『いりす症候群!』/『いりす症候群!滅』 ハイスコアで真相を読み解く高難度パズルゲーム 感想 ※ネタバレ注意
即死系物理パズルゲーム、『いりす症候群!』/『いりす症候群!滅』の感想記事です。制作サークルはカタテマ様。ゲームのダウンロードページ(Vector)はこちらです。 → いりす症候群!
いりす症候群!
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高い難易度と中毒性で有名な『いりす症候群!』&『いりす症候群!滅』を最近再プレイしました。色々な意味でとても楽しかったので、思い出と感想を書きます。以下にはストーリーやエンディングのネタバレが含まれるのでご注意ください。
『いりす症候群!』を再プレイした理由とパズル面の感想
カタテマ様制作のゲームはいくつかプレイさせていただいております。『魔王物語物語(まもも)』、『勇者御一行様殺人事件』、『オトツカイ』、『勇者の憂鬱』、『ムラサキ』、『愛と勇気とかしわもち』……等々、脳内が快感にキリキリと回り出す面白い作品ばかりです。
※『ムラサキ』と『オトツカイ』の感想記事も書きました。
≪関連記事:『ムラサキ』 爆発パズル物理アクションゲーム 感想 考察≫
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しかしそれらカタテマ作品の中で、今回記事を書く『いりす症候群!』は唯一苦手でした。というのも、数年前(初プレイ時)の私がこのゲームの仕組みをまるで理解していなかったからです。
数年前の私は、なぜかひたすら落ちてくるブロックをクリックしていました。結果あっという間に腐ってはいりすを泣かせてしまうばかり。「ミスって空中を押すと白い豆腐が出るけどこれなんだろう」と首をひねっているバカさ加減でした。そのまま、「私パズル向いてないんだな」と自己完結し、いりすやあげはを放置して一旦ゲームを投げてしまったわけです。
それがどうして最近になって再プレイしたのかというと、こちらは単に難しくて投げていた『愛と勇気とかしわもち』をもう一度プレイし、なんとか愛ちゃんを呼び戻すことに成功したからです。「これをクリアできたのなら、『いりす症候群!』だってクリアできるかもしれない」……そう思い、いそいそとプレイし始めました。
すると不思議なことに、今度はすんなりとゲームの仕組みがわかりました。「ブロックをクリックするんじゃない、左右クリックで豆腐を射出してブロックに当てて誘導するんだ」、と。理解してみれば、なぜ数年前はわからなかったのやらと思うほかありませんでした。説明にもちゃんと書いてあるのに。たぶん当時の私にとことんこらえ性がなかったせいでしょう。
ともかく、『いりす症候群!』は直感と思考をバランスよく働かせつつプレイできる抜群に面白いゲームである……その重要な事実に気づけて本当に嬉しい気分でした。
そこからはもう黙々と、休みを費やして7時間ほどプレイ。すると、どうにかこうにか無印も滅も一応真エンドを見ることができました。いりすはメンヘラかわいい女の子でした。
いりす無印といりす滅、はたしてどちらの方が難しいのか。これは好みにもよるでしょうが、個人的には「無印の方が難しい」と思いました。というのも、無印で40000点を達成した集中力とテンションで挑んだところ、滅では一発で60000点を超えたからです。びっくりしました。
その後にもう一度50000点を出して真エンドを見ようとしたときは苦戦しまくったものの、一発目の印象から滅の方が比較的簡単なんだろうと思っています。滅バージョンは下からカラーボール(?)が上昇すること、落下してから腐るまでのスパンが長いこともあり、問答無用でさっさと腐る無印よりもやりやすいのは確かです。
また、『いりす症候群!』にはプレイヤーの気持ちを落ち着かせる効果があるような気がします。実際プレイしてみて、(目と肩は最高に疲れたものの)精神は不思議と冬の森のように静かな状態になりました。
特に無印に関しては、高得点を取ることでいりすがある計画を取り止める理由がよくわかります。素敵なBGMもあいまって、カチカチしていると心がすーっと落ち着くんですよね。なぜか悲しい思い出が浮かんでくることもあってクリックしながらつらくなったものの、没頭すればするほどクールダウンできました。
カタテマ作品の大きな魅力は、上述のようにゲームのデザインとストーリーがカッチリと噛み合っているところだと思います。『いりす症候群』に関しても両者の絡ませ方が見事で、ただ素晴らしいの一言です。
ストーリー感想(無印&滅)
いりす症候群!
『いりす症候群!』のストーリーは、パズルゲームの合間に出現する一枚絵やテキストファイルによって語られます。真相のヒントを小出しにし、外付けの情報によって物語るカタテマ作品の手法は、この『いりす症候群!』でもバッチリ用いられています。以下、ネタバレが含まれるのでご注意ください。
いりす無印では、海辺に遊びに行った3人の男女(あげは、えど、うーじ)が何らかの事件に見舞われて死亡、あるいは行方不明になるまでの顛末が語られます。おそらく初見で普通にプレイして何度か失敗すれば、すぐにこのエンドを見ることになるかと思います。いわゆるBad ENDです。
続いて、無印でNormal ENDを見るには、20000点以上のスコアをとる必要があります。Normal ENDでは、Bad ENDに至る過程、すなわち、「仲良し3人組の旅に同行していた4人目の存在」と「あげはがうさ耳の人物に襲撃されるまでのいきさつ」が明らかになります。このNormal ENDでようやく「いりす」が表舞台に現れるわけです。
ちなみに、このNormal ENDはマジでホラーです。ぞわぞわしました。ホラー表現が苦手な方は、「ちょっとあげは後ろ大丈夫?」と感じた時点で何が来てもいいように心構えすることをオススメします。
Normal ENDを見てからゲームを起動すると、唐突にHappy ENDが始まります。ただし、この幸福な結末には裏があります。40000点を取ると新しいテキストが出現し、ハッピーエンドの裏側と、狂気的な恋心に突き動かされて恐ろしい計画を立てるいりすの思考を知ることができます。
この40000点エンドを見るに、いりすはあげはを葬る計画をまったく諦めていないんですよね。しかもあげは視点のテキストを読むに、今後うーじがいりすの逆鱗に触れてしまいそうな予感もします。不安しかない。
さて、40000点を達成していりす視点のテキストを読むと、『いりす症候群!滅』をプレイできるようになります(右下のネコのアイコンをクリック)。無印の真の主人公をいりすとすれば、この滅の主人公は「うーじ」です。滅では一定の条件を満たしつつ高得点を取ることで、普通の大学生に見えたうーじの意外な過去と恋心を知ることができます。
「この可愛いうさ耳娘は誰やねん」状態からいりすの存在と策謀が判明する無印にも驚きましたが、うーじの意外すぎる心情が明かされる滅も大変面白かったです。断片化された情報がすべて揃うとパズルゲームの本当の意味が浮かび上がる構成が実に見事だと思います。『ムラサキ』でも似たような手法が使われていましたが、カタテマさんの物語を語る独特な方法にはいつも引き込まれます。
誤解を恐れずざっくりと表現するなら、『いりす症候群!(滅)』は、パンピー陽キャな2人(あげは&えど)が病みの深い2人(いりす&うーじ)に振り回されつつ、同時に彼らを絆しにいくお話なんだなーという印象です。滅までプレイして、えどとあげはは良い子だと素朴に思いました。斜に構えたうーじが心を開くのもむべなるかな。
ともかく、いりすによって…されることを夢見たうーじの計画は大幅に変更されそうだし、いりすとあげはが文字通りの意味を含めて救われる結末にホッとしました。数年越しにプレイしたからこそ、ゲーム内容と結末をより感慨深く受け止められた気がします。そして純粋に楽しい。今後もちょくちょく息抜きがてら遊ばせてもらおうと思います。
*****上に付け加えて、『いりす症候群!』はBGMと演出がすばらしいゲームだと思います。実際にプレイしないと分からないことなので、(ネタバレ込みの感想を書いておいてアレですが)興味を持った方はぜひ遊んでみてください。めっちゃ難しいですが、苦労する甲斐のあるゲームです。
※カタテマ様の他の作品についても、いくつか感想記事を書いています。
・『ムラサキ』 爆発パズル物理アクションゲーム 感想 考察
・『オトツカイ』 「音」を操り魔王を倒す謎解きパズルRPG 感想
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