『イノウノカルテ』 異能を持つ子供たちをカウンセリングするホラーADV 感想&攻略 ※ネタバレ注意
異能の力を持つ子供達をカウンセリングしてカルテを埋めていくホラーアドベンチャーゲーム、『イノウノカルテ』の感想&攻略記事です。ネタバレが含まれます。制作者はT.Ando様。ゲームがプレイできるページ(unityroom)はこちらです。 → イノウノカルテ
イノウノカルテ
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『イノウノカルテ』は、異能を秘める子ども達のカウンセリングを行い、その性格や過去のトラウマ、そして能力の詳細を探るアドベンチャーゲームです。unityroomにて無料でプレイすることができます。現在公開されているシナリオは、「Erica」の1本。今後新規シナリオが追加される予定だそうです。
見る人によってはグロいホラー要素があります。1周は5分足らず。カルテS評価を達成するまでの所要時間は約30分でした。
「異能を持つ子供たちをカウンセリングする」というシチュエーションに惹かれて『イノウノカルテ』の「Erica」シナリオをプレイさせていただきました。Ericaのキャラデザが超可愛くて眼福だったのはもちろん、あれこれと試行錯誤して最適な行動を探っていくADV部分がとても面白かったです。異能が発現するシーンも非常に見応えがありました。
以下、『イノウノカルテ』の概要やシナリオの感想を書いていきます。カルテS評価攻略や、ある選択肢から分岐する特殊バッドエンドの攻略法についても触れています。ネタバレが含まれているため、エンディング等を未見の方はご注意ください。
『イノウノカルテ』の概要
最初に、『イノウノカルテ』の概要について書きます。
イノウノカルテ
『イノウノカルテ』の主人公は、外部から特殊な施設に招かれたカウンセラーです。ゲーム内では、異能を持つ子供たちのカウンセリングを行い、その性格や過去のトラウマ、能力の詳細を探っていくことになります。現在遊べるのは、Erica(エリカ)という12歳の少女をカウンセリングする「Erica」シナリオのみです。
ゲーム部分について詳しく書くと、『イノウノカルテ』は画面が遷移しないポイント&クリック形式のアドベンチャーゲームです。カウンセリング対象に話しかけたり、周囲のアイテムを入手し使用したりすることで、対象とコミュニケーションを深めて情報をゲットしていきます。
画面内で注目すべきは、左上のアイコンです。ハートが3つと脳味噌が3つ。ハートアイコンはカウンセリング対象→主人公の「信頼度」を表し、脳味噌アイコンは主人公の「正気度」を表します。カウンセリングのスタート時点では、信頼度0かつ正気度3です。
ハートアイコンの「信頼度」は、カウンセリング対象とのコミュニケーションに直接関わる数値です。たとえば、対象からの信頼度が低いと情報を聞き出せない場合があります。具体的な事例を挙げると、ハートが0個のとき、ヌイグルミをクリックしても突っ込んだ話を聞くことができません。ヌイグルミの会話その1は、信頼度が1以上ないと解放されないからです。
対象からの信頼度を上げるには、会話する中で相手の心に寄り添った応答をする必要があります。Ericaに関してはさほど難しくもなく、とりあえず褒めてあげること、そして否定しないことが重要です。
脳味噌アイコンの「正気度」は、コミュニケーション段階ではなく、対象が異能を発揮する異能フェイズに関係する数値です。というのも、対象の異能に晒されると正気度は減少し、ゼロになると主人公は行動不能に陥るからです(いわゆるSAN値)。
たとえばEricaシナリオの場合、通常の会話中に正気度が強制的に1減少するくだりがあります。そのまま異能フェイズに突入してもよいのか、それとも入る前に正気度を回復しておいた方がよいのか……といったことも考える必要があるわけです。
また、画面右下の書類アイコンをクリックすると、「カルテ」を見ることができます。対象から重要な情報を得ると、カルテが更新され内容が埋まっていきます。集めるべき情報は、対象の性格/好きなもの/こだわり・トラウマ/能力の詳細/能力への対処の5つ。S評価を得るには、5つの情報をすべてゲットする必要があります。
カウンセリングには制限時間が存在します。17:00にスタートし、18:00に終了。ワンクリックで経過する時間は5分。したがって、ごく単純に考えると行動回数は60÷5=12回です。引っかけ(ダミー)選択肢も存在するので、取捨選択しつつ順番も考慮して行動していくことになります。
もちろん、単純に12回行動してカウンセリングが円満に終了するわけではありません。Ericaシナリオの場合、18:00の少し前に、それまで得た情報に基づいて異能フェイズに進めるか否かの判定が行われます。
情報不足の場合は「情報が足りない」と表示され、18:00になるとあえなくカウンセリング終了。情報が十分に揃っている場合は、Ericaがその異能をあらわにし、通常とは異なるシチュエーションに突入します。
『イノウノカルテ』 「Erica」シナリオの感想
イノウノカルテ
『イノウノカルテ』・「Erica」シナリオの感想を書きます(ネタバレあり)。まず、真っ白いタイトル画面をクリックするとシナリオの主役であるEricaがすぐさま現れる仕様が好きです。一気に画面が華やかになり、目の前のEricaちゃんに対して速攻で「か、かわいい~!」と思ってしまいました。
Ericaちゃんのキャラデザ、めっちゃ可愛いなーと思います。柔らかい黄色と緑色で全体のカラーが統一されているのも好きだし、眼と胸元のブローチが鮮やかな黄色でお揃いでなのも素敵です。あと異能発現時の姿も、おどろおどろしいのに迫力があってどこか美しいんですよね。
何より、元ネタであろうジャノメエリカをうまくキャラデザに落とし込んでいる点がグレートだと思います。通常時の髪型はエリカ特有のもさもさっとしたシルエットっぽくて、異能発現時に頭頂部から咲く花と葉はまさにジャノメエリカそのもの(前髪も形状が変化していて細かい)。怒りを覚えたときに瞳孔が縦に切れて蛇っぽくなるのは、おそらくジャノメエリカ(蛇の目Erica)とかけているんだろうと思います。
Ericaちゃんは内気な性格なので、無表情か困ったような表情をすることが多く、笑うにしても口許で控えめにしか笑いません。しかし、カウンセリングに成功するとそんな彼女がにっこりと笑ってくれるんですよね。最良のエンドを締めくくる最高に可愛い笑顔、マジでプライスレス。カウンセリング成功を目指したプレイヤーに対する何よりのご褒美だと思いました。
アドベンチャーゲーム部分に関しては、第一に導入がスムーズで繰り返しプレイしやすいのが素晴らしいなーと思いました。1周も短いからサクサクとプレイ可能。何度も試行錯誤する必要のあるゲームなので、こうしたプレイヤーへの配慮はありがたい限りです。
それと絡んで、優しいBGM(でも心がざわめく)が作り出す落ち着いた雰囲気も好きです。カウンセリングしてる感が増すほか、プレイヤーとしてもゲームに集中できました。異能フェイズとの落差を演出できる点もイイですね。
プレイする上で1つの大きな目標となる「カルテS評価」を目指すには、時間経過を念頭に置きつつ、必要な場所を順序立ててクリックし……と行動を最適化していく必要があります。その際にトライ&エラーを繰り返すのが個人的にはすごく楽しかったです。最初のカルテ評価は順当にDで、試行するたびに自分の中でチャートが出来上がっていって、カルテ評価もC、Bと目に見えて上昇していくんですよね。
異能フェイズで必ずゲームオーバーになっちゃうから入る前に正気度を回復しておかないと→でも回復しているとS評価に一手足りなくなるなあ→そうかあの選択肢はダミーで必要ないんだ!……といった具合に、無駄な行動を削ぎ落として最適な行動を探ることが醍醐味のゲームだと思います。
加えて、1周が短いのにエンディングパターンが多いのも好印象でした。①単純に情報不足でカウンセリング終了、②異能フェイズでゲームオーバー、③異能フェイズを切り抜けてカウンセリング終了、④ヌイグルミ絡みの特殊バッドエンド……と4パターンは確実に存在します。
特に4つ目の特殊バドエンの存在に気づいたときは、分岐が細やかで面白いなーと興奮しました(感想込みの特殊バドエン攻略方法を書きました。→「「Erica」シナリオ 特殊バッドエンド(カルテ評価E)を攻略する」)。
個人的な好みの話ですが、「異能×子供」の組合せってすごく心引かれるものがあります。それも「便利な超能力で人知れず大活躍」系のお話よりも、能力のせいで異形に変態してしまったり、強大な力ゆえに迫害・隔離されたりするタイプのお話の方が、つらいけどカタルシスがあって好きです。
そういう系の話として好きなのがまさに「X-MEN」シリーズだなーと記事を書いていて思ったものの、『イノウノカルテ』のプレイ中に実際に思い出したのは、「シルバーチャイルド」シリーズ(クリフ・マクニッシュ著)でした。
かなり昔に読んだのではっきりとは覚えていないのですが、『シルバーチャイルド』の内容をざっくり書くなら、「荒廃した世界で異能に目覚めて戦う少年少女のお話」だったような気がします。主人公の子供たちが異形に変わってしまうダーク&ホラーな作風で、昔のハードカバー版の表紙のおどろおどろしさ(でもどこか美しい)がなんとも言えず好きでした。同じような理由で、『イノウノカルテ』のEricaのキャラクターにも心引かれたのかもしれないなーとふと思いました。
先ほども書いた通り、現在『イノウノカルテ』でプレイできるシナリオは「Erica」のみです。タイトル画面を見るにカルテが3つ並んでいるので、少なくともあと2人分の追加シナリオが来るんじゃないかなーと予想しています。「Erica」がとても面白かったので、追加シナリオが今から楽しみです。
「Erica」シナリオ カウンセリング成功エンド(カルテ評価S)を攻略する
イノウノカルテ
この項目では、「Erica」シナリオでカルテS評価に至るまでの流れを書き出します(※上の引用画像では、ネタバレになる5つの情報をすべて伏せています)。カルテが埋まって主人公も生存するので、カウンセリング成功エンドと言っても過言ではありません。ネタバレにご注意ください。
カルテS評価の条件は2つ。1つ目は、カルテをすべて埋めること。具体的には、Ericaの性格/好きなもの/こだわり・トラウマ/能力の詳細/能力への対処といった5つの情報を集めなければなりません。1つ欠けるごとに評価がワンランク下がります。
ちなみに、カルテコンプの裏返しとして、「正気度3で異能フェイズに入ること」という条件も存在します。能力の詳細と能力への対処方法を知るには、Ericaが異能を発揮する異能フェイズに突入する必要があります。そして異能フェイズでゲームオーバーにならないためには、同フェイズでの正気度2減少(確定)に耐える必要があるからです。
カルテS評価を獲るための2つ目の条件は、信頼度を3にすること。つまり、信頼度2以下でカウンセリングを終えないようにしましょう。これに関しては、否定されることを恐れるEricaの性格に寄り添って対処していけば問題なくパスできる条件だと思います。
今さっき述べた通り、カルテを埋めるには異能フェイズに入る必要があります。異能フェイズに入るには、必要な条件を揃えた上で、17:50にEricaをクリックしなければなりません(信頼度&正気度MAX3が大前提)。
まずは、以下にざっくりと手順を書き出します。※「~」がエリカからの質問、【~】が主人公に与えられる選択肢です。
Erica カルテS評価チャート
①Ericaを調べる→「あなた、お花は好き?」→【好き】(信頼度0→1)
②ヌイグルミを調べる(要:信頼度1以上)→【器用だね】(信頼度1→2/正気値3→2)
③水を飲む(正気度2→3)
④本棚を調べる→植物図鑑入手
⑤植物図鑑を使う(要:信頼度2以上)→【花それぞれの形状が美しい】(信頼度2→3)→※カルテ更新・好きなものの情報
⑥Ericaを調べる→「新しい環境ってどう?」→【楽しい】or【緊張する】(信頼度増減ナシ)
⑦Ericaを調べる→「あなた仲の良いお友達っているの?」→【あまり多くない】or【たくさんいる】(どちらを選んでも信頼度上昇)→※カルテ更新・性格の情報
⑧Ericaを調べる→「そういえば、前の先生はどうなったのかしら」→【知らない】or【どんな人だったか聞く】(信頼度増減ナシ)
⑨ヌイグルミを調べる→【友達を大切にしているんだね】
⑩ヌイグルミを調べる→【辛い思い出だね】→※カルテ更新・トラウマの情報
※⑧は省いてヌイグルミを調べに行ってもOK。その場合、ヌイグルミを3回調べると17:50まではEricaを調べても「元気がない」と表示され会話できない)
⑪(17:50)Ericaを調べる→(情報が出そろっていれば反応変化)→【自分と友達になろう】
⑫異能フェイズ突入(正気度3→2)→※カルテ更新・能力の詳細
⑬Ericaを調べる(正気度2→1/この時点で正気度がゼロになるとゲームオーバー)→【説得する】→【説得する】→【自分と友達になろう】→※カルテ更新・能力への対処
以上の13の段階を踏むと、めでたく異能フェイズを抜けてクリアとなります。信頼度MAX、必要情報コンプリートでカルテはS評価です。
自分であれこれと試行した際は、正気度を回復するための水飲みターンを入れ込めずにかなり苦労しました。というのも、「クレヨンを入手する」→「クレヨンを使う」の2手で貴重な10分を消費してしまっていたからです。クレヨンがダミー選択肢だと気づいた後は、一足飛びにS評価に持っていくことができました。
「Erica」シナリオ 特殊バッドエンド(カルテ評価E)を攻略する
イノウノカルテ
続いて、特定の選択肢を選ぶことで見られる特殊バッドエンドについて書きます。※あくまで個人的にそう呼んでいるだけで、ゲーム内で「特殊バドエン」等と表記されているわけではありません。
特殊バドエンの存在を知ったのは、カルテS評価の攻略法を色々と探っていたときでした。衝撃的な内容にゾクゾクした後、初めてのE評価を見て「D評価が最低じゃなかったのか」とかなり驚いたことを覚えています(※後で試したところ、カルテを何一つ埋められずに終了した場合もE評価になりました)。
まずは、特殊バッドエンドに至る流れをざっくりと書き出してみます。
①Ericaを調べる→「あなた、お花は好き?」→【好き】(信頼値0→1)
②ヌイグルミを調べる→【貸して欲しい】→「Ericaにヌイグルミを返す?」→【返さない】(信頼度1→0)
③あとは何をしてもOK!
ポイントは、ヌイグルミ会話その1で、【器用だね】と褒めるのではなくぶしつけに【貸して欲しい】とねだること。そして、貸してもらったヌイグルミを返さないこと。この2つの段階を踏むことで、特殊バッドエンドが確定します。
ちなみに、ヌイグルミを借りっぱなしの状態でもEricaと話すことはできます。性格の情報をゲットすることも可能です(性格の情報のみだとカルテはE評価になる)。また、事前に好感度を稼いだ上で植物図鑑を使って好きなものの情報を聞き出し、性格の情報も得ると、特殊バドエン確定でもカルテはD評価になります。
取得したヌイグルミは「使う」こともできます。具体的には、ヌイグルミをよく調べようとした主人公がEricaに睨まれて断念する一幕を見ることができます。まさに蛇に睨まれたカエル。
初見で【貸して欲しい】をなんとなく選んだときは、いきなりEricaの瞳孔が細くなってビビったことを覚えています。続いてドキドキしながら【返さない】を選択すると、ピキピキしつつ沈黙するErica様。この時点で「ヤベー…」と感じ、主人公絶対に助からないだろうなーと直感しました。
一応クレヨンやら図鑑やらを上手に使うと、特殊バドエン確定でも信頼度を3まで上げることは可能です。ただ、大切なお友達であるヌイグルミを返さないという選択をした時点で、Ericaが主人公を許してくれることはありません。別れ際の「……」には肝が冷えました。
特殊バドエンの内容は、返し忘れたヌイグルミがひとりでに動き出して……というもの。正気度がマックスでもみるみるうちにゼロになるのがちょっと面白かったです。Ericaちゃんの能力って遠隔操作できるんですね。返してもらえない時点でキレるのではなく、別れた後にヌイグルミを介して報復するあたりに個性が出ていてイイなーと思います。
*****『イノウノカルテ』の「Erica」シナリオ、サクサクプレイできる一方で満足度も高くて面白かったです。追加シナリオが来たらぜひ遊ばせていただきたいなーと思います。
『イノウノカルテ』の「異能を持つ子供をカウンセリングする」というシチュエーションが好きな方は、『666laboratory』(カウンセリングホラーADV)も楽しめるんじゃないかと思います。ある秘密を抱えて隔離されている少女をカウンセリングする形式のゲームで、カウンセラーである主人公が若干可哀想な立場にあることも『イノウノカルテ』と共通する部分です。
また、「コミュニケーションをはかって対象の情報を探る」というシチュが好きな方には、Steamでプレイできる『Her Story』をオススメしておきます。けっこう有名なPCゲームなのでご存知の方も多いのではないでしょうか。※『Her Story』については過去に感想記事を書きました。
※『Her Story』(彼女の物語) 感想&時系列考察 ※ネタバレ注意(ある事件の重要参考人と目された女性のビデオクリップを鑑賞し、事件と彼女の真実を探る海外発のADV)
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