1動画については具体的な内容にも言及しているので、未見の方はご注意ください。
本当にまっさらな状態で動画を観たいという方は、今すぐ各リプレイ動画シリーズのpart1を観に行ってください。どれもグレートに面白いです。夏休みにはピッタリの最高の娯楽です。それでは以下、BGBの概要を説明させていただいた後、投稿順に上記4つの動画シリーズについて書いていきます。
TRPGサークル・「BGB」の概要
「BGB」は、ニコニコ動画を中心にリプレイ動画を投稿しているTRPGサークルです。最初の作品は、2012年4月から投稿が開始された「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」シリーズ(完結済)。そこから2019年の現在まで、コンスタントに様々なTRPGのリプレイ動画を制作・発表し続けています。
BGBのリプレイ動画のうち、「シリーズ」として登録されている8つのシリーズを古い順に並べると、以下のようになります(カッコ内は題材であるゲームシステム)。
- 「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」(クトゥルフTRPG)
- 「風変わりな旅行」(クトゥルフTRPG)
- 「ラフヘローの結末」(クトゥルフTRPG)
- 「レッツゴー!!関西探偵団」(レレレ/It Came From The Late, Late, Late Show)
- 「脳髄倶楽部」(クトゥルフTRPG)
- 「父を探して」(ウォーハンマーRPG)
- 「竜殺しの英雄譚」(フィアスコ)
- 「血が導く悲願」(クトゥルフTRPG、現行シリーズ)
上記の通り、クトゥルフ神話を題材にした「クトゥルフTRPG」のリプレイ動画シリーズが5つと最も多いです。現在投稿中の「血が導く悲願」を除いた4つのうち、3つのシリーズは、そのpart1動画がミリオン再生数を獲得しています(処女作の『本当にあった~』はダブルミリオンを達成)。
また、BGBはクトゥルフTRPG以外のゲームのリプレイ動画も精力的に投稿しています。上記のシリーズ作品の中では、レレレの「レッツゴー!!関西探偵団」、ウォーハンマーRPGの「父を探して」、フィアスコの「竜殺しの英雄譚」の3つが該当します(この3つについては、また別に記事を書かせていただこうと思います)。
ちなみに、BGBのシリーズ動画はサムネイルが統一されています。基本的には、「GMを務めるゆっくり○○(霊夢や魔理沙など)の顔」と「濃い青色のメッセージウィンドウ」が目印です(たまに老婆マルコだったりテディだったりがサムネになったりもする)。
例外は「竜殺しの英雄譚」であり、システム上唯一のGMが存在しないので、青いメッセージウィンドウと各キャラの立ち絵が共通のサムネイルとなっています。
個人的な話ですが、マイページを見る前にざっとランキングを眺めて、青いメッセージウィンドウが目に入ると「あっBGBの動画来てる!」とめっちゃテンションが上がります。一目で認識しやすいことも含め、あのサムネの統一感はすごく好きです。
BGBのリプレイ動画の特徴・魅力
BGBによるリプレイ動画の魅力の1つは、シナリオやキャラの立ち絵などをサークル内で自作していることです。使用楽曲もオリジナルのものが多く、シリーズ完結後に音楽集として視聴動画がアップされます(個人的には風変わりな旅行、関西探偵団、脳髄倶楽部のエンディング曲が大好きです)。
一視聴者としては、面白いシナリオはもちろんのこと、シリーズごとに異なる立ち絵やBGMにワクワクさせられます。たとえば初期の3作品は画風が共通していましたが、レレレシリーズからガラッと絵柄が変わり、以降はシリーズの雰囲気に応じたタッチ・テイストのキャラ絵が使用されています。一枚絵やドットアニメーションが用意されることもあり、その職人技にはもうスゴイの一言です。
あと、見やすい&聞き取りやすい動画編集も好きです(好きな動画は作業用BGM代わりにリピすることが多いので、特に後者はありがたいポイント)。演出や構成も凝っていて、いつ視聴しても丁寧なつくりだなーと思います。「ラフヘローの結末」のエンドクレジット演出や、同シリーズの初日終了演出などが特に印象に残ってます。
また、BGB動画の大きな魅力と言えば、なんといってもノリの良いPL同士が織りなす軽妙で楽しいやりとりです。端的に言うとめっちゃ面白いんですよね。エンタメの波動をひしひしと感じます。単に会話が面白いだけでなく、とっさのフォロー力、他PLやGMとの協調、PCとPLの切り分けといったプレイングも見事の一言です。
BGBメンバーのかけ合いの魅力が詰まっていると個人的に思うのは、たとえば「脳髄倶楽部」の中華料理店パートでしょうか(同シリーズその3)。ノリの良さ、息の合った連携、そして中毒性のあるユーモラスなやりとり。何度も観ても笑えるので、飽きずに見返してしまいます。
BGBはPCの中の人を推し出す方針をとっていません(「このキャラのPLは前のシリーズではあのキャラのPLでした」とシリーズ完結後に明かされるのみ)。それでも完結前から、「このキャラのPLはきっと○○の人だ」といったコメントが飛び交うのが常です。それはきっと、それぞれのプレイヤーの個性や能力がPCを通じて十二分に発揮されているからだろうと個人的には思います。
本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG
あらすじ:1920年代、ドイツ。赤ワインを名産とするその村には、古くから当地を支配する領主の城があった。卒業旅行中に村を訪れた狂信者とその教師たち、アメリカのサイレント・ヒル出身のスポークスマン、失踪した同僚の足跡を追ってイギリスからやってきた刑事、商い中にふらりと村にやってきた古美術商……領主の城に宿泊することになった破天荒なPC7人と、彼らに翻弄されるGMを待ち受ける恐怖とは。

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「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」シリーズの動画数は計8本(ラストの1本は楽曲集)。2012年にBGBが初めて投稿したリプレイ動画シリーズです。現在動画その1の再生数はダブルミリオンを超え、その2~その4もミリオンを達成しています。
GMはゆっくり霊夢、PLは7人。シリーズの別名は「跳躍卓」。クトゥルフTRPGにおける【跳躍】技能の有用性を示した点でも非常に有名な、同サークルの代表作です。
このシリーズに関しては、「とりあえず最後まで観よう」と書くほかないです。めっちゃ面白いです。最初から面白い、途中も面白い、ラストの超展開に唖然としつつも面白い、そして解説動画で抱腹絶倒すること請け合いです。
円熟した面白さのある「脳髄倶楽部」シリーズと比べると、「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」はハチャメチャなPCたちが身内でぶつかり合って暴れ倒し、粗削りながらもクリティカルヒットな笑いを要所要所で巻き起こすシリーズです。PL全員がクトゥルフTRPG初心者(※TRPG経験自体はあり)だったことが、このぶっとんだシリーズの方向性を決定づけたのでしょう。
気まぐれかつフリーダムにロールプレイするPLたちに大笑いするのも一興、PLたちの言動にガリガリとSAN値を削られていく気の毒なGMを見守るのもまた一興。個人的には、GM肝いりのシナリオ設定とPCたちの掟破りな行動が明後日の方向で噛み合った結果生み出された、奇跡のミラクルエンディングが当シリーズの一番の見どころだと思います。
「本当にあった~」には、以降のシリーズでも語り草にされるPCが数多く登場しています。目が死んでいる狂信者マルコ・E、南極出身の狂信者ワケシ、某ホラーゲーの医者によく似た女医ミヤタ、バケツをかぶった宣教師ジャン、マジメに探索者やってる刑事のジェイス、バケツその2の古美術商フルゥトクなど。
跳躍卓での私のイチオシキャラは、アメリカはサイレント・ヒルからやってきた横柄なスポークスマンこと「エリック・プリズナー」です。エリックはGMのゆっくり霊夢をして「この人凄い失礼」と思わしめ、狂信者ズの爆笑を誘うキャラですが、その一貫した無礼千万で愛国者なスタンスが魅力的なPCだと思います。
食事をする時の動作まで表現したり、意外な空き時間の過ごし方をしていたりと、PLの方はある程度カッチリ設定を作ってエリックのロールプレイをしているんだろうなーと感じました。店員やメイドのオススメを事もなげにはねつけ、ビールや紅茶を要求するくだりが特に好きです(あと終盤のテンションの上がり方も面白い)。「キャラらしさ」が追求されていて何度観てもつい笑ってしまいます。
風変わりな旅行
あらすじ:舞台は現代、ノルウェーの街・ティアメゴ。同地ではサブカルチャーが急速に浸透・発展し、毎年街を挙げて「コミックマーケット・イン・ティアメゴ」(略して“コミティア”)が開催されるまでになっていた。コミティアに参加すべくティアメゴ行きの列車に乗ったオタク刑事のノノレ・ウェスカーは、道中で生粋のオタクである日本出身の陰陽師と出会う。はたして異色な2人組の「風変わりな旅行」は、どのような結末を迎えるのか。

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「風変わりな旅行」シリーズの動画数は計7本(ラストの1本は楽曲集)。「本当にあった~」シリーズの完結から約1か月後に投稿が開始され、2012年の年末に完結しました。8つのシリーズものの中ではPLの人数が最も少なく、GMのゆっくり魔理沙とPL2人によるセッションをリプレイ動画化したものです。
ちなみに、BGBのリプレイ動画の中で私が一番好きなシリーズはこの「風変わりな旅行」です(突発的にBGB動画が観たくなったときは、決まって当シリーズから順に視聴しています)。噛めば噛むほど味が出るスルメ的な面白さと、落ち着いて視聴できる安定感のあるシリーズだと思います。
少人数ゆえかセッションは比較的淡々と進行していきます。しかしそれが逆に「風変わりな旅行」シリーズの2つの見どころ、すなわち「シナリオの緻密さと難易度の高さ」および「それに挑むPLの堅実な推理力と個性豊かな言動」を際立たせていると言っても過言ではありません。
「風変わりな旅行」の時系列や設定は、かなり複雑かつよく練られています。個人的に素晴らしいと思ったのは、導入部で使われたコミックマーケット・イン・ティアメゴの裏設定です。あくまで舞台装置だろうと思っていた「コミティア」が、実はシナリオの根幹としっかり関わっていたと知ったときは心底驚き感動しました。考えたGMさんマジでスゴイなと思いました。
ただし、「風変わりな旅行」はその緻密な構成が光る一方で、複数の謎やトラップ(それも殺意の高い)が仕掛けられているシナリオでもあります。
そこそこ余裕をもって考えられる視聴者目線でも、「これ難しいな~普通にプレイしていたらまず間違いなくトラップ踏んじゃうだろうな~」と何度も感じました。場合によってはロストしても何もおかしくない、正規のエンディングにたどり着くのも難しい高難度シナリオなんだろうな、と(これは、シナリオがテストプレイ段階にあったことも関係していると思います)。
しかし、非常に難しいシナリオだからこそ、数々の罠を的確に回避するPLの判断力と推理力の高さが大いに輝くんですよね。「そこに気づくなんてSUGEEEEE!!」と何度となく感動&興奮しました。最後の裏話動画を観ると、かなりの難所をことごとく2人がくぐり抜けたことがよくわかり、「饅さん&ノノレのコンビでないとあのエンディングにはたどり着けなかっただろうな」とひしひしと感じました。
「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」では、GMとPLの言動が誰も予期せぬ形で噛み合って奇跡が起きました。「ラフヘローの結末」は、同じ展開を再現しようとしてもまずできないだろう神がかったシリーズでした。
一方でこの「風変わりな旅行」は、高難度シナリオをPLたちが真っ向から読み解いた硬派なシリーズだと個人的には思います。ラストの正統派な爽やかさもピカイチの、紛れもない名作リプレイ動画です。
「風変わりな旅行」シリーズでの私のイチオシキャラは、なんといってもコミティアの噂を聞きつけて日本から飛んできた陰陽師・饅珍念です。
「生粋のオタクである陰陽師」という破壊力抜群の設定、破滅的なインパクトを与える外見(APP10)、ふざけた徹底した陰陽師ロールプレイ、年長者らしい落ち着き、シナリオに仕掛けられた数々のトラップを的確に回避する高い洞察力……どこをとっても強烈でマーベラスなPCでした。
饅のPLさんは確かこのシリーズにのみ登場した超ベテランの方ですが、以降のシリーズでもPL予想にたびたび名前が挙がるので、そのプレイング自体が強く印象に残っているBGBファンも多いんだろうなと思います。
序盤は饅さんが登場するたびに「!?」が乱舞するのに、次第に「この陰陽師カッコイイ」「惚れる」といったガチの称賛コメが増えていくのが面白くて好きです。
私も最初は「すごいなこのトンデモ陰陽師」と思っていましたが、有事に臨んでの迅速な行動に「カッケー!」と思い、シナリオの謎に対する鋭い推理に「スゲー!」となり、あのラストシーンで完全に「饅さんカッコイイ」「饅さん最高」と思いました。おそるべし陰陽師、むしろ気持ちいい饅珍念。
ラフヘローの結末
あらすじ:1920年代、英国の首都ロンドンでは連続殺人事件が多発していた。不穏な事件の裏で着々と進行する、大都会ロンドンと地方の寒村「ラフヘロー」を結ぶ不可解な地下鉄計画。謎多き因習の村で行われる祭りを前に、PCたちは各々の「秘密」を胸中に秘めてラフヘローへと赴く。

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「ラフヘローの結末」シリーズの動画数は計13本(ラストの2本はOP単体と楽曲集)。2013年の春から秋にかけて投稿された、BGB制作のリプレイ動画の中では最長のシリーズです。一言で表現するなら、BGBだからこそ実現した感のある神懸かり的な傑作セッション&リプレイ動画といった印象です。
「ラフヘローの結末」の大きな特徴は、PCが異なる「秘密」を持ち、各々が秘密裏に目標達成を目指す……という特殊要素がシナリオに組み込まれていることです(「とらぶるエイリアンず」というTRPGからGMのゆっくり霊夢が発案)。
各人の秘密を把握しているのはGMのみであり、PL間では相手がどのような秘密を持っているのかまったくわからない仕様になっています(自らの秘密を開示することは可能)。
リプレイ動画化される際も、この特殊要素への配慮からPCの持つ秘密は巧妙に伏せられました。つまり、視聴者にとってもPCたちの秘密は謎のまま進み、最後まで視聴してようやく答えがわかるという演出・構成が採られています。粋な計らいだと思います。
動画その1に「初見時コメ非表示推奨」といった注意喚起タグが付けられているのは、上記の理由があるからです。私自身このシリーズは最初からコメントを消して視聴し、ラストになってその選択の正しさを痛感しました。
クライマックスの展開を初見で見たとき、あまりに予想外すぎてヤバいくらいに興奮したんですよね。もし序盤にネタバレや、あるいは思わせぶりな匂わせコメントを目にしていたら、あそこまで驚いたり感動したりすることはできなかっただろうなーと振り返って思います。
そういうわけで、この記事を読んで「ラフヘローの結末を観ようかな」と思った方がもしいらっしゃるなら、コメントを非表示にして視聴することをオススメします。コメント解禁は2周目からでも大丈夫です(最後まで観たらたぶんもう1回最初から見返したくなるから)。
また、上記の特殊要素を抜きにしても、「ラフヘローの結末」は単純にクオリティーの高いリプレイ動画シリーズです。最後まで視聴者の興味を捉えてはなさない緊張感と面白さがあると思います。
「ラフヘローの結末」は、BGBの処女作である「本当にあった~」と同じく、偶然に偶然が積み重なって予想だにできないエンディングを導いたシリーズです。
ただ、「本当にあった~」が粗削りな奇跡の一品だとすると、「ラフヘローの結末」はシナリオ・プレイングともにより洗練されていて、GMとPLが各々のポジション・役割を真摯にまっとうした(その結果壮絶な結末がもたらされた)ことがうかがえる作品だと言えます。
TRPGセッションの一期一会性を誠実に、かつとことん突き詰めたシリーズだと思うので、「名作」「神作」といった評価にも個人的には大いに納得してしまいます。
以上より、「ラフヘローの結末」についても「まずは最後まで観てほしい」という説明で締めておきます。コメディチックで楽しいやりとりに溢れている一方、シリアスでもあり「クトゥルフらしさ」たっぷりのシリーズなので、ぜひまっさらな状態でラストまで見届けてほしいです。
「ラフヘローの結末」にも、のちのちまで引き合いに出されるような名PCが多く登場します。私のイチオシPCは探偵のヒンジャックです。地質学者のつゆと刑事のテディも好きです。
個人的に、原典のラヴクラフト作品に見られるような「大いなる存在(と運命)に翻弄される矮小で哀れな人間たち」みたいな描写・展開がわりと好きなんですよね。秘密持ちシナリオなので詳しい言及は控えますが、上に挙げた3人はそういった意味で見どころの多いキャラだと思います。
脳髄倶楽部
あらすじ:舞台は大正時代の日本。古都京都では近ごろ行方不明になる若者が続出し、また「さる京大教授が新元素を発見したらしい」という噂がまことしやかに囁かれていた。消息を絶った教授の行方を追う探偵、新元素発見のスクープを追う少年記者、行方不明事件を取材せよと命じられた書生、そのお守りを任された警官、商品の売れ行きを気にかける古美術商、自由気ままにさすらう浮浪者。彼らが見出す失踪事件と新元素発見の裏にある真相とは。そして、謎多き「脳髄倶楽部」の正体とは。

Photo by Fabrizio Chiagano on Unsplash
「脳髄倶楽部」シリーズの動画数は計10本(ラストの1本は楽曲集)。2014年の夏に「【クトゥルフTRPG】脳髄倶楽部 その1」が投稿され、約半年後の2015年1月に完結しました。PLは総勢6名、GMはゆっくり霊夢です。
「脳髄倶楽部」は、「ラフヘローの結末」以来の新作クトゥルフTRPG動画ということでファンを大いに沸かせたシリーズです(OP考察やPL予想も盛り上がっていました)。part1動画はミリオンを達成し、「ラフヘローの結末」のpart1動画に迫る伸びを見せています。
「脳髄倶楽部」の何よりの魅力、それは、PLたちの息ピッタリでノリのよいかけ合いから生み出される、コミカルで明るく楽しい雰囲気だと思います。導入からして厄介払いの天丼が面白いですが、あの漫才さながらのノリが「脳髄倶楽部」の雰囲気をよく表しているのではないでしょうか。
ぶっ飛んでる系・爆笑系の面白さがある「本当にあった~」と比べると、「脳髄倶楽部」は吉本新喜劇っぽいというか、ずっと笑って観ていられる感じのまろやかで安定した面白さのあるシリーズだと思います。
PLたちがボケやツッコミを交えつつ実にテンポのよいやりとりを展開するので、まるで1つのストーリーを観劇しているような気分になるんですよね。PLのかけ合いの上手さとさじ加減、GM(ゆっくり霊夢)のバランス感覚とコントロールが織りなす妙だと思います。
もちろん他のシリーズと比べて面白さの度合いが低いわけではなく、たとえば中華料理店のシーン周辺はあまりの面白さに終始笑いが止まりませんでした(その後の糺の森のシーンも大好き。下鴨神社は観光スポットとしても超オススメです)。京大いじりとかご当地ネタがチラホラあるのも面白かったです。
ここまで面白さにばかり注目してきましたが、「脳髄倶楽部」はクトゥルフTRPG×大正時代らしい、不気味でミステリアスな雰囲気のあるシナリオです。増える家出人、京大教授の失踪。謎多き面白いシナリオとPLたちの自由気ままな行動が噛み合った結果、いったい何が起こるのか。それもまた「脳髄倶楽部」の見どころの一つだと思います。
「脳髄倶楽部」はPC6人のキャラクターが秀逸だなーと個人的には思います。6人ともキャラが立っていて「大正時代の京都」という舞台に根付いている感があり、個性豊かなのに不思議とまとまりがある印象です。
PLが職業や来歴を大正時代にキッチリ寄せてキャラメイクしていて、かつGMが参考資料などで時代感を巧く演出しているからでしょうか。立ち絵もすごく雰囲気があって素敵なので、あのPCたちで続編やスピンオフが作れそうだなーと思ってしまいます。
「脳髄倶楽部」での私のイチオシPCは、大宮丙太と宇部老膳と実家忠継です。イチオシと言いながら全然絞り切れませんでした。
大宮丙太は「さすがはPC1」と言いたくなるキャラであり、依頼人や調査対象者に対する屁理屈や言い訳巧みな話術、やり手の探偵らしい手段を選ばない大胆な調査手法がカッコいいPCです。また、宇部老膳は「さすがは商人」と拍手したくなるような徹底したロールプレイが魅力的でした。まったくブレない、でもそれがいい。
最後に実家忠継は、まずネーミングセンスに色々と持っていかれました。某裁判ゲー臭がスゴイ。「忠継」自体は何の違和感もない名前なのに、苗字との合わせ技で爆発的な笑いが生まれるのが見事だと思います。初見では面白すぎてしばらく笑い続けました。その他、微妙に不憫な役回りやぼそっと鋭くツッコむスタイルが要所要所でツボに入りました。
*****今回は「本当にあったSAN値が下がるクトゥルフTRPG」、「風変わりな旅行」、「ラフヘローの結末」、「脳髄倶楽部」の4つのシリーズを紹介させていただきました。書いてみたら感想記事っぽくなったような気もします。ともあれずっと書きたかった記事なので、この機にアップできてよかったです。
次回は、クトゥルフTRPG以外のゲームシステムを題材にした、他の3つのシリーズについて書かせていただきたいなと思います。更新したら追記します。
※「クトゥルフ神話」を題材にしたフリーゲームについて、いくつか感想記事を書いています。
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