『Ruina 廃都の物語』 感想 考察

2016年03月03日
RPG(ロールプレイングゲーム) 0

異世界ファンタジーRPG、『Ruina 廃都の物語』(以下『Ruina』)の感想、考察記事です。制作者は枯草章吉様。作品の紹介ページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『Ruina 廃都の物語』

Ruina 廃都の物語 スクショ タイトル画面

Ruina 廃都の物語

フリゲにはジャンル問わず優れた作品が数多く存在します。ただ、心にガツンと響く作品は人によって様々なのではないでしょうか。

掛け値なしに大好きで、思い返しては余韻に浸れるフリゲ作品というのが、私の中に3つ存在します。『Ruina』はそのうちの一つです。フリゲを知ってすぐ(3番目)にプレイしたので、とりわけ思い入れの深い作品でもあります。

完成度の高さ、プレイヤーを没頭させてくれる包容力、優れたストーリーとそれを物語る手法。『Ruina』は個々の要素の質が非常に高く、それらが見事に調和して一つの世界を編み出しているゲームです。

『Ruina』は私にとって理想的なRPGであり、理想的なゲームです。個人的には、まるで一冊の本のようなゲームだと思っています。端的に言うと大好きです。

小説版(ノベライズ)『Ruina 廃都の物語』についての感想記事も書いています。

≪関連記事:『Ruina 廃都の物語』 小説(ノベライズ) 感想

以下は、作品世界やシステムの詳しい紹介&説明と、実際にプレイした上での感想&考察です。ネタバレを含むのでご注意ください。

あらすじ

『Ruina』のあらすじを簡単にまとめると(それでも長い)、以下のような感じです。

『Ruina』のあらすじ

物語の舞台は、大河の女神アークフィアを信仰する大河流域世界。主人公は、大陸三大国の一つであるネス公国の辺境に位置する町、ホルムの住人である。

主人公はある日、仲間とともに町外れの森の中にある洞窟を探索した。数日後、その洞窟から不気味な魔物が溢れ出し、国内、ひいては世界中に様々な災厄をもたらすようになった。ホルムの地下深くには、はるか昔、神の怒りに触れて滅びた大河流域最大の統一国家、アルケア帝国の都が眠っていたのだ。

騎士、商人、盗賊、学者。あらゆる人間がこの報せに目の色を変えて遺跡の発掘を始める中、夜ごと不思議な夢を見るようになった主人公も、誘われるように遺跡を調査し始める。

徐々に明かされゆく古代帝国の真実を巡り、地上世界で巻き起こる争乱。やがて主人公は、偉大なる統一者、始祖帝タイタスの真の意図を知ることとなる。

世界の命運は、主人公の出生と分かちがたく結びついていたのだ。

公式サイト(『ダンボールの神様』)には、大河流域世界の地理や歴史についての詳しい情報が掲載されています。

『Ruina』の特徴と魅力

この項目では、『Ruina』の特徴と魅力について書きます。

「あらすじ」に書いた通り、『Ruina』は異世界を舞台としたファンタジー色の強い長編作品です。ゲーム世界のモデルは中世ヨーロッパの封建時代でしょうか。騎士身分のキャラクターが出てきたりもします。

探索の重要性と自由度の高さ

『Ruina』の一番の特徴は、「探索に重きが置かれている」ことです。「TRPG(テーブルロールプレイングゲーム)要素が強い」と言い換えることもできると思います。

マップが一つあるとして、その各所にいくつかのポイントが置かれていると想像してください。スタート地点から始め、各ポイントを「探索」することで詳らかにしながらマップの奥に進む。それが『Ruina』の基本です。普通のRPGではキャラを動かして通過するようなところも、『Ruina』では文章による事細かな情景描写が挿入されます。

ポイントの探索をスムースに進めるためには、アイテムの他、障害物を排除する力古代文字を読み解く知識などの「スキル」が必要になることもあります。

また、マップ上でポイントを探索し終えたりオブジェクトを発見すれば、経験値が入ります。実は、戦闘によって得られる経験値よりも実入りがいいです。戦闘本位ではなくあくまで探索が重要という、『Ruina』のスタンスがよく表れた部分だと思います。

その他、「自由度の高さ」も特徴の一つでしょう。主人公のキャラメイクをできる他、ジョブやパーティメンバーなども自由に組むことができます。大筋の物語は存在するものの、攻略における自由度も高く、マイペースに進めることが可能です。

一冊の本のような物語世界

『Ruina』の魅力を語る上で、緻密な世界観と圧倒的な文章力に触れないわけにはいきません。

世界の成り立ち、国と歴史、政治と宗教、風俗と神話など『Ruina』の世界観は実によく練られています。現実の神話や歴史等をベースにしている分、その奥行きはどこまでも広く、プレイヤーの想像力を刺激するのでしょう。

そして、その世界観を描き出すという点においても『Ruina』は非常に優れています。文章力と文章量において、フリゲの中で『Ruina』を超えるものはそうそうないのではとも思うほどです。

このゲームの文章量は膨大です。通常の情景描写にしても各探索ポイントごとに用意され、関連資料も豊富なら、場所とキャラによって異なるチャット会話まで存在します。

情景が手に取るようにわかる、どこか詩的で惹き込まれるような文章のクオリティーを保ったまま、すべての物語を書き上げることがどんなに困難なことだったのか。それをやってのけてしまう作者様の胆力に、何より圧倒されるばかりです。

もちろん、物語的な面白さに関しては言うまでもありません。本筋について、主人公の周囲で起こる不可解な出来事が、やがては主人公の出生の秘密へと集約していく流れには、うまく言い表せないほどの驚きと高揚感を覚えました。

地下遺跡最深部での例の呼びかけに鳥肌が立ち、最後の戦いに奮い立ち、トゥルーエンドの余韻に切ない気持ちになり……と最後までドキドキしっぱなしの初回プレイは今でもよく覚えています。

本編を離れた物語、大河流域世界で生きる人々の話や古くから伝わる神話・民話も、ゲーム世界を構成する優れた資料としてプレイヤーの知識欲を満たしてくれます。

土地があり、歴史があり、人々の生活があり、信じられている事柄があり……といった現実の世界の在り方を、ゲームの中で構築し描写する。構築するという点においても、描写するという点においても難しいのに、『Ruina』はその2つを難なく実現しています。

私が『Ruina』を非常に魅力的だと感じているのは、「物語としての完成度の高さ」と、それゆえの「物語世界についての想像の余地の大きさ」のためかもしれません。個人的には、まるで一冊の本を読むように進められるゲームだと思っています。

主人公と4つの出自(ルート)

ゲーム冒頭では、プレイヤーが操作する「主人公」の出自、性別、容姿、名前をキャラメイクすることができます。

特に、「出自」は非常に重要です。合計4つの中から選ぶことができますが、出自ごとに異なった【サイドストーリー】が用意され、【初期ジョブ】や【スキル】も変化します。

また、【サイドストーリー内でフィーチャーされるNPC】や、【NPCとの会話内容】も微妙に変化します(※後述するキャラエンドとの兼ね合いから、性別もNPCとの関係においては重要)。加えて地味なポイントですが、出自によって【生家(スタート地点・セーブ地点)】も当然変わってきます。

立場が変われば、そこから見えるものも当然異なってきます。「4つの出自(ルート)をすべて体験することで、ようやく『Ruina』世界の全貌を知ることができる」と言っても過言ではないでしょう。

出自とは?

では、出自(=ルート)について詳しく説明します。主人公をキャラメイクする過程で選ぶことのできる出自は、以下の4つです。

  • 【賢者の弟子】
  • 【騎士の嫡子】
  • 【罪人の遺児】
  • 【神殿に拾われた孤児】

それぞれの主人公の適性は、RPGのジョブ的な意味で、賢者=魔法使い/騎士=剣士/罪人=シーフ/神殿=神官と表現すれば想像しやすいかと思います。「ホルム領主の跡継ぎ」から「スラム街で暮らす孤児」まで、主人公の生い立ちと社会的身分は実にバリエーション豊かです。

また、各ルートのサイドストーリーと主人公の立ち位置についての雑感は以下の通りです。

4つのルートの特徴

【賢者の弟子】
どのルートよりもラスボスの足跡に迫ることができる。途中で色々なものを超越する。主人公が最も孤独、危うさも垣間見える。全体的にシリアスかつストイック。

【騎士の嫡子】
騎士と剣と戦争、英雄譚の趣きがあり王道的。遺跡騒動や政治の動きの概観、大河流域世界の大枠を掴みやすい。明快でヒロイックな展開が多い。

【罪人の遺児】
ホルムの暗部と遺跡騒動の裏側を知ることができる。陰謀渦巻く裏社会に焦点を当てている。ややダーク、世間の世知辛さと仲間の有難みが心に沁みる。

【神殿に拾われた孤児】
ホルムの遺跡騒動から少し離れて物語の根本を覗くことができる。世界の秘密を知る、いわば種明かしルート。哲学的、神秘的、薄暗いというイメージ。

ルート(出自)を選ぶ順序は、完全にプレイヤーの判断にゆだねられています。

個人的には、最初に【騎士の嫡子】で大河流域世界の大まかな雰囲気を知るのがいいのではないかと思います。このルートはゲーム世界の史書に残るだろう表の物語を中心に扱っているので、ツカミとしてオススメです。

一方、物語の裏事情に焦点が当たる【罪人の遺児】や、大河流域世界の秘密が判明する【神殿に拾われた孤児】は後に回した方がいいと思います。特に【神殿に拾われた孤児】は、作品の根幹設定に関わる種明かしが行われることが多いルートです。「そうだったのか」と驚くためにも、後の方に取っておくことをオススメします。

また、【賢者の弟子】は独特の雰囲気があるので、『Ruina』主人公としてプレイする以上はやるべきルートだと思います。

キャラクター紹介

次に、主人公の探索に協力してくれる(=パーティメンバーになってくれる)NPCについて説明します。

NPCは全10名。ホルムの町の住人、遺跡探索のために外部からやってきた人間などNPCの出身や目的は様々です。プレイヤーは、幼なじみ、老剣士、魔術師、騎士、巫女、竜の子、etc.……の中から2名を選び、パーティを組むことになります。

各NPCについて、「主人公への好感度」が設定されています。さらに、好感度に応じて個別キャラエンドを迎えることができます。先に述べましたが、主人公の性別によってエンド内容が変化することもあります(ex. 恋愛要素が入る)。また、出自(ルート)により、サイドストーリーで活躍するNPCが異なります。

詳細については下で紹介しますが、出自(ルート)と活躍するNPCの照応はだいたい下記のような感じです。

  • 【賢者】:ネルとシーフォン
  • 【騎士】:フランとアルソン
  • 【罪人】:パリス(とラバン)
  • 【神殿】:メロダークとテレージャ

もっとも、この分類はあくまで主観です。関連が深いというだけのキャラからストーリーの中核に関わるキャラまで、活躍の程度に差はあります。
ちなみに、各ルート内で活躍するキャラとキャラエンドを迎える(たとえば、賢者ルートでシーフォンエンドを迎える)と、特殊な展開を見られることがあります。

主人公+10人のメインキャラクターの情報について、以下にざっくりとまとめました。

キャラクター紹介

主人公
ホルムの住人。賢者デネロスの弟子、あるいはホルム伯カムールの嫡子、あるいは処刑された罪人の養い子、あるいは神殿の巫女長アダに拾われた孤児……と出自は自由に選択可能。男女問わず共通しているのは、白髪に近いプラチナブロンドと赤い瞳という際立った容姿

◇ネル
女性。主人公の幼馴染み。雑貨屋の一人娘。とらえどころのない性格をしている。魔術師に憧れているが魔法はからっきし。代わりに並外れた怪力の持ち主であり、調合や料理、武器・防具作成等をオールマイティにこなす。

◆パリス
男性。主人公の幼馴染み。スラム街育ちの孤児で、幼い妹のチュナと暮らしている。カッとなりやすいところがあるが、面倒見は良い。後ろ暗い仕事に手を染めている様子。普段から酒場に入り浸っているため、妹に心配されている。

◆ラバン
男性。主人公、ネル、パリスの幼い頃からの知り合いで、ひょうひょうとした性格の老人。世界のあちこちを旅している風来坊であり謎も多い。片手が義手であるにもかかわらず、衰えない神速の剣捌きを見せる。年の功か習得スキルが最も多い。

◇フラン
女性。領主の館のメイド。館を取り仕切る執事の孫で、幼い頃から奉公している。物静かだが芯は強い。出身は丘陵地帯の羊飼いの町、レンデューム。盗賊の技を扱う熟達したくノ一でもある。料理のセンスは壊滅的。

◆シーフォン
男性。天才魔術師。ネス公国の隣国であるエルパディア公国出身。性格がすこぶる悪く、口も非常に悪い不良少年。強さを追求する野心家であり、方々で秘術を盗んでは逃げ回っている。アルケア帝国の遺失魔術を手に入れるべく主人公に協力する。

◆アルソン
男性。ネス公国の騎士。売名も褒賞も関係なく、国を救うために遺跡探索に馳せ参じた愛と正義と善意の人。領主の館に逗留中。ロマンチストかつKYな言動で周囲の人の顰蹙を買うことが多い。ネス大公の甥であり、大公の息子である従兄のテオルを敬愛している。料理が得意。

◇テレージャ
女性。大河神殿所属の巫女であり、ネス公国の隣国である西シーウァ王国の大貴族の娘。学問狂いの遺跡愛好家。アルケア帝国を危険視しその歴史を秘匿する神殿に愛想を尽かし、単身ホルムへ赴いてフィールドワークを始めた。

◆メロダーク
男性。無口で無愛想な傭兵。職を求めてホルムへやってきた。秘密の多い人物。料理のセンスは壊滅的。

◇キレハ
女性。南東の荒野からやって来た遊牧民。長の血筋の娘であり、一族の掟に従い一人旅をしている。なかなか素直になれない性格。主人公に窮地に陥ったところを救われ、遺跡探索に協力する。料理が得意。

エンダ
偉大な竜王の転生体。青みがかった銀髪を持つ神秘的な外見の少女。行動その他は野生児そのものであり、引き取り先の神殿の巫女長をよく困らせている。人間体だが竜の力を使うことができる。

パーティ編成は各キャラの持つスキルと相談して考えたいところです。パーティメンバー3人のスキルがばらけていれば、臨機応変に状況に対処できます。程度の差はあれどのスキルも重要なので、主人公自身のジョブチェンジによるスキル獲得も視野にいれた方がいいかもしれません。

各ルートの感想

私は、①騎士②賢者③罪人④神殿の順でプレイしました。

ちなみに、最初に騎士ルートをチョイスしたのは、剣を振るだけの剣士キャラが最初は安パイだろうと思ったからです。個人的には、一番わかりやすい順序で『Ruina』を進められたのではないかと思っています。

騎士の嫡子

騎士ルートの主人公は、ホルムの領主カムールの嫡子です。

ホルム領は西シーウァ王国に接する辺境に位置し、ホルムの町や北西の羊飼いの里レンデュームなどを含みます。大河流域の交易拠点の一つであることを除けば辺鄙な土地だそうです(陸路の貿易路から外れているので)。

今から三十年前、ホルムは領土をめぐる隣国との戦争の舞台となりました。ゆえに、ネス公国にとってホルムは重要な防衛拠点の一つであり、代官であるカムールもそれ相応の実力ある騎士です。

ちなみにこの世界では、女性も問題なく騎士になって家を継げるようです。もっとも主人公が女性の場合は、「きちんとした縁談を貰わなくてはならん」とカムールに口を酸っぱくして言われている様子ですが。

上にも書いた通り、騎士ルートはイベントストーリーが明快でわかりやすいので初見の方にオススメです。

「物語の舞台であるホルム領はどういった土地なのか」、「ネス公国と他国や大河神殿はどういう関係にあるのか」、「ホルム領を治めるカムールはどういった人物なのか」……そういった物語の外枠を把握しやすいルートだと思います。

また、騎士ルートでは、中ボスであるテオル公子(地上世界を引っかきまわして戦争を起こすキャラ)の表向きのスタンスを眺めることもできます。さらに、他の諸侯たちや大河神殿など様々な陣営の画策・争いに巻き込まれ、政治的な立ち回りを強いられるカムールの苦悩を知ることもできるのです。

よって、「政治が動いている」「これから戦争が起きる」という実感を肌で感じられるルートでもあります。

騎士ルート後半の、戦争に関わるイベントはかなり王道的です。出征直前に自身を待つ運命を予感し、あえて我が子に真実を告げて「自由に生きろ」とだけ言い残すカムールには非常にしんみりとしました。そこから主人公が戦に参加し、伝説の聖剣を入手するまでの流れはひたすら熱いです。

私は騎士ルートのストーリーが特に好きです。そのため、このルートで見せ場があるカムールとアルソンのことも自然と好きになりました。「ホルムを守ってくれ」と父に頼まれ、最終的には騎士になり領主を継ぐだろうラストを含め、きれいにまとまった話だと思います。

このルートで目立つキャラは、フランアルソンです。メイドのフランは小さい頃から主人公の傍で育ち、主人公を主君と仰いで慕っています。一方のアルソンは、ネス公国の騎士であり、遺跡探索のためにホルムを訪れ領主の館に逗留します。

個人的な感想ですが、「テオルがホルム領に関して何を企んでいたのか」ということが、女主人公のアルソンエンドだとすっと腑に落ちました。

賢者の弟子

賢者ルートの主人公は、賢者デネロスの弟子です。デネロスは薬草に詳しく、ホルムで医師の役割を担っているようです。

デネロスは「魔法」を使うことができます。しかし、大河流域世界に広く信じられている宗教の元締め、大河神殿は、魔法を邪教邪法として一切認めていません。大河神殿の影響力が強い西シーウァ王国では、魔術師は処刑されることさえあります。

そもそもこの世界における魔法とは、かつてアルケア帝国を興した始祖帝タイタスが編み出した秘術です。大河神殿はアルケア帝国を危険視しているため、帝国の遺産である魔法と魔術師のことも忌み嫌っているわけです。

デネロスはネス公国の辺境であるホルムにひっそりと隠れ住んでいますが、これはネス公国における大河神殿の締め付けが比較的緩いせいでもあるのでしょう。

賢者ルートでは、上述したようにラスボスに肉薄することができます。というのもこのルートの主人公のみが、かつてのラスボスと同じく「大いなる秘儀」を習得することができるからです。いわばラスボスの足跡を辿るルートと言えるかもしません。

賢者ルートで特に印象に残るのは、主人公の孤独な境遇です。他のルートでは家族なり親同然の人なりが最後までいてくれるのですが、このルートでは途中でデネロス先生が亡くなってしまいます。親代わりの人を失い、ひとりぼっちで元の家に戻ることもできない。主人公の悲壮感はなかなか心にくるものがありました。

また、賢者ルートの主人公は、その出生の危うさの片鱗を垣間見せてくれます。たとえば、デネロスを襲撃してきた大河神殿兵に対し、主人公が我を忘れて魔法を浴びせかける場面です。該当シーンでは、文章の迫力と臨場感もあいまってぞわっとしました。

やはりこのルートの主人公は、メンタル的にも知識欲的にも一番ラスボスに近いんだろうなと思います。

ところで、デネロス先生が亡くなるのはこのルートだけです。他のルートではなんとか逃げのび、以降は地下遺跡に身を隠して薬草などを売ってくれるようになります。

他のルートでは助かってよかったと最初は思います。しかしだんだんと、「タダで採れる薬草をこの値段で売りつけるんかい」と思ってしまうようになるのがつらいところです(デネロス不在の賢者ルートの場合、デネロスの隠れ家を調べると薬草を入手できる)。

賢者ルートで目立つキャラは、ネルシーフォンです。といってもネルはデネロスに勝手に師事しているというくらいなので、実質的に目立つのはシーフォンだけと言った方がいいかもしれません。

シーフォンは強さに固執する魔術師であり、主人公にいきなり魔法勝負を吹っかけてきたりもします。よって、このルートにおけるライバルと言うべきキャラでしょう。好感度に応じてシーフォンの過去がわかるイベントが追加されることがあり、適宜こなしていくと特殊なエンドを見ることができます。

罪人の遺児

罪人ルートの主人公は、スラム街出身の孤児です。パリスの義弟/義妹であり、チュナの義兄/義姉という立ち位置にあります。男主人公の場合はパリスと一緒に汚い仕事に手を染め、女主人公の場合は酒場で芸人をやっています。

主人公、パリス、チュナの育ての親は、過去にとある罪で処刑されました。処刑したのはホルム伯のカムールです。パリスはそれゆえカムールに悪感情を抱いています。

罪人ルートは、物語の裏側に光を当てたストーリーです。騎士ルートを表の物語とするならば、この罪人ルートは裏の物語。「遺跡騒動に際してテオルが計画していたこと」の詳細が明かされるほか、「チュナの意外な正体」も判明します。

このルートの主人公は社会的立場の弱い人間です。そのためか、ストーリー展開はおのずとホルムの暗部に焦点を当てたものになります。

始めた当初はあまりの世間の世知辛さに哀しい気持ちになりました。「身を寄せ合って暮らしている貧乏兄妹なのに、妹が奇病にかかってしまって云々~」というところから話が展開するのでまあ仕方がありません。
たとえばこのルートに登場するピンガーという悪徳商人がいるんですが、そのキャラはこちらの弱みに付け込んで色々と要求してくるわけです。はあ、とため息も零れます。

とはいえ一番悲しかったのは、主人公の兄にあたるパリスのやさぐれ具合だったかもしれません。終始鬱々としている上、血迷って暴走するパリス兄さんをフォローするのは大変でした。

また、このルートのハイライトである館潜入時には、酒場に集まった仲間たちが協力してくれます。普段は2人と組んでしか行動しないので分かりにくいですが、やっぱり全員仲が良いんだなあと実感できた場面でもありました。

このルートで目立つのは、主にパリスです。※ラバンも館潜入時に連れていくと物凄い活躍を見せてくれます。彼の過去にも関係するやりとりが発生するので、一応触れておきます(後述:ラバンの正体についての考察)。

先に言っておきますがパリスのことは好きです。適度に情けなくて人間味があっていい。多少ダメなところのあるキャラの方が愛着も湧きます。その上で、このルートではいいとこなかったなーと思いました。

先述した通り、チュナが目覚めなくなった後のパリス兄さん、やさぐれ度がMAXです。「こんなクソみたいな街」でまずパンチを浴びせられた気分になりました。妹が大変とはいえあのデネロスやアダを爺さん婆さん呼ばわりし、「日頃偉そうに~」とまで言うし、このルートのパリスの鬱々とした感じは正直いたたまれなかったです。

そして、ほいほいピンガーに騙されてカムールを討とうとするくだりにもおいおいと思いました。あまりにも考えが足りない。もちろん戦ってまで止めたのに、なぜか勝利後ピンガーに殴られ主人公気絶っていう。
実際に手をかける段階にまではいかずにほっとしたものの、実質的にカムールを狙う刺客を手助けした形になってしまうし、もう最初は呆れて言葉が出ませんでした。

とはいえ、チュナがパリスを何かと心配する理由はよくわかりました。あれは放っておけない。エンド後は商売がうまく軌道に乗ることを祈っています。

あとピンガーに笑いながら、「じゃあこれは○○○だな」と言い放つパリス兄貴は最高に輝いていました。うーんチンピラ。他ルートではわりと常識人寄りなのに。

神殿に拾われた孤児

神殿ルートの主人公は、大河神殿に拾われた孤児です。育ての親は巫女長のアダ。

主人公は近頃、大河神殿の教えに疑問を持ち始めています。大河神殿は、大河の女神アークフィアを信奉しています。一方で、神の怒りに触れて滅んだアルケア帝国を敵視し、始祖帝タイタスの復活を恐れています。

実は大河神殿は、タイタス復活に関する重大な情報を手に入れていました。

“アルケア皇帝の血を引きながら、大河の辺で拾われて孤児として育ち、皇帝と同じ偉業を成す者”……大河神殿の歴戦の老兵であるバルスムスは、この情報をもとに主人公に接近します。

神殿ルートは、裏設定お披露目ルートと言い換えてもいいと思います。始祖帝タイタスと主人公の真実、そして「彼女」の考えについて知ることができるのはこのルートだけです。まさに神官、あるいは巫女の面目躍如と言ったところでしょうか。

またこのルートでは、大河神殿の動向の詳細を知ることもできます。騎士ルートでもチラッと出ていましたが、神殿勢力はある内通者を使ってホルムを侵略しました。このルートでは、その内通者がストーリーの中核に関わります。

その他、クトゥルフ神話が好きな人はニヤッとできる要素が多いかもしれないルートです。【罪人】ルートや【賢者】ルートにもクトゥルフ要素はありますが、【神殿】ルートでは1ステージがクトゥルフワールドになっているようなイメージです。

このルートで目立つのは、メロダークテレージャです。メロダークは無口な傭兵、テレージャは西シーウァ王国出身の大河神殿の巫女です。特にメロダークについては、最初から最後まで出番があります。

その他の雑感とキャラ語り

この項目ではプレイ当時の雑感と、一番好きなキャラである「アルソン」の感想を書きました。

プレイ当時の思い出

プレイ当時はなぜか、最初の竜の塔の湖手前で行き詰まってしまったことをよく覚えています。スキルの使い方がよくわかっていなくて、障害物をどけられないまま進めなかったからです。エンダにも会えないうちに仕方がないのでホルムの町の外に出て、このマップの外に行けないものかとずっとウロウロしていました。

しばらくしてまた地下に潜ると今度はすんなりと進むことができ、その先に広がる世界の果てしなさに驚きました。こんな序盤も序盤で詰まったことに絶句しつつ、本当にワクワクしたことを覚えています。

探索ゲームは好きなので、『Ruina』の仕様はプレイするのが楽しかったです。特に印象的だったのは、ホラーと見紛う恐怖の王宮と、そこを抜けた先にある妖精の森の軽やかなBGMでしょうか。あの落差の付け方は本当にうまいと思いました。

その他、ダーマディウス戦は相当苦戦したことを覚えています。『Ruina』の戦闘は基本的に、関連資料を読むことであらかじめ敵への対策を行える仕組みになっています。しかしダーマディウスは、たしか妖精の森を攻略しないと対策がはっきりと分からない敵でした。そのために苦戦したのかもしれません。おぞましき鉄串は本当におぞましかったです。

アルソンについて

どのキャラも好きですが、特に好きだったのはアルソンです。アルソンはスキルが腕力のみ、防御力とHPが呆れるほど高いという肉壁キャラなんですが、その偏りっぷりが面白いと思っていました。

戦闘では安定感があるし、「ダンジョンでマグマに落ちてもアルソンだけ無事だった」なんてこともあって頼りにしていました。基本的に肉弾戦が好きという理由もあり、騎士ルートでは主人公とアルソンを揃えて物理で殴り倒していた記憶があります。

各ルートのストーリーに関連するキャラは、往々にして主人公とスキルが被りがちで、パーティインさせにくいところがあります。騎士主人公とアルソンもまさにそういう組合せですが、後半になるとスキルの種類に乏しくてもある程度ごり押しできるので、あまり気にせずに使っていました。

アルソンの何よりの強みは料理スキルだと個人的には思っています。料理スキルはとても便利な技能です。フランとメロダークは下手、アルソンとキレハは上手というように、料理の上手さ(=成功率の高低)はNPCによって異なります。

他のキャラや主人公も料理スキルを身につけられるんですが、問題は成功率の高低にあります。ダンジョンに潜っているとき、料理が成功するか否かは死活問題です。貴重な食料を使っているのに料理に失敗すると、心穏やかにはいられません。

その点、料理上手のアルソンはほぼ失敗しません。安心して料理係を任せられるという点で、気がつくと彼を連れ回していました。

性格については、KYさとロマンチスト加減がいい味出しています。「大公の甥」「建国当時から続く侯爵家出身」と羅列すると身分は相当高いんですが、本人はいたって気さくなところもいいギャップ。面白いキャラは好きなので、アルソンのことも当初から好きでした。

ただしとりわけ好きになったのは、騎士ルート後半のテオルとの会話を見てからです。

アルソンというキャラは、貴族としてのシビアな思考を持ち合わせつつも、基本的には底抜けの善人でありお人好しです。「愛と正義のアルソン仮面」なんて名乗るぐらいには、綺麗事をよしとする純真な性格でもあります。

そんな彼が敬愛するのが、従兄のテオル公子です。従騎士だった頃に助けられたこともあり、アルソンは公国の改革を目指す野心家のテオルを主君と仰いで支えようとしています。

しかし理想に燃えるアルソンにとって、『Ruina』は挫折と成長の物語です。というのも、彼の主君であるテオルは、どのルートでもアルケア帝国再興を夢見て戦争を目論み、結果として歴史の闇の中に消えていくからです。

騎士ルートには、テオルとアルソンが対峙する場面があります。

中央集権化を目指すテオルは、他国との戦争にかこつけて、家臣の有力諸侯を一掃しようとしたのです。アルソンはあまりに非道なこの行いに絶句します。テオルは「結果が手段を正当化する」と説きますが、アルソンの目には、そのやり方は傲慢な所業としか映りませんでした。

結局、アルソンは主人公とともにテオルと対決し、主君である彼を討ち倒すことになります。アルソンに敗れたテオルは、次のようなことを言い残します。

お前を同志にするべきではなかった。民を従えるには偽善者も必要だと思っていたが、本物の善人に大業は成せない。

Ruina 廃都の物語(下線は引用者)

テオルはゴーイングマイウェイで独善的なキャラですが、為政者としては有能です。テオルにとって、政治に善はお呼びではないわけです。

だから、アルソンへの「本物の善人」という言葉は最大級の貶し文句であるとともに、今後自分に代わって公国の政治課題に携わらなければならないだろうアルソンへの挑戦状でもあったのかなと思います。

ただ、テオルはアルソンの厄介な善性に気づいていた様子なんですよね。しかし遠ざけるだけで何らかの手を打とうとはしなかった。
テオル本人はアルソンを買っていたらしいので、政治家としてではなく主君あるいは血縁者として、善人のアルソンを評価していたのかなとも感じました。

テオルの言葉を受けてアルソンは色々と考え始めます。このあたりで、テレージャやラバンがアルソンの悩みに付き合ったりアドバイスを送ったりしているのが感慨深かったです。

テレージャさんは「こいつホントに馬鹿だよなー」的なスタンスで最初はアルソンに辛辣だったんですが、終盤にもなると、「やっぱりこいつ馬鹿だけど、そこがこいつの良さなんだろうなー」くらいの微笑ましそうな態度になっていた気がします。

ラバンについては、彼はおそらくアルソンやテオルの遠い先祖*後述:ラバンの正体についての考察)なんですよね。子や孫を教え諭す雰囲気があり、ラバンっていいキャラしてるなと改めて思いました。

そしてラスボスとの戦いを終えた後、アルソンは公国の政治に参画することを決意します。

テオルが残した傷跡は大きく、大公が人事不省の最中、ネス公国は独立志向の諸侯と元テオル派の諸侯に分かれて内乱寸前の混乱状態に陥ります。テオルのやったことを間近で見ていたアルソンは、大公の甥として今自分にできることを模索し、ホルムを去っていきます。テオルの遺児の存在が明らかになったので、その子を「使う」ことで両派を仲介しようと決めたのです。

アルソンは主人公に、「何か意味のあることを成そうとするとどうしても綺麗事じゃ済まなくなる」「自分に何ができるか不安だが、道を見失わずにやっていきたい」と言い残し、平穏を取り戻したホルムを去っていきます。そこに冒険途中の能天気な様子はなく、「ああ、一皮剝けたんだな」とプレイヤーとしてもしみじみするものがありました。理想に溺れたテオルの生き様を見た以上、為政者として成長せざるを得なかったのだと思います。

何がいいって、あくまでベースは善人でお人好しのアルソンのままということです。きっと迷いながらもまっすぐ進んでいくのだろうと不思議と安心できるものがありました。

どのキャラクターも旅を通じて成長したり得るものがあった描写があるんですが、とりわけアルソンはビフォア&アフターの差がわかりやすいと思います。騎士ルート前半ではアルソンの情けない描写が多いので、尚更見違えました。その後が気になるという意味で、いまだに印象深いキャラクターです。

*ラバンの正体についての考察

数百年前のことですが、大陸三大国(ネス公国・西シーウァ王国・エルパディア公国)は、大シーウァ王国という一つの国を形成していました。

大シーウァ王国の初代国王は、名をアレムといいます。もともとはシバという国の王子であり、圧政を敷く魔国マルディリアの魔王を討ち倒し、大シーウァ王国を建国しました。

大シーウァ王国は、大河流域世界を統一した史上3番目の国家だったそうです(アルケア→マルディリア→大シーウァの順)。しかし、アレムの息子の代から早々に対立が発生し、わずか50年ほどで分裂したと伝えられています。

ところで、アレム王子はひとりで魔王を倒したわけではありません。広く知られる建国譚によれば、国一番の勇士がアレムに発破をかけて旅に同行し、魔王との最終決戦に至るまでずっと隣に居続けたようです。勇士は見事魔王を倒したものの、自らも魔王の呪いを受けて亡くなったと伝えられています。

建国譚において英雄として語り継がれているこの勇士。実は彼こそ、老剣士ラバンその人である可能性が高いです。

「勇士=ラバン」だと思った主な理由は2つあります。1つは、ラバンが英雄剣技の使い手であること。もう1つは、終盤に彼が話す「美少年の話」が、大シーウァ王国の建国と分裂の経緯に酷似していることです。

美少年は、「お姫様」と一緒に旅をして魔王を倒したものの、顔に傷を負い、ずっと生き続けて魔王の復活を見張り続けなければならない呪いを受けた。「お姫様」は美少年との間に子供をもうけて国を作ったが、その国はすぐに分裂し、二人の間の子は互いに争い始めた……そのようにラバンは語ります。

話を聞く限り、「美少年」=ラバンです。そして美少年の伴侶であった「お姫様」は、大シーウァ王国を建国した初代アレムということになります。つまり、物語では「彼」と表記されているアレムは、実は女性だったらしいのです。

西シーウァ王国には、現在も非常に勇ましいバーサーカー王女がいるので、アレムが女性であっても不思議はありません。
また、勇士とアレムが実は男女の関係だったとするならば、テレージャさんが2人の関係についてぬとぬととした妄想を膨らませていたことも納得です(そして、ラバンがその妄想に関して非常に複雑そうな顔をしていたことも)。

もっとも、これは「ラバン=勇士」と仮定した場合の話です。本当のところはわかりません。しかし、「三百年経ってたら云々」とジョークを言ったり、魔王の血を引くキレハの話にラバンが絡んだりするので、ほぼ「ラバン=勇士」と考えていいのではないかと思います。

そしてラバンが勇士だとすると、現在の大陸三大国の王家筋の人間は、皆ラバンの子孫であることになります。西シーウァ王国の例のバーサーカー王女も、チュナも、テオル公子も、そしてテオルの従弟のアルソンもそうです。

そういう背景を考えると、ラバンとアルソンがどちらも音痴らしかったり、ラバンがアルソンにアドバイスするのも微笑ましく思えてきます。

*****

最初に4つのルートの存在を知ったとき、そんなに周回できるだろうかと思ったことを覚えています。1周にかかる時間もけして短くはない物語なので。ところがいざプレイしてみると、「なんとしても4周しよう」という気概になりました。それほど面白かったからです。

出自だけでなく性別によってもキャラクターの反応が異なってくるので、いつでも新しい発見がある作品だと思います。今回はあえて省きましたが、戦闘も色々と工夫を凝らして楽しめる作品です。濃い脇キャラもいます。

今回プレイメモを見返していたらついつい懐かしくなり、記事が長くなりました。やっぱり『Ruina』は今でも大好きな作品です。

『Ruina』ノベライズ版の感想記事も書いています。

関連記事:『Ruina 廃都の物語』 小説(ノベライズ)版 感想(【騎士の嫡子】ウェンドリンルートがベース。著者は嬉野秋彦氏)

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かーめるん
この記事を書いた人: かーめるん
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