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『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』 悪役令嬢パロディ恋愛ノベルゲーム 感想&レビュー ※ネタバレ注意

2022/11/30
ノベルゲーム 0
フリーゲーム 感想 レビュー ノベルゲーム 恋愛 女性向け

自分を悪役令嬢だと思い込んでいる主人公が暴走を繰り広げるギャグ成分多めの乙女ゲーム、『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』のレビュー&感想記事です。ネタバレが含まれます。制作者は飴ツユ様。ゲームのダウンロードページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!! スクショ タイトル画面

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!

『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』(以下『婚約破棄!?』)は、いわゆる「悪役令嬢もの」をパロディ化したノベルゲームです。一本道ストーリーで選択肢はナシ。クリアまでの所要時間は30分弱でした。

「フリーゲーム界にも悪役令嬢ものがキター!」と、(失礼ながら)ちょっぴり物見高い気持ちでプレイさせていただいた本作。「悪役令嬢」という題材を直球で取り扱いながらも、うまいこと「ズラし」を入れている点がとても面白かったです。特に主人公ヘンリエッタのキャラクターが魅力的であり、最終的には彼女と婚約者の行く末をやきもきしながら見守っている自分がいました。

「悪役令嬢もの」と一口に言っても内実は様々ですが、『婚約破棄!?』からは『はめふら』(『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』)に似たオーラを感じました。全員善人悪役不在、悪役令嬢ポジの主人公が人気者で性格の良い善人、両思いカップルのすれ違いの末に発生するコミカルな婚約破棄騒動……といった要素がお好きな方にオススメの作品だと思います。

それでは以下、『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』のストーリー&キャラクターの感想を書いていきます。ネタバレが含まれますので、未見の方はご注意ください。また、話の流れで(というか脱線して)ときメモGSシリーズに触れている箇所があります。ネタバレは特に含まれていませんが、興味のない方はサクッと飛ばしてください。

『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』のあらすじ

『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』のあらすじを書きます。

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!! スクショ 自分は悪役令嬢だと信じ込む主人公ヘンリエッタ

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!

主人公の「ヘンリエッタ・ロイズ」は、由緒正しき貴族家の御令嬢。彼女は最近市場で見つけた「乙女ゲー小説」にドハマりした結果、ある驚愕の事実に気づいてしまいます。それは、自身のスペックがテンプレ悪役令嬢と酷似しているということ。

最近異国で流行っている「乙女ゲー」には、ある特徴がありました。それは、わがままで意地悪で誰かの婚約者で、自らの素行のために不幸な末路をたどるライバルキャラの存在。婚約者であるジョシュアにツンドラ並みの冷淡な対応を受けているヘンリエッタは、この衝撃の「気づき」によってすべてを悟ります。これはきっと啓示だ、自分はいわゆる「悪役令嬢」であり、いずれ婚約者のジョシュアに婚約破棄を言い渡される運命なのだ……と。

かくして「自分は悪役令嬢であるに違いない」と本気で思いこんだヘンリエッタは、タイミングよく(?)舞い込んだ、「庶民出身の特待生が学園に入学する」というニュースに色めき立ちます。「すわヒロインの登場に違いない!」と確信した彼女は、婚約者のジョシュア(攻略対象)と特待生のアンジェリカ(ヒロイン)の仲を全力で応援し始めるのですが……。

はたしてヘンリエッタ・ロイズは悪役令嬢として破滅する運命なのか? ヘンリエッタに冷たく接する婚約者ジョシュアの本心とは? 怪しい挙動を見せるアンジェリカの真意とは? ……といったあたりが『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』の見どころです。

『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』の魅力をレビュー

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!! スクショ 婚約者のジョシュアとヒロインの今後を推測するヘンリエッタ

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!

この項目では、『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』(以下『婚約破棄!?』)の魅力をいくつか挙げていきたいと思います。レビューなのでネタバレ薄めです。

先にも書いた通り、「へえ~悪役令嬢もののフリゲか~」と興味を引かれてプレイさせていただきました。もちろん興味津々ではあったものの、最初はちょっぴり流行りジャンルを覗くような物見高い感覚があったんですよね。ただ、読み進めるうちに、思い込みが激しすぎるもののポジティブ善人なヘンリエッタの空回りに引き込まれ、彼女と婚約者ジョシュアが本格的にすれ違うあたりからはもう真剣にお話を追ってしまいました。

総評としては、楽しく読める面白い恋愛ノベルゲーだと思います。特徴として挙げられるのは、「全員善人悪役不在」、「両思いカップルのすれ違いの末に発生する婚約破棄」、「主人公の性格がよく周囲に慕われている」といった点でしょうか。先述した通り、『はめふら』系の悪役令嬢ものが好きな方にオススメのゲームです。

魅力①:主人公ヘンリエッタの見せ方の巧さ

私個人がイイなと思ったのは、主人公ヘンリエッタのキャラクターとその見せ方でした。ヘンリエッタは初っ端から、(たとえばゲーム世界に転生したといった前提が一切ないにも関わらず)なぜか「自分は悪役令嬢である」と強烈に思い込んでいる状態で登場するキャラクターです。それも思い込みのきっかけは、市場で偶然購入した悪役令嬢ものの小説を読んだこと。正直なところ、最初は「ギャグ調だからいいけどけっこうヤバイ子だな~」と思いつつ彼女の暴走を眺めていました。

ただ、ストーリーが後半に差し掛かり、ポジティブ暴走人間に見えていたヘンリエッタの心情や過去が丁寧に開陳されていくと、彼女への印象もどんどんと変わっていきました。ヘンリエッタが婚約者に一途な愛情を捧げてきたこと、その彼に冷淡な仕打ちを受けていること、愛する人に拒まれてひたすらに悲しく寂しいこと……そういった事実を知ると、序盤で「何をどうしたらその結論(自分=悪役令嬢)に至るのか」と混乱したぶんだけ、「ヘンリエッタなりに現状に苦しんだ末のあの暴走だったんだな……」と深い同情を抱いてしまいました。

そもそも、ヘンリエッタはまれに見る善人キャラです。ストーリー後半で本音が明かされることによりその善性が綺羅星のごとく光り輝きますが、そもそも最初から従者にも学友にも慕われている描写があるし、暴走状態でもそれと分かる程度には性格が良い人なんですよね。だから最終的な私のヘンリエッタへの感情も、「思い込みは激しいけどめっちゃええ子やん(というかもはや慈母レベル)」に落ち着きました。

そして、ヘンリエッタの印象がガッツリと上向くと、彼女の苦悩の原因となった婚約者ジョシュアの印象が相対的に悪くなりそうなものだと思います。しかし、そこに関してもそつなくカバーしているのが『婚約破棄!?』のうまいところ。具体的には、最初からジョシュアに若干どんくさいこじらせ思春期男子の気配がある、最後の最後でジョシュアが120点の対応を叩き出す、何よりヘンリエッタがジョシュアのことを大大大好き……といったフォローアップがなされています。

ジョシュアのヘンリエッタへの態度って客観的に見て相当ひどいんですが、そんな彼を「かわいい婚約者」とありのままに愛するヘンリエッタ様を見ると、「ヘンリエッタがこんなにも好きな人に対して悪口なんて言えないよ……」という気持ちになってしまうんですよね。そこもまたヘンリエッタの魅力ゆえというか、『婚約破棄!?』のキャラの描き方の巧さの一例だと思います。

まとめると、性格描写に一貫性を持たせつつも、表面上の言動とは落差のある本音を後半で開示することで、プレイヤーに主人公への強い同情と愛着を抱かせる。また、展開上株の下がるキャラクターについては、あらかじめフォローを入れた上で最終的に印象が上向く見せ場を入れる……といった点が見事だなーと思いました。構成とキャラの見せ方が巧みで素晴らしいです。

魅力②:「悪役令嬢もの」という題材への新鮮なアプローチ方法

次に、「悪役令嬢もの」という題材へのアプローチ方法が印象に残りました。ヘンリエッタは自分を悪役令嬢だと思い込んでいるものの、それは正しく“思い込み”です。つまり、彼女は乙女ゲー世界に異世界転生したわけではないし、何度となく処刑された前世の記憶を持っているわけでもありません。

「異世界転生」・「ループもの」といった前提を用いず、「フィクション小説の設定を現実のものだと思い込んで暴走する主人公」という形式を採用している点は、個人的には新鮮だし斬新だなーと感じる要素でした。

ちょっと話が脇に逸れますが、本来の乙女ゲーに「(攻略対象キャラの婚約者で、主人公に嫌がらせを行い、最終的には国外追放or処刑される)悪役令嬢」という概念はほぼありません(もっとも、あくどいライバルが登場する乙女ゲーが皆無な訳ではないため、一応「ほぼ」と書きました)。悪役令嬢ものが流行って間もなく話題になり、その後も折に触れて議論になる事柄でもあるため、ご存知の方も多いのではないかと思います。

そもそも大多数の乙女ゲーのプレイヤーは、攻略対象キャラとの恋愛模様を楽しむ(あるいは攻略対象キャラ×ヒロインのやりとりを楽しむ)ために乙女ゲーを遊ぶわけです。けしてよくわからん女性キャラに頻繁にイジメを受けたいわけではないし、攻略対象がその女性キャラを冷酷に断罪するところを見たいわけでもなければ、彼女が破滅する展開を見て「ざまぁ見ろ」したいわけでもありません。「別段求めてない」わけです、そのようなアレは。

仮にいわゆる「悪役令嬢」な役割のNPCが出てきたとしたら、プレイヤーの感想は「そんな脇キャラに尺を割く暇があるくらいなら、攻略対象キャラと主人公の絡み(イベント・一枚絵)を少しでも増やしてくれ」という方向に向かう気がします。だから現実の乙女ゲーにおいて、「悪役令嬢」なる概念がテンプレ化するほどポピュラーなものになるとは考えにくいと言えます。

というよりその性格言動にかかわらず、攻略対象キャラAに「名前あり&ビジュアルあり&出番が多い」婚約者キャラが存在すること自体、かなり好みの分かれる設定だと思うんですよね。好みが分かれるというか、たぶん否の方が多いんじゃないかと感じます。めっちゃ正直に意見を言うと、単純にAくんを攻略する際に気が引けるし、仮にAくん推しになったとしても(女性NPCが周囲にいないキャラ推しになった場合と比べて)後々モヤモヤすることが多い*からです。

そういう意味においても、「乙女ゲーによくいる悪役令嬢」という概念は、本来の乙女ゲーとはかけ離れたフィクションだなーと個人的には思います。

話を元に戻すと、『婚約破棄!?』の器用なところは、「このファンタジー世界の『乙女ゲー』においては悪役令嬢の存在が様式美の1つですよ」という前提を立てているところだと思います。「実際の乙女ゲーに悪役令嬢はいない」という意見(批判)をうまくかわしているわけです。スマートな配慮だなーと個人的には感じました。

*閑話休題:ときメモGSシリーズのライバル女子について

※この項目では、『婚約破棄!?』とは関係のない「ときメモGSシリーズのライバル女子」についてつらつらと書いています。特段のネタバレ要素はありません。本記事の主旨からは外れた内容なので、興味のない方は「キャラクター感想 ※ネタバレ込み」に飛んでください。

先述通り、「攻略対象キャラの周辺に名前あり&ビジュアルあり&出番が多い女性NPCがいる」というのは、かなり好みの分かれるシチュだと個人的には思っています。なぜそう思うのかと言えば、ときメモGSシリーズにおける「ライバル女子」システムの変遷と廃止が念頭にあるからです。

ときメモGS(の1stと2nd)をプレイしたことのない方向けに簡単に説明すると、「ライバル女子」とは文字通り、攻略対象キャラにアプローチする際に恋敵として立ちはだかる女性NPCのことです。ライバル女子は基本的に4人存在し、それぞれ勉強・体育・流行・芸術担当の男子生徒に片思いをしています。

たとえば主人公が勉強担当の攻略対象キャラと仲良くなると、その男子に片思いをしているライバル女子とライバル関係に突入することになります。そしてライバル関係になった場合、デッドラインまでにプレイヤーがその男子の心を掴まない限り、ライバル女子がその男子と良い雰囲気になる展開を見せつけられる……という仕様でした。

このライバル女子システムですが、ときメモGSからときメモGS2においては継承されたものの、ときメモGS3以降は撤廃されました。おそらくシミュレーションゲームとしての難易度を上げるために存在しただろうライバル女子システムがなぜ消えたのか……と考えたとき、「プレイヤーにウケが悪かったからじゃないかな」と単純に思いました。

そもそもときメモGS→ときメモGS2においても、ライバル女子はかなりプレイヤーに配慮したシステムに変更されました。不可避的にライバル関係に陥ることがあった初代GSとは異なり、GS2においてはライバル関係を避ける手段がいくつか用意されました。また、ライバル女子とその片思い相手の関係性についても、傍目にも相性の良さそうな組合せだった初代とは異なり、GS2では「この2人ってそこまで相性バッチリかな?」と若干感じるマッチングがなされていたような気がします(※主観アンド主観かつ例外アリ)。

そして、そういう諸々の変更の理由は何かと考えるとやっぱり、「強制的に攻略対象キャラとライバル女子の仲睦まじい様子を見せつけられるのはノーサンキューなプレイヤーが多かったからだろうな」と思わざるを得ませんでした。

狭量やな~~と思われることは承知の上で、ライバル女子システムの廃止に関する私個人の意見も書いておきます。シミュゲー視点では「ライバル女子システムがなくなっちゃうと温くならない?」です(※実際にはそれに代わる関係構築システムが導入されたので、ぬるくなったということもない)。ただ、乙女ゲーマー視点では「これでどのキャラも安心して攻略できる……心の安寧が得られる……」と素直に感じました。

どういうことかと言うと、私は初代GSでもGS2でも、ライバル女子が設定されている男子(いわゆる「王子キャラ」や「先生キャラ」ではない男子)が最推しでした。より正確に言えば、「キャラ×自分」ではなく「キャラ×主人公」でプレイするタイプなので、「最推し×主人公」のカップリングを推していました。

すべてのデート場所での3回目会話を回収するほど推している男子キャラに、ライバル女子がいると時たま起こり得る事態。それはゲームの外で、「○○(最推し)とライバル女子ってぶっちゃけお似合いだよね。良いカップルになりそう」、「○○とライバル女子はいつもくっつけてたな~」といったごく無邪気な感想に遭遇することでした。

そういう感想に出会ってしまうと、どうしても「う、うわ~ッッ!」となってしまうわけです。心の中で「いやいやそんなことないっしょ。○○は攻略すれば主人公のことめっちゃ好きになってくれるし。自分には主人公だけって言ってくれるし。○○の悩みや弱さを理解してフォローしてあげられるのはやっぱり主人公を置いて他にないと思うよ?」と長文で必死に考えてしまうくらいにはキツイ。自分の余裕の無さと必死さに落ち込んではぁ~~~~とため息の1つも出てしまう。ついでに、そういうことをおっしゃる方が王子や先生や後輩推しだったりすると、「自分の推しキャラにライバル女子がいないと気楽でいいよなァ~…」と羨んだりもしてしまいます(我ながら醜い心の動き)。

そう、ライバル女子がいると「どうあっても安心できない」のです。推しキャラには主人公しかいない、そんな幸福な幻想を信じていたいのに、ライバル女子の存在がそれを許さない。ゲーム内で自衛して見たくない可能性をスルーしたとしても、ゲームの外で、それも同じゲームのファンに、何の悪意もなく「推しキャラには主人公しか選択肢がないってわけじゃないよ」と突きつけられることがある。ライバル女子のいる男子キャラを好きになるというのは、そういうことです(スゲー大層なこと言ってますね)。

もう自分で書いていて心せっっまいな~~~と思わざるを得ないのですが、「乙女ゲープレイヤーには安心が必要だ」というのが私個人の素朴な意見です。

言い訳がましいですが書き足しておくと、私はけしてときメモGSのライバル女子ズが嫌いなわけではありません。特にGS2に関して言えば、相当やり込んだこともあって4人とも好きだし、修旅では一緒に行動して個別エンドもコンプしました(ちなみに一番好きなのは密ちゃんです。容姿も性格もド・タイプな女の子)。一番好きなキャラのライバル女子も、正味の話すごくいい子だし可愛いしで好きなんですよね。

でもやっぱり、推しキャラとくっつくところを見て祝福できる自信はないし、というかできれば見たくはないのです。どっちも好きなのに、でもカップルとしての2人は到底許容できないわけです。

私は好きになったゲームは骨の髄までしゃぶりつくしたいタイプなので、GS2でも見られるイベントはすべて見る気概でプレイしていました。それにもかかわらず、推しキャラとライバル女子が良い雰囲気になるイベントだけはついぞ見ることができませんでした。「ゲームを余さず楽しみたい、どの要素も丸ごと好きでいたい」という熱く燃ゆるファン心を、「ひえ~っ堪忍して~それだけはどうしてもどうしても見とうない~~!」という素直すぎるカプ厨の心が凌駕してしまったわけです。

この「自分心せまっ」「でも見たくないものは見たくない…許して…」というモヤモヤとした感情と付き合わざるを得ない、それがライバル女子のいる男子キャラを好きになったプレイヤーの宿命なのかもしれません(こういうことを一切考えず、推しキャラとライバル女子の組合せを余裕で許容できてしまう方はマジで尊敬します。乙女ゲーマーとしてレベチ、人として徳が高すぎる。あと、むしろライバル女子と競った上で推しを落とすことに燃える方もスゴイ。ザ・タフガール)。

※一応ことわっておきます。私は他人の感想に「そんなこと言うな」とケチをつけたいわけではありません。こういうことを書かないで、配慮して、なんて要求するつもりで上記のように書いたわけでもないです。何を思い何を発信しようがその方の自由だし、たとえ到底許容できない意見を見つけたとしても、「ふむふむ」でスルーすればいい話なので(私もたいがい好き勝手なことを書いているので、「そんなこと言うな」と口を塞がれないのは本当に有り難いといつも感じています)。

統一も強制もされない色んな意見(色んなCP)が自由に発信される社会やコミュニティは、健全に繁栄し発展するものだと思います。上は1人の面倒臭い男女カプオタクの内心をコミカル~に書き出しただけのものなので、「へえ~あほくさ!」くらいに笑い飛ばしていただけると助かります。

キャラクター感想 ※ネタバレ込み

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!! スクショ 婚約者のジョシュアは主人公ヘンリエッタに冷たい

婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!

この項目では、『婚約破棄!?』に登場する主要キャラクターの感想を書きます。具体的には、主人公ヘンリエッタ、婚約者ジョシュア、ヘンリエッタの付き人ギル、特待生として入学したアンジェリカの4人について、印象や好きなポイント等を挙げています。以下にはネタバレが含まれます。

ヘンリエッタ――自分を悪役令嬢だと思い込んでいる暴走系善人

まずは主人公である「ヘンリエッタ・ロイズ」について。ヘンリエッタは思い込みが激しくおてんばで暴走しがちなところが玉に瑕の伯爵令嬢です。

先にも述べた通り、彼女は異世界転生したわけでも前世の記憶を思い出したわけでもないのに、「自分は乙女ゲーによくいる破滅する運命の悪役令嬢である」と思い込んで行動し始めます。ギャグ調な雰囲気にごまかされているとはいえ、わりとマジもんの狂人ぶっ飛んだ発想の持ち主だなーと思いました。

もっとも、ヘンリエッタの暴走に関しては終盤にフォローが入ります。大好きな婚約者に長年邪険にされていたため、「嫌われているのは自分ががさつで女の子らしくない悪役令嬢だからだ、きっといずれは婚約破棄されるんだ……」と思考が進んでいった、という感じに。

このフォローは上にも書いた通り、魅力的なギャップを演出して私の中のヘンリエッタのイメージを一新してくれました。もちろん、「思い込みが激しい」、「暴走している」といった評価は最初から最後まで一貫します。ただ、いざヘンリエッタの本音が明かされると、「ヤバイなこの子」から「めっちゃ可哀想だしそういうことなら諸々仕方ない」へと印象が綺麗に上書きされてしまうんですよね。

ヘンリエッタへの印象が大きく変化するのは、回想シーンにて婚約者である(にぶちんで口下手で要領の良くない思春期男子こと)ジョシュアさまの行状が一部明かされるせいでもあります。終盤ではヘンリエッタへの同情心が高まり、「思いつめて悪役令嬢としての破滅を運命と捉えるのもまあしゃーないかな~(ジョシュアさま反省してくれ)」と素朴に思いました。明るく見えていただけで、本編のヘンリエッタ様はかなり病んで追いつめられていたんだろうな、とも。

(そもそも「底抜けに明るく見える子が重たい事情を抱えている」ギャップが好きなせいでもありますが)ポジティブ暴走お嬢様にしか見えなかったヘンリエッタの健気で一途で愛情深い一面を照らし出す見せ方、本当にお見事だと思います。

あと、ヘンリエッタに関して特筆したいのは、彼女がシンプルに性格の良い善人である点です。誰に対しても気さくで朗らかで優しいため、ヘンリエッタは幼少期から付き合いのある学友たちに大いに慕われています。先にも述べた通り、悪役令嬢ものの主人公としてははめふらのカタリナ様っぽい感じです(さすがに農家ではないものの、木登りはするしジョシュアにリアル蛇を投げつけた前科あり)。

ヘンリエッタの脳内で展開されるモノローグ劇場も、そこはかとなくはめふらっぽさを感じた部分でした。明後日の方向へと向かうあのコミカルな感じ、カタリナ5人会議の雰囲気があって面白かったです。また、序盤の自信満々空回り仲人っぷりは『エマ』のエマを思い出しました。

最終的にヘンリエッタ様に抱いた印象も述べておくと、「慈母でありこのゲームで一番『漢』な女性」です。ヘンリエッタは幼い頃からジョシュアのことが大好きですが、その愛し方は「恋い焦がれる」というより「相手を慈しみ幸福を願う」系のもの。ジョシュアが自分のことを嫌いならば他の人と結ばれて幸せになってほしい……とヘンリエッタは心から思っています。その海よりも深い愛情、まるで母のごとし(2人は同い年だけど)。

そう、相手の幸福を願って涙しながら身を引く(=自分を二の次にする)健気さのみを見ると、ヘンリエッタはいかにも同情を寄せたくなるザ・ヒロインです。ただ、彼女の面白さは、その無類の愛情深さを披露する場面においてどこまでもカッコよく男前に見えてしまう(あえて「しまう」と書きます)ところだと思います。具体的に言えば、「顔よし家柄よしなジョシュアさまと結婚するのも悪くないかな~」とミーハー発言をしたアンジェリカに啖呵を切るシーンですね。

ジョシュアを馬鹿にするのも大概にしてちょうだい、そんな軽々しい気持ちで婚約しようと言うのなら、たとえ運命が祝福しようとも私が全力で邪魔させていただく、ジョシュアを心から愛して幸せにすると私に誓えない女性にジョシュアは絶対に渡せない!……と、ヘンリエッタ様は憶することなく堂々と述べます。その上で、自分がジョシュアをずっと昔から愛していること、世界一幸せになってほしいと願っていることを告げるわけです。

このシーンを見たとき、私は「ヘンリエッタ様カッコイイ~!」と思う一方で、「この人ヒロイン適性が低いというかヒーロー適性が高すぎるんだよな……」と感じました。気質や振る舞いがあまりにもまっすぐ骨太で潔いというか、マジでこのゲームで一番男前。ジョシュアが引け目を感じてしまうのも一定納得*です。

というわけで、ヘンリエッタ様は慈母であり“漢”であるところが魅力的な主人公でした。もちろんジョシュアを思って泣きながら本音を吐露するシーンも可愛らしく、好感度的に隙の無いキャラクターだったなーと思います。

*ヘンリエッタに「弱虫で優しくて繊細で強がり」と評されるだけあって、ジョシュアさまはぶっちゃけあまり「女性向け作品の王子様」っぽくはないキャラなんですよね。不器用だし、何かとタイミングが悪いし、要領が良さそうには見えないし、なかなかバシッと決めてくれないし。だから、彼がヘンリエッタに対して色々とこじらせてしまったことについても分からないではないかな~と上記のシーンを見て思いました。

ジョシュア――キラキラ王子様フェイスのこじらせ思春期男子

続いて、ヘンリエッタの婚約者である「ジョシュア・フォン・ルーミス」について。今回の騒動は思い込みの激しいヘンリエッタが引き起こしたものですが、その根本原因と言える存在がジョシュアです。

小さい頃は素直な弱虫だったジョシュアは、成長に伴って強がるようになり、誰構わず嫉妬をしてヘンリエッタ当人には冷たく当たるようになりました。ヘンリエッタは長年の蓄積でジョシュアの気持ちを勘違いし、彼との関係の破局を運命だと思い込むに至ります。

先ほども触れましたが、回想シーンで明かされるジョシュアの言行は素直に「アカン」と感じる類いのものでした。ヘンリエッタが「嫌われている」と思い込むのも仕方がないくらいに酷い暴言がチラホラ。これだけの言動を積み重ねておいてよく今まで好きでいてもらえたね~ヘンリエッタ様が強がりを見抜いて辛抱強く見守ってくれる聖母のごときお方でよかったね~と思っちゃうレベルです。

とはいえ、ヘンリエッタ様が「かわいい婚約者」とジョシュアを愛する気持ちはなんとなくわかりました。ジョシュアさん、見た目こそはめふらのドS有能王子ことジオルド様に似ているものの、ことごとく決めきれないしうまいこと言えない系の青年なんですよね。ぶっちゃけ鈍くさいというか要領が悪い。思春期男子なこともあって口下手に拍車がかかってる感もあるし。シナリオの途中で「好きなら好きだとハッキリ言えばいいのに」と何度となく思いました。

一番ずっこけたのは、自分に対するヘンリエッタ様の熱烈な愛の告白をすべて聞き漏らした上でのこのことやってくるシーンでしょうか。笑っちゃうほどタイミングが悪い。「そこは全部あまさず聞いておいて、逃げようとするヒロインをすかさず捕まえて、白昼堂々愛の告白を返すところだろう!」と思わずツッコみました。

その後の逃げたヘンリエッタを途中で捕まえられずに「ヘンリエッタ…!君、足早…!」状態になるシーンも、「ジョシュアさま悲しいほど決めきれねェ……」とめっちゃ面白い反面、それでいいのかと思わずにはいられませんでした。そりゃアンジェリカもチッと舌打ちするわ、性格・人格スルーで容姿や家柄や資産を引き合いに出されるのも悲しいけどまあ分かるわ、と。

ただ、肝心のヘンリエッタは、自信満々でも有能でもないけど繊細で優しい素のジョシュアを魅力的で好ましいと感じているんですよね。だから、ヘンリエッタの思いに応えてジョシュアがようやく素直になり、口下手を克服して愛を告げてくれたシーンには心から感動しました。

まとめると、ジョシュアについては「良い婚約者がいてくれてホンマによかったね」という感想半分、「最後の最後に決めてくれたシーンは最高にカッコよかったよ」という感想半分です。ラストのバカップル爆誕には素直にニヤニヤしました。

ギル――常識人&苦労人

ヘンリエッタの付き人である「ギル」は、童顔で可愛らしい好青年です。徹頭徹尾ヘンリエッタに振り回されている苦労人であり、それでもヘンリエッタのことを心から大事にしていることが伝わってくるキャラでした。

ギルは主人公を貶したり無礼に振る舞ったりしない毒のない従者キャラという点でポイントが高かったです。ヘンリエッタに対して失礼なことを言うこともたまにあるものの、単に彼女の欠点を事実として述べているだけなので、嫌味がないんですよね。

あと、従者としてわきまえている態度も好印象でした。ギルは主人であるヘンリエッタに大いに好かれていて、そのためにジョシュアからいつも嫉妬されています。ただ、ヘンリエッタがギルを好きな理由は、彼が幼い頃のジョシュアを彷彿とさせるからです。つまり、ギルはジョシュアの嫉妬を買っている部分も含めて、いわゆる「当て馬」的なポジションにあるキャラだと言えます。

しかし、ギル当人は最後まで従者としての役割に徹するし、愛する主人の気持ちを理解した上でジョシュアとの仲を応援してくれます。そういうわけで、ヘンリエッタに寄り添うプレイヤーとしては自然と好感を抱いてしまうキャラでした。

アンジェリカ――トラブルメイカー(意図的)

「アンジェリカ」は貴族だらけの学園に突如としてやってきた庶民出身の転校生です。はめふらで言えばマリア・キャンベルのようなポジション。ヘンリエッタの仲人ムーブのせいもあってかジョシュアと仲を深めていきます。

その動向の怪しさから、アンジェリカについては『公爵令嬢の嗜み』のヒロインみたいな腹黒女子なのかな~と思っていました。蓋を開けてみると、「乙女ゲー小説の執筆者かつ気合の入ったオタク」という設定のキャラ。両片想いが大好物で、自ら介入し立ち回ってジョシュアとヘンリエッタのすれ違いからの復縁をよだれを垂らしながら見ていた……という、はた迷惑ながらも優しいオチが用意されていました。

ヘンリエッタとジョシュアが盛大にバカップル和解をした直後にきっちりと謝ってくれるので、意図的なトラブルメイカーっぷりに反してヘイトが溜まらない点が印象的でもありました。このゲームってキャラのヘイト管理巧いな~と感じるポイントの1つです。

デュフフ系オタクな言動は好き嫌いが分かれるかもしれませんが、この世界には乙女ゲーがあり、乙女ゲー小説もあり、もちろんオタク文化もあって……という扱いなので、個人的には気にならなかったです(よくある乙女本批評として、「^^;」みたいな顔文字を含む文章が出てきたりもするし)。

*****

『婚約破棄!?』のプレイ中にずっと思っていたのは、「ヘンリエッタ様のビジュアルがすごく好き」ということでした。タイトル画面の時点でめっちゃカワイイ。釣り目に赤毛(+サイドテール)という悪役令嬢っぽい要素を押さえつつ、純粋に可愛らしいデザインが好みです。ヘンリエッタに限らず、本作の絵柄は全体的にキュートで眼福でした。

あと、一点気になったのはバックログのUIデザインでしょうか。本編のメッセージウィンドウなどはクラシカルでゴシックな感じなのに、バックログは現代世界の青春日常ものっぽい雰囲気で、落差にちょっと戸惑いました。作品の内容自体には全く関係がないですが、バックログにもデザインの統一感を持たせてほしかったなーと感じました(もっとも、制作ツールの仕様なんだろうとは思いますが)。

『婚約破棄!?どうぞどうぞ歓迎します!!』、「悪役令嬢もののフリゲ」という物珍しさからプレイしましたが、面白いラブコメを堪能できました。悪役不在で終わる平和な雰囲気がコメディ調のストーリーとマッチしていてとても良かったです。これを機に悪役令嬢ものフリゲを開拓してみたいなーとも思いました。

「コミカルな要素の多い恋愛ゲーム」について、いくつか感想記事を書いています。

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かーめるん
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フリーゲーム、映画、本を読むことなどが好きです。コンソールゲームもプレイしています。ジョジョと逆転裁判は昔からハマっているシリーズです。どこかに出かけるのも好きです。草木や川や古い建築物を見ると癒されます。

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