『Ruina 廃都の物語』 長編ファンタジーRPG 感想&レビュー&考察 ※ネタバレ注意
マルチシナリオ形式の異世界ファンタジーRPG、『Ruina 廃都の物語』の感想&レビュー記事です。考察も含みます。制作者は枯草章吉様。作品の紹介ページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『Ruina 廃都の物語』
Ruina 廃都の物語
![]()
フリーゲームにはジャンル問わず優れた作品が数多く存在します。ただ、心にガツンと響く作品は人によって様々なのではないでしょうか。
掛け値なしに大好きで、思い返しては余韻に浸れるフリゲ作品というのが、私の中に3つ存在します。『Ruina 廃都の物語』(以下『Ruina』)はそのうちの一つです。フリゲを知ってすぐ(3番目)にプレイしたのでとりわけ思い入れの深い作品でもあります。
完成度の高さ、プレイヤーを没頭させてくれる包容力、優れたストーリーとそれを物語る手法。『Ruina』は個々の要素の質が非常に高く、それらが見事に調和して一つの世界を編み出しているゲームです。
『Ruina』は私にとって、理想的なRPGであり理想的なゲームです。まるで一冊の本を読むようにプレイできるゲームだと個人的には思っています。端的に言うと大好きです。
以下は、作品世界やシステムの詳しい紹介&説明と、実際にプレイした上での感想&レビュー&考察です。ネタバレを含むのでご注意ください。
※『Ruina 廃都の物語』の小説(ノベライズ版)の感想記事も書いています。
≪関連記事:『Ruina 廃都の物語1』 「騎士の嫡子」ルートをベースにした小説版(ノベライズ) 感想≫
『Ruina 廃都の物語』のあらすじ
『Ruina 廃都の物語』のあらすじを簡単にまとめると(それでも長い)、以下のような感じです。
物語の舞台は、大河の女神アークフィアを信仰する大河流域世界。主人公は大陸三大国の一つであるネス公国の辺境に位置する町、「ホルム」の住人である。
主人公はある日、仲間とともに町外れの森の中にある洞窟を探索した。数日後、その洞窟から不気味な魔物が溢れ出し、国内、ひいては世界中に様々な災厄をもたらすようになった。ホルムの地下深くには、はるか昔、神の怒りに触れて滅びた大河流域最大の統一国家、アルケア帝国の都が眠っていたのだ。
騎士、商人、盗賊、学者。あらゆる人間がこの報せに目の色を変えて遺跡の発掘を始める中、夜ごと不思議な夢を見るようになった主人公もまた、誘われるように遺跡を調査し始める。
徐々に明かされゆく古代帝国の真実を巡り、地上世界で巻き起こる争乱。やがて主人公は、偉大なる統一者、始祖帝タイタスの真の意図を知ることとなる。
世界の命運は、主人公の出生と分かちがたく結びついていたのだ。
公式サイト(『ダンボールの神様』)には、大河流域世界の地理や歴史についての詳しい情報が掲載されています。
『Ruina』の特徴と魅力
Ruina 廃都の物語
この項目では、『Ruina 廃都の物語』の特徴と魅力を挙げていきます。
上でも書いた通り、『Ruina』は異世界を舞台としたファンタジー色の強い長編作品です。ゲーム世界のモデルは中世ヨーロッパの封建時代でしょうか。騎士身分のキャラクターが出てきたりもします。
探索の重要性と自由度の高さ
『Ruina』の一番の特徴は、「探索に重きが置かれていること」です。これは、「TRPG(テーブルロールプレイングゲーム)要素が強い」と言い換えることも可能だと思います。
たとえばマップが1つあるとして、その各所にいくつかのポイントが置かれていると想像してください。スタート地点から始め、各ポイントを「探索」することで詳らかにしながらマップの奥に進む。それが『Ruina』の基本です。普通のRPGではキャラを動かして通過するようなところも、『Ruina』では文章による事細かな情景描写が挿入されます。
ポイントの探索をスムースに進めるためには、アイテムのほかに「障害物を排除する力」や「古代文字を読み解く知識」などの「スキル」が必要になることもあります。
また、マップ上でポイントを探索し終えたりオブジェクトを発見すれば経験値が入ります。実は戦闘によって得られる経験値よりも実入りがいいです。「戦闘本位ではなくあくまで探索が重要」という『Ruina』のスタンスがよく表れた部分だと思います。
その他、「自由度の高さ」も『Ruina』の特徴の1つでしょう。主人公のキャラメイクをできるほか、ジョブやパーティメンバーなども自由に組むことができます。大筋の物語は存在するものの、攻略における自由度も高くマイペースに進めることが可能です。
一冊の本のような物語世界
また、『Ruina』の魅力を語る上では、その緻密な世界観と圧倒的な文章力に触れないわけにはいきません。
世界の成り立ち、国と歴史、政治と宗教、風俗と神話など『Ruina』の世界観は実によく練られています。現実の神話や歴史等をベースにしているぶん、その奥行きはどこまでも広くプレイヤーの想像力を刺激するのでしょう。
そして、その世界観を描き出すという点においても『Ruina』は非常に優れています。こと文章力と文章量において、フリゲの中で『Ruina』を超えるものはそうそうないのでは……とも思うほどです。
『Ruina』の文章量は膨大です。通常の情景描写にしても各探索ポイントごとに用意され、関連資料も豊富なら、場所とキャラによって異なるチャット会話まで存在します。
情景が手に取るようにわかる、どこか詩的で惹き込まれるような文章のクオリティーを保ったまま、すべての物語を書き上げることがどんなに困難であったのか。それをやってのけてしまう制作者様の胆力に何より圧倒されるばかりです。
もちろん、『Ruina』の物語自体の面白さに関しては言うまでもありません。本筋について、主人公の周囲で起こる不可解な出来事がやがては主人公の出生の秘密へと集約していく流れには、うまく言い表せないほどの驚きと高揚感を覚えました。
地下遺跡最深部での例の呼びかけに鳥肌が立ち、最後の戦いに奮い立ち、トゥルーエンドの余韻に切ない気持ちになり……と最後までドキドキしっぱなしの初回プレイは今でもよく覚えています。
本編を離れた物語、大河流域世界で生きる人々の話や古くから伝わる神話・民話もまた、ゲーム世界を構成する優れた資料としてプレイヤーの知識欲を満たしてくれます。
土地があり、歴史があり、人々の生活があり、信じられている事柄があり……といった現実の世界の在り方を、ゲームの中で構築し描写する。「構築する」という点においても「描写する」という点においても難しいのに、『Ruina』はその2つを難なく実現しています。
私が『Ruina』を非常に魅力的だと感じているのは、「物語としての完成度の高さ」と、それゆえの「物語世界についての想像の余地の大きさ」のためかもしれません。個人的には、まるで一冊の本を読むように進められるゲームだと思っています。
主人公と4つの出自(ルート)
Ruina 廃都の物語
『Ruina』の冒頭では、プレイヤーが操作する「主人公」の出自や性別、容姿、名前をキャラメイクすることができます。
特に、主人公の「出自」は非常に重要です。合計4つの中から選ぶことができますが、出自ごとに異なった【サイドストーリー】が用意され、【初期ジョブ】や【スキル】も変化するからです。
また、出自によって、【サイドストーリー内でフィーチャーされるNPC】や【NPCとの会話内容】も微妙に変化します(※後述するキャラエンドとの兼ね合いから、【性別】もNPCとの関係においては重要)。加えて地味なポイントですが、【生家(スタート地点・セーブ地点)】も当然出自ごとに異なります。
立場が変われば、そこから見えるものも当然異なってきます。「4つの出自(ルート)をすべて体験することで、ようやく『Ruina』世界の全貌を知ることができる」と言っても過言ではありません。
「出自」の違いによるストーリー傾向
それでは、『Ruina』における「出自(=ルート)」について詳しく説明します。主人公をキャラメイクする過程で選ぶことのできる出自は、以下の4つです。
- 【賢者の弟子】
- 【騎士の嫡子】
- 【罪人の遺児】
- 【神殿に拾われた孤児】
それぞれの主人公の適性は、RPGのジョブ的な意味で、賢者=魔法使い/騎士=剣士/罪人=シーフ/神殿=神官と表現すれば想像しやすいかと思います。「ホルム領主の跡継ぎ」から「スラム街で暮らす孤児」まで、主人公の生い立ちと社会的身分は実にバリエーション豊かです。
また、各出自(ルート)のサイドストーリーと主人公の立ち位置についての雑感は以下の通りです。
【賢者の弟子】
どのルートよりもラスボスの足跡に迫ることができる。途中で色々なものを超越する。主人公が最も孤独、危うさも垣間見える。全体的にシリアスかつストイック。
【騎士の嫡子】
騎士と剣と戦争、英雄譚の趣きがあり王道的。遺跡騒動や政治の動きの概観など、大河流域世界の大枠を掴みやすい。明快でヒロイックな展開が多い。
【罪人の遺児】
ホルムの暗部と遺跡騒動の裏側を知ることができる。陰謀渦巻く裏社会に焦点を当てている。ややダーク、世間の世知辛さと仲間の有難みが心に沁みる。
【神殿に拾われた孤児】
ホルムの遺跡騒動から少し離れて物語の根本を覗くことができる。世界の秘密を知る、いわば種明かしルート。哲学的、神秘的、薄暗いというイメージ。
ルート(出自)を選ぶ順序は完全にプレイヤーの判断にゆだねられています。タイトルでピンときたルートを選ぶのもアリだと思います。
私個人が1周目にオススメするルートは、【騎士の嫡子】です。このルートはゲーム世界の史書に残るだろう“表”の物語を主に扱っています。大河流域世界の雰囲気を大まかに知ることもできるので、ツカミにもってこいのルートだと思います。
一方、物語の裏事情に焦点が当たる【罪人の遺児】や、大河流域世界の秘密が判明する【神殿に拾われた孤児】は、2周目以降に回した方がいいんじゃないかと思います。特に【神殿に拾われた孤児】は、作品の根幹設定に関わる種明かしが行われることが多いルートです。「そうだったのか」と驚くためにも、後の方に取っておくことをオススメします。
最後に、【賢者の弟子】は独特の空気感が漂うルートです。『Ruina』主人公としてプレイする以上はぜひともなぞるべきルートだと思います。
『Ruina』のキャラクター紹介
Ruina 廃都の物語
次に、主人公の探索に協力してくれる(=パーティメンバーになってくれる)NPCについて説明します。
パーティインしてくれるNPCは計10名存在します。ホルムの町の住人、遺跡探索のために外部からやってきた人間などNPCの出身や目的は様々です。プレイヤーは、幼なじみ、老剣士、魔術師、騎士、巫女、竜の子etc.……の中から2名を選び、パーティを組むことになります。
各NPCには「主人公への好感度」が設定されています。さらに、好感度に応じて個別キャラエンドを迎えることができます。先に述べましたが、主人公の性別によってエンド内容が変化することもあります(ex. 恋愛要素が入る)。また、出自(ルート)によりサイドストーリーで活躍するNPCが異なります。
詳細は下で紹介しますが、出自(ルート)と活躍するNPCの照応はだいたい下記の通りです。
- 【賢者の弟子】:ネルとシーフォン
- 【騎士の嫡子】:フランとアルソン
- 【罪人の遺児】:パリス(とラバン)
- 【神殿に拾われた孤児】:メロダークとテレージャ
もっとも、上の分類はあくまで主観です。出自上関連が深いくらいのキャラからサブストーリーの中核に関わるキャラまで、活躍の程度に差はあります。
ちなみに、各ルート内で活躍するキャラとキャラエンドを迎える(たとえば、賢者ルートでシーフォンエンドを迎える)と、特殊な展開を見られることがあります。
主人公+10人のメインキャラクターの情報について、以下にざっくりとまとめました。
主人公
ホルムの住人。賢者デネロスの弟子、あるいはホルム伯カムールの嫡子、あるいは処刑された罪人の養い子、あるいは神殿の巫女長アダに拾われた孤児……と出自は自由に選択可能。男女問わず共通しているのは、白髪に近いプラチナブロンドと赤い瞳という際立った容姿。
◇ネル
女性。主人公の幼馴染み。雑貨屋の一人娘。とらえどころのない性格をしている。魔術師に憧れているが魔法はからっきし。代わりに並外れた怪力の持ち主であり、調合や料理、武器・防具作成等をオールマイティにこなす。
◆パリス
男性。主人公の幼馴染み。スラム街育ちの孤児で、幼い妹のチュナと暮らしている。カッとなりやすいところがあるが面倒見は良い。普段から酒場に入り浸っているため、妹に心配されている。後ろ暗い仕事に手を染めている様子。
◆ラバン
男性。主人公、ネル、パリスの幼い頃からの知り合いで、ひょうひょうとした性格の老人。世界のあちこちを旅している風来坊であり謎も多い。片手が義手であるにもかかわらず、衰えない神速の剣捌きを見せる。年の功か習得スキルが最も多い。
◇フラン
女性。領主の館のメイド。館を取り仕切る執事の孫で、幼い頃から奉公している。物静かだが芯は強い。出身は丘陵地帯の羊飼いの町、レンデューム。盗賊の技を扱う熟達したくノ一でもある。料理のセンスは壊滅的。
◆シーフォン
男性。天才魔術師。ネス公国の隣国であるエルパディア公国出身。性格がすこぶる悪く、口も非常に悪い不良少年。強さを追求する野心家であり、方々で秘術を盗んでは逃げ回っている。アルケア帝国の遺失魔術を手に入れるべく主人公に協力する。
◆アルソン
男性。ネス公国の騎士。売名も褒賞も関係なく、国を救うために遺跡探索に馳せ参じた愛と正義と善意の人。領主の館に逗留中。ロマンチストかつKYな言動で周囲の人の顰蹙を買うことが多い。ネス大公の甥であり、大公の息子である従兄のテオルを敬愛している。料理が得意。
◇テレージャ
女性。大河神殿所属の巫女であり、ネス公国の隣国である西シーウァ王国の大貴族の娘。学問狂いの遺跡愛好家。アルケア帝国を危険視しその歴史を秘匿する神殿に愛想を尽かし、単身ホルムへ赴いてフィールドワークを始めた。
◆メロダーク
男性。無口で無愛想な傭兵。職を求めてホルムへやってきた。秘密の多い人物。料理のセンスは壊滅的。
◇キレハ
女性。南東の荒野からやって来た遊牧民。長の血筋の娘であり、一族の掟に従い一人旅をしている。なかなか素直になれない性格。主人公に窮地に陥ったところを救われ、遺跡探索に協力する。料理が得意。
エンダ
偉大な竜王の転生体。青みがかった銀髪を持つ神秘的な外見の少女。行動その他は野生児そのものであり、引き取り先の神殿の巫女長をよく困らせている。人間体だが竜の力を使うことができる。
パーティ編成は各キャラクターの持つスキルと相談して考えたいところです。主人公を含むパーティメンバー3人のスキルがばらけていれば、臨機応変に状況に対処できます。程度の差はあれどのスキルも重要なので、主人公自身のジョブチェンジによるスキル獲得も視野に入れた方がいいかもしれません。
各出自(ルート)の感想
私は、①騎士の嫡子→②賢者の弟子→③罪人の遺児→④神殿に拾われた孤児の順でプレイしました。
ちなみに、最初に騎士ルートをチョイスしたのは、剣を振るだけの剣士キャラが最初は安パイだろうと思ったからです。個人的には、かなりわかりやすい順序で『Ruina』を進められたのではないかと思っています。
騎士の嫡子――史書に記される“表”の物語
Ruina 廃都の物語
【騎士の嫡子】ルートの主人公は、ホルムの領主であるカムールの嫡子(跡継ぎ)です。
ホルム領は西シーウァ王国に接する辺境に位置し、ホルムの町や北西の羊飼いの里レンデュームなどを含みます。大河流域の交易拠点の一つであることを除けば辺鄙な土地だそうです(陸路の貿易路から外れているので)。
今から三十年前、ホルムは隣国との間に勃発した領土争いの舞台となった土地です。今なおネス公国にとって重要な防衛拠点の一つであり、当地を預かる代官のカムールも、相応の実力を持つ歴戦の騎士です。
ちなみにこの世界では、女性も問題なく騎士になって家を継げるようです(もっとも、女性主人公は「きちんとした縁談を貰わなくてはならん」と父のカムールに口を酸っぱくして言われている様子ですが)。
上にも書いた通り、騎士ルートの魅力はイベント&ストーリーが明快でわかりやすいこと。物語の舞台であるホルム領はどういった土地なのか、ホルムを治めるカムールはどのような人物なのか、ホルム領が属するネス公国は他国や大河神殿とどういった関係にあるのか……など、物語の外枠に該当する部分を自然に把握できるルートだと言えます。
それと絡んで、騎士ルートでは、中ボスである「テオル公子」(地上世界を引っかきまわして戦争を起こすキャラ)の表向きのスタンスを眺めることができます。そのテオル公子や他の諸侯、大河神殿など様々な陣営の画策・争いに巻き込まれ、政治的な立ち回りを強いられるカムールの苦悩を知ることも可能です。
目の前で政治が動いている、これから戦争が起きる、そして歴史が作られていく……そういった実感を肌で感じられる点も、騎士ルートの大きな魅力の1つだと個人的には思います。
また、騎士ルートにおける最大の魅力の1つは、後半に待ち受ける敵対勢力との戦争イベントです。他の3ルートでは人聞きの情報のみで終了するこのイベントに、領主カムールの嫡子である騎士主人公は宿命の如く参戦することになるのです。
この戦争関連のイベント、率直に言ってとても好きです。好きな理由は色々とありますが、第一に挙げたいのは「騎士ルートのストーリーを総括し納得のラストを導いてくれるイベントだから」というものです。
これはあくまで主観ですが、騎士ルートのストーリーは「青年が成長し大人になる」趣きが強いように感じます。それは騎士主人公が当初より領主である父の跡目を継ぐことを期待されているからであり、父カムールに守られる存在からスタートし、最終的に父の思いを受け継いで守る側の人間へと成長する流れが描かれるためでもあります。
そもそもカムールという明確な保護者ポジの人物がいるためか、騎士ルートは「親子関係」を強めに推し出しています。マジメ一徹の騎士であり頼もしい父であるカムールと接する機会も相応に多いため、「子供だった主人公が父の背中を追うように成長し、父の思いを立派に受け継ぐ」というストーリーを自然に想像しやすい構成になっているわけです。
そして、その「父から子への継承」という騎士ルートの流れを決定づけるのが、戦争関連のイベントだと個人的には思っています。ネタバレになるので詳しい言及は避けますが、言ってみれば戦争イベント=「青春の終わり」じゃないかと感じるんですよね。
気心の知れた仲間達とともに自ら剣を振るって戦い、いつでもどこへでも自由に冒険をする。それは夢のように楽しい体験ではあるものの、社会的立場の高い主人公は、いつまでも何も背負うことなく子供のように奔放に生き続けるわけにはいかない。そんなある種の挫折と妥協を伴う現実を、主人公は「父のように立派な騎士になりたい」、「愛する父に託されたものを守りたい」という積極的な意志のもと自然に受け入れ、大人になっていく……そういう意味においての「青春の終わり」です。
自分がたどった騎士ルートの全体像を振り返ったとき、上のような好みでしかないストーリーが展開されていたことに気づいて非常に感慨深くなったことを覚えています(もちろん、これは私個人の選択の結果です。選ぶキャラエンドや個人の主観によってルートから受ける印象は様々に異なってくると思います)。そして、騎士ルートの着地点を決定づけた戦争イベントのことも、めっちゃ良い内容だったよな~とさらに好きになった次第です。
あと、騎士ルートは領主カムールと騎士主人公の親子関係に焦点を当てるのと同じやり方で、テオル公子とアルソンの主従関係をピックアップしてくれたルートだと感じました。父の愛を理解しその意志を継承する騎士主人公に対し、主君の信念を否定しその意志を継承しないアルソンが置かれているようなイメージです。
私はアルソンとカムールにすごく愛着がありますが、それはハイライトとなる戦争イベントで、カムール&騎士主人公の親子に対してテオル&アルソンの主従が対置されたせいかもしれません。カムールと主人公の間で展開するドラマに並行する形で、テオルとアルソン間のドラマも描かれたため、騎士主人公とアルソンの戦友感をより強く感じられたのも嬉しいポイントでした。
さて、騎士ルートにおいて目立つNPCは、今さんざん語った「アルソン」と、領主の館でメイドをしている「フラン」の2人です。フランは幼い頃から主人公の傍で育ち、主人公を主君と仰いで慕っています。一方のアルソンは、ネス公国の騎士であり、遺跡探索のためにホルムを訪れ領主の館に逗留します。
個人的な感想ですが、「テオルがホルム領に関して何を企んでいたのか」ということが、女主人公(ウェンドリン)のアルソンエンドだとすっと腑に落ちました。
賢者の弟子――大いなるものに近づく物語
Ruina 廃都の物語
【賢者の弟子】ルートの主人公は、賢者デネロスの弟子です。デネロスは薬草に詳しい老人で、ホルムの町において医師の役割を担っています。
デネロスは「魔法」を使うことができます。しかし、大河流域世界に広く信じられている宗教の元締めである「大河神殿」は、魔法を邪教邪法として一切認めていません。大河神殿の影響力が強い西シーウァ王国では、魔術師は処刑されることさえあります。
そもそもこの世界における魔法とは、かつてアルケア帝国を興した始祖帝タイタスが編み出した秘術です。大河神殿はアルケア帝国を危険視しているため、帝国の遺産である魔法と魔術師のことも当然忌み嫌っているわけです。
デネロスはネス公国の辺境であるホルムにひっそりと隠れ住んでいますが、これはネス公国における大河神殿の締め付けが比較的緩いせいでもあるのでしょう。
4ルートの雑感でも述べた通り、賢者ルートでは謎多きラスボスに肉薄することができます。というのも、賢者主人公は唯一、かつてのラスボスと同じく「大いなる秘儀」を習得することが可能だからです。賢者ルートはいわば、「ラスボスの足跡を辿るルート」だと言えるのかもしません。
賢者ルートで特に印象に残るのは、主人公の孤独な境遇です。他のルートでは家族なり親同然の人なりが最後までいてくれるのですが、このルートでは途中でデネロス先生が亡くなってしまいます。親代わりの人を失い、ひとりぼっちで元の家に戻ることもできない。主人公の悲壮感はなかなか心にくるものがありました。
また、賢者ルートの主人公は、その出生の危うさの片鱗を垣間見せてくれます。具体的に挙げるなら、デネロスを襲撃した大河神殿兵に対し、主人公が我を忘れて魔法を浴びせかける場面でしょうか。文章の迫力と臨場感もあいまって該当シーンではぞわっとしたことを覚えています。
やはりこのルートの主人公は、メンタル的にも知識欲的にも一番ラスボスに近いんだろうなと個人的には思います。
ところで、デネロス先生が亡くなるのはこのルートだけです。他のルートではなんとか逃げのび、以降は地下遺跡に身を隠して薬草などを売ってくれるようになります。
他のルートでは「助かってよかった~」と最初は思います。しかしだんだんと「タダで採れる薬草をこの値段で売りつけるんかい」と思ってしまうようになるのがつらいところです(デネロス不在の賢者ルートの場合、デネロスの隠れ家を調べると薬草を入手できる)。
賢者ルートで目立つキャラは、「ネル」と「シーフォン」です。といっても、ネルはデネロスに勝手に師事しているというくらいなので、実質的に目立つのはシーフォンだけと言った方がいいかもしれません。
シーフォンは強さに固執する魔術師であり、主人公にいきなり魔法勝負を吹っかけてきたりする、賢者ルートにおけるライバルとでも言うべきキャラです。好感度に応じてシーフォンの過去がわかるイベントが追加されることがあり、適宜こなしていくと特殊なエンドを見ることができます。
罪人の遺児――闇を暴く“裏”の物語
Ruina 廃都の物語
【罪人の遺児】ルートの主人公は、スラム街出身の孤児です。パリスの義弟/義妹であり、チュナの義兄/義姉という立ち位置にあります。男主人公の場合はパリスと一緒に汚い仕事に手を染め、女主人公の場合は酒場で芸人をやっています。
主人公とパリスとチュナの育ての親は、過去にとある罪で処刑されました。処刑したのはホルム伯のカムールです。パリスはそれゆえカムールに悪感情を抱いています。
罪人ルートは、簡潔に表現するなら「物語の裏側に光を当てるストーリー」です。仮に騎士ルートを「表の物語」とするならば、この罪人ルートは「裏の物語」。遺跡騒動に際してテオルが計画していたことの詳細が明かされるほか、チュナの意外な正体も判明します。
罪人ルートの主人公は、社会的立場の弱い人間です。そのためか、ストーリー展開はおのずとホルムの暗部に焦点を当てたものになります。始めた当初はあまりの世間の世知辛さに哀しい気持ちになりました。「身を寄せ合って暮らしている貧乏兄妹なのに、妹が奇病にかかってしまって云々~」というところから話が展開するのでまあ仕方がありません。
たとえば、このルートに登場する「ピンガー」という悪徳商人がいるんですが、そのキャラはこちらの弱みに付け込んで色々と要求してくるわけです。はあ、とため息の一つも零れます。
とはいえ一番悲しかったのは、主人公の兄にあたるパリスのやさぐれ具合だったかもしれません。終始鬱々としている上、血迷って暴走するパリス兄さんをフォローするのは大変でした。
また、印象に残ったのはやはり罪人ルートのハイライトである館潜入イベントでしょうか。酒場に集まった仲間たちが快く協力してくれるので大いに盛り上がりました。普段は2人と組んでしか行動しないので分かりにくいですが、やっぱり全員仲が良いんだなあと実感できた場面でもありました。
罪人ルートで目立つのは、主にパリスです。※ラバンも館潜入時に連れていくと物凄い活躍を見せてくれます。彼の過去にも関係するやりとりが発生するので、一応触れておきます(後述:「老剣士ラバンの正体とは」)。
先に言っておきますがパリスのことは好きです。適度に情けなくて人間味があっていい。多少ダメなところのあるキャラの方が愛着も湧きます。その上で、この罪人ルートではいいとこなかったなーと思いました。
先述した通り、チュナが目覚めなくなった後のパリス兄さん、やさぐれ度がMAXです。「こんなクソみたいな街」でまずパンチを浴びせられた気分になりました。妹が大変とはいえあのデネロスやアダを爺さん婆さん呼ばわりし、「日頃偉そうに~」とまで言うし、このルートのパリスの鬱々とした感じは正直いたたまれなかったです。
そして、ほいほいピンガーに騙されてカムールを討とうとするくだりにもおいおいと思いました。あまりにも考えが足りない。もちろん戦ってまで止めたのに、なぜか勝利後ピンガーに殴られ主人公気絶っていう。実際に手をかける段階にまではいかずにほっとしたものの、実質的にカムールを狙う刺客を手助けした形になってしまうし、もう最初は呆れて言葉が出ませんでした。
とはいえ、チュナがパリスを何かと心配する理由はよくわかりました。あれは放っておけない。エンド後は商売がうまく軌道に乗ることを祈っています。
あとピンガーに笑いながら、「じゃあこれは○○○だな」と言い放つパリス兄貴は最高に輝いていました。うーんチンピラ。 他ルートではわりと常識人寄りなのに。
神殿に拾われた孤児――世界の根幹に至る物語
Ruina 廃都の物語
【神殿に拾われた孤児】ルートの主人公は、大河神殿に拾われた孤児です。育ての親は巫女長のアダ。
神殿ルートの主人公は、自身の信仰に確信を持てず、大河流域世界最大の宗教組織である「大河神殿」の教義に疑問を抱き始めています。大河神殿が信奉するのは、大河の女神アークフィア。そして女神への信仰の裏返しとして、大河神殿は神の怒りに触れて滅んだアルケア帝国を敵視し、始祖帝タイタスの復活を恐れています。
実は大河神殿は、タイタス復活に関するある重大な情報を手に入れていました。“アルケア皇帝の血を引きながら、大河の辺で拾われて孤児として育ち、皇帝と同じ偉業を成す者”……大河神殿の歴戦の老兵である「バルスムス」は、この情報をもとに主人公に接近します。
神殿ルートは、「裏設定お披露目ルート」と言い換えてもいいようなストーリーを内包しています。始祖帝タイタスと主人公の真実、そして「彼女」の考えについて知ることができるのはこのルートだけ。まさに神官、あるいは巫女の面目躍如と言ったところでしょうか。
また、神殿ルートでは大河神殿の動向の詳細を知ることもできます。騎士ルートでもチラッと出ていましたが、神殿勢力はある内通者を使ってホルムを侵略しました。このルートでは、その内通者がストーリーの中核に関わります。
その他、クトゥルフ神話が好きな方は、この神殿ルートでニヤッとする機会が多いかもしれません。【罪人】ルートや【賢者】ルートにもクトゥルフ要素はありますが、【神殿】ルートでは1ステージが丸々クトゥルフワールドになっているイメージです。
神殿ルートで目立つのは、「メロダーク」と「テレージャ」です。メロダークは無口な傭兵であり、テレージャは西シーウァ王国出身の大河神殿の巫女です。特にメロダークについては、最初から最後まで出番があります。
その他雑感とキャラ語り
この項目では、プレイ当時の雑感と一番好きなキャラである「アルソン」の感想を書きました。
プレイ当時の思い出
プレイ当時はなぜか、最初の竜の塔の湖手前で行き詰まってしまったことをよく覚えています。スキルの使い方がよくわかっていなくて、障害物をどけられないまま進めなかったからです。エンダにも会えないうちに仕方がないのでホルムの町の外に出て、このマップの外に行けないものかとずっとウロウロしていました。
しばらくしてまた地下に潜ると今度はすんなりと進むことができ、その先に広がる世界の果てしなさに驚きました。こんな序盤も序盤で詰まったことに絶句しつつ、本当にワクワクしたことを覚えています。
探索ゲームは好きなので、『Ruina』の仕様はプレイするのが楽しかったです。特に印象的だったのは、ホラーと見紛う恐怖の王宮と、そこを抜けた先にある妖精の森の軽やかなBGMでしょうか。あの落差の付け方は本当にうまいと思いました。
その他、ダーマディウス戦は相当苦戦したことを覚えています。『Ruina』の戦闘は基本的に関連資料を読むことであらかじめ敵への対策を行える仕組みになっています。しかしダーマディウスは、たしか妖精の森を攻略しないと対策がはっきりと分からない敵でした。そのために苦戦したのかもしれません。「おぞましき鉄串」は本当におぞましかったです。
アルソンについて
どのキャラも好きですが、特に好きだったのは「アルソン」です。アルソンはスキルが腕力のみ、防御力とHPが呆れるほど高いという肉壁キャラなんですが、その偏りっぷりが面白いと思っていました。
戦闘では安定感があるし、「ダンジョンでマグマに落ちてもアルソンだけ無事だった」なんてこともあって頼りにしていました。基本的に肉弾戦が好きという理由もあり、騎士ルートでは主人公とアルソンを揃えて物理で殴り倒していた記憶があります。
各ルートのストーリーに関連するキャラは、往々にして主人公とスキルが被りがちで、パーティインさせにくいところがあります。騎士主人公とアルソンもまさにそういう組合せですが、後半になるとスキルの種類に乏しくてもある程度ごり押しできるので、あまり気にせずに使っていました。
アルソンの何よりの強みは料理スキルだと個人的には思っています。料理スキルはとても便利な技能です。フランとメロダークは下手、アルソンとキレハは上手というように、料理の上手さ(=成功率の高低)はNPCによって異なります。
他のキャラや主人公も料理スキルを身につけられるんですが、問題は成功率の高低にあります。ダンジョンに潜っているとき、料理が成功するか否かは死活問題です。貴重な食料を使っているのに料理に失敗すると、心穏やかにはいられません。
その点、料理上手のアルソンはほぼ失敗しません。安心して料理係を任せられるという点で、気がつくと彼を連れ回していました。
性格については、KYさとロマンチスト加減がいい味を出していると思います。「大公の甥」、「建国当時から続く侯爵家出身」と羅列すると身分は相当高いんですが、本人はいたって気さくなところもいいギャップ。面白いキャラは好きなので、アルソンのことも当初から好きでした。
ただ、アルソンのことが特に好きになったのは、騎士ルート後半のテオルとの会話を見てからです。
アルソンというキャラは、貴族としてのシビアな思考を持ち合わせつつも、基本的には底抜けの善人でありお人好しです。「愛と正義のアルソン仮面」なんて名乗るぐらいには、綺麗事をよしとする純真な人間でもあります。
そんな彼が敬愛するのが、従兄のテオル公子です。従騎士だった頃に助けられたこともあり、アルソンは公国の改革を目指す野心家のテオルを主君と仰いで支えようとしています。
しかし、理想に燃えるアルソンにとって『Ruina』は第一に挫折の物語です。というのも、彼の主君であるテオルはどのルートでもアルケア帝国再興を夢見て戦争を目論み、結果として歴史の闇の中に消えていくからです。
騎士ルートには、テオルとアルソンが対峙する場面があります。そのきっかけは、テオルが他国との戦争にかこつけて家臣の有力諸侯を一掃しようとしたことでした。
公国の中央集権化というテオルの目標を知っていたアルソンも、このあまりに非道なやり方には絶句します。テオルは「結果が手段を正当化する」と説くものの、アルソンの目には主君の行いは傲慢な所業としか映りませんでした。
結局アルソンは主人公とともにテオルと対決し、主君である彼を討ち倒すことになります。アルソンに敗れたテオルは、次のようなことを言い残します。
お前を同志にするべきではなかった。民を従えるには偽善者も必要だと思っていたが、本物の善人に大業は成せない。
Ruina 廃都の物語(太字・下線は引用者)
テオルはゴーイングマイウェイで独善的なキャラですが、為政者としては有能です。テオルにとって政治に善はお呼びではないわけです。
だから、アルソンへの「本物の善人」という言葉は最大級の貶し文句であるとともに、今後自分に代わって公国の政治課題に携わらなければならないだろうアルソンへの挑戦状でもあったのかなと思います。
もっとも、テオルはアルソンの善性の厄介さに気づいていたようです。しかし遠ざけるだけで積極的に手を打とうとはしませんでした。テオル本人はアルソンを買っていたらしいので、政治家としてではなく主君あるいは血縁者として、善人のアルソンを評価していたのかなとも感じました。
テオルの言葉を受けてアルソンは色々と考え始めます。このあたりで、テレージャやラバンがアルソンの悩みに付き合ったりアドバイスを送ったりするのを見て感慨深くなりました。
テレージャさんは「こいつホントに馬鹿だよなー」的なスタンスで最初はアルソンに辛辣だったんですが、終盤にもなると、「やっぱりこいつ馬鹿だけど、そこがこいつの良さなんだろうなー」くらいの微笑ましそうな態度になっていた気がします。
また、ラバンについては、彼はおそらくアルソンやテオルの遠い先祖*(後述:「老剣士ラバンの正体とは」)なんですよね。子や孫を教え諭す雰囲気があり、ラバンっていいキャラしてるなと改めて思いました。
そしてラスボスとの戦いを終えた後、アルソンは公国の政治に参画することを決意します。
テオルが残した傷跡は大きく、大公が人事不省の最中、ネス公国は独立志向の諸侯と元テオル派の諸侯に分かれて内乱寸前の混乱状態に陥ります。テオルのやったことを間近で見ていたアルソンは、大公の甥として今自分にできることを模索し、ホルムを去っていきます。テオルの遺児の存在が明らかになったので、その子を「使う」ことで両派を仲介しようと決めたのです。
アルソンは主人公に、「何か意味のあることを成そうとするとどうしても綺麗事じゃ済まなくなる」、「自分に何ができるか不安だが、道を見失わずにやっていきたい」と言い残し、平穏を取り戻したホルムを去っていきます。そこに冒険途中の能天気な様子はなく、「ああ、一皮剝けたんだな」とプレイヤーとしてもしみじみするものがありました。理想に溺れたテオルの生き様を見た以上、為政者として成長せざるを得なかったのだと思います。
何がいいって、あくまでベースは善人でお人好しのアルソンのままということです。たとえこの先苦悩し迷うことがあっても、きっとへこたれずにまっすぐ進んでいくのだろうと不思議と安心できるものがありました。
どのキャラクターも冒険を通じて成長したり得るものがあった描写があるんですが、とりわけアルソンはビフォア&アフターの差がわかりやすいと思います。騎士ルート前半ではアルソンの情けない描写が多いので尚更見違えました。「その後が気になる」という意味でいまだに印象深いキャラクターです。
*老剣士ラバンの正体とは
Ruina 廃都の物語
今から数百年前のことですが、大陸三大国(ネス公国・西シーウァ王国・エルパディア公国)は、「大シーウァ王国」という一つの国を形成していました。
大シーウァ王国の初代国王は、名を「アレム」といいます。もともとは「シバ」という国の王子であり、圧政を敷く魔国マルディリアの魔王を討ち倒し、大シーウァ王国を建国しました。
大シーウァ王国は、大河流域世界を統一した史上3番目の国家だったそうです(アルケア→マルディリア→大シーウァの順)。しかし、アレムの息子の代から早々に対立が発生し、わずか50年ほどで分裂したと伝えられています(カール大帝没後のフランク王国っぽい経緯ですね)。
ところで、アレム王子はひとりで魔王を倒したわけではありません。広く知られる建国譚によれば、国一番の勇士がアレムに発破をかけて旅に同行し、魔王との最終決戦に至るまでずっと隣に居続けたようです。勇士は見事魔王を倒したものの、自らも魔王の呪いを受けて亡くなったと伝えられています。
建国譚において「英雄」として語り継がれているこの勇士。実は、彼こそ老剣士ラバンその人である可能性が高いです。
「勇士=ラバン」だと思う主な理由は2つあります。1つは、ラバンが英雄剣技の使い手であること。もう1つは、終盤に彼が話す「美少年の話」が大シーウァ王国の建国と分裂の経緯に酷似していることです。
美少年は「お姫様」と一緒に旅をして魔王を倒したものの、顔に傷を負い、ずっと生き続けて魔王の復活を見張り続けなければならない呪いを受けた。「お姫様」は美少年との間に子供をもうけて国を作ったが、その国はすぐに分裂し、二人の間の子は互いに争い始めた……とラバンは語ります。
話を聞く限り、「美少年」=ラバンです。そして美少年の伴侶であった「お姫様」は、大シーウァ王国を建国した初代アレムということになります。つまり物語では「彼」と表記されているアレムは、実は女性だったらしいのです。
西シーウァ王国には、現在も非常に勇ましいバーサーカー王女がいるので、アレムが女性であっても不思議はありません。また、勇士とアレムが実は男女の関係だったとするならば、テレージャさんが2人の関係についてぬとぬととした妄想を膨らませていたことも納得の一言です(そして、ラバンがその妄想を聞いて非常に複雑そうな顔をしていたことも)。
もっとも、これは「ラバン=勇士」と仮定した場合の話です。本当のところはわかりません。しかし、「三百年経ってたら云々」とラバンがジョークを言ったり、魔王の血を引くキレハの話にラバンが絡んだりするので、ほぼ「ラバン=勇士」と考えていいのではないかと思います。
そしてラバンが勇士だとすると、大陸三大国の王家筋の人間は皆ラバンの子孫だと言えます。西シーウァ王国の例のバーサーカー王女も、チュナも、テオル公子も、そしてテオルの従弟のアルソンもそうです。
そういう背景を考えると、ラバンとアルソンがどちらも音痴らしいことや、ラバンがアルソンにアドバイスすることも微笑ましく思えてきます。
最初に4つのルートの存在を知ったとき、そんなに周回できるだろうかと思ったことを覚えています。1周にかかる時間もけして短くはない物語なので。ところがいざプレイしてみると、「なんとしても4周しよう」という気概になりました。それほど面白かったからです。
出自だけでなく性別によってもキャラクターの反応が異なってくるので、いつでも新しい発見がある作品だと思います。今回はあえて省きましたが、戦闘も色々と工夫を凝らして楽しめる作品です。濃い脇キャラもいます。
今回プレイメモを見返していたらついつい懐かしくなり、記事が長くなりました。やっぱり『Ruina』は今でも大好きな作品です。
※【騎士の嫡子】ウェンドリンルートをベースに書かれた『Ruina』ノベライズ版(著者:嬉野秋彦氏)の感想記事も書いています。
関連記事:『Ruina 廃都の物語1』 「騎士の嫡子」ルートをベースにした小説版(ノベライズ) 感想
- 関連記事
-
- 『WIZMAZE』(ウィズメイズ) マルチシナリオ型ファンタジーRPG レビュー&世界設定を解説 その1 (2018/09/24)
- 『きらきら星の道しるべ』 幽霊とひと夏の旅をするRPG 感想 ※ネタバレ注意 (2018/08/14)
- 『美術空間』 ストーリー&キャラクター感想 裏エンド攻略 その2 ※ネタバレ注意 (2018/04/08)
- 『美術空間』 芸術に満ちた世界を往くサイドビューRPG レビュー その1 ※ネタバレ注意 (2018/04/07)
- 『SAVE』 復讐者がクトゥルフ神話ワールドを往くRPG 感想&攻略&考察 ※ネタバレ注意 (2017/04/03)
- 『ダージュの調律』 英雄になれない少年の苦悩を描くポエトリーRPG 感想&レビュー ※ネタバレ注意 (2016/06/29)
- 『ロマンピースを探して』 水彩画風イラストが印象的なファンタジーRPG 感想&攻略 (2016/05/25)
- 『行商!』 行商人としての成功を目指すRPG 感想&攻略 (2016/03/05)
- 『Ruina 廃都の物語』 長編ファンタジーRPG 感想&レビュー&考察 ※ネタバレ注意 (2016/03/03)