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『真・村雨』 惨劇の夜を生きのびるサバイバルサスペンスADV 感想&考察 ※ネタバレ注意

2021/01/09
ADV(アドベンチャーゲーム) 0
フリーゲーム 感想 考察 レビュー ADV サスペンス ダーク 探索

襲い来る村人から命がけで逃げのびるサバイバルサスペンスADV、『真・村雨』の感想&考察記事です。※ver2.03。ネタバレが含まれます。制作者は裏束様。作品の紹介ページはこちらです。 → 村雨 | フリーゲーム

真・村雨 スクショ タイトル画面

真・村雨

『真・村雨』は、修学旅行中にある村に身を寄せた高校生たちが、突如豹変し襲ってきた村人から逃げ惑うサバイバルサスペンスADVです。イジメ描写や流血表現などが含まれます。ストーリー的には一本道。エンディングは3種類。

ちなみに、『村雨』に補完ストーリーを追加したリメイク版が『真・村雨』です。まずは旧バージョンの『村雨』に相当する部分をクリアした後で、もう一度頭から『真・村雨』ルートを開放してプレイしました。無印村雨は2時間超で、『真・村雨』は1時間超でクリアしました。

同制作者様の『7DAYS』(ジャンル:理不尽推理サスペンス)をプレイした後、『真・村雨』も遊ばせていただきました。「人間関係がドロドロで面白い」と事前に聞いてワクワクしていましたが、期待に違わぬ陰惨で生々しい人間描写と、人の美しい部分を同時に見ることができました。面白かったです。

特にいじめっ子の描写は迫真というかリアリティー抜群だったので、記事ではあえてそこに触れていません(普通に感想を書くといじめっ子キャラに対して口が悪くなりすぎて、とても読めたものではなくなるので)。

その代わり、今回は意外&納得&印象深かった『真・村雨』ルートの内容とエンディングについてガッツリと感想を書きました。キャラ考察っぽいものも含まれます。

≪関連記事:『7DAYS』 引っ越したばかりのアパートで7日間生き延びる推理ゲーム 感想&攻略 ※ネタバレ注意

以下では、旧『村雨』のエンディング内容や『真・村雨』ルートで明らかになる真実、公式サイトに掲載されている制作者様による裏話等に言及しています。ストーリーを未見の方はご注意ください。

『真・村雨』のあらすじ

『真・村雨』のあらすじを書きます。

真・村雨 スクショ 修学旅行生の1人が避難先である村の会合所のトイレで遺体となって発見される

真・村雨

『真・村雨』の主要キャラクターは、修学旅行中の高校生たちです。物語は彼らの乗ったバスが突然の土砂崩れに見舞われたところからスタートします。

幸運にも近辺に寂れた村があったため、雨の中で立ち往生した主人公たちは担任教師に先導されて村の会合所へと向かいます。楽しい旅行中に発生したアクシデントに不満をこぼしつつも、きちんとした住居に泊まることができて安堵する生徒たち。しかし、そこで思わぬ事件が発生します。男子生徒の1人がトイレで遺体となって発見されたのです。

パニックに襲われる生徒らのもとにやってきた村人は、生徒殺しの疑いをかけられると豹変。生徒たちを脅して村へ連れていこうとします。生徒の1人が隙をついてその男を無力化することに成功したものの、村へ様子を見に行った主人公たちが発見したのは、担任教師とバス運転手らの変わり果てた姿でした。

なぜ主人公たちは命を狙われる羽目になったのか? 地図に載らない村に隠された秘密とは? 降りしきる雨の中、常軌を逸した村人に追いかけられる高校生たちの運命やいかに……といったあたりが『真・村雨』の見どころです。

『真・村雨』の概要と通常ルート時点でのキャラクターまとめ(※ネタバレ薄め)

真・村雨 スクショ 主人公の瀬崎徹は不良の浅木豊にたびたび絡まれる

真・村雨

続いて、『真・村雨』の概要を書きます。『真・村雨』は、文章量が多めの探索アドベンチャーゲームです。制作者様によると、「前半はアクション+選択肢、後半は探索」とのこと。ストーリー的には一本道ですが、エンディングは3種類存在します(探索を通じて必要な情報をすべて集めると、もっとも情報量の多い「ザ・エンド」に行き着ける仕様)。

タイトルからも分かるように、『真・村雨』は初期構想をすべて詰め込んだ『村雨』のリメイクバージョン(※2018年発表)です。同作品では、無印村雨を完全に補完する新しいシナリオを読むことができます。『真・村雨』をプレイすることでようやく『村雨』のすべてを知ることができると言っても過言ではありません。

※ここから、無印村雨で見られるストーリーを「通常ルート」、真・村雨で追加されたストーリー部分を「真・村雨ルート」と書きます。

通常ルートと11人の名有りキャラについて簡単におさらいします。通常ルートの主人公(視点キャラ)は男女2名。男子側の主人公は「瀬崎徹」(頼りないがやるときはやる)、女子側の主人公は「月村冬美」(無愛想で協調性ナシ)です。通常ルートでは瀬崎視点と月村視点が交互に切り替わり、村人から逃げ回る合間にそれぞれの視点で探索をすることになります。

瀬崎と月村は同じクラスの生徒同士ですが、彼らのクラスではいわゆるイジメが横行しています。男子でイジメを先導しているのは、不良の「浅木豊」とその取り巻きである「新堂章吾」&「江藤雄介」です。彼らは気の弱い「細波将太」をターゲットにしており、そのやり口は陰湿さを増しつつあります。

主人公の瀬崎も昨年は浅木にしつこく攻撃されていたため、浅木との接触をなるべく避けつつ、立場の似ている細波を気遣っています。

一方、同じクラスの女子の中でもイジメはあります。女子の代表格は「根岸彩乃」であり、「飯塚詩織」はその取り巻きです。2人は気弱で鈍臭いところのある「速水優奈」をたびたびターゲットにしています。クラスの委員長である「香川麻由美」は速水の友達であり、何かと速水の世話を焼いていますが、根岸らにはしばしば発言力で負けてしまうようです。

また、瀬崎は現在「高島隼人」とつるんでいます。三枚目の印象の強い高島は事なかれ主義であり、周囲と仲良くしつつも、いじめいじめられな人間関係とは距離を置いた位置にいます。

『真・村雨』の感想(※真・村雨ルート込み)

『真・村雨』のジャンルは「サバイバルサスペンス」。見知らぬ土地で組織的に追いかけ回され、捕まったが最後命を奪われる……という設定上、名無しキャラも名有りキャラもバタバタと脱落していくゲームでした。ただし、凶暴な村人ばかりではなく、実は同じ生徒の中にも不穏分子が紛れている点が『真・村雨』の面白さだと言えます。

なぜ村人たちは襲ってくるのか。生徒の中にひそむ不穏分子は誰か。手がかりとなる情報を探索時に集めることで、より真相に近いエンディングに行き着くことができます。『真・村雨』は文章量と自由度の低さから見るとノベルゲーム寄りの作品ですが、探索パートにきっちりと役割を持たせているので、ADV面をおろそかにしている印象はありませんでした。

若干不満だったのは、キャラクターの名前があまり特徴的ではなく覚えづらい点でしょうか。細波や月村は珍しい名字ですが、他のキャラはフィクションにしては姓名ともに普通だなという印象です(香川は委員長の肩書があるのでまだ把握しやすい)。リアリティーを出すための名付けかもしれませんが、11人も名有りキャラがいるゲームなので、パッと見で覚えやすい名前だとなおよかったのになーと感じました。

あと、把握しにくかったのは姓名ともに漢字表記だったせいかもしれません(その点、次回作の『ヒトミサキ』では、「瀬崎トオル」と名前がカタカナ表記になっていて断然把握しやすかったです)。

ところで、ドロドロな人間関係や人間の暗部を描いたフィクション作品は個人的にけっこう好きです。人の綺麗とは言えない部分に焦点を当てた作品は、単純に興味深いし見どころも多いと思います。

そういった意味で、イジメやスクールカーストが物語の土台としてあり、非日常的な空間で人間の醜さが様々に描かれる『真・村雨』も面白かったです。ただ、興味を強く引かれるというか、物語を振り返ってもっとよく考えたいと思ったのは、真・村雨ルートで真犯人の思考をつぶさに見た上で、終盤の真犯人による暴露を聞いたときでした。

※以下、真・村雨ルートの内容を踏まえた真・感想です。犯人の情報など致命的なネタバレが含まれるので、再三ですが真・村雨ルートを未見の方はご注意ください。

通常ルートをジャストで補完する真・村雨ルートと真犯人

真・村雨 スクショ 真・村雨ルートと暗躍する高島隼人

真・村雨

真・村雨ルートで明かされる最大の真実、それは、通常ルートで生徒側の犯人として追及された細波将太のほかに、もう1人の生徒が凶行を重ねていたということです。

ある意味「真犯人」とも言えるその生徒は、主人公・瀬崎の友人ポジションにあった高島隼人。真・村雨ルートでは、高島が良心と倫理観に乏しい狡猾な人間であることと、細波を隠れ蓑にして自分にとって不都合な人間にトドメを刺していたことが、高島自身の視点でつまびらかにされます。

まず、もともとの初期構想を盛りこんだだけあって、高島が真犯人だと後から明かされても特に違和感がないのが見事だと思います。むしろ通常ルートには高島視点というピースが欠けていて、真・村雨ルートでようやく足りない部分がジャストで補われ、一枚の絵が完成したようにさえ感じました。

通常ルート時点での高島は、主人公の瀬崎と仲良しで、ヘタレでアホだけどやるときはやるキャラクターです。そんなキャラが本来はずる賢くタガの外れた心ないサイコパス*で、他者を見下し利用価値があるか否かで評価するドス黒い人間で、同級生の暴走を利用し自分にとって不都合な生徒を数人消し去っていた……と明かされても、普通はそうすんなりと受け入れられないものだと思います。

しかし『真・村雨』の場合、「高島=サイコパス」という真実をすんなり呑み込めるだけの描写が通常ルート内にいくつか潜んでいたように思いました。もちろんその場で即座に怪しめるようなヒントではなく、振り返ってみると「そういえば……」と納得が行くような、高島の本当の人間性が垣間見えるシーンです。

*「真犯人はなぜあのタイミングで仮面を脱いだのか?」で詳しく書きますが、高島が変節したきっかけは過去に起こしたある事件であり、先天的にああいう人間だったわけではない可能性も高いです。

ただ、良心の欠如、罪悪感の欠如、他者への冷淡さ・無共感、尊大な内面、操作的、衝動的、口が巧い、表面的には魅力的……など、高島はいわゆるサイコパスに見られる特徴を多く兼ね備えています(慢性的な虚言も入れていいかも)。よって以下では、高島の特徴を一括りに語る際に「サイコパス」という表現を用いています。

まずはゲーム冒頭、みんなでバスから出る直前の場面が挙げられます。折悪しく天気は雨で、バスから離れた村の会合所へ向かうには傘がないと濡れてしまう状況でした。そんな中、瀬崎が傘を持っていないことが分かると、高島は他のクラスメイトの誘いに乗り、瀬崎を放ってさっさと行ってしまうのです。

もちろん、ストーリー上瀬崎を一人きりにする(そして月村と一緒に行動させる)ための動きだとは思います。ただ初見では、「高島ってけっこうドライだなー瀬崎と実はそんなに仲良くないのかな?」と若干違和感を覚えました。

続いて会合所に着いた直後の、濡れてしまった瀬崎に対する「あいかわらずの役立たずっぷりだな」発言は大いに引っかかるセリフでした。正直なところ、「は?」と反射的に思ったのをよく覚えています。それ友達に言う言葉ちゃうやろ、アホとかバカとは比べものにならんくらいキツイ言葉やん、親しい人同士で軽くどつき合ってじゃれることが多い関西でも「アンタ相変わらず役立たずやなあ」とはまず言わへんで……と。

のちのち高島はヘタレな友人ポジションを確立していくものの、それこそ最後の最後まで、上記の発言はのどの奥に刺さった小骨のように忘れがたいものでした。

真・村雨ルートをたどると、上に挙げたような高島の行動は、彼の素の人間性が反映されたものだったことがわかります。高島は基本的にエゴイズムの塊のような人間であり、他者に対する同情や思いやりを持ち合わせていません。だから、濡れて面倒なことになりたくない状況下にあるとき、たとえ相手が仲良くしている設定の瀬崎であっても、傘を頼れないと分かればあっさりと放って先に行くわけです。

「役立たず」発言もまた、彼の人間性と他者に対する眼差しが透けて見えるものです。高島は基本的に他人を「自分にとって利用価値があるか否か」で見ているようです。だからこそ若干マヌケなことをした相手に対し、「役立たず」という相手の価値を否定するひどい罵りがすんなりと飛び出します。そこに「相変わらず」と付されるのは、高島が瀬崎を常日頃から侮っているからでしょう。

高島は「役立たず」発言を冗談だと弁解するものの、真・村雨ルートを見ると、単に本音がぽろっと出ちゃったんだろうなーとしか思えませんでした。相手を見下し利用することしか考えない人間が、「お前と俺は友達」設定で他人と付き合おうとする際に生じるほころびやいびつさ……それが「役立たず」発言に凝縮されているような気がします。

そういうわけで、高島の素の人間性が明かされたときも、驚きこそすれ「なるほど……」と抵抗なく受け入れられました。影沢と取引するほどの狡猾さに関しても、陽動作戦ミニゲームにその片鱗はあったような気がします(非常に細かく道具の使い方を説明してくる。ヒント役とわかってはいても、「これ全部自分でできるけど危ないから瀬崎にやらせてるんじゃないの?」と思えてならなかった)。

また、バッドエンドで浅木が必ず死ぬことについて、通常ルート時点ではこれも細波の犯行なのかなーと単純に思っていました。しかし真・村雨ルートで高島の所業だったことが判明し、「お前だったのか!」と驚きつつも、動機やタイミングを含めて大いに納得した記憶があります。あらためて、高島という新しいピースが何の齟齬も無く元のストーリーと噛み合う点が素晴らしいと思いました。

「灰色の人間」を掘り下げる真・村雨ルート

真・村雨 スクショ いじめられっ子である速水優奈の悪質な部分を指摘するいじめっ子の根岸

真・村雨

また、真・村雨ルートは、白黒割り切れない「灰色の人間たち」を掘り下げるルートでもあった気がします。「灰色の人間たち」とは、具体的には細波や速水、委員長、浅木などのことです。

「そもそも白黒灰色って何?」という話ですが、初見で村雨通常ルートをプレイしているとき、私は11人の登場人物をざっくりと2つのカテゴリに分けていました。身勝手かつ攻撃的な言動でヘイトを稼ぐだけ稼いで退場するいじめっ子グループは「黒」、それ以外のキャラは「白」という感じに。

カテゴリ分けの1つの基準となったのは主人公の瀬崎です。イジメられても屈せず、正義感が強く、他者のために命をかけることができ、何よりとても運が良い真っ白なキャラクター。瀬崎と立場が似ている(例:イジメ被害者)or瀬崎と物理的・心理的距離が近い場合、そのキャラは白い……という風にカテゴライズしていました。

もっとも、単純に白黒を割り切れないキャラクターも当然ながら存在しました。具体的には、イジメを主導していたものの非常時に臨んで行動力を見せた不良の浅木、一度は速水を見捨てたものの自身の行いを悔いて助けに向かった委員長の香川、他者の命を奪ったもののイジメ被害者であり同情すべき点の多い細波など。

この3人に関しては、浅木と委員長はいいとこ見せたし真相解明エンドで生存するし白、細波は運の悪かった瀬崎みたいなものだから白、とやや無理やりに判定してザ・エンドへと進みました。

しかしそうして迎えた後日談で待っていたのは、「病的な人間不信に陥った速水が委員長を階段から突き落とす」という後味最悪の結末でした。「いじめられっ子かつ細波の思い人だから白」と単純にカテゴライズした速水が黒い凶行に走ったことに、私は裏切られたような気分にさえなりました。

ただ、このザ・エンドによって自分の中での白黒カテゴリ制が崩壊したからこそ、続く真・村雨ルートで「白でも黒でもない灰色の人間」の存在をすんなりと受け止められたのかもしれません。というのも真・村雨ルートは、無害な白に見せかけて誰よりも黒かった高島という存在を通じて、他の「灰色の人間たち」が掘り下げられる補完ストーリーであると感じたからです。

フィーチャーされるキャラの中でも特に印象深かったのは、やはり速水優奈でしょうか。真・村雨ルートでは、速水の抱える問題と、彼女が終盤細波をそそのかして根岸彩乃の命を奪った経緯が明示されます。特に、通常ルートでは気の毒な弱者でしかなかった速水の負の面が、いじめっ子である根岸(と飯塚)の口を通じて暴かれる展開には思わず見入りました。

根岸が暴露するのは、速水が自分の至らなさを改善せず、むしろ委員長の善意につけ込み利用し続けていた……という事実です。とりわけ課題乗っ取りは完全にアウト案件だなーと個人的には感じました。相手と対等であろうとせずに善意を利用して搾取するって、言ってみれば高島にも通じる姿勢じゃないか、と。

その直後に暴露内容を自ら証明するかのごとく細波に頼って根岸を排除してもいるし、速水は根っから依存&利用体質女子なんだなーと痛感しました(思えば通常ルートのザ・エンドでも、速水は友情を盾に理不尽な隠蔽を瀬崎たちに迫っていました)。

上の速水に対する掘り下げの何が良かったかと言えば、速水の内面(主にネガティブ面)が補完され、通常ルート時点では鼻白むほかなかった彼女の変貌に一定納得が行ったことです。つまり、速水にはもともと「友達=自分にとって都合の良い存在」という認識があって、速水と委員長の友人関係はどちら視点でも健全とは言い難いものだったんだろうな……と推し量れるようになりました。

通常ルート時点だと、速水は可哀想な弱者かつ被害者でしかありません。ゆえに委員長の友情を壊す行為(=土壇場で見捨てる)が何より問題視され、後半は彼女がひたすら後悔して仲直りを求める構図になります。そして、反省して誠意を見せた委員長が報われないラストに釈然としないものを感じたりもします。

しかし真・村雨ルートをたどると、速水は単純な弱者ではなく委員長を利用していたことと、2人がどちらの視点から見ても対等な友人関係ではなかったことがはっきりと分かるんですよね。委員長視点でのみ友情破壊→友情回復をやっても、速水の方にもともとまっとうな友情心がないから、「1回でも裏切った委員長を許さない突き落としエンド」に行き着くのかあ……と個人的には納得できました(そもそも委員長は速水の怒りを恐れて正式に謝れていなかったらしく、そこも真・村雨ルートでのみ判明する情報でした)。

このように真・村雨ルートでは、通常ルートで白く見えた人間の黒い部分や、黒く見えた人間の白い部分が補完的に描写されていました(たとえば瀬崎に対する浅木の心情が明かされたり、委員長が大海のごとき懐の深さを見せたり)。

通常ルートではどうしてもイジメや殺戮など人間の真っ黒い部分にばかり目が行き、一方で視点人物の瀬崎らは相対的に見て真っ白な人間なので、物事を白か黒かの単純な分類で眺めてしまいがちでした。しかし、真・村雨ルートでは「灰色の人間」描写がより強化されるので、プレイすることで村雨のストーリーにより奥行きを感じられるようになった気がします。

なぜ真犯人はあのタイミングで仮面を脱いだのか?

真・村雨 スクショ 不良である浅木の正義感の強さについて鋭く批評する高島隼人

真・村雨

『真・村雨』について深く考えるフックになったのは、やはり高島隼人というキャラクターでした。より正確に言うなら、彼が屋上で敢行した悪事の告白を見たときに、ある疑問が心を占めるようになりました。その疑問に突き動かされてストーリーやキャラクターを反芻するうちに、『真・村雨』は当初よりもずっと印象深い作品になっていったように思います。

ここで、高島隼人について振り返ります。普段三枚目のヘタレキャラを演じている高島は、実は良心と倫理観を欠いた狡猾な人間です。彼の他人に対する評価基準は、利用価値があるか否か。役に立たないと判断すれば、文字通りアッサリと切り捨てることもあります。上でも挙げた通り、いわゆるサイコパスを彷彿とする特徴を多く兼ね備えるキャラクターだと言えます。

そんな高島の村雨本編での行動は、細波の暴走に便乗して江藤と新堂にトドメを刺す、敵方の影沢と一時共謀する、バッドエンドではもとより気に食わなかった浅木を葬る……等、まさにやりたい放題としか言いようのないもの。通常ルート時点では自分の悪行を他人に悟らせずにのうのうと生還して生活しているので、まさに「真・犯人」と言っても過言ではないキャラクターです。

ただし、高島は生まれつきのサイコパスだったわけではなく、後天的に「壊れた」人間であるとほのめかされてもいます。かつて優等生だった高島は、一時の気の迷いか万引きをし、その後周囲からの評価が一変したことを契機にゆがんでいったからです。

一緒に万引きをした不良がその後更生し周囲に受け入れられたことも、高島の変節の大きな要因だったと言えます。高島もまた万引き後は問題を起こさなかったのに、周囲は彼を白眼視し続け、両親に至っては高島と向き合うどころか勘当し家から追い出したからです。

上の一件を経た高島は、「人間は一度失敗したら終わり」、「マイナスがプラスになることはない」、「土壇場で人の本性が表に出る」といった思想を抱くに至ります。半端に正義感のある不良(例:浅木)への憎悪もおそらくこの過去に端を発するものです。

さて、高島が本性をあらわにするのは、惨劇の夜を乗り越えて平和な日常に復帰した後のことです。突き落とされた香川が浅木に助けられて復活し、謝罪と友情の気持ちを伝えて速水と和解する……そんな感動的な一幕を見て、「なんだよ、それ…。くだらねー」と吐き捨てる高島。彼はあの村での悪事をぶちまけ、浅木や委員長や速水にそれぞれ悪意をぶつけ、瀬崎には冗談めかして許しを乞うた後で、ひとり屋上を去っていきます。

この屋上暴露シーンを見たときに浮かんだ疑問は、「どうしてこの場面ですべてを暴露したんだろう」というものでした。冷静に考えるまでもなく、このタイミングで真実を告白することで生まれるメリットは1つもありません。せっかく細波にすべての罪を着せて生還したのに、ここで暴露すれば周囲との関係も平穏無事な日常も完全に失われます。

たとえ内心でチッつまんねーのと苛立っていても、いつも通り三枚目を装って「仲直りできてよかったな~」とでものんきそうにコメントすればいい話です。それをせずにすべてをブチ壊すというのは、これまで冷徹かつ打算的に判断・行動していた高島にしてはずいぶんと非合理的な選択だと言わざるを得ません。

なぜ高島はこの局面で仮面を脱ぎ捨て自身の本性をさらけ出したのか。その理由を考えたとき、気になったのは周囲のクラスメイト数人に対する高島の態度でした。具体的には、浅木と委員長と速水、そして瀬崎に対する彼の言動です。

結論から書いてしまうと、高島にとって浅木・委員長・速水の3人は「あり得た自分(可能性としての自分)」だったのだろうと思います。一方、瀬崎は高島にとって「あり得ぬ自分(自分と重なるところのない人間)」であり、それゆえに唯一友情を求めた存在だったのではないかと感じました。

そして、あの場で繰り広げられる「友達ごっこ」の輪に入れないことに強烈な疎外感を覚え、もう我慢ならないと衝動的に本性を暴露し、彼らとの関係を自ら完全に断とうとした……それが高島による唐突な暴露in屋上の全容なのではないかと私は思いました。以下、考察というか主観マシマシの感想です。

原因①:「あり得た自分」としての浅木・委員長・速水

まず、高島にとっての浅木・委員長・速水の3人について考えます。この3人のうち、高島がもっとも感情的な反応を示している人間は浅木豊です。

真・村雨ルート冒頭から、高島はしばしば浅木に対して過剰な嫌悪を呈し、「なんちゃって不良」である浅木に内心で毒づいています。そのほとんど憎悪ともとれる敵意は相当のもので、浅木がバッドエンドで確実に命を落とす理由も実は高島にありました。

高島は、浅木の根っこにある正義感の強さを見抜いています。実際、暴力的な不良でありいじめっ子である浅木は、本編の極限状態において、やり方は荒っぽいものの的確な判断と行動力を示して何度も仲間を救いました。勇気を示した細波や瀬崎に対する素直な賞賛を見ても、浅木は他者を徹底的に見下し貶めようとする江藤や新堂とは明確に異なる人間です(少なくとも、後に瀬崎と和解することにあまり違和感は生じません)。

だからこそ、高島は浅木を憎悪します。その過剰にも思える敵意を見るに、高島は浅木を、過去に一緒に万引きをした不良に重ねているのだろうと思います。その不良は高島にとって、「あり得た自分」とも言える存在でした。万引き後に改心して真面目になった彼は、その更生を周囲に評価されたからです。しかしもともと優等生だった高島は、不良と同じように真面目に生活していても、その後周囲に受け入れられることはありませんでした。

つまり、高島にとって浅木は「不良捨て犬理論」を地で行く我慢ならない人間であり、過去の手痛い記憶を喚起する存在でもあったのでしょう。その嫌悪の根っこにあるのは、「あり得た自分」である浅木(=更生した不良)に対する怒りと嫉妬めいた感情だったのかもしれません。

続いて、委員長と速水について。この2人に関して高島ははっきりとした感情を述べていません。ただ、そもそも高島が真相の暴露に至った直接のきっかけは、本人の言を見ても速水と委員長が許し合って仲直りしたことです。

高島は速水の手帳を盗んで彼女の病的な不信感を故意に暴露したほか、和解した委員長と速水に対して、「委員長はまた裏切る」、「速水は一生犯罪者だ」と冷や水を浴びせるような発言もしています。以上より、彼が委員長と速水に明確な悪意を持っていたことは明らかだと言えます。

それでは、高島はなぜ委員長と速水の関係が気に入らなかったのか。結論から言えば、2人は「人間は一度失敗したら終わり」であり「マイナスがプラスになることはない」という高島の持論をきれいに覆した存在だからだと思います。

世話焼きな優等生だった委員長は、生きるか死ぬかの土壇場で友達の速水を見捨てました。速水はそんな委員長を恨み、彼女を階段の上から突き落とすという暴挙に出ました。つまり、委員長と速水はともに取り返しのつかないような「失敗」を犯し、周囲に自らの負の側面を露呈したわけです。

おそらく通常ルートのエンディング(改心した委員長が報われずに速水に裏切られ、速水が歪んだ価値観のもと「友情」を利用しようとする結末)は、高島にとって「それ見たことか」とほくそ笑まずにはいられない展開だっただろうと思います。

しかし真・村雨ルートにおいて、高島の期待は大きく裏切られることになります。浅木に助けられて無事だった委員長は、自分を突き落とした速水を責めようとしませんでした。むしろ自分の村での行いを謝罪し、「本当の友達になってほしい」とやり直すチャンスを求めました。速水は大いに動揺するものの、委員長の申し出に泣き出し、彼女が自分に寄り添うことを拒みませんでした。周囲で見守っていた瀬崎たちも、2人の和解をあたたかく受け入れました。

つまり、一度過ちを犯してマイナス面をさらけ出した委員長と速水は、周囲の支えもあってお互いを許し合い、友達としてやり直す道を選ぶことができたわけです。まさに美談と言うほかないこの成り行きに、高島が冷め切ったことは言うまでもないでしょう。過去に一度失敗した高島は、もろい友情に裏切られ、マイナスの状態からやり直そうとしてもけして周囲に許されなかったわけですから。

そういう風に考えると、委員長と速水もやはり高島にとっての「あり得た自分」だったと言えます。高島の来歴に沿って具体的に表現するなら、万引きをして周囲の信用が失墜した時点の高島が委員長で、周囲に裏切られて人間不信に陥り利己心の塊になった高島が速水……という感じでしょうか。

ただし、2人は高島にはならず、自分の行動によって引き起こされたマイナスの状態をなんとか清算することに成功しました。そして、その模様(マイナス→プラス)を間近で目撃したからこそ、高島はある意味「キレた」のだろうと思います。

以上のように、「あり得た自分」である浅木・委員長・速水の3人に対し、高島は自身の実体験を踏まえた露骨な悪意と嘲りをぶつけています。彼らが自分と同じものにはならなかった(同じところまで墜ちてこなかった)がゆえの興ざめと苛立ちが、高島をそういった行動に駆り立てるのかもしれません。

ところで、真・村雨ルートを最後までプレイして好きになったキャラは、不良の浅木豊と、委員長こと香川麻由美の2人です。

浅木に関しては、キレっぽいけど行動力バツグンで鼻も利き、非常時に頼りになるので最初から好印象でした。もっとも、意図ややり方はどうあれイジメを主導していたのは事実なので、そこに関してはフツーにクズ野郎だと思います。イジメダメ絶対。江藤の陰湿な計画を知っていながら止めずにスルーしたのもいただけません。

制作者様の裏話によると、初期設定の浅木はもっとドクズであり、クズ部分を江藤に持っていった結果今の状態に落ち着いたそうです。そういう意味では、漂白された悪役と言えるのかもしれません。

敵の排除に大いに貢献した&クズ部分を作中で指摘されている&バッドエンドでは容赦なく殺されるため、信賞必罰のバランスは保たれているというか、正史で生き残って瀬崎と仲良くなることに納得できるキャラだとは思います。褒められたものではない部分と根っから悪ではない部分をうまく両立させている制作者様の描写力が見事です。

一方委員長の香川については、最初はわりとよくいる感じの委員長キャラだなと思っていました(優等生、世話焼き、若干浮くこともあるetc.)。ただ、自分の行いを悔やんで速水救出に向かう誠実さと、真・村雨トゥルーエンドで速水を受け入れる懐の深さを見て良い子だなーと感じるようになりました。

委員長と浅木は、ともに「人間には正負の面がある」ことを体現するキャラクターだと個人的には思っています。いじめっ子で不良の浅木が仲間を救い、優等生で世話焼きの委員長が友人を見捨てる……という風に、正負のベクトルは逆ですが、非常時において日常のふるまいとは正反対の行動を見せた点で共通しています。

そして、自分の過ちにケジメをつけようとするところも2人の共通点です。真・村雨トゥルーエンドにて浅木は速水に謝ろうとする委員長の背中を押しますが、当人もエンディング後、瀬崎に謝罪の上果し合いをして和解しています。

クラス内での立ち位置こそ不良と優等生でかけ離れているものの、ストーリー上のポジションを見るに、浅木と委員長はある意味で対になるキャラクターだったのかなーと感じました。

原因②:「あり得ぬ自分」である瀬崎

一方、主人公の瀬崎は高島にとって、上に挙げた3人とはまた異なる存在だったのではないかと思います。端的に言えば、彼にとっての瀬崎は「あり得ぬ自分(自分と重なるところのない人間)」だったのではないでしょうか。

真・村雨ルート冒頭での高島は、抜けたところのある瀬崎のことを「役立たず」と内心で見下しています。しかし、仲間を助けるために何度となく死地に飛び込む瀬崎を目の当たりにして、その印象は徐々に変化していきます。エゴイズムの塊であるがゆえにどうあっても上から目線ではあるものの、異常事態に臨んで勇敢に行動する瀬崎を信頼・尊敬し、「生還したら瀬崎とちゃんと友達になりたい」と思うようになるわけです。

ここで主人公の瀬崎について振り返ると、彼は作中で最も「真っ白」なキャラクターです。お人よしで要領の悪いところがあるものの、弱い立場の人間に寄り添うことができ、強者に抗うだけの正義感があり、他者のために命を賭けることもできる。特徴をいくつか抜き出すだけでも分かりますが、他者への共感や思いやりを持ち合わせず、見下し利用することしか考えない「真っ黒」な真犯人こと高島とは対照的なキャラクターだと言えます。

そして、自分とまったく重なるところのない(=自分のような人間にはなり得ない)瀬崎相手だからこそ、高島は「ちゃんと友達になりたい」という(彼の過去を思えば興味深い)願望を抱いたのではないかと思います。「ちゃんと友達に」を文字通りに解釈するなら、本性を隠して三枚目を演じてなあなあでつるむのではなく、まっとうな友情を築きたい……ということでしょうか。

実際のところ、高島は生還後も例の屋上シーンに至るまで瀬崎にその本性を打ち明けませんでした。本性暴露後は、速水と委員長に対して友情のもろさをあざ笑うこともしています。では「ちゃんと友達になりたい」は、非日常でハイになって心にもないことを思い浮かべただけに過ぎないのか……というと、たぶんそうではないと私は思います。

というのも、高島は本性と悪事を暴露した後、瀬崎にのみ許しを求めているからです。即座に喰ってかかってきた浅木を「お前には聞いてねーよ」といなしたことから、高島が重視していたのは瀬崎の答えだけでしょう。そして、困惑しつつも「許せない」と答えを出した瀬崎に対し、「あーもうわかったっつーの。結局許せないってか」と高島はぼやきます。

初見で高島の「許して♪」を見たとき、呆れると同時に看過しがたい引っ掛かりを覚えた記憶があります。「え、許しを乞うの?」……と。背後にいるプレイヤーとして高島のプライドの高さと独善的な思考を覗いてきたからこそ、「許して」なんて言葉が彼の口から出たことに、どうしても驚かずにはいられませんでした。

もちろん、この場面での高島は終始開き直っているため、あまりに軽いノリでの「許して♪」はその開き直りの一貫、言ってみれば煽りのようなものなのかもしれません。ただ、同じ開き直るにしても、高島なら「俺なんも悪くないもん、誰かに許してもらう必要なんかねーよ」みたいに尊大な方向性に行くんじゃないかと思っていたんですよね。

だから、自分以外の人間をとことん見下しているくせに「俺のことを許してください」と他人にお願いするんだ……となんだか不思議に思ったわけです。

しかし、後で高島の瀬崎に対する印象の変化、とりわけ「ちゃんと友達になりたい」という独白を思い出し、「ああ、だったら何も違和感はないな」と思い直しました。高島の性格上、自分より格下だと思っている相手に対して許しを乞うことはないはずです。つまりあのように許しを求めたこと自体、高島が瀬崎を対等な人間と認めていることの証左だと言えます。

そこから発展して気づいたのは、高島による本性暴露と「許して♪」は、もしかすると直前の委員長と速水の和解をそのまま繰り返そうとしたんじゃないかということでした。つまり、自分の心のうちをさらけ出して許しと友情を乞うた委員長のように、高島も瀬崎に許してもらい彼の友情を得たかったのではないか、と。

そう考えると、瀬崎が「許せるわけないだろ」と言った後に食い下がったことや、「結局許せないってか」とどこか不満げに呟いたことにも納得が行きました。直後に「自首はしない」と明言するところを見ても、高島はそもそも自分の所業を反省していません。また、瀬崎の人間性を評価していた以上、彼が自分の行いを許さないことも最初から予想できたはずです。

それにもかかわらず冗談めかしてでも許しを求め、受け入れられないことに対してやや不服そうな反応を見せたのは、ひとえに高島が瀬崎に友情を期待していたからではないか……と感じました。

トリガー:強烈な疎外感から来る衝動

上の話をまとめると、「高島は、過去の自分とそれぞれ重なるところのある浅木・委員長・速水の3人を程度の差はあれ嫌悪していた。他方、自分とまったく異なる瀬崎のことは信頼できる対等な存在として認め、友情を求めてもいた」……と私は考えました。

ここで、なぜ高島は暴露に踏み切ったのかという疑問に立ち返ります。そもそもあの暴露は突発的かつ衝動的なものだと思うので、どうしてすべてをブチまけたい衝動に駆られたのか、ということが問題です。

もはや完全に主観ですが、高島を突き動かしたのは、あの瞬間における「圧倒的な疎外感」ではないかと私は思います。

浅木は土壇場で正義感に目覚め、人を殺めたショックからなんとか立ち直って登校してきた。委員長は自分の行いを反省して諦めずに友情を求めて報われた。速水は利己心と人間不信を露呈しつつもなんとか軌道修正し周囲に受け入れられた。そして瀬崎は、一件落着とばかりに月村とのんきに喜び合っている。

そのとき、あの村で闇に紛れて悪事を行い、尊大な自己と人間不信を抱えたまま生還し、いまだにうわべだけの自分を取り繕って生活している高島は、「もうウンザリだ」と衝動的に思ったのではないでしょうか。自分の期待を裏切って目前で展開されるきれいな「友情ごっこ」にも、「ヘタレでアホの高島」が瀬崎たちに友達認定されてその場に突っ立っていることにも。

というのも、瀬崎たちがその瞬間共有している温かな感情から、高島は実際のところただ一人疎外されているからです。ドス黒い部分をひた隠しにしている高島隼人という人間は、この先も永久に瀬崎の「本当の友達」になれはしないからです。

ゆえに高島は、「なんだよそれ…。くだらねー」という素直な第一声とともに、一気にペルソナを脱ぎ捨てたのだろうと思います。村での暗躍っぷりと比べればまったく賢くないし合理的でもない、言ってみれば子供じみた行いです。ただ、あの場面での高島は、疎外感や苛立ちからそうせずにはいられなかったのではないでしょうか。

まとめると、ダークサイドに墜ちなかった3人やうすら寒い友情の輪、「瀬崎と友達になりたい」という願望が叶わないこと、そういった諸々の現実にもはや抑えがきかなかった。だから衝動的に隠してきた悪意をばらまき、委員長をまねるようにして瀬崎に友情を求め、「俺たちは仲間」という幻想をブチ壊した。我慢してきたことをすべてやって自ら瀬崎たちから自分を疎外させようとした。それが高島隼人による一連の暴露の内実なのかなーと感じました。

ここまで高島について長々と考えましたが、正直なところ、「可哀想な過去があるから~」みたいな擁護をしようとはとても思えないタイプのキャラクターでした。内心で思っているだけのことはともかく、実際に本編でやったことがド畜生なので。

ただ、通常ルートのストーリーをバッチリと補う立ち回りは素晴らしかったです。また、時折垣間見える思春期っぽいプライドの高さ(例:ここで行かないと瀬崎や浅木以下になると思って突撃)や、バックグラウンドに絡む人間臭さ(例:半端な不良である浅木への嫌悪)などは好印象でした。

ラストの暴露は「最後の最後に人間臭いところをモロに出していったな……」と強く印象に残ったし、このシーンをきっかけにストーリーや他のキャラについても色々と考えることができたので、悪役としてとても良いキャラだなーと思います。

*****

ちなみに、『真・村雨』を知ったきっかけは『左眼ジャック事件』(サスペンスADV)でのパロディネタです。フリゲ好きの主人公と実況者の友達が語り合うシーンで、簡単なあらすじと見どころが紹介されていて、キーワードでググったところ『真・村雨』がヒットしました。

≪関連記事:『左眼ジャック事件』 現代のジャック・ザ・リッパーを追って霧の街を往くサスペンスADV レビュー その1

色々と考えていたら長い記事になりました。『真・村雨』、面白かったです。(『真・村雨』のラストで関連が匂わされている)同制作者様による『ヒトミサキ』(ノスタルジックミステリーADV)もめっちゃ面白かったので、いずれ感想記事をアップしたいなーと思います。→ 更新しました!

『ヒトミサキ』 懐かしい故郷で事件が起こるノスタルジックミステリーADV 感想&攻略 ※ネタバレ注意

「旅行or休暇中の学生たちが凄惨な事件に巻き込まれる」作品について、いくつか感想記事を書いています。

『人魚沼』(リメイク版) 人魚伝説の謎を解き明かすADV 感想 ※ネタバレ注意
『風の殺意』 山荘で展開される青春サスペンスADV 感想 攻略 ※ネタバレ注意
『ある夏の日、山荘にて……』 サウンドノベル形式の推理ゲーム 感想 攻略 ※ネタバレ注意

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かーめるん
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