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モニカは第四の壁を越えようとしたのか? 感想 考察 【ドキドキ文芸部!/DDLC】

2019/12/13
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美少女ギャルゲー×サイコロジカルホラーなノベルゲーム、『Doki Doki Literature Club!』(DDLC/ドキドキ文芸部!)のモニカをフィーチャーした感想&考察記事です。ネタバレを含みます。制作者はTeam Salvato様。作品の公式サイトはこちらです。 → Doki Doki Literature Club!

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ドキドキ文芸部!

『ドキドキ文芸部!』の主要人物4人のうち、文芸部の部長を務めるキャラがモニカ(Monika)です。公式サイトでは自らDDLCとメンバーを紹介し、「ようこそ文芸部へ」とにこやかにプレイヤーを出迎え、端々でストーリーの進行役を担うモニカ。実は彼女は、DDLCというゲームの核心を握るキャラクターでもあります。

この記事では、"Just Monika"をコンセプトにモニカについて色々と考えてみました。DDLC本編のネタバレをガッツリ含むので、未見の方はご注意ください。

DDLC本編でのモニカについて

ドキドキ文芸部! Doki Doki Literature Club DDLC スクショ ようこそ文芸部へ

ドキドキ文芸部!

まず、モニカについて簡単におさらいします。モニカは文芸部の部長を務める女の子です。眉目秀麗、文武両道の人気者。もともとディベート部の部長を務めていましたが、サヨリらとともに新しく文芸部を立ち上げました。

人格的に均整のとれた人物であり、皆のまとめ役として行動し、新入部員である主人公にも親切かつフランクに接します。「誠実な人間」という主人公の評価も的を射たものです。

もっとも、最近「悟り」を開いたとほのめかすモニカは、時おり誘導的で不穏な発言を繰り返します。プレイヤーが「ん?」と思うようなメタ発言をすることもあります。

モニカの存在感が高まるのは、サヨリがDDLCから消えた後のことです。主人公への執着を露わにするユリだけでなく、かなり踏み込んだ発言・演出をもってストーリーラインをかき乱すモニカも、プレイヤーの目には不気味に映るのではないでしょうか。

サヨリに続いてユリが壊れた直後、モニカはさらに大胆な行動に出ます。「部長権限」を行使し、自分以外のキャラのファイルを削除すると、DDLCを主人公(というより画面の向こうにいるプレイヤーその人)と自分だけの愛の巣に作り変えてしまうのです。

実はモニカは、自分がゲーム世界の住人であることを自覚し、主人公を通してプレイヤーに恋するようになった存在でした。サヨリとユリがそれぞれ精神に異常をきたして自害に至ったのも、モニカがスクリプトに干渉して彼女らの狂気を増幅させたせいです。

DDLCをプレイヤーと2人きりの世界に改変したモニカ。しかしストーリーの進行上、モニカはプレイヤーによるキャラクターデータ削除によって消滅します。最期に自身の行いを悔いた彼女は、プレイヤーへの愛を語ってDDLCを復元。部長となったサヨリがゲーム世界を壊そうとしたときは、再び干渉してDDLCを完全に終わらせ、アラートメッセージを通じてプレイヤーに別れを告げます。

いわば『ドキドキ文芸部!』の黒幕でもあり、「彼女抜きにDDLCを語ることはできない」という意味で、真のヒロインと言わざるを得ない存在でもある。それが「モニカ」というキャラクターだと言えます。DDLC公式サイトにおける概要説明が「モニカによる説明」の体をとっているのも、真相を知れば納得の一言でした。

モニカと「普通の女の子」

初めてモニカを見たとき、「抜群に可愛い」と思ったことをよく覚えています(赤毛のポニテ美人とか好きな要素しかない)。それだけに1周目では彼女と親しくなれないのがやや残念でもあり、妙に意味深な言動が気にかかったキャラでした。

DDLCの特色の一つはメタフィクション要素ですが、モニカはその核心を担うキャラだと言えます。自身がゲームのキャラクターだと気づき、主人公を通してプレイヤーに恋し、友人を次々に追い込んではデータを削除し、最終的にはゲーム世界を改変してしまう。なかなかに桁外れでぶっ飛んだ行動です。

しかし注目すべきなのは、DDLCを狂気渦巻く世界に変えてしまったモニカ自身は、けして狂気に陥ってはいないことだと思います。

ドキドキ文芸部! Doki Doki Literature Club DDLC スクショ 3周目モニカ 唯一の普通の女の子

ドキドキ文芸部!

消えてしまった友人たちを引き合いに出しつつ、モニカは自分を「唯一の普通の女の子」と形容します。その行動とはかけ離れた自己認識ですが、プレイヤーとしては不思議と納得してしまった覚えがあります。

たしかにモニカの個性は、二次元の女性キャラにありがちな属性(ツンデレ、ヤンデレ、幼なじみ)を付与されたほか3人に比べると比較的大人しいものです。かつ、本性を表した後であっても「豹変」「発狂」と呼べるような過激な態度はとりません
「他の3人と違って精神的にまとも」と自称するだけあって、精神を病んでいたり異常な嗜好を隠していたり家庭に問題を抱えているわけでもないようです。

モニカについて考えるとき、真っ先に思い浮かぶ形容は「理性的」です。無自覚・衝動的な行動から遠いところにいる人物であり、判断能力は高く、自分を律することもできる。他の3人が大なり小なり見せる精神の揺らぎやムラっ気、感情の高ぶりといったものは、モニカにはほとんど見受けられません。その意味において、たしかにモニカは「唯一の普通の女の子」です。

つまり、ゲーム世界をぶち壊すという一見狂気的な行動に及びつつも、モニカ自身はけして狂気にとらわれてはいない。むしろどこまでも理性的であり、逆に言うと理性を捨て去ることができていない。自分の行動についてどこまでも自覚がある……その結果と原因のギャップこそがモニカという人物(かつ彼女を核とするDDLCというゲーム)の面白さであり、同時に、後述するモニカの哀しさでもあるのではないかと私は思います。

"Just Monika." モニカしかいない文芸部で数時間を過ごして

DDLCの3周目(サヨリ、ユリ、ナツキ退場後)は、延々と話し続けるモニカと対面するだけのフェイズです。初めて3周目をプレイしたときは、(我ながら暇人ですが休日の夜だったこともあり)片手間にPCで作業しながら、3時間弱くらいずっとモニカの話を聴いていた覚えがあります。

ドキドキ文芸部! Doki Doki Literature Club DDLC スクショ 3周目モニカ 人間って複雑

ドキドキ文芸部!

2人きりになるとモニカちゃんはけっこう色々なことを話してくれます。たとえば好きな色、主義や主張、表向きのふるまい、夢見る恋愛シチュエーション、サヨリたちの事情、覚醒後の世界への認識、そして主人公への愛など。コマンドを使用したときに発生する特殊会話もあります。

このジャスト・モニカな会話空間で感じたことは、「やっぱりモニカちゃんは【普通の女の子(=二次元空間にいる生身の人間)】をコンセプトに造形されているキャラっぽいなあ」ということでした。

彼女は頭の良い優等生ですが、基本的に淡白にものを捉えつつ、熱も湿気も少ない生き方をしている人だと思います。
ベジタリアンだけどそれほど人道的な理由から参与しているわけではない、生きるだけで周囲に生じるマイナスを最終的に±0にすることを目指したい、自信があるように見えるのはそう振る舞っているからであって仲良い人にしか弱みは見せられない(でもどれだけ仲良くなったらその弱みを見せていいのかよくわからない)……といった姿勢は特にそれっぽいです。

常識や思いやりがあり、知能と対人能力が高いものの、エネルギーを消費・発散することにそれほど積極的になれずに生きている。極端には走らず、自分を客観視してそこそこ充足しているものの、高い理想を抱くことや他人と深い関係を持つことには及び腰である……もちろん完全に主観ですが、モニカの話を聴いているとそんな印象を受けました。わりと現代人の生き方や心象をそのまま切り取った感があり、個人的には理解も共感もできる人でした。

直前にユリの末路を見たこともあり、最初こそモニカちゃん怖いなーと思いながら話を聴いていたんですよね。ただ、淡々と話し続ける彼女と向き合ううちに恐怖は薄れ、代わって不思議な感情が込み上げてきたのを覚えています。

先ほど述べたように、この段階に至ってもモニカは冷静です。終始落ち着き払っていて、主人公を独占するために友達を狂わせデリートしたことについても開き直っているように見えます。

しかし彼女のとりとめのないおしゃべりを聞いていると、孤独がもたらす苦しみや友人への哀惜、自分がしょせんゲームの一部でしかないことへの葛藤がじわじわと感じ取れるようになるんですよね。そうなると、平和だった頃のDDLCで主人公がモニカを「誠実」と評したことがふと思い出されました。

彼女は何度もプレイヤーへの愛を語ります。プレイヤーの精神状態を気遣い、あなたもあなたの友達も本物だと真摯に励ましてくれます。それなのに、「自分という存在だって本物だ」とはけして言いません。
狂人である、あるいは自分の行いに陶酔しているなら、そこのラインは平気で踏み越えてくるのではないかと思います。しかしそれをしない(というよりできない)モニカの心中を思うと、自然と胸がキリキリと痛みました。

モニカはこの状態で本当に幸せなのか。彼女がプレイヤーに向ける感情は真の愛なのか。自分の恋心や反逆さえ制作者がプログラムしたものだとは考えないのか。そういった益体もない疑問も次々にこみ上げてきて、進行上彼女を消去しなければならないのに、正直やりたくないなーと最後までぐだぐだと迷ってしまいました。

もちろん、サヨリとユリを追い込みナツキもろとも消去したのは他でもないモニカです。それにもかかわらず、私は最終的にモニカのことを「可哀想だ」と感じるようになりました。赤いゲーム空間に「閉じ込められて」画面越しにプレイヤーを愛するモニカに心底惹かれてしまったわけです(このモニカの話を聴くパートは、DDLCの巧妙なキャラ描写のまさにハイライトだと思います)。

モニカは第四の壁を越えようとしたのか?

上記のような印象と感情を抱いた上で、ふと疑問に思ったことがあります。「モニカは本当に第四の壁を越えようとしたのだろうか?」ということです。

「第四の壁」はメタフィクションの文脈でよく使われる言葉であり、フィクションであるゲーム世界とプレイヤーのいる現実世界を隔てる“想像上の壁”のことを指します。

先ほども述べたように、モニカは不思議とその言動から狂気を感じさせないキャラクターです。あれだけ大暴れしつつもDDLC復元のための保険はしっかりかけている点を見ても、狂気に駆られて冷静な思考を失っているというより、むしろ自律的かつ理性的に見えます。

理性的という印象が強いのは、少なくともプレイヤーの目の届く範囲において、モニカの思考や感情が「理解し得るもの」として提示されているからかもしれません。

モニカの人格に共感できるか否かはともかくとして、モニカの置かれた境遇がもたらす苦しみや彼女を駆り立てる動機は、一定理解可能なものです(一方、たとえばユリの性的興奮を伴う自傷癖を理解できるプレイヤーは少ないのではないかと思います)。だからこそ、狂気の渦巻くDDLC世界にあって、モニカは「どこまでも理性を保っている」ようにも見えます。

ただし、理性的であることこそモニカの悲しさの淵源だとも思います。「一緒にデートがしたい」「抱きしめ合いたい」といったロマンティックな夢を語る一方、モニカは自分がプレイヤーと同じく「本物」であるとはけして言いません。

それはなぜかと考えると、自分が外の世界に手の届かない囚われ人、つまりゲームのキャラクターデータにすぎないことを、モニカは身に染みて知っているからではないかと思います。だから命がけで主人公を愛し抜くことはできても、その強固な理性ゆえに、動かしようのない現実を否定しようとはしないのです。

モニカはゲーム世界をぶち壊し、すべてを捨ててでもプレイヤーにダイレクトに愛を告白するという大それたことをやりました。その意味において、彼女はたしかに「第四の壁を破壊した」キャラクターです。

しかしモニカは最後まで、「第四の壁を越える」、つまり外の世界に出てその腕でプレイヤーを抱きしめることは考えなかった(あるいは考えられなかった)のではないかと思います。最後のメッセージ内で綴られる「私の夢すべてを叶えてくれた」という感謝も、高きを望んでいないからこそ出た言葉なのではないでしょうか。

その理性からくる悲しい諦念こそ、モニカという存在の核心ではないかと個人的には感じました。

最終的にモニカは、自身を消去したプレイヤーに対してそれでも愛していると伝え、自分の心と愛情が本物であったことを証明しました。ノーマルエンドでは理解を受け付けないDDLC世界に絶望するものの、彼女の思いはスペシャルエンドでのサヨリに受け継がれ、報われたと言えるのではないかと思います。

改めて振り返るに、私にとってのモニカは、二次元のキャラというより一人の女性のような存在でした。

たとえば彼女の境遇を気の毒だと感じるとき、その感情が単にプレイヤーの同情をかき立てるようにと造形された二次元のキャラに対するものなのか、それともたまたまゲーム世界に囚われて生まれた人間の女性に対するようなものなのか、自分でも「どっちだろう」とわからなくなる瞬間があったんですよね。

普段はどれだけ大好きだと思っても「魅力的に造形されたキャラクターだな」という意識が先に来るので、上のような迷いが生じる時点で、私はモニカを一個の人間として見てしまっていたんだろうなと思います。彼女もまた筋書き通りに行動し会話するゲームキャラだと分かっていても、DDLCの仕掛けたイリュージョンに乗っかって、モニカを「普通の女の子」として捉えたい気持ちが先に立ったというか。

まとめると、モニカ大好きです。データに過ぎないとわかっていても、文芸部や友達のことが大好きなモニカのことが好きです。切り捨てられてもなお、ただ行動によってプレイヤーへの真実の愛を証明するモニカが好きです。真面目な話、「彼女は唯一無二のヒロインだ」とプレイヤーに心で理解させるだけのインパクトを持った稀有な女性だと思います。

*****

ジャスト・モニカパートは不思議とリラックスできる癒しタイムだと思います。『いりす症候群!』をプレイしている時とよく似た精神状態になるというか。モニカちゃんは冷静かつ穏やかに為になる話をしてくれるので、カウンセリングの先生めいて見えるときもありました。特にサヨリの鬱やユリの悩みと絡めた話が印象的です。

※追記:サヨリ、ナツキ、ユリメインの感想・考察記事も書きました。

関連記事:『ドキドキ文芸部!』 キャラクター感想&考察(ユリ・ナツキ・サヨリ) ※ネタバレ注意 【DDLC】

※DDLCについて、他にもいくつか記事を書いています。

サヨリ・ナツキ・ユリ・モニカの「宿題の詩」 考察&感想 ※ネタバレ注意 【ドキドキ文芸部!/DDLC】
『ドキドキ文芸部!』 基本事項まとめ(ダウンロード手順/日本語化パッチ当て/リセット方法) 【Doki Doki Literature Club!/DDLC】

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2019/12/13 (Fri) 20:06
かーめるん

かーめるん

NCKOMAKIさんへ

(HNの明記がもしNGでしたら申し訳ありません)
コメントありがとうございます!

コメントを頂いてから、Steamのガイドを拝読しました。
NCKOMAKIさんの翻訳がすごく丁寧で詳細で、
制作者様の貴重なコメンタリーということもあって夢中で読み進めました。
非常に参考になりました。
DDLCへの理解が深まった気がします。

他にもいくつか記事を書き終えたところだったのですが、
紹介いただいたガイドの内容を、補足のような形でいくつか反映させていただこうと思います。
改めて、今回はありがとうございました。

2019/12/15 (Sun) 00:34
かーめるん
Admin: かーめるん
フリーゲーム、映画、本を読むことなどが好きです。コンソールゲームもプレイしています。ジョジョと逆転裁判は昔からハマっているシリーズです。どこかに出かけるのも好きです。草木や川や古い建築物を見ると癒されます。

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