『キングスマン』 スタイリッシュなスパイアクション映画 レビュー 感想 ※ネタバレ注意
コミック原作のスタイリッシュなスパイアクション映画、『キングスマン』のレビュー&感想記事です。

今更ですが、京都シネマで『キングスマン』(『Kingsman: The Secret Service』)を観てきました。
キャッチコピーは、“表の顔は、高級テーラー。しかしその実体は、世界最強のスパイ機関〈キングスマン〉。”
京都に滞在中、昔通っていた映画館にふらっと足を運んだら、たまたま「『キングスマン』上映予定」とありました。マシュー・ヴォーン監督作品と小耳には挟みつつ見逃していたので、僥倖と思いチケットを購入。
上映15分前の入場段階でロビーにかなりの数のお客さんが居たので少し驚きました。上映開始ギリギリまでお客さんが来場し、ほぼ前列まで埋まっていた気がします。大型の映画館に比べると広くはないシアターですが、それでも多いなと思いました。人気ですね。
現在京都シネマでは、2015年に反響が大きかった作品を中心に名画リレーを行っているそうです。レイトショーなので仕事帰りや放課後に見に行くといいかもしれません。
「鉄は熱いうちに打て」ということで、以下はややまとまらない感想です。ネタバレにご注意ください。
『キングスマン』上映前後の感想
『キングスマン』について事前に知っていたのは、「スパイアクション映画」ということくらいです。上映前にハリー、エグジー、アーサー、ヴァレンタイン、ガゼル(と"JB")がそろい踏みしているチラシを眺めつつ、面白そうだなとテンションを高めていました。
今回は日本語字幕で鑑賞しました。上映時間は2時間と少しでしたが、中だるみすることもなく集中して観ることができました。だいたい下記の場面で場内に笑いが起きていた覚えがあります。
- 同一ターゲットを落とせミッション
- エグジー「ジャック・バウアー」
- 例の教会を抜け出す際のハリーの告白
- エグジーのマーリンへの執事任命
- マーリン「これは私の武器だから」
個人的な感想を言うと、超エキサイティングな映画でした。観終わった後もしばらくワクワクして興奮が収まらず、余韻に浸ってしまいました。本当を言うと、エクスクラメーションマークを5つほど付けて感想文を書きたいくらいです。
『キングスマン』と現代の紳士
さすがはマシュー・ヴォーン監督というか、非常に過激でスタイリッシュな作品でした。スタイリッシュ感と血生臭さが共存するアクションシーン、独自の美学とこだわりを持つ魅力的な悪役、若者の成長を描いたジュブナイルな空気感など、見どころは盛り沢山です。
エグジーたちの訓練パートは、『X-MEN:FC』の授業パートを思い起こす演出とテンポの良さでした。その他、往年のスパイアクション映画のオマージュっぽいシーンが随所にあり、もっと詳しければより楽しめたかもなーと歯がゆい気持ちになりました。
今作のキーワードは「紳士」。ブリティッシュスーツに身を包み、黒ぶち眼鏡をかけ、黒い傘を持つスパイの姿は妙に真新しく魅力的でした。
そのアクションシーンは大胆ながらどこかエレガント。相手を容赦なくぶちのめしつつも、まるで「紳士は歩くもの、けして走らない」とでも言いたげな一定の余裕を漂わせています。キングスマンはまさに、現代における格好良い戦士なのでしょう。
多彩なアクションシーン
アクションシーンについてはもう満足の一言でした。柔軟かつ余裕たっぷり、間接キメキメなハリーのアクションと、圧倒的な身体能力の高さを見せつけるガゼルのアクションが個人的には双璧です。
まず序盤の教授救出シーン。華麗なアクションで観客を惹き込んだ上で、完全に強者オーラを出していたランスロットをあっさりと殺す演出には痺れました。最初は何が起こったのか分からず、義足で軽やかにステップを踏むガゼルを観て驚愕したものです。
義足の秘書兼殺し屋である「ガゼル」のアクションは、彼女のしなやかな体つきと相まって、美しい獣の戦いのようにも見えました。両脚の義足を武器にするという発想にまずびっくりです。
彼女が歩くとき、走るときには「カシャンカシャン」と軽快な金属音が聞こえてくるのですが、終盤になればなるほどその音に強い恐怖を感じるようになりました。脚を一振りするだけでスパスパと敵が切断されていく絵面は、もはや驚愕でしかありませんでした。強すぎる。
ガゼルの恐ろしさは、演者であるソフィア・ブテラの脅威的な身体能力あってのものだと思います。エグジーとのラストバトル、ブレイクダンスさながらの脚回しには改めて度肝を抜かれました。
そして、ガラハッドこと「ハリー・ハート」のアクションシーンもまた素晴らしい。柔軟でありながら一定の型を感じさせる洗練された動き、得物を的確に使い分ける知的な戦い方は痛快の一言でした。
ハリーの主要な戦闘シーンはバーと教会の2つですが、どちらもアクションとカメラワークがキレッキレでしたね。それでいて、理性ある前者と正気を失った後者の違いが感じ取れるつくりでした。
クライマックス突入の手前、教会でのハリーの大立ち回りは、『キック・アス』におけるビッグダディの活躍を彷彿しました。「ああ、これはハリーが死ぬ流れだろうな、監督容赦ないからな」と思いつつ、もはや殺戮と言わざるを得ない過激なアクションシーンに魅入ってしまいました。
(案外キレっぽいけど)紳士然としたハリーの豹変によって、ヴァレンタインの計画の恐ろしさを最大限に印象付けるナイスなシーンだったと思います。
マシュー・ヴォーン監督雑感
マシュー・ヴォーン監督の作品では、けっこうさくっと人が死にますよね。しかも若干グロく、観る者の倫理観を絶妙に刺激する感じに。血も少し飛びますし、切断面も映るときは映ります。
それでも悪趣味に見えないのは、監督の美的感覚と絵的に映えるかどうかの判断が優れているからだと思います。教会の戦闘シーンはグロ的に、VIPたちの首が爆ぜ飛ぶシーンはPOPに過ぎるという点で、どちらもギリギリのラインを攻めてるなーと思いましたが。
ところで、ヴォーン監督の作品を知ったのは、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』が最初でした。飛行機に乗ったとき、機内で放送されていたのでなんとなく観たのがきっかけです。
当時は「エックスメン? 全身青い人がいるバトル物?」くらいのガバガバ認識でした。にもかかわらず、完全に作品に惹き込まれたことをよく覚えています。目が覚めるような面白さでした。居ても立ってもいられず、旅行から帰った後ですぐにレンタルしに行きました。
ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンスといった役者さんを知ったのもやはり『X-MEN:FC』がきっかけ。今なお大好きな映画の一つです。
BGM・キャラクター感想
エンディングロールの曲を聴いたとき、不思議と既視感を覚えました。後で確認したらボーカルはTake That。『X-MEN:FC』では"Love Love"を歌っていたグループです。
"Love Love"は当時よくリピっていたなーと懐かしくなりました。映画の雰囲気にマッチしたメロディーも意味深な歌詞も、とにかく印象に残るんですよね。『キングスマン』での"Get Ready For It"も、高揚感溢れる良い曲でした。
ガゼルは上でも書きましたが、「ヴァレンタイン」もかなりクレイジーな悪役でした。「血は嫌いなんだ」と散々言っていた通り、自分の最期でさえ血を見てゲロを吐くのだから徹底しています。
カジュアルな装いと気さくな態度にそぐわない、ネジの外れたような明るい狂気がアンバランスで素敵でした。グルーヴィーなミュージックに乗せて楽しそうに人類殺戮を決行する姿はある種輝いていましたね。「こだわり+美学+お気に入りの音楽=魅力的な悪役」というイメージです。
次に主人公の「エグジー」ですが、彼は英国の貧困層の出身のようです。自分の可能性を信じてくれたハリーに感化され、"Manners maketh man."を我が物にしていくエグジーの成長物語はどこまでも王道的でした(「生まれではなく礼儀が人を作る」という思想は、まだまだ階級意識が根強いらしい英国ならではなのかなと思います)。
訓練課程に入る前のパルクールめいた逃走劇など、エグジーのアクションも見応えがありました。ラストバトルのスーツ姿もカッコいい。若者らしい調子に乗ったところがあるのも逆にいいですね。しかし、『大逆転』や『ニキータ』はともかく、『プリティ・ウーマン』を観たことがないのは意外でした。海外物にはあまり興味がないのでしょうか。
また、「マーリン」も味のあるキャラでした。この役者さんどこかで見たことがあるなあと思っていたら、『キック・アス』でマフィアのボスを演じていた方だったんですね。
アーサー王伝説のマーリンは、魔法を用いて新しい円卓の騎士の選出に関わったと言われます。キングスマンのマーリンも新しいキングスマンの選定役として非情な命令を下しますが、どこかコミカルな苦労人っぽさが滲み出ていて憎めません。扱うのは魔法ではなくハッキング能力です。マーリンもまた、黒ぶちメガネとスーツが似合ういい男でした。
最後に、ハリー・ハートを演じるコリン・ファースが超セクシーでした。バーでチンピラたちに背中を向けたスーツ姿のシルエットなんか最高。カッチリとしたスーツ+姿勢の良さのコンボで、体つきの良さが映えていました。
コリン・ファースが出演した海外ドラマ、『高慢と偏見』("Pride and Prejudice")に関して、「彼がひと泳ぎした後のシーンへの反響が凄まじかった」と聞いたことがあります。そのときはへえーと思った程度でしたが、今は無性にそのシーンを観たい気分です。
*****最近は映画から完全に遠ざかっていたので、映画館に足を運ぶことも無くなっていました。しかし、やはり映画館で映画を観るというのは格別の体験です。またちょくちょく映画館に行こうかなと思いました。
映画館のいいところは、臨場感たっぷりなのもそうですが、他のお客さんと場面場面での感動を共有できることにあると思います。たとえば私の場合、コミカルなシーンで隣の人がふふっと笑う気配がするとなんとなく気分が乗ってきます(これは個人の感じ方によるとは思いますが)。
そういった感情の共有って、「映画を親しい人と一緒に見たい」ということと必ずしもイコールではないんですよね。仲の良い人と一緒に観に行くのも後で感想を言い合えて楽しいですが。
晴れてブログタイトルを一部回収できてほっとしています。次は旅カテゴリの記事ですが、こちらも近々アップしようと思います。フリゲの感想記事もできるだけ近いうちに上げます。
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