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『あの日あの夏あの祠』 幼き日の友情がささやかな奇跡を起こすSFADV 感想&攻略 ※ネタバレ注意

2021/06/18
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幼なじみ3人の友情をめぐる少しふしぎなSFアドベンチャーゲーム、『あの日あの夏あの祠』の感想&攻略記事です。軽いキャラ考察もしています。制作者は鳥籠様。作品の紹介ページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『あの日あの夏あの祠』

あの日あの夏あの祠 スクショ タイトル画面

あの日あの夏あの祠

『あの日あの夏あの祠』は、SF要素のある短編アドベンチャーゲームです。選択次第でグロ描写あり。クリアまでの所要時間は約15分。エンディングは、私が確認した限り2通りは存在します。

以前『左眼ジャック事件』の感想記事を書いたときに、拍手コメントで「『左眼』には制作者様の他の作品のキャラがかなり出ている」との情報を頂きました。『神林家~』や『何も事件は起こらなかった』、『鵺の子』をプレイして確かにその通りだと実感したので、最近鳥籠様の短編作品をちょっとずつ遊んでいます。

『あの日あの夏あの祠』をプレイしたのは、作品紹介サムネに見覚えのあるキャラが2人映っていたからです。というより、作品の舞台が明らかに『左眼』で頻繁に足を運んだあの場所だったので、もういそいそとプレイしました。

「夏×友情=切ない話」だと勝手に思っていますが、『あの日あの夏あの祠』は少し切なくほろ苦く、でも消えることのない友情に感動を覚えるゲームでした。探索による分岐があったり、後発の『左眼』と合わせると意外な事実が確定したりと、制作者様の作品ならではの面白い仕掛けもありました。

以下はネタバレ込みの感想です。攻略情報や考察っぽい雑感なども書いています。ストーリーやエンディングを未見の方はご注意ください。また、本作と関係のある部分に関して、世界観を共有する『左眼ジャック事件』にも言及しています。

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『あの日あの夏あの祠』のあらすじ

『あの日あの夏あの祠』のあらすじを書きます。

あの日あの夏あの祠 スクショ 失意に沈む主人公は祠から不思議な声を聞く

あの日あの夏あの祠

小学4年生の夏休み、主人公の「僕」は、幼なじみの「玲人」と「栗子」と近所の祠でよく遊んでいました。その祠は長い長い階段を上がった先にあり、松の木を背後に従えて公園の奥に鎮座していました。

頻繁に祠を訪れるお爺さん(松林吾郎)に見守られつつ、日が暮れるまで楽しく遊んでいた3人。鬼ごっこをしたり、木登りをしたり、小6のときには一緒にタイムカプセルを埋めたり。しかし中学への進学を境に3人はだんだんと疎遠になり、やがて主人公と栗子は大学進学に伴って地元を離れることになります。

大学を卒業し社会人になってから数年後、主人公は久しぶりに故郷に帰ります。思わぬ訃報が届いたためです。意気消沈したまま祠を訪れ、過去の選択を悔やむ主人公。すると祠から光が漏れ出し、不思議な声が響きます。「願うか? 1度だけ あの日に戻って」――と。

祠に秘められた不思議な力とは? 主人公は願いを叶えることができるのか? そして、最後に明かされる幼なじみ3人が起こした奇跡とは? ……といったあたりが『あの日あの夏あの祠』の見どころです。

『あの日あの夏あの祠』のゲームオーバーとエンディング攻略

最初に、『あの日あの夏あの祠』の分岐とエンディングについて軽くまとめます。ネタバレにご注意ください。

あの日あの夏あの祠 スクショ ゲームオーバーへの分岐点

あの日あの夏あの祠

『あの日あの夏あの祠』は、①小学生時代の夏の日(小6以前、おそらく10歳前後)→②22歳の夏の日→③24歳の夏の日(雨)→④22歳の夏の日(タイムリープ)→⑤24歳の夏の日(晴れ)という5つの大きな場面によって構成されています。

このうち、分岐が発生するポイントは2つ。わかりやすい1つ目のポイントは、「②22歳の夏の日」にあります。地元に帰省した大学4年生の主人公が夕暮れ時に祠へ向かい、久々に栗子と出会って相談を受けるシーンですね。

同シーンにて栗子が去り、吾郎さんも去った後、主人公は祠を後にして階段を下りていきます。ここで「おい! チビ!!」と背後から呼ぶ声がして、「振り返った or その声を無視した」の二択が発生します。

「振り返った」が正規ルートであり、選択するとそのままゲームが進行します。一方呼び止める声を無視すると、主人公は走ってきた車に追突されて弾け飛び(わりとグロい)、あえなくゲームオーバーになります。

このように1つ目の分岐は非常にわかりやすいですが、2つ目の分岐ポイントは場面ごとによく探索していかないと見つかりません。

2つ目の分岐のヒントを発見できるタイミングは、同じく「②22歳の夏の日」の場面です。マップ左下、栗子が隠れているコンクリートの築山を裏から調べてみましょう。「子供の落書きがある」ことがわかります。

もっと近づけば……という誘導に従って同じ箇所をもう1度チェックすると、「南に○歩 西に○歩 北に○歩」というメッセージが書かれていることがわかります(正確な歩数は伏せます)。

スタート地点は祠の前です。メッセージに従って【下に○歩、左に○歩、上に○歩】進み、EnterキーかZキーを押すとあるものを発見できます(24歳の夏の日、玲人がさらっと言及するもの)。ただし、この時点では見つけるだけで何もできません。

22歳の夏の日に見つけたあるものにアクセスできるのは、その2年後の「③24歳の夏の日(雨)」のシーンです。栗子が亡くなり、祠のベンチで雨に打たれる主人公のもとに玲人がやってくる場面ですね。

タイミングは、玲人が去った後~祠を調べる前です。22歳の夏の日に築山のメッセージを確認していれば、このタイミングであるものを掘り出すことが可能です。

ただし、ここで問題となるのは掘り出す手段。主人公の言う通り、何らかの道具が必要です。同じシーンで祠周辺をじっくりと探索する(一歩ごとに決定キーを押してチェックする)と、掘り出すための道具が見つかります。道具を入手しあるものを掘り出すと、フラグ立ては終了。エンディング内容が変化します。

いくらか検証しましたが、築山のメッセージを確認してフラグを立てていないと、まったく同じ場所を調べても「あるもの」は発見できないようです。また、24歳の夏の日(雨)の時点では、築山のメッセージはかすれて読めなくなっています。

つまり、22歳の夏の日のタイミングで築山のメッセージを確認していないと、24歳の夏の日(雨)の場面であるものを掘り出せなくなります。注意しましょう。

あるもの発見に関しては、築山のメッセージを見つける代わりに、松の木(左から2本目)を調べることでもフラグが立つんじゃないかなーと思います(たぶん)。あと、22歳の時点ではメッセージさえ確認しておけばOKのようです。実際に歩いて発見せずとも、「あそこに埋まっている」ということさえ分かっていれば、24歳の時点であるものを掘り出せます。

また、掘り出すための道具は22歳&24歳の両方のシーンで発見可能です。22歳の時に見つけておかないとダメ、といった縛りはありません。

『あの日あの夏あの祠』の感想(※ネタバレ込み)

あの日あの夏あの祠 スクショ 最後に4人揃った24歳の夏の日

あの日あの夏あの祠

『あの日あの夏あの祠』を遊んだきっかけは、上でも述べた通り、紹介サムネに「栗子」と「玲人」が映っているのを見つけたからです。実は2人は『左眼ジャック事件』にもチラッと登場していて、短い露出で明確なバックグラウンドを持っていることを匂わせているキャラクターでした。また、紹介サムネには「あの祠」としてお馴染みの場所も映っていたので、これはプレイするしかないと思って遊び始めました。

≪関連記事:『左眼ジャック事件』 現代のジャック・ザ・リッパーを追って霧の街を往くサスペンスADV レビュー その1

フラグを立てて(たぶん)完全なエンディングをクリアした後に抱いた印象は、「少し切なくてほろ苦いけど後味爽やかでハートフルな友情物語」でした。

「時をさかのぼって命を落とす定めだった友達を救う」という筋書き自体は、たぶんそう目新しいものではないと思います。ただ、やはり見せ方(構成と演出)が秀逸なんですよね。プレイ中は「あれってそういうことだったのか」とうならされたり、「早く栗子ちゃんのところに!」と必死な気持ちになって応援してしまったりと、短いお話なのにすごく楽しいゲーム体験をさせていただきました。

何よりも印象的だったのは、主軸となる3人の友情がストレートに感動を呼ぶものだったことです。

小さな頃は毎日のように一緒に過ごしていても、進学して友達が別にできれば疎遠になっていく。更に年を重ねれば、1人2人と地元を離れてまったく会わなくなることだってある。『あの日あの夏あの祠』は、そんな寂しいけれどリアルな現実を描いています。

ただ、たとえ3人を取りまく環境や関係性が変わっていったとしても、幼き日の友情がまったくなかったことになるわけではありません。実際、主人公と栗子と玲人の3人は、互いに関知し得ないところで幼なじみを救うために利他的な行動をとりました。

人生にただ1度だけ許される願いを、3人が3人とも友達を助けるために使った……そう考えたときに、大人になった3人が揃って吾郎さんと対面するエンディングのかけがえのなさを改めて実感できました。「我等友情永久不滅」ではないですが、「幼き日の友情が消えることはない」という理想を、主人公たちが各々の行動によって示してくれたストーリーだったように思います。

よくよく考えれば、20歳のときに栗子が玲人を救う→22歳のときに玲人が主人公を救う→24歳の時に主人公が栗子を救うという連鎖あってこそ、トゥルーエンドでの再会が成立したんですよね。1人欠けただけでも再会を成し得なかったことを思えば、吾郎さんが3人を天晴れと思い、代償を承知で手を貸したのも納得の行く話です。

夕暮れ時の再会と別れに感動したぶん、物語を総括するかのような吾郎さんの言葉(「君たちは昔から、友達思いの良い子たちだ」/「君たちは3人が3人とも、祠に願い、友人の命を助けた」)を思い返して目頭が熱くなりました。

エンディングと分岐について

ところで、最初にエンディングを見たときに抱いた感想は「玲人はどこ?」でした。幼なじみ3人の物語なのに、お世話になった吾郎さんとのお別れの場にいるのが主人公と栗子だけ、そのまま2人で和やかに話して終了ってそれでいいんだろうか……とめっちゃ思ったんですよね。そこで、1周目でも痕跡を見つけていたタイムカプセルを回収するために2周目を開始しました。

2周目に丹念に探索すると、公園内にいくつも探索ポイントがあることがわかって嬉しかったです。たとえば松の木4本すべてに個別メッセージがあるのを見つけたときは、思わずテンションが上がりました。22歳→24歳の2年間でタイムカプセルの場所を示すメッセージがかすれて読めなくなる仕様も、探索ADVっぽい細やかさで好きです。

2周目では無事に道具を発見し、降りしきる雨の中でタイムカプセルを掘り返すことに成功。その後、タイムリープを終えて祠に戻ったとき、栗子の隣に玲人の姿を見つけてもうハンパなく嬉しい気持ちになりました。とりたててエンド表記が異なるわけではないですが、私は4人再会エンドがトゥルーエンドだと認識しています。

「どうしてタイムカプセルを開封すると玲人が現れるんだろう」と最初こそ不思議に思ったものの、後で栗子の手紙を読み返してなるほどなあと思いました。大好きな人たちに大人になってもまた会いたい。4人揃ってあの祠の前で再会したい。そんな幼い栗子の願いを叶える形で、吾郎さんがいなくなる直前のあのタイミングに、玲人はギリギリ駆けつけてくれたんだな……と。こういう伏線というか理屈立て、すごくいいなと思います。

幼なじみ3人に関する考察

『あの日あの夏あの祠』は、正統派なSF友情物語である一方、制作者様ならではの仕掛けも光る作品だったように思います。主に主人公について掘り下げたくなる要素が多く、そこについて考えるのも楽しかったです。

以下では、メインキャラ3人の設定や関係性について色々と考えています。ネタバレが含まれるのでご注意ください。

主人公(ちーちゃん)の性別と名前について

あの日あの夏あの祠 スクショ 主人公の性別と名前 考察

あの日あの夏あの祠

主人公は一人称が「僕」で、栗子からは「ちーちゃん」、玲人からは「チビ」と呼ばれています。言動的にもキャラチップ的にも男性に見えますが、どうも主人公の性別は女性のようです。

1つのヒントとなるのは、栗子による他2人の呼び方かなーと思います。玲人のことは「玲人」と呼び捨てですが、主人公のことは「ちーちゃん」とちゃん付けするんですよね(ちなみに、子供の頃はそれぞれ「れいと君」と「ちーちゃん」呼び)。この呼び方の違いは、玲人が男性、主人公が女性であるためではないかと考えられます。

性別に関係なく、玲人とはお互い呼び捨てで、主人公とはお互いちゃん付けで呼び合うというだけの話なのかもしれません。ただ、制作者様が以前制作された推理ADVには、主人公の性別に絡む叙述トリック(※呼称の違いによって本来の性別を示唆)が仕込まれていました。ゆえに、呼称の違いに重要な理由がないとはいささか考えにくいのでは……と個人的には思います。

以上のように考えましたが、実は後発作品の『左眼ジャック事件』において、「ちーちゃんは女性である」とほぼ確定しています。同作に登場する玲人が、「昔好きだった女が地元を離れて全然帰ってこない」と発言するからです。その後の「(チビと)直接会ったのは3年くらい前」という発言と併せると、ほぼ「昔好きだった女=ちーちゃん」と断定していいのではないかと思います。つまり、主人公のちーちゃんはやっぱり女性です。

また、作中で頑なに伏せられている主人公の名前についてもある程度推測することは可能です。注目すべきは、ゲーム冒頭で3人が遊んでいる「グリコ」でしょう。ジャンケンをして勝った手に応じて階段を進んでいくゲームですが、その進み方(歩数)は「チヨコレイト」・「グリコ」・「パイナツプル」の3通りです。

こうして書き出すと分かりやすいですが、栗子は「グリコ」、玲人は「チヨコレイト」由来のネーミングだろうと思われます。そうなると、主人公の名前もまた「チヨコレイト」・「グリコ」・「パイナツプル」から採られている可能性が高いと言えます。

ここで栗子が主人公を「ちーちゃん」と呼ぶことに着目すると、主人公の名前は「チヨコ(千代子、千夜子etc.)」なのではないかと思いました。つまり幼なじみ3人の名前は、チヨコ、レイト、クリコです。

パイナップル由来の名前という線もありますが、ゲーム冒頭で発される2番目のセリフが「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」(by玲人)なんですよね(1番目は「じゃんけんぽん!」)。実は序盤も序盤の他愛もない場面で主人公の名前が真っ先に明かされていたと考える方が、仕掛けとして面白いんじゃないかなーと思いました。

もっとも、栗子の「ちーちゃん」呼びが「チビのちーちゃん」から来た呼称である可能性もあります。ただ、栗子は『左眼』で「今はもう小さくないんだから」と玲人の「チビ」呼びをたしなめています。そんな彼女が「チビ」由来の呼び方をするとは考えにくいので、やはり「ちーちゃん」は主人公の本名由来のニックネームではないかと思います。

主人公と玲人と栗子は三角関係にあるのか?

あの日あの夏あの祠 スクショ 主人公と玲人と栗子は三角関係にあるのか 考察

あの日あの夏あの祠

『あの日あの夏あの祠』は、仲の良い幼なじみ3人の友情を描いたお話です。ただ同時に、作中で彼らが三角関係にあるらしいことが匂わされています。

結論から書くと、主人公は栗子が好きで、玲人は主人公が好きで、栗子は玲人が好きなんだろうな~と私は思いました。きれいなラブトライアングル。以下、そのように感じた理由を書いていきます。

主人公→栗子→玲人→主人公……の三角関係を疑う第一の理由は、作中で主人公が栗子を、栗子が玲人を、玲人が主人公をそれぞれ救っているからです。つまり、「あの人を救いたい」という強い思いが、実は恋愛感情のベクトルの向きとも合致しているのではないかと考えました。

3人とも救った相手について「生きてね。(中略)いなくなったら悲しいよ」、「(10年間)ずっと悔やんでいた」、「長生きしろよ」といった強い思い入れを伴う言葉を発しているので、救いたかった人=好きな人ととらえるのは一定妥当な気もします。

第二の理由は、単なるイメージ喚起に限った話ですが、ゲーム冒頭で三人が「グリコ」を遊んでいることです。グリコの根本はじゃんけんであり、じゃんけんではグーチョキパーという3つの手によって勝ち負けが決定されます。3つの手は、グーはチョキに強く、チョキはパーに強く、パーはグーに強い……という三すくみの関係にあります。

ここから幼なじみの3人について、恋愛的な矢印が向き合うことのない(一方通行の)三角関係が匂わされているのではないかと感じました。つまり、主人公→栗子→玲人→主人公……という両想いが成立しない三角関係です。

続いて、各人の描写を詳しく見ていきます。まず、主人公の初恋の人は栗子です。これは本人が明言しているので確定事項と言ってもいいでしょう。タイムリープしたときに面と向かって好きだと告白しているため、24歳時点でもまだ栗子のことを想っているようです。

次に玲人について。彼にも初恋の人がいて、「24歳になった今もその人のことが好きだ」と自ら話しています。文脈や状況その他から考えるに、ゲームに未登場の人物を想っているという線はないでしょう。また、吾郎さんが初恋の人である可能性も極めて低いと思われます。よって「玲人の好きな人は栗子と主人公のどっち?」という話になります。

先にも述べた通り、玲人の好きな人はおそらく主人公です。最初に注目したいのは、トゥルーエンドにおける玲人の発言。「タイムカプセルに入れた手紙に、栗子は自分の好きな人のことを書いた」という話題が出たとき、玲人は以下のような発言をしています。

(開封に難色を示す栗子に対して)「何だよ、見ようぜ。誰のことが好きだったんだよ? 初恋か?」
(あと10年くらいは封印しようと言う栗子に対して)「何だよ、誰だよ。初恋は」

あの日あの夏あの祠

表情グラフィックも併せると分かりますが、このシーンの玲人は第三者的な好奇心を隠していません。主人公と自分の初恋話のときは(状況もあるが)シリアスそのものだったのに、栗子の初恋話については「へー栗子好きな人いたのか。で、誰なんだ?」的な態度でけっこうノンキしています。

もし玲人にとって栗子が「24歳の今でも好きな女性」ならば、もっと露骨な関心を示しそうなものだと思います。実際栗子に好意を寄せる主人公は、「今でもその人のこと好きだったりして」というほのめかしを聞いて「え、誰!? 誰なの!?」と思いきり食いついています。この反応の違いだけを取り上げても、「玲人の好きな人は栗子ではない」と言えそうです。したがって消去法的に、「玲人の好きな人は主人公である」という結論が出てきます。

後述しますが、主人公と初恋の人について話したときの玲人は、話の内容が自分の恋心にクリティカルに関わる(主人公のことが今でも好きで、主人公の初恋相手が気になる)からシリアスな態度だったのでしょう。一方トゥルーエンドにおいては、栗子を恋愛対象として意識していないし、彼女の恋心に気づいてもいないから、相対的にのんびりとした応答をしたんじゃないかと思います。

続いて、栗子が亡くなった直後に交わされた、主人公と玲人の会話を引用させていただきます。

「オマエさ、俺の初恋って誰だか知ってる?」
「知ってるよ」
「今もそいつのことが好きなんだ」
「玲人君はさ。僕の初恋、知ってる?」
「誰だよ?」
「栗子ちゃん」
「………… ……そうか」
「驚かないんだね」
「何となく……、そうだと思ってた」

あの日あの夏あの祠

前提として押さえておきたいのは、主人公は栗子が好きであり、かつ玲人の初恋の人を知っているということ。その上で「玲人の初恋の人は栗子である」と考えてみると、いくつか違和感のあるポイントが出てきます。

まず気になるのは、「今もそいつのことが好きなんだ」と言われた直後に、主人公が唐突に自分の初恋話を始めていること。個人の感覚にもよると思いますが、「玲人の話にこういう被せ方をするのって、話の流れを変えたいからかな?」と私は感じました。つまり、玲人の初恋の人について深い話をしたくないから、急角度で話題を変えたのではないか、と。

もし主人公が「玲人の好きな人=栗子」だと知っているのであれば、思い人が亡くなったばかりの彼に対し、上のようにやや無遠慮な遮り方をしないと思うんですよね。後で「自分の初恋の人=栗子」と告白するのであれば尚のこと、「そっか、実は僕の初恋の人も栗子ちゃんだったんだ」と単純に返しそうなものだとも思います。

次に、主人公のカムアウト後の2人のやりとりもやや気になりました。具体的には、玲人の沈黙と短い相槌→「驚かないんだね」→「なんとなくそうだと思ってた」というどこか歯切れの悪い会話です。主人公の「驚かないんだね」は、彼女が同性の栗子を好きだったという事実によるものでしょう。ただ、玲人の沈黙とぎこちない応答は、単にその事実を呑み込もうとしての態度ではないように見えました。

このあたりは想像でしかありませんが、主人公は確かに玲人の初恋の人を知っていたのだと思います。ただし、その初恋の人とは他ならない自分だった。だから、「今もそいつのことが好きなんだ」に対して、即座に「僕は栗子ちゃんが好きだった」をぶつけたのではないでしょうか。

つまり、唐突な遮りにも思えるカムアウトは、その実「だから玲人君の気持ちには応えられないよ」という牽制混じりの回答だった可能性があります。ゆえに玲人は自分の思いが叶わないことを悟り、思い人の栗子を亡くした主人公の心中を慮って沈黙したのではないでしょうか。

以上の「玲人→主人公」に関する推測は、『あの日あの夏あの祠』の中だけで完結するものです。ただ、実は世界観を共有する『左眼ジャック事件』において、「玲人の好きな相手は主人公である(だった)」ことがほぼ確定しています。先ほども書いた通り、玲人自身が「昔、好きだった女が地元を離れて全然帰ってこないんだ……。たまには会いに来いって言ったのに」と発言するからです(金曜夜、大衆酒場)。

玲人は同じゲーム内で、「最後にチビと直接会ったの、もう3年くらい前になるんじゃないかな」とも話しています(土曜夜、ホークテール店内)。よって玲人の言う「地元を離れた昔好きだった女」は、『あの日あの夏あの祠』の主人公であると断定してもよさそうです。

玲人の初恋の人に関しては、「タイムリープしてきた大人栗子説」も考えられるかなーと最初は思いました。明らかに見惚れていたし、良い匂いがしたとも言っていたので。ただ、主人公への態度や『左眼』での発言も勘案すると、やっぱり主人公が好きなのではないかと最終的には思いました。

最後に栗子について。彼女にもやはり初恋の人がいて、「今でもその人のこと、好きだったりして」とトゥルーエンドにて発言しています。結局栗子の好きな相手が明かされる前にゲームは終了しますが、ある程度の推測をすることは可能です。

玲人の場合と同じ理屈から、栗子の好きな人についても「玲人or主人公」の二択が成り立つとして、注目すべきはタイムリープした主人公が栗子と別れる直前のやりとりです。

「栗子ちゃん、生きてね。栗子ちゃんが死んだら悲しいよ 僕、栗子ちゃんのこと、好きだから。いなくなったら悲しいよ」
「………… ありがとう また、会おうね」

あの日あの夏あの祠

上の主人公の発言は、客観的に見て「告白」と言っていい部類のものです。おそらくは涙をにじませながら、ストレートに栗子のことが好きだと伝えています。主人公は栗子に恋愛感情を持っているので、この場面における「好き」は、友人としての「好き」以上の意味を含んでいるものと思われます。

ただし、問題は主人公の告白に対する栗子の反応です。まず最初の沈黙時は、驚いて声が出ないといった風もなく、どこか思案げに口を引き結んでいます。そこから「ありがとう。また、会おうね」と笑顔でさらりと告げて、振り返ることもなくそのまま階段を降りていくのです。

上の栗子の反応を見て、私が感じたことは2つ。1つ目は、「もしかして栗子は主人公の気持ちを察していたのかな」ということ。そして2つ目は、「でも主人公の気持ちに応える気はないんだろうな」ということでした。彼女の反応は明らかに、相手の気持ちを察しつつも優しくかわす人のそれだったからです。

具体的に書くと、最初の沈黙は「やっぱりちーちゃんは私のことが好きなんだ」という複雑な思いを、続く「ありがとう また、会おうね」は「気持ちは嬉しいけどちーちゃんとは友達のままでいたい」という意思を、それぞれ反映していたのではないかと思いました。

もっと言えば、もし栗子の好きな人が主人公なら、告白された時点ではっきりと好意的な反応を見せているはずなんですよね。たとえこの時点では驚きのあまり何も言えなかったのだとしても、タイムリープから戻った後に何らかの言及があってしかるべきです。それをせずに初恋トークを始めようとする時点で、栗子→主人公はまず考えられないんじゃないかなーと思いました。

「栗子→主人公」は上記のように考えにくいとして、「栗子→玲人」についてはどうでしょうか。玲人に対する栗子の好意は、タイムリープしてきた大人栗子に見惚れる玲人に対して、子供栗子がツンケンした態度をとっていた場面から読み取れるのではないかと思います。頬を赤らめる玲人をにむーっと口を尖らせ、「プライド高そう」「気が強そう」と大人栗子をけなす子供栗子を見ていると、これどう見ても嫉妬じゃん~カワイイ~と自然と思いました。

あと、トゥルーエンドにおける栗子→玲人の「ちーちゃんより玲人の方がよっぽど不注意だよ」は、玲人→主人公の「オマエ、昔から不注意なんだよ」を受けての発言です。玲人→主人公がほぼ確定している前提で振り返ると、栗子のこの被せ発言は、やはり玲人への好意を前提にしたものじゃないかなーと思いました。

ちなみに後発の『左眼ジャック事件』では、栗子は転職して地元に戻ったため、玲人と会う機会がぐっと増えたようです。一方の玲人は、若干の未練を見せつつも、地元に戻ってこないちーちゃんへの恋心に一定踏ん切りをつけた雰囲気があります。栗子が今でも玲人を好きかどうか定かではないものの、『左眼』での描写を見ていると、2人が後々付き合うこともあるのかもなーと思いました。

*****

『あの日あの夏あの祠』、短いながらもまとまりがよくストレートに感動できるお話でした。最近プレイした『鵺の子』や『何も事件は起こらなかった』も面白かったので、いずれ短い感想記事をアップするかもしれません。

ところで鳥籠様のゲームを5本ほど遊んで思ったのは、最新作の『左眼ジャック事件』はオールスターっぽい作品だったんだなーということです。昔から鳥籠様のゲームをプレイしている方は、『左眼』に見知った顔のキャラを何人も見つけて嬉しくなったんだろうな、と。

私は『左眼』を最初にプレイしたクチなので、残念ながらそういった楽しみ方はできませんでした。しかしその一方、過去作品をプレイするときに「このキャラ『左眼』に出てたキャラだ!」とワクワクできるので、これはこれですごく楽しい体験だなーと思います。

鳥籠様制作の作品について、いくつか感想記事を書いています。

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