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『狐憑き学園七不思議』(リメイク版) 感想&エンディング攻略 ※ネタバレ注意

2020/03/30
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「開かずの扉の化け狐」の謎を解き明かすADV、『狐憑き学園七不思議』の感想&攻略記事です。ネタバレが含まれます。制作者は船様。作品のダウンロードページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 狐憑き学園 七不思議(リメイク版)

狐憑き学園七不思議 スクショ タイトル画面

狐憑き学園七不思議

『狐憑き学園七不思議』は、七不思議の調査のために夜の学校に忍び込んだ少女が、化け狐の青年と出会い、彼を救うべく奔走するADVです。学園伝奇ホラーもので、脅かしや流血表現があります。エンディングは計4つ。全エンド回収までの所要時間は約4時間でした。

『夢墜ちのインキュバス』をクリアした後、同じ制作者様による『狐憑き学園七不思議』もプレイさせていただきました。やはりシナリオやグラフィックの完成度が高く、特に「王牙」と出会ってからは夢中でストーリーを追いました。シリアスながらしっかりと救いのある物語で見応えがありました。

分岐条件がやや複雑なゲームなので、今回の記事は4つのエンディング回収に主眼を置いて書きました。あれこれと分岐を試すのが好きなので、「ああなるとこうなるから、じゃあ序盤であれをせずに……」と試行して見事うまくいったときは嬉しかったです。

以下、ストーリー&キャラ感想とエンディング攻略を書いていきます。ネタバレが含まれるので、未見の方はご注意ください。

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『狐憑き学園七不思議』のあらすじ

最初に、『狐憑き学園七不思議』のあらすじを説明します。

狐憑き学園七不思議 スクショ 開かずの扉の化け狐

狐憑き学園七不思議

主人公である神宮寺彩華(じんぐうじさいか)の通う学校には、七不思議伝説が存在します。「闇夜のかくれんぼ」、「目が合った」、「水底へいざなう者」、「見つからない探し物」、「首無し武者」、「人喰い鬼」、そして全ての元凶と伝わる「開かずの扉の化け狐」

徳の高い僧に封印された悪しき化け狐が、その強大な力ゆえに浮かばれない幽霊を引き寄せている……そんな言い伝えから、彩華の学校は「狐憑き学園」と呼ばれることもあります。

彩華は神社の娘ですが、子供の頃に実家や神様の存在を否定されたために、心霊現象やオカルトから距離をとって生きてきました。しかしオカルト好きの同級生・水笹由美乃に半ば強引に誘われ、夜の学校探検に付き合わされることになります。

七不思議に関係する場所をめぐる中で怪奇体験に見舞われた彩華は、開かずの扉に封印されていた化け狐と出会います。「王牙」と名乗ったその化け狐は、祠に祀られる一方で、異様な鎖と札によって何重にも戒められていました。

心の中で神的存在を信じていた彩華は、悪い妖怪には見えない王牙のことが気になり、再び夜の学校を訪ねます。そこで彼女が目撃したのは、恐ろしい「人喰い鬼」でした。かくして彩華は学校から脱出するため、そして王牙を救うために、彼を縛る幽霊たちの「未練」を解消するべく奔走することになります。

なぜ王牙は封印されてしまったのか? 王牙を戒める幽霊たちの未練とは何か? 「狐憑き学園七不思議」に隠された真実とは? 彩華の行動と覚悟によって、物語は4つのエンディングに分岐します。

ストーリー&キャラクター感想

『狐憑き学園七不思議』は、学校に伝わる七不思議の秘密を探るお話として始まります。学園を舞台にしたホラーものとしては王道的な導入ですが、とりわけ印象的だったのは、七不思議のすべてが「過去に起こったある事件」と「一人の人物を中心に据えた人間関係」に収束する展開でした。

「学校七不思議」と聞くと、個人的には「時代も人間関係も重ならない怪奇現象が同じ学校に7つある」といったイメージが真っ先にきます。だから、実は「7つの不思議すべてがある人物に端を発していた」という展開は、良い意味で意外性があって面白いなーと思いました。

あと、詳しい条件は後述しますが、ストーリー上の選択とエンディングの内容がきれいに対応しているのも見事です。たとえば過去の悲劇を知ろうとする、つまり他者の痛みを受け止める覚悟があるか否かによって、終盤主人公がとる行動が変わる。あるいは友人と交流しておくことによって、終盤のストーリーに相応の変化が生じる……など。ADVとして細やかなつくりだと思います。

また、過去回想が1パートとしてガッツリと入るのも個人的には好きでした。まず、過去回想に入ってタイトルに戻ったとき、無残な姿で現れた幽霊たちの生前の様子を見ることができるんですね。その時点で「うわ生きてる、こんな顔してたんだ」とワクワクし、同時に「この人たちがみんな悲惨な末路をたどるのか……」と無性に悲しくなりました。

最初から「王牙たちは悲劇に見舞われる」と知っているのに、過去の物語だからその悲劇を見ていることしかできない。そんな回想特有のやるせなさと切なさがうまく表現された過去編だったと思います。語られる悲劇も想像以上にエグく(主に秋久の最期)、王牙と幽霊たちへの同情心がさらに強まる点でも良かったです。

エンディングについては後で詳しく感想を書きます(「4つのエンディングの感想」)が、全体的に悲しい系のエンドが多く、それだけに最良のエンディングの爽やかさ・後味の良さが際立っていました。あと、各エンドごとにエンドロールが異なるのも回収しがいがあって嬉しかったです。

キャラクターに関しては、まず主人公・彩華のキャラがストーリーを通じてよく掘り下げられている(&成長も見られる)点がよかったです。彼女がとある神を祀る神社の娘であること、心霊的なものを信じていないわけではないがあえて距離を置いていることなど、序盤で語られた情報がしっかりと物語に絡んでくるんですよね。後者は彩華が出会ったばかりの王牙にこだわる理由でもあり、王牙たちと深く関わることで、彩華の引け目というか心の傷も少しずつ快復していきます。

自分のアイデンティティーを補強することに重心の置かれていた「助けたい」が、徐々に「幽霊たちに報いたい」、「王牙を救いたい」という意味での「助けたい」に変化していく流れも、エンド分岐を通じて丁寧に描写されていたと思います。理屈的にも心情的にも理解できる主人公だったので、自然と彩華に寄り添ってプレイできました。

物語のキーパーソンである王牙は、終始冷静かつ自罰的で諦観し、他者への思いやりを忘れない、言ってみれば「化け狐らしくない」人物でした。人間に化けた獣らしい怖さや危うさをほぼ感じさせないキャラクターであり、それがストーリーの流れや彼の背景とも合致していて逆に良かったです。

王牙を訪ねれば訪ねるほど、彼が地獄の責め苦を味わっていることがよくわかるので、自然と同情もするし「救いたい」という気持ちも強まりました。そういう意味で、親密度を上げようとすればするほどストレートに愛着が湧くキャラだと思います。

また、幽霊たちは話してみると良い人ばかりで、生前の彼らがたどった末路を思うと胸が塞ぎました。彼らのほのめかす最期が過去編で(それも想像よりもずっと残酷かつ生々しい描写によって)答え合わせされる展開は、なんともえげつない(そして巧い)なーと思います。個人的には、過去編に同伴してくれる雪弥さんと、人の好いお侍さんな倉敷様が好きです。

不満と言うかやや気になったのは、オカルト好きの水笹が怪異をことごとくスルーする流れでした。たぶん彩華と違って霊感がないのだと思いますが、怪奇現象を期待して探索しているのに、なぜすべての結論が「最近の写真加工アプリってすごい」になるんだろう……と不思議でした。いわく付きの樹木を切って出てきた赤い液体を「きっとトマトジュースだね」で片付けるかのような、そんな「なんでやねん」感がありました。

あと、過去編でクリックして場面場面に進むのは若干作業っぽく感じました。もっとも、本を繰って真実を紐解くことをああいった形式で表現しているんだろうなと感じたので、最終的には気にはならなかったです。

4つのエンディング攻略 昼夜パートにおける2つの分岐点

狐憑き学園七不思議 スクショ 学校を探索

狐憑き学園七不思議

それでは、ここからエンディング攻略と分岐点について書いていきます。ネタバレが含まれます。エンディング回収に取りかかる前に、付属のReadmeをよく読むことをオススメします(普通はプレイする前に読むものなので、問題ないとは思いますが)。

まずはエンディングの種類について。『狐憑き学園七不思議』には、計4つのエンディングが存在します。ざっくりと主観で分類すると、1つ目は最悪のバッドエンド、2つ目は王牙生存メリバエンド、3つ目は彩華生存メリバエンド、そして4つ目がハッピーエンドです。

各エンドに到達するには、「昼の学校探索パート」と「夜の未練解決パート」のそれぞれで特定の行動をとる必要があります。具体的には、「昼の学校探索パートで和音&水笹フラグを立てるか否か」と、「夜の未練解決パートで雪弥の問いに躊躇うか否か」の2点が重要です。この2ポイントでの行動の掛け合わせによって、1つ目のエンドを除く3つのエンディングに分岐します。

注意点として、「王牙との親密度」もたぶん分岐に関わる要素ではないかと思います(違ったらすみません)。親密度MAX(セリフ変化によって確認可能)とまでは行かずとも、念のために何度か通って質問し、王牙と仲良くなっておくことをオススメします。

完全敗北バッドエンド

1つ目のエンド(バッドエンド)は、夜の未練解決パートにおいて、首無し武者(倉敷)から刀をもらうまでに「校長室前」(鬼門の方角)に行けば到達できます。つまり、タイミングは「王牙に再会した直後から彩華の手元に『匂い袋』と『日本刀』が揃うまで」です(揃うと彩華が「今なら校長室に行ける」と言い出す)。

「校長室は鬼門の方角にある」&「今鬼門の方角に行くのはヤバイ」と何度か言及されるので、ある意味目に見えるバッドエンドフラグかもしれません。「昼の学校探索パート」の行動とは関係なく到達できるので、最も攻略が容易なエンディングだと言えます。

メリバエンドその1

2つ目のエンド(王牙生存メリバエンド)は、昼の学校探索パートにおいて、「水笹生存フラグ」と「和音加勢フラグ」を立てないことが重要です。夜の未練解決パートでは、雪弥に「覚悟できてるよ」と答えて過去編へ進みましょう。その後倉敷の未練を解決すると、水笹&和音の介入が無いまま話が展開し、このエンディングへの道が開けます。

昼間に水笹&和音フラグを立てていると、終盤に2人が登場し、いったん彩華が王牙と別れる展開になります。そうなると別のエンドへ分岐するので、この2つ目のエンドを狙うときは、あえて昼間に水笹&和音をスルーして進む必要があります。

「水笹生存フラグ」は、昼の学校探索パートにて、特定の場所で水笹に電話し、彼女の携帯電話の所在を確かめることで立ちます。また、「和音加勢フラグ」は、同じく昼の学校探索中に和音に同行を頼んで一緒に各所を探索することで立ちます。

ちなみに、雪弥への答えで「ためらう」を選ぶと、3つ目のエンドに優先的に分岐してしまいます。この2つ目のエンドは、おそらく彩華が過去の真実を知っている(=王牙を救う意志が固い)ことを前提としているので、その関係上過去編を見る必要があるのだろうと思います。

メリバエンドその2

3つ目のエンド(彩華生存メリバエンド)への分岐点は、夜の未練解決パートにて、雪弥に「覚悟ができているか否か」を伝える場面にあります。ここで「ためらう」を選択し、過去編に進まずスキップすると、3つ目のエンディングに到達できます。

このエンドは、惜しくもハピエンに手が届かないエンディングです。彩華の覚悟の有無がエンディング分岐の焦点なので、昼の学校探索パートで水笹&和音フラグを立てるかどうかにかかわらず、「ためらう」を選べばこのエンドになります。

ハッピーエンド

4つ目のエンド(ハッピーエンド)は、昼の学校探索パートで水笹生存フラグ&和音加勢フラグを立て、夜の未練解決パートで雪弥に「覚悟できてるよ」と答えることで到達できます。終盤のミニゲームももちろんクリアする必要があります。

これまでのエンドで不足していたフラグを立てることで、一番良いエンディングに到達できます。カズの励ましや彩華の怪力、王牙の封印など、ストーリー中の伏線や描写がきれいに拾われるエンドでした。

4つのエンディングの感想

最初に見たのは、順当に最悪のバッドエンドです。ちょっと時間を置いて再開したときに、王牙のアドバイスをすっかり忘れて校長室を訪ねてしまい、水笹と対面して「Oh...」となりました。(エンドロールを含め)けっこうグロい血みどろエンドで驚きました。王牙の過去を知ると、このエンドはマジで一切の救いがなくて悲惨だなーと思います。人喰い鬼が悪辣すぎる。

また、個人的に2種のメリバエンドはどちらも好きです。彩華が生き残るバージョンは王道的な切なさがありました。「神様違い」が物悲しく、最後の彩華の語りが印象に残ります。エンドロールの王牙たちにまつわる小物が消えていく描写も、何とも言えずさみしくて良かったです。

王牙が生存するバージョンは、不本意にも彩華を犠牲にしてしまった王牙の心情を思って胸が苦しくなりました。王牙を救いたい一心で行動した彩華は後悔などなかったかもしれません。ただ王牙にとっては、近しい人が自分のためにことごとく命を落とした過去の悪夢の再現でしかないんですよね。

王牙を思う彩華の一途さが、過去を繰り返して王牙にクリティカルダメージを与えてしまう展開が残酷で悲しくて好きです。

そんな幸せとは言えない3つの結末を見た後でハッピーエンドに到達すると、「よかった~!」と心底思いました。持ち前の怪力を見事に発揮して王牙を助け、彼を必死に引き留める彩華のたくましさと優しさが特に印象的でした。

親しい人間を軒並み亡くした王牙にとって、「王牙を独りにしたくない」という彩華のストレートな告白はこれ以上ない救いだろうな……とわりと目頭が熱くなった覚えがあります。彩華が泣きながら自宅に向かうシーン、そして再会が果たされるシーンもすごく良かったです。

あと、ハッピーエンドのエンドロールで流れる長い一枚絵が最高でした。過去編をガッツリと見たからこそのカタルシスがあるというか、BGMの曲調もあいまって、「幸福な日々が壊れた悲劇」と「彼らの悲しみがようやく報われた喜び」を同時に感じられるエンドロールだったと思います。雪弥さんと真桜さんの視線の交錯に気づいて「悲しい~でもめっちゃ可愛い~」状態になりました。

*****

『狐憑き学園七不思議』、面白い作品でした。ハッピーエンドは特に演出に気合が入っていてもはやアニメみたいだなーと感じました。タイトル画面の変化といい、美麗で可愛いイラストをたくさん見られて本当に眼福でした。

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かーめるん
Admin: かーめるん
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