『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』 ドット絵2D推理アドベンチャーゲーム 感想&レビュー 【スマホゲーム】
ベテラン刑事が首なし遺体事件の真相に迫るスマホ推理ADV、『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』の感想&レビュー記事です。制作者はスカシウマラボ様。作品の公式ページはこちらです。 → 和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔 @ 攻略ウィキ
和階堂真の事件簿 処刑人の楔
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『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』は、猟奇的な連続殺人事件の真相を追う推理アドベンチャーゲームです。プレイヤーは「和階堂警部」を操作し、聞き込みを重ねることによって首なし遺体事件の謎を紐解いていきます。
スマホでプレイできるフリーゲームです(投げ銭可能)。作品の性質上、流血表現やグロい描写(遺体の様子)があります。この記事でも該当する画像を引用しているのでご注意ください。
Google Playを開いたときにたまたまサジェストされていたので、興味が湧いてプレイしました。「1時間程度でサクッとクリア可能」と前書きがあると、完全に初見でも「じゃあちょっと遊んでみようかな」と気軽に手を出せるからいいですね。実際のクリアまでの所要時間は1時間と少しでした(ドット絵と色合いが好みでスクショを撮りまくってしまいました)。
簡単に感想を書くと、『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』は短くまとまった硬派で面白い推理ゲームでした。謎解きやミステリアスな話やドット絵(ピクセルアート)が好きなので、色々とツボを刺激されました。
今回は、感想込みのレビュー記事を書きます。いつもより短め&物語の核心に絡むネタバレはほぼありません。ただ、ストーリーの導入部の流れやざっくりした構成&見どころ(例:ラストでびっくりした)等には触れているので、未プレイの方はご注意ください。あと、レビュー部分で「逆転裁判」シリーズにも触れています。
『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』のあらすじ
『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』(MAKOTO WAKAIDO's Case Files “Executioner's Wedge”)のあらすじを書きます。
和階堂真の事件簿 処刑人の楔
かつて腕利きの刑事だった老人が、孫にせがまれて過去の事件の話を語り聞かせるところから本編のストーリーは始まります。
1980年代初頭、H県K市で2件の猟奇的な殺人事件が発生しました。2つの事件の共通点は2つ。1つ目は、被害者の遺体が首を切断された状態で電柱に吊るされていたこと。2つ目は、被害者2人が「殉教者の光」というカルト宗教の信者であったこと。しかし警察の捜査も空しく、事件の謎が解明されることはありませんでした。
そして1983年、三度事件は起こります。首を切られ無残な姿で吊るされた遺体が発見されたのです。本庁からやってきた和階堂警部は着実に捜査を進め、事件の陰に見え隠れする狂信的な宗教団体に迫っていきます。
宗教団体の狙いとは何か。はたして和階堂は、猟奇的事件の裏で暗躍する犯人を見つけ出すことができるのか。そして、最後に明かされる意外な真実とは……といったあたりがストーリーの見どころです。
ゲームの概要と特徴(情報のゲット&セット)
和階堂真の事件簿 処刑人の楔
『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』は、2Dスクロールのミステリーアドベンチャーゲームです。
操作においては「ポイント&クリック形式」を採り入れています。つまり、画面上の気になる部分にカーソルを持っていってクリックする(スマホにおいては画面上の調べたい部分を指でタップする)ことで、新しい情報をゲットし物語を進める形式です(ポイント・アンド・クリックは、古くはファミコンの推理ゲーム、近年でもたとえば逆裁の調査パートなどで採用されています)。
このゲームに関して言えば、プレイヤーが適当な場所をタップすると、PCである和階堂警部がそこまで歩いて移動します。あるオブジェクトを調べたい、あるNPCに話しかけたいという場合にも、対象をタップすれば和階堂警部が調査or聞き込みをしてくれます。
本編のストーリーは、主に「捜査パート」と「推理パート」から構成されます。「捜査パート」における特徴的なシステムは、情報の「セット」による話題発生です。調査や聞き込みによって得た重要な情報はMEMOにストックされますが、特定の情報を「セット」してNPCに話しかけると、その情報に関連する新しい問いを投げかけられるようになります。
たとえば、事件現場を調査して「血で描かれたシンボル」という情報をゲットし、これをセットすると、「あのシンボルを知っているか?」とNPCに新しい話題を振れるようになります。
つまり、調査・聞き込みで情報をゲット→セットしてNPCに話題を振る→新しい情報ゲット→得た情報をセットして再び話しかける……という風に、「情報のゲット&セット」を繰り返すことで事件の真相に迫っていくわけですね。
1つあるいは複数の場所を捜査して画面上部の収集条件を満たすと、「推理パート」に進むことができます。推理パートでは、和階堂警部が自問自答によって事件の真相を探ります。プレイヤーは問いの答えとなる情報を挙げていき、すべてクリアすると新しいステージ(捜査局面)に進むことができます。捜査と推理を繰り返すことで新しく行ける「場所」も増えていきます。
クリア後の感想込みレビュー
和階堂真の事件簿 処刑人の楔
先にも述べた通り、『和階堂真の事件簿 - 処刑人の楔』(以下「和階堂」)は短くまとまった硬派で面白い推理ADVでした。「1時間程度でサクッとクリア可能」という触れ込みに偽りはなく、プレイヤーは複雑な操作や難解な推理に直面することなく、結末まで着実に進むことができます。しかしけして内容が薄いわけではなく、少しレトロなゲーム世界で、ミステリアスかつセンセーショナルな事件を紐解く過程を十分に楽しむことができました。
ところで、私は逆転裁判シリーズ(法廷バトルADV)のファンです。そのせいか『和階堂』をプレイしているときにふと同シリーズの調査パートを思い出し、似た要素もあれば違う部分もあるなーと感じつつプレイしました。両者を比較することで、より『和階堂』の良さを実感できたような気もします。
そういうわけで、この項目では一部逆転裁判を引き合いに出しています(逆裁を知らない人にはピンとこないかもしれません、申し訳ないです)。けして両作品に優劣をつける意図はなく、純粋に2作品の違いから見出せる本作の特徴を書きたかったので、同シリーズのシステムに言及した次第です。
まず上でも述べた、情報のゲット&セットでストーリーを進める形式が面白かったです。情報を得るたびに「この人にはこの情報をセットして話しかけたら進展するかな?」とあれこれ考えて試すのが楽しいんですよね。話しかけて文字が波打つ選択肢を見つけると「やった!」となったり。情報獲得に繋がらない話題でもそこそこ細かく反応が作りこまれていたので、チェックのしがいがありました。
「情報セット→話しかける」の流れは、逆転裁判の証拠品つきつけに似ているなーとプレイ中に思いました。ただ、ハズレ証拠品をつきつけるといちいち汎用セリフを聞かなければならない逆裁とは違って、和階堂はゲームの方である程度ハズレ情報を排除している点が印象的です。
つまり、適切ではない情報をセットして話しかけた場合は、そもそもその話題(の選択肢)が発生しない仕様になっています。「聞いてみるも空振りでメッセージを早送りする」という手間になる部分が省かれているわけです。
上記は和階堂と逆裁、それぞれの持ち味に基づく違いだと個人的には思いました。「つきつけて実際に話を聞くまでアタリかハズレか分からず、ハズレだと汎用セリフを聞くことになる」という逆裁の証拠品つきつけの仕様は、やや面倒臭くも思えるものです。
ただ、逆転裁判はそこで仕様を簡略化するのではなく、その仕様自体にプラス価値を持たせる方向に向かったゲームです。つまり、つきつけるの仕様も含めて、「プレイヤーに作業感を感じさせないようにテキストに細かく差分をもうけて内容・演出もできるだけ面白くしよう」という工夫がなされました。
その結果何が起こったかと言えば、同シリーズは面白いテキスト自体に魅力を感じるファンを獲得しました。主観ですが、初期からプレイしているコアな逆裁のファンほど、「すべての証拠品・人物をつきつけるしすべての証言をゆさぶる」スタイルを支持している方が多い気がします。
もちろん、全つきつけ&全ゆさぶりをするとスムーズなストーリー進行が滞ってしまいます。しかしつきつけ&ゆさぶりが好きなプレイヤーは、制作側が本筋に関係ない部分にこそ力を入れて笑いを仕込んでいることを知っていて、そこに魅力を感じてもいるから、できる限りすべてのテキストを確認したいわけです。ネガティヴな要素を工夫によってプラスに変える、制作側の努力が成功した例だと個人的には思います。
一方和階堂は、前書きにもある通り「1時間程度でクリアできる」こと、すなわちスムーズなストーリー進行を持ち味の1つとする作品です。上に挙げた情報のセット&ゲットにおけるハズレ判定を簡略化していることは、そのスムーズな進行を実現させるための努力の1つだと思います。
また、複数のコマンドを切り替えることなく話しかけるアクションからすんなりと話題を深掘りできる、既存情報の整理がこまめに行われる、場所を訪れた際に「まだ聞き込みできるorもう聞くことはない」とメッセージが出る、キャラクターに過度な個性を与えていない……といった要素も、サクサクとしたプレイ進行をサポートするものだと感じました(特に「まだ情報あるよ」表示はありがたかったです)。
以上、ジャンルが同じで雰囲気もどこか似ているのに、コンセプト(あとたぶん媒体も)の違いによってこういう差異が生じるんだなーと興味深かったのでつらつら書きました。
ゼロの状態から情報を着々と収集し次なる情報獲得につなげていく和階堂のシステムは、「刑事の聞き込み」感に溢れていてかなり好きです。「情報は足で稼げ」を地で行っているというか、粘り強く場所を転々として真実を追うストーリーが往年の刑事ものっぽくていいですね。
一応不満点も挙げておくと、MEMOを開いてセットした情報を切り替えるのがやや面倒、ほぼアタリだろうと思われる情報でもアタリじゃないことがある……などでしょうか。後者については逆裁のつきつけでもよくあることですが、内容的には9割当たっているからこの答えでもOKにしてほしいなーと思う場面が1、2回ほどありました。
続いて、ミステリアス&センセーショナルなストーリーも和階堂の魅力の1つだと思います。現場に吊るされた首無し遺体、血で描かれたシンボル、事件の陰で暗躍する宗教団体……と、ツカミがバッチリでした。TRICK(ドラマ)やクトゥルフ神話も好きなので、(あくまでフィクションという前提で)こういうカルト宗教絡みのグロい事件って恐怖心と好奇心を大いに刺激されます。
捜査が進む中で宗教団体の胡散臭さや被害者の末路に関する恐ろしい予測が少しずつ明らかになるたび、なんとも言えずワクワクしました。期待値を高めた上で終盤実際に本部を訪ね、おぞましい計画を知るに至る構成も王道的で良かったです。殉教者の光は明らかに今までの場所とは異質な感じで、BGMもガラッと変化していたので、盛り上げる演出が巧いなあとテンションが上がりました。熱心な信者の陶酔した語りも狂気じみていて良かったです。
あと、年老いた老人が刑事時代を思い返す体(いわゆる回想形式)で本編が語られる設定も好きです。和階堂の場合、その回想形式自体がラストの謎にもつながってきます。
刑事ドラマあるあるな終幕ののち、現代に戻って最終推理パートが始まったときはびっくりしました。あのアイテムってそう言われれば変だったなとか、冒頭のやりとりはそういうことかとか、色々なことが腑に落ちるラストでした。どんでん返しも回想形式も好きなので、両者をミックスさせた和階堂の仕掛けはプレイしていてとても楽しかったです。
最後に、グラフィックと音楽について。前者については、冒頭で足をパタパタさせる子どもを見ておおっとなって以降、「ドット絵(ピクセルアート)SUGEEEEEEE!」と幾度となく思いました。どのキャラクターも佇まいがリアルな感じで、それが細かく動作するので素晴らしいなあと感服しました。
たとえば和階堂警部の少し猫背気味になってポケットに手を突っ込む姿勢だったり、医者のメガネを神経質に触る仕草だったり、ちょっとした動作からキャラクターの「らしさ」が伝わってくる点も見事です。
また、音楽も素晴らしかったです。本編がスタートして現場を訪れたとき、BGMを少し聴いて「あ、このゲームいいな」と感じました。どのBGMも印象に残ったので、クリア後すぐにささやかながら投げ銭をし、SOUNDモードを解禁させていただきました。以下簡単に感想を書きますが、一応曲のタイトルは伏せています。
なんだかんだ一番好きなのは、(最初の現場で流れる)シリアスで渋い現場BGMです。重めのメロディーの裏で響くピアノの高音のせいか、どことなく謎めいて恐ろしい感じの宗教っぽさも感じます。カルト宗教絡みの犯罪を追う刑事モノである和階堂にピッタリだと思います。
あと、BARで流れるお洒落なBGMもいいですね。まさにタイトル通りの音楽というか、タバコの煙が充満する場末の酒場を彷彿とします。本編のBARの女の子とはもうちょっとお喋りしたかったです(公式アカウントの占いをやってみましたが見事に凶でした)。
最後に、満を持して殉教者の光に乗り込んだときのBGMもグレートに好きです。最初に聴いたときに「煌びやかなのに圧迫感と威圧感があって怖い」と思ったので、作曲者様のコメントを読んでやっぱりそういう意図のある曲だったんだなーと納得しました。「殉教者の光」という神々しくもまがまがしい団体名にふさわしいBGMだと思います。
*****色々と書きましたが、コンセプトに忠実な面白いゲームでした。上で「ドット絵すごい」と書きましたが、タイトル画面のボクセルアートも臨場感があって素敵ですね(恥ずかしながら、ボクセルアートという言葉をこのゲームで初めて知りました)。また、青緑がかった抑えめの色調(だから血の赤が際立つ)も硬派な刑事モノ&過去エピソードっぽくて良かったです。
ところで、公式の攻略ページから次回作開発に向けたアンケートページに飛ぶことができます(※10/8まで)。タイトル名と関連するあのどんでん返しは今作限りだろうと思うので、次回作がどういうストーリーになるのか今から楽しみです。オーソドックスですが、過去の事件を一通りなぞってから現在で解決する流れになるのでしょうか。
あと、アンケの「次回作のストーリーに求めるもの」の回答欄に「マルチエンディング」があったので、簡単な分岐でいいからバドエンとか見てみたいな~と思いました。ともかく、次回作が実現したらぜひプレイさせていただきたいなと思います。
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