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“人間がいる”、“歴史がある” 『グレイメルカ』の魅力 考察 ※ネタバレ注意 その3

2019/04/21
SLG(シミュレーションゲーム) 0
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大陸を縦断する歴史的な戦乱を描いた長編シミュレーションRPG(戦略SLG)、『グレイメルカ』の魅力を考察する記事です。制作サークルはシニカルとレトリック様。作品の公式サイトはこちらです。 → グレイメルカ

グレイメルカ スクショ 第4章 帝国大乱 カットイン

グレイメルカ

記事その3では、私が思う『グレイメルカ』の魅力をガッツリと書いていきます。キーワードは「人間がいる」&「歴史がある」です。ネタバレを含むので、未見の方はご注意ください。

※『グレイメルカ』感想記事一覧

・その1:『グレイメルカ』 全6章のストーリーの概要&感想 戦闘レビュー
・その2:『グレイメルカ』に登場する“新暦の8国”まとめ

・その3:“人間がいる”、“歴史がある” 『グレイメルカ』の魅力 考察(現在閲覧中)
・その4:『グレイメルカ』 キャラクター感想
・その5:『グレイメルカ』 気になる男女ペア&好きなBGM 雑感

"人間がいる"『グレイメルカ』の魅力

グレイメルカ スクショ ジェヘララ 何のために生きるのか

グレイメルカ

記事その1でも書きましたが、『グレイメルカ』は数十時間ほどかけてじっくりとプレイしたゲームです。それだけストーリーやキャラクターに魅せられたし、「しっかりと設定を把握したい」と自然と思ったからです。

感想記事を書くにあたって「『グレイメルカ』の魅力とは何か」と考えたとき、シンプルに思い浮かんだのは「人間がいる」ということでした。

『グレイメルカ』には剣を振るう英雄や幾多の魔法を操る魔道師はいても、強大な怪物や人知を超えた存在などは存在しません。いるのはただ悩みながら行動し、失敗しては後悔し、迷いながらも譲れぬもののために戦う人間たちです。

善いことを行うのも人間なら、悪いことを行うのも人間。また、善性しか持たない人間はいないしその逆もない。焦点は常に「人間の生」にあり、ストーリーの全体を通じて「なぜ生きるのか」という根源的なテーマが追求されます。

『グレイメルカ』は「勧善懲悪」ではなく「正義vs正義」を主軸とし、そのストーリーラインは唯一絶対の「正義」ではなく、複数形かつ割り切れない正義を語ります(主人公ハルカとデミライトの関係だけを見てもそれは明らか)。

その結果、『グレイメルカ』は「人間と人間が衝突し交錯することによって生み出される歴史」と、そこから生じるドラマを描き出すことに成功していると個人的には思いました。

己の求めるものは何か

『グレイメルカ』の主役となるのは、5つの国をその支配下に置き、更なる膨張を続けるロマテア帝国です。本編とも言えるハルカ編では、この帝国内部で皇位をめぐる争いが生じ、その政争が帝国本土どころか大陸全体を巻き込む歴史的な戦乱へと発展していきます。

「強大なロマテア帝国と大陸諸国」という前提を眺めると、単純に連想されるのは「帝国VS複数国」(連衡)という構図だろうと思います。しかし本編はそこを少しひねって、「帝国の皇位継承権をめぐる争いに他国もそれぞれの利益を求めて参加する」という形式を採用しています。

グレイメルカ スクショ ファテナの勝算 ユラ

グレイメルカ

大陸各地で様々な政治プレイヤーが蠢き、いくつもの動きがやがては一つの内戦へと収束していく流れは実に痛快で見どころたっぷりです(第3章、第4章あたり)。しかし『グレイメルカ』の面白さは、繰り返される争いや駆け引きの中で、誰もが自分や自国の利益を追求して動いている点にあると思います。

もちろん義憤などの感情に駆られて動く人もいます。友情から協力を申し出る人もいます。しかし多くのキャラクターは自分の利益を期待した上で行動しているし、それを取り立てて隠そうとはしません(そもそも作中では、「友情や愛情も突き詰めれば自分のためになること」という考え方が示されています)。

これは個人の意見ですが、『グレイメルカ』は政治から人間関係までに存在する「一見綺麗ではない部分」を臆さずに書いていると思います。利己的であること、つまりどの立場にある人間もそれぞれの利を求めていることを非難せず、冷たい行為として描くこともなく、むしろ肯定的に取り扱っているような気がしました。

たとえば第3章の、「なんで反乱軍にこんなに人が集まる?」と疑問に思った仲間にソヴォが合理的な理由をざっと挙げるシーンには、短いながらも「『グレイメルカ』らしさ」が詰まっています。

「クレミトのカリスマ性がすごいから」or「クレミトの境遇がオルハダ国民の同情を誘ったから」みたいな理由では流さないんですよね。この場面には、ソヴォのリアリストっぷりと『グレイメルカ』自体のリアリズム的傾向がよく表れていると思います(Youtubeにアップされているペレタの剣をめぐる一幕でも、ソヴォはとことん感情抜きで合理的です)。

利益を求める人々

「利益を求める人々」という観点から『グレイメルカ』のストーリーを眺め始めたのは、第1章ラストでのクナタとカタリの決断を見たときです。残り少ない寿命をもっとも価値のある瞬間に使い切るという決断ですね。息子ハルカのための自己犠牲でもあるとはいえ、クナタとカタリのあまりに合理的な判断に初見で驚いたことを覚えています。

そこから第2章に突入し、再び強く興味を引かれたのは第5話~第7話で描かれる皇太子サーシンの婚姻エピソードでした。滅亡したドルテの旧王室の姫・ファテナが、次期皇帝であるサーシンの妻に選ばれる……という、本筋にもガッツリと関わる話です。

このエピソードにおいては2人の結婚の政略性が前面に押し出され、どのキャラも政治的判断を優先して動いていました。その判断の先にあるのは、やはり彼らなりの利益だったように思います。

グレイメルカ スクショ ファテナの婚姻

グレイメルカ

たとえば皇帝レシウルは、「サーシンにふさわしい女性」とファテナを褒めそやしつつも、「あくまでこの婚姻は帝国の温情である」という姿勢を崩しませんでした。皇族の威容を保つために、「零落したデト家の娘であるファテナをロマテア皇室の一員として迎えてやった」という前提を重視したわけです。

婚姻を打診されたファテナもよく心得たもので、レシウルに挨拶するときは真っ先に「没落した家の娘」と自分を貶めました。祖父と父を処刑しドルテを滅ぼしたレシウルに対し、彼女は思うところがないわけではありません。しかし「犠牲にする人生があるだけいい」という精神の下、ただドルテの民のために仇の家に嫁ぐことを決めたのです。

婚姻を承諾したファテナと第三者のやりとりもまた印象に残りました。たとえばサーシンの弟デミライトは、婚姻のもたらす効果(ドルテ領の税の軽減)を直截に指摘します。そしてヘイントは、(餓死者の相次ぐ貧しい)ドルテを救うにはサーシンの善意だけでは無理だ、他のところから徴収しないと……とちょっと意地悪なことを言います。

こうしたデミライトやヘイントの言葉に対し、ファテナが沈黙を守ったことにグッときました。「ドルテを救うためなら第三者を犠牲にすることも辞さない」という決意がうかがえたからです。その決意を身内のユラの前以外では漏らさないところも、当たり前とはいえきちんと賢くて好きでした。

サーシンの婚姻エピソードにおいて、自分の立場と利益をうまく結びつけて動けなかった人物は、実はそのサーシン当人ではないかと思います。最初は縁談を断ろうとし、承諾後も恋人と隠し子のために腹心の部下を遠ざける悪手を打った彼は、「三黒の夜」で破滅することになるからです。

サーシンというキャラは、第1話の少年時代から「優しく聡明だが脇が甘く立場にそぐわない言動が見られる」点で描写が一貫しているのが見事だと思います。

この婚姻エピソードをはじめとして、誰もが何かを求めて生きていることが作中では繰り返し語られます。「利益」と一口に言っても、それは財産から感情的な充足まで様々なことに繋がる概念です。己の利を追求することはそのまま生きることでもあります。そこを好意的に描く『グレイメルカ』には大いに感銘を受けました。

生き生きとしたキャラクター

グレイメルカ スクショ ソヴォ イケメン部隊を作りたいカピン

グレイメルカ

『グレイメルカ』に登場するキャラクターは、たいてい自身の価値観や信条を大事にしています。上にも書いた通り、自分の望みや欲求に忠実なキャラクターが多く、自分のためになることを素直に行う傾向が強いです。

支援会話では真っ向から価値観の対立する二者が会話をすることも多く、その際はそれぞれの人となりがくっきりと浮き上がります。時にはキャラが生臭くも薄情にも見えたりします。「理解しがたい」と思わされることも何度かありました。

しかし、「嫌いだな」と感じるキャラクターは不思議といません。それはおそらく、自分の性格や信念に関して八方美人なキャラクターがほとんどいないからだと思います。

皆「自分はこういう人間だ」という主張がはっきりしていて、そこに共感するかしないかは完全に他者(とプレイヤー)に任せているような雰囲気があるんですよね。だから、たとえ理解はできなくとも受け入れやすかったです。最終的には他者と協調はしても迎合はしない一貫性と潔さがクセにもなりました。

関連して面白かったのは、すごく好きなキャラクターにも「ちょっとそれはない」or「さすがに言い過ぎじゃないか」と感じるポイントがあったことです。

好きなところもあるし嫌いなところもある、共感できることもあれば無理だと思うこともある。それって現実の人間に抱く感想に近いような気がします。あるキャラの考え方を好意的に感じるか否かで自分の価値観を洗い出されることさえあり、なかなか爽快でした。

例として信条がカッチリ確立されているキャラを一人挙げるなら、イケメン命のカピンちゃんでしょうか。彼女は誰に対しても言いたいことを言うキャラですが、とことん個人主義者で言動が一切ブレないので感動すら覚えます(たとえばユラとカピンの支援会話は、互いに共感する余地がまったくないのが見事です)。

もっとも、「何の為に生きているのか」と思い悩み、「何かのために」と「自分のために」が重なり合わないことを憂うキャラクターも何人かいます。主人公であるハルカや、ドルテのために生きているファテナ姫がその筆頭です。

『グレイメルカ』世界では異質な存在とも言える彼らが、「生きること」や「自分という存在」の理由を探し求める過程もまた、この作品の見どころだと思います。

『グレイメルカ』と“歴史”について

『グレイメルカ』の面白さは、ストーリーを物語るにあたって「歴史」という要素を強く意識しているところにあると思います。

誰かの言動によってつくられ、しかしやがては荒波のように人々を呑み込んでいく歴史の一面をテーマの一つとしていること。そして、「いずれは歴史となる」ものとして全体のストーリーを紡いでいること。歴史というものの取り扱い方がたまらなくツボであり、それもあってストーリーに没頭してしまいました。

この項目では、①人が創り出し人を押し流す歴史のダイナミズム、②「歴史」となるストーリー、③歴史と「真実」の3つに区切って書こうと思います。以下、第4章~第6章のネタバレを含みます。

人が創り出し、人を押し流す歴史のダイナミズム

グレイメルカ スクショ カンツラ 人を押し流す歴史の波

グレイメルカ

上にも書いた通り、『グレイメルカ』は歴史について、「人につくられるもの」であり「人を押し流すもの」であることを意識しているように感じました。

たとえば前者の「歴史を作ること」について、デミライトは以下のような檄を飛ばして自軍を鼓舞します(第26話後半)。

俺達の故郷を愛する帝国の市民達!!
俺は初陣でオルハダを徹底的に叩いた、今回も同じだ!!
歴史を作るのは我ら、剣と同じ色の髪を持つロマテア人だけだ!!

グレイメルカ

「歴史を作る」という認識と、「剣と同じ色の髪を持つロマテア人」という言い回しにシビれる台詞です。大陸中央にあって常に戦争と関わり、銀色の武器を赤く染めながら勝利を重ねてきたロマテア人のイメージがパッと浮かびます。

デミライトの言う通り、ロマテア人はここ数十年ほど、自国の歴史をそのまま大陸の歴史としてきた民族です。隣国を侵略することにより、多くの人々を巻き込んで歴史を作り続けてきました。ウォレア、レシウル、そしてデミライトと、ロマテア皇帝の決断によって歴史は大きく動いてきたのです。

しかし結局のところ、デミライトは自身の思い描いたような帝国をつくることに失敗しました。のちにカンツラが指摘した通り、彼はむしろ「歴史の波に押し流された」と言った方が正しいような末路を辿ります。最初の波を起こしたのはデミライトです。しかし最終的にその波は彼に味方せず、彼や祖国に殉じた多くのロマテア人の命を呑み込んで流れ去りました。

ここでもう一つ、同じく第26話後半における、ハルカとの支援会話中のファテナの言葉を引用させていただきます。

私の祖父バルナクは、貴方のご両親を死に追いやりました
私の夫は貴方に殺され、ドルテ領の平和も奪われました
そして今は、デミライト様も報いを受けようとしている……命を奪った兄の、そのご子息によって
人の運命なのに、どうして人の意思で動かせないのでしょう
勝手に動き、勝手に流されていく……誰も幸せにはなれないままに

グレイメルカ

王家の姫、人質、皇太子妃、未亡人……と流転の人生を経験してきたファテナらしい台詞です。そして同時に、歴史の別の一面を的確に表した言葉でもあると思います。

デミライトの言う通り、歴史を作るのは人の言動です。しかし一度起こった流れが大きな荒波となって人々を巻き込み、身動きをとれなくして連れ去っていくことは往々にしてあります。

「歴史を創り出す人々」という勇ましくワクワクするイメージと、「歴史に流される人々」という物悲しくやるせないイメージを、『グレイメルカ』は同時にプレイヤーに見せてくれます。前者の人間が最終的には後者の立場になる悲哀や、後者の立場だった人間が生き抜いて前者となる希望も伝えてくれます。

上記のような歴史の二面性を意識したストーリーは、個人的には『グレイメルカ』の大きな魅力だと思いました。ロマンとカタルシスに溢れていて大好きです。

クナタ&カタリ編にしてもハルカ編にしても、結末だけを見るとシンプルなハッピーエンドではありません。しかし全体を通してみると1つの大きな流れができていて、落としどころにしっかりと納得できるのが見事だなーと思います。

「歴史」となるストーリー

グレイメルカ スクショ エミット ウィラ 歴史が決める

グレイメルカ

『グレイメルカ』のストーリー中では、「この瞬間がいずれ歴史となる」ことがほのめかされています。第5章~第6章あたりは特にその“予感”が顕著であり、最終話のタイトルはまさに「歴史の中へ」です。「今が歴史にどう残るのか」というテーマもまた、特に第6章では繰り返し暗示されます。

個人的な思い出ですが、「もしかして各話の戦闘タイトル(例:第二次ジフピアの戦い)って後世における戦の通称だったりする?」と思い当たったときにはかなり興奮しました。「今プレイしている1つ1つのイベントがまさに『グレイメルカ』世界における歴史の通過点なんだ」と実感したからです。

ちょっと脱線しますが、歴史("History")というのは、後の世の人間によって語られるお話("Story")です。生身の人間は口や筆によって記録され伝えられることによって歴史上の偉人となります。

そして「生身の人間」が「歴史上の人」になるとき、そこにはけして埋められないギャップが生まれます。「語られるもの」になると、どうしてもその人物にまつわる多くの事柄が捨象されます。語り手の価値観や思想、その時代の世相によって彼らの評価は変遷し、善人にも悪人にも描かれ得ることがあります。

同時代人かつ交流を持った人間でもない限り、ある人物の本当の顔を知るのはほぼ不可能です。「真実」を知りたいと心から願っても、過去の人々は現在の私たちの手の届かない領域へと過ぎ去っています。
だから後世の人間は、伝わっている事績や逸話を頼りに「彼/彼女はこういう人物であったのだろう」と考え、実際に会ったことのない彼/彼女らを尊敬したり、あるいは貶したりするわけです。

個人的な意見ですが、歴史のロマンはどうあっても「真実」には手が届かないところにあるんじゃないかと思っています。今となってはわからないから、気になるし知りたいし想像も膨らむ。必死で史料等にあたってかなり近いだろう形を描くことができても、やはり本当のところはわからない……みたいなもどかしい感覚です。

タイムマシンを持たない私たちは、「真実」とのギャップを埋めることはできません。だから過去を探求することは、ミロのヴィーナスの両腕を思い描くことと少し似ているのではないかと思います。

その前提の下で『グレイメルカ』をプレイすると、ときどきすごく不思議な気分になることがありました。『グレイメルカ』(特に第6章)には、歴史が「(後世の人間によって)語られるもの」であることへの明確な意識があります。そして最初に書いた通り、今進行しているストーリーが後に歴史の一部となることも匂わされています。

ゆえにプレイヤーの私は、現在進行形の物語を同時代人として眺めるのみならず、後世の人間としての意識も持ちながら追ってしまいがちでした。『グレイメルカ』はハルカたちの物語であると同時に、「いずれ歴史となる物語」でもあるという視点が常にあったわけです。

後でよくよく考えたとき、それって途方もなくロマンチックな体験だと強く思いました。後世の人間にはけして届かないだろう過去を、プレイヤーは今現在としてありのままに眺められます。プレイヤーだけは過ぎ去る時代に存在した「真実」に手が届くわけです。

「物語の歴史化」という到達点がさりげなく匂わされているからこそ味わえる、稀有な感覚だと思います。この観点が一貫して確保されていることこそ、『グレイメルカ』の良さであり面白さではないかと個人的には感じました。

歴史と「真実」

グレイメルカ スクショ エミット キル ハルカの墓碑

グレイメルカ

物語の歴史化と併せて、『グレイメルカ』は上で触れた「生身の人間」が「語られる人」になるときに生まれるギャップもしっかりと意識しているように感じました。

主人公の背後にいるプレイヤーは、主人公と周囲の人々の交流をつぶさに見ることができます。彼らがどんな性格だったか、どの場面で何を思いどういう言動をしたか……彼らと同じ時間を共有して見聞きすることが可能です。

しかし何世代も下った時代で彼らが歴史上の人物として著述されるとき、その人物像が完全な形で伝えられることはまずないでしょう。

たとえば主要キャラであるメレオネの場合、後世では影魔法の創始者であることよりも、クレミト政権樹立の立役者であったことが重要視されたそうです。

ストーリーを追えばわかるように、メレオネの動機はクレミトというよりは家族同然のフィアカルタたちや愛するハルカの方にありました。しかし後世の人々が「クレミトの協力者」という一面に強い興味を持ったがために、彼女の政治的な功績は、魔道師としての事績以上に注目を集めるようになったのではないかと思います。

また、歴史化に伴うギャップが生み出す悲哀の例としては、ピピカとラタというわかりやすい例がエンドロールで示されています。

ピピカは後世、統一アスタンツで「国家の母」として称賛されるようになりました。しかしその伴侶であったラタは、他国人(それもオルハダ人)であったためかその活躍がほとんど伝えられなかったそうです。

実際にストーリーを追ったプレイヤーからすれば、これは偏りのある評価に思えるのではないでしょうか。というのも物語上、常に彼女を守り支え導いたラタの存在なくしてピピカの躍進はなかったことが示されているからです。そもそもラタがいなければ、ピピカはクレミト戦争中の反乱やジャテンシ城事件で命を落としていた可能性が高く、帝国との宥和に思い至って辛抱強く努力を重ねることもなかったでしょう。

ウィラは「人を昇らせる資質というものもある/お前は側にいる人間を高めてやれる男なのだろう/ピピカが崇高な人間になれたなら、それはお前の影響だ」とラタに言いました。個人的にもその指摘は正しいと思います。

上2つの例を見ても、ある人物が歴史の一部となったとき、その人にとって大事なものが置き去られていることがわかります。

メレオネが子供の頃から引きずっていた罪の意識、ハルカに興味を抱き愛した理由は、メレオネという個人にとって何よりも重要なものでした。また、ラタは常に献身的にピピカを支え、ピピカはそんなラタを「自分になくてはならない人」として愛していました。

しかしそうした事実は公に向けては語られない事柄であり、後代の人の利益や関心と関わりが薄かったために、伝えられることなく過ぎ去ってしまったのではないかと思います。

人や出来事は、語られることによって歴史となります。逆に言えば、「語られないもの」や「語り手を欠くもの」は歴史にはならないのです。これは歴史に残らない大多数の人に関しても当てはまる、けっこうリアルで切ない話だと思います。

しかし後世に伝わることはなくとも、プレイヤーはメレオネやピピカとラタの「真実」を知っています。彼らが後世の評価など気にせず、周囲の人間に影響を与えながら、誰かを愛して生きたことを知り得ています。つまりプレイヤーは、歴史化によるギャップという束縛から解き放たれ、彼らの本当の顔を見守ることができるわけです。

第6章にてカオルとエミットをハルカの石碑に案内したキルは、碑文の内容が非常にそっけない理由を説明します。それは皇帝クレミトがハルカを「英雄」ではなく「大切な友人」として記した理由と重なり合うものでした。キルは、ハルカの遺児であるカオルにこう言います。

ハルカの記憶は、共に戦った者達だけが共有し、そして消えていく……それでいいのだ
生きた証はここにいる、記録など残っていなくても

グレイメルカ

当事者たちの「真実」が歴史の波に埋もれる悲しみと、たとえ忘れ去られても確かな「真実」があったはずだという慰め。このほろ苦く希望のある感じをきっちりと描く『グレイメルカ』の姿勢は、私にとって非常に印象深いものでした。

*****

今回の記事その3では、「『グレイメルカ』と人間」「『グレイメルカ』における歴史」など、『グレイメルカ』の魅力についてまとめました。

次回の記事その4では、印象に残ったキャラクターについての感想を書きます。おまけ的な内容です。

『グレイメルカ』 その4(キャラクター感想)
『グレイメルカ』 その1(あらすじ紹介、戦闘レビュー、ストーリー感想)
『グレイメルカ』 その2(「新暦の8国」まとめ)
『グレイメルカ』 その5(気になる男女ペア、好きなBGM、感想まとめ)

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かーめるん
Admin: かーめるん
フリーゲーム、映画、本を読むことなどが好きです。コンソールゲームもプレイしています。ジョジョと逆転裁判は昔からハマっているシリーズです。どこかに出かけるのも好きです。古い建築物などを見ると癒されます。

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