『グレイメルカ』 大河小説的な戦略SRPG 紹介 戦闘レビュー その1 ※ネタバレ注意

かーめるん

帝国の内戦と大陸諸国の攻防を三代に渡って描く長編シミュレーションRPG(戦略SLG)、『グレイメルカ』の紹介、感想記事です。攻略情報も一部含みます。制作サークルはシニカルとレトリック様。作品の公式サイトはこちらです。 → グレイメルカ

グレイメルカ スクショ タイトル画面

『グレイメルカ』は、大陸全土に覇を唱えんとするロマテア帝国を軸に、諸国を巻き込む戦乱の推移を長いスパンで描いた戦略SRPGです。前日譚1章+本編4章+後日譚1章で構成されています。

戦闘システムについては「ファイアーエムブレム」シリーズをオマージュしているそうです。難易度は4段階。クリアまでの所要時間は数十時間でした(メモしながらプレイしたので曖昧)。

『グレイメルカ』を知ったきっかけは、フリゲ2015でした(プレイ&クリア自体は、この感想記事を書くよりもかなり前に済ませています)。一目で「すごく面白そう」と直感し、そのままプレイ。期待に違わぬクオリティーとボリュームで、本当に楽しかったことを覚えています。

個人的に、大河小説的な物語が大好きです。大きなスケールで歴史の流れを捉えていたり、時代が移ろって世代交代が発生したり……同時代的な横の広がりに加え、歴史的な縦の奥行きもあるゲームに行き当たると、もうドキドキして矢も盾もたまらなくなります。

そういうわけで、『グレイメルカ』をプレイしたときには「これだ」と思いました。端的に言うと見事にツボにはまったというか、個人的に見たいと願うものが凝縮されて詰まっているような作品でした。

登場人物はどこまでも生きていて、生の連鎖反応から歴史が動き、さらに歴史によってすべてが抗いがたく呑み込まれていく。そんなダイナミックな躍動感が『グレイメルカ』の物語にはあります。

国ごとの価値観の違いや立場に基づく判断の相違などを含め、各キャラのストーリーや背景設定が練られている点も見事です。生まれた国や所属によって育まれた人となりと、キャラそれぞれの信条・性格。その両者を掛け合わせることで、数十人ものキャラクターをそれぞれ印象深く描くことに成功していると思います。

かなり長くなったので、記事を3つに分けました。最初のこの記事では、「ゲームのあらすじ」や「戦闘システム」、「登場する国の説明」など、ゲーム内容の紹介っぽいことを書きます。自分なりのメモに近いです。ネタバレ多めの詳しい感想は、続く2番目と3番目の記事に回そうと思います。

記事その2(ストーリー概要と感想、作品の魅力考察)
→ 記事その3(キャラクター語り、男女関係やBGM雑感)

以下には、ストーリーや設定のネタバレが含まれます。未見の方は十分にご注意ください。

あらすじ

最初に、『グレイメルカ』のあらすじを書きます。第1章のネタバレを含むので、ご注意ください。

新暦445年、ロマテア王国の君主ウォレアは隣国フバーラインに対し、悪名高い「グレイメルカ作戦」を仕掛けました。

大河メイトンリバーに細菌毒“グレイメルカ”をまき散らし、大混乱に陥ったフバーラインの首都を制圧したウォレア。彼が真っ先に決行したのは、投降したフバーライン兵を使い、同国人の感染者を「駆除」させることでした。同年、フバーラインを併合したロマテアは帝国となり、ウォレアは初代皇帝を名乗ります。

フバーラインの大地が毒と怨嗟にまみれてから数十年。ウォレア帝の孫であるレシウル帝の時代に、2人のフバーライン人がひそかにロマテア帝国に侵入しようとしていました。
彼らの名は、クナタカタリ。グレイメルカ作戦で生き残った感染者の子孫であり、生まれながらにグレイメルカに冒された“グレリア”でした。

グレイメルカ スクショ クナタとカタリ 帝国への復讐

彼らの使命は、自らの命と引き換えに皇帝への復讐を遂げること。しかし、フバーラインを気にかける皇太子サーシンの思想に触れたことから、寿命残りわずかな二人の意識に変化が生じます。
初めて未来に目を向け、「サーシンの代になればフバーラインは救われるかもしれない」という希望を抱くことができたのです。

ひとまず様子を見るために帝国防衛隊に入隊したクナタとカタリは、瞬く間に功績を積み重ね、異例の大抜擢で千騎長(国軍の実質的なトップ)の座に上り詰めます。レシウルやサーシンに厚い信頼を寄せられつつも、二人はいまだ故郷と使命を忘れられずにいました。しかし子供を授かったことでついに復讐を放棄し、自らの意思に従って余生を送ることを決めます。

やがてドルテ王国との戦争で窮地に追い込まれたとき、二人はサーシンの時代に望みを託し、レシウル帝の命を救って戦場に散ることを選ぶのでした。

腹心の部下であったクナタとカタリの殉職を嘆いたレシウル帝は、遺児のハルカを皇族同然の待遇で育てます。物心つく前に両親を亡くしたハルカは、レシウル帝の第二子デミライトを主君と仰ぎ、彼の忠実な影となって行動するようになりました。

グレイメルカ スクショ ハルカとデミライト 側に

ハルカとデミライトが兄弟のように育つ間にも、版図を増やし、次々に隣国を呑み込んでいくロマテア帝国。そして新暦515年、皇太子サーシンの婚姻に前後して、2人の運命は思わぬ方向へと転がり出していきます。

『グレイメルカ』の戦闘システム

この項目では、『グレイメルカ』の戦闘システムについて説明します。

『グレイメルカ』は、「ファイアーエムブレム」シリーズに範をとった戦略シミュレーションRPGです。よって、ストーリーと戦闘の絡み方や戦闘システム自体も、FEのそれとよく似ています。

全体のストーリーは「第X章の第Y話」という風に区切られ、1話につき1回の戦闘が発生します。構成としては、「ストーリーフェイズ→戦闘フェイズ(with固有マップ)→ストーリーフェイズ」という流れです。

戦闘フェイズではフィールドをマス目状に区切り、複数の自軍ユニットを動かして勝利を目指します。勝利条件は「敵軍の全滅」や「拠点の制圧」、「一定のターン数の経過」など。戦闘はターン制であり、自軍のターンを終了すると敵or中立ユニットのターンとなります。

FEの特徴であり、『グレイメルカ』の戦闘においても重視されているのが、「ダメージ計算可能」というシステムです。
このシステムにより、「自軍ユニットが敵ユニットに攻撃したとき」、あるいは「敵ユニットが自軍ユニットに攻撃したとき」に、どれだけのダメージを与えられるかが攻撃前にわかります。

グレイメルカ スクショ ダメージ量計算

与ダメージ=敵ユニット(赤)の上方に表示された黄色い数字

このシステムに、①ランダム要素はごく限定的、②支援効果と3すくみ重視という2点が加わり、『グレイメルカ』では強キャラによるごり押しクリアがかなり難しくなっています。

モードにもよりますが、ダメージ計算を怠って単騎で敵の中に突入させるとアッサリ負けてしまうことが多いです。特にボスと対峙する場合は、相性の良い武器を装備させたり支援効果をかけまくったりといった配慮が必要となります。

こうした詰め将棋のような『グレイメルカ』の戦闘システムは、個人的にはすごく楽しかったし面白かったです。手堅くやっていかないとサクッと返り討ちにされる緊張感が快感で、シナリオ中盤~終盤では一つの戦闘に数時間使ってじっくりプレイしたりもしました(育成込み)。

支援効果と貢献度

「支援効果」とは、仲の良い人が近くにいるとパワーアップできるというシステムです。具体的には、ユニットAと支援関係にあるユニットBが3マス以内にいると、Aのステータス(回避、命中)がアップします。強いボスを相手に戦う場面では、この支援効果をできるだけ多く発生させることがキモとなります。

この支援効果ですが、通常は仲の良いor因縁の深い二者間でしか発生しません。しかし「貢献度」が800以上のユニットは、相手が誰であっても支援効果を与えることができます。

「貢献度」というのは、そのユニットがどれだけ自軍の勝利に貢献しているかを数値化したものです。敵との様々な戦闘経験や特殊行動の積み重ねによって貢献度は上がります。

貢献度を上げるメリットは大きく分けて2つ。1つ目は支援効果を誰にでも与えられるようになること(貢献度800)、2つ目はクラスチェンジしてステータスアップできること貢献度200&400)です。貢献度800への道のりはけっこう遠いので、とりあえずはクラスチェンジ×2を目指し、貢献度400を目指すのがいいかと思います。

ちなみに、「特殊行動」とはユニット固有のアクションです。医学持ちキャラの「治療」に始まり、クレミトの「激励」「慈愛」、オッゾンの「攻撃采配」、カンツラの「料理」などが挙げられます。特に非戦闘キャラのクレミトや戦闘に向かないオッゾンは、この特殊行動によって経験値と貢献度を稼いでいくことになります。

下手な戦闘キャラより特殊行動持ちのキャラの方が貢献度を稼ぎやすいかもしれません(実際、2周目のハードモードで最初にレベル40MAX&貢献度800に達したのはクレミトでした)。

印象的だったポイント 体術&魔道師

『グレイメルカ』の戦闘システムについて個人的に印象的だったのは、「体術」と「魔道師の強さ」の2点です。

「体術」については、ステータス画面右上に、剣槍斧や熱毒虹といった武器・魔法に紛れて並んでいます。同レベル以上の敵から攻撃を受けると体術は上昇し、体術が1以上あると素手で敵に攻撃できるようになります。

実は体術レベルは、攻撃力や防御力に大いに関わってきます。体術0のユニットと体術MAXのユニットとでは、与物理ダメージや被ダメージの量に大きな差が出ます。防御力にも関わるので、非戦闘キャラや魔道師であっても体術を鍛えるのは有効です(以下は体術マックスのメレオネ先生)。

グレイメルカ スクショ 体術マックス

1周目では体術の役割に気づかず、カンクットの森を抜けた後で特攻隊長ザリップの体術が急激に上がっているのに気づいて「?」となりました。攻略情報を解禁した2周目では、体術の重要性を知って誰彼かまわずガンガン育成したのを覚えています。

他の武器レベルもそうですが、体術を上げると与・被ダメージが目に見えて変わるので育成していて楽しいんですよね。第25話のハルヴィン高地戦とか、経験値が入らなくなるギリギリまで育成のために粘りました(回避高・バリア持ち・体術レベル中のミルキーさん最高)。

2点目ですが、『グレイメルカ』は魔法ユニットが強いゲームです。ストーリー中でも「魔道師は強い」と何度か言及がありますが、実際の戦闘においても魔道師の強さはかなりのものです。

本筋で味方になる魔道師と言えば、メレオネ、ザリップ、ヘイント、ファテナ、ユラ、ピピカ、キル、スイハなど。

このうちメレオネやキル、スイハは魔道師枠を超えて作品の最強格であり、ユラやザリップは強力なスキル持ち&スキル構成が良い優秀なユニットです。ファテナは単騎でガンガン突っ込んで立ち回れるユニットではないですが、最終決戦に連れていける程度には強いと思います。

やや微妙な性能なのは、虹魔道師のヘイントくらいでしょうか(とはいえヘイントは登場が早く、シナリオ上作品のテーマとも絡むそこそこ重要な出番を貰っています)。

魔道師は強いとストーリー中で言及され、実際の戦闘でも自軍の魔道師が強く、しかも最強格も何人かいるというのがユニークです。「味方の魔法ユニットがとびぬけて強い」と感じたことは、他のRPGをプレイする限りではほとんどありません。だから味方魔道師が強い『グレイメルカ』は新鮮で面白かったです。

登場する8つの国について

縦(数十年の時間の流れ)にも横(ロマテア帝国と大陸諸国)にも奥行きのある『グレイメルカ』世界には、強く心惹かれるものがありました。

ある男女に子供が生まれ、その子供が大人になって誰かと結ばれ、また子供を授かる……という長期的な時間の流れと、国民性も風土も様々な地続きになった国家群。年表が書けるほど仔細に設定された歴史だけでもグッとくるのに、その歴史を育む土壌までもがきっちりと整えられてプレイヤーの興味を引きつけます。

この項目では横の軸、つまりゲームの舞台となる大陸諸国(“新暦の8国”)ニトン島についてまとめました。簡単な歴史、風土、特徴、そして出身キャラと国民性を、個人的な感想もたくさん交えつつ書いています。

前提として、『グレイメルカ』世界には、ロマテア、フバーライン、ドルテ、アスタンツ、オルハダ、クルプ、コートマ、そしてバーメイル大森林という8つの国家が存在します。地続きゆえに8国間での戦争が絶えない中、隣国の侵略に成功し、帝国を名乗るようになったのがロマテアです。

8国の位置関係、および新暦514年(ハルカ編開始)時点の状態(帝国に侵略され滅亡したか、まだ独立を保っているか)については、以下の画像に図示しました。

グレイメルカ 新暦の8国 furige tabi com

情報をまとめる上で、各国出身のキャラクターのことにも言及しました。作中には多くのキャラクターが登場しますが、彼らはたいてい大陸にあるいずれかの国の出身です(一部のキャラは大陸周辺の島の出身)。ロマテア人は銀髪、フバーライン人は黒髪……といった風に出身国によって髪色が異なるので、把握はしやすいと思います。

ロマテア帝国と他7国の関係を把握し、登場キャラとその出身国を紐づければ、より楽しく『グレイメルカ』をプレイできるのではないでしょうか。

すべての章をプレイし、エンディングまで確認した上で書いています。キャラクター設定について突っ込んだことは書かないようにしましたが、一部ストーリーのネタバレが含まれるのでご注意ください。

ロマテア/LOMATEA 歴史を作る国

ロマテア帝国は大陸中央に位置し、いくつもの隣国と国境を接する国です。戦略的に不利な立地を山岳地帯まで勢力を拡大させることで克服。フバーラインの併合を皮切りに次々と隣国を攻め落とし、レシウル帝の時代には5つもの国を従えて名実ともに大陸最強の国となりました。

『グレイメルカ』全6章を通じ、常にストーリーの主軸となるのがこのロマテア帝国です。第1章のクナタとカタリ、第2章~第5章のハルカ、第6章のカオル。三代に渡って主人公を務める彼らはロマテア人の血を引いていません。しかし、数奇な運命に導かれて帝国の中枢に埋め込まれ、帝国が深く関与する戦乱にそれぞれの立場から身を投じることになるのです。

ざっくりと、かつ率直に表現するなら、ロマテア帝国は「ザ・敵国」な属性を持った国家だと思います。隣国に積極的に戦争を仕掛け、各国から恨まれ、さらに飽くことなく版図拡大を狙う……普通のRPGなら、打倒すべき強大な敵ポジションにすんなりと収まりそうな国です。
そんなロマテアをあえて中心に据え、帝国を二分し他国を巻き込む内戦を描く『グレイメルカ』のストーリーは挑戦的で面白いなーと感じました。

ロマテア人の頭髪は、剣と同じ銀色。ロマテア人キャラは当然ながら作中でもっとも多く登場し、トルトナ家の人間から帝国防衛隊の軍人まで、その立場や所属も様々です。

ロマテア人の特徴は、自信家であることだと言われています。帝国本土は人材が豊富で実力主義が浸透しているらしいので、競争に負けないよう才能を堂々とアピールする人間が多いのかもしれません。
個人的なイメージですが、物怖じせずに言いたいことを言うデミライトのような人間が、他国人にとっての“ロマテア人らしい”ロマテア人なのかなーと思います。

ロマテアの皇族、トルトナ家について

ロマテアの皇室はトルトナ家であり、レシウル帝は16代目の当主に当たります。このトルトナ家は名君の多い家系であるという評価を受けています。

初代皇帝ウォレアはフバーラインを併合し初めて皇帝を名乗り、二代皇帝レシウルは若くして即位するとアスタンツ、ドルテ、クルプ、オルハダを立て続けに侵略しました。

レシウルの息子である皇太子サーシン第二皇子デミライトも、秀才型と英雄型でタイプは異なるものの、それぞれに優秀な青年に成長。そして『グレイメルカ』のキーパーソンであるサーシンの息子クレミトは、たぐいまれなるカリスマ性と医術の才によって多くの人間に崇拝され、一時期は大陸6か国を帝国の版図におさめました。

このように、ハルカの周囲を見渡すだけでも、トルトナ家はたしかに名君を輩出する家系であると言ってしまっていいような気がします(ただし、クレミトの土台を作ったのはソヴォいわく母親のアイフィ)。

ちょっと脇道にそれますが、トルトナ家の人間にはもう一つの特徴があります。それは、「いったん激情に駆られると人が変わったように残虐で恐ろしい行為に走る」というものです。

この特徴が一番顕著に表れているのはレシウル帝でしょう。若い時分に皇帝となったレシウル帝は、なまじ優秀であったために一人で多くを抱え込みやすい人でした。そのため、初めて心を許して頼り切ることのできたクナタとカタリを、腹心の部下兼友人として強く信頼していたのです。ゆえに二人を永久に失ったとき、レシウル帝は文字通り豹変しました。

ドルテ王国に報復戦争を仕掛けたレシウル帝は、城を攻め落とすと国王バルナクと王子ロフォスを処刑し、二人の遺体を城内に数ヵ月放置して腐乱させました。また、クナタとカタリが戦死した戦いに関与したドルテ兵についても、徹底的に探し出してはことごとく処刑。さらに貧しいドルテ領に過酷な重税を課すと、十年近くかけて餓死者を続出させたのです。

流れに沿って書き出すだけでも、「そこまでやるか」レベルの行いです。レシウル帝が基本的には温和で愛情深い性格だからこそ、その激情ぶりと残虐性は際立ちます。

この特徴に関してすごく面白いのは、レシウル帝が持っていたような激情スイッチを心優しいクレミトもしっかり受け継いでいるという事実です。第5章でクレミトがある行為に及んだとき、個人的には良い意味でゾクゾクしました。「まさかあのクレミトが」と思うとともに「やはり血は争えない」と思いました。

レシウル帝にしてもクレミトにしても、スイッチが入るきっかけは「大好きな人の喪失」なんですよね。ウォレア帝もフバーラインの奇襲による敗戦をきっかけにグレイメルカ作戦に着手したらしいので、何かしら激情に駆られるようなきっかけがあったのかなーとつい想像してしまいます。

また、トルトナ家には6つの分家があり、第一分家はビタ家です。このビタ家はトルトナ家を追い落とそうと虎視眈々と機会を狙い、内戦中にも大いに暗躍します。内戦の終結とともにその策謀は絶えたかと思いきや、第6章ではむしろガッツリとピックアップされるなど、これまた意外なキャラの活かし方だなーと思いました。

アスタンツ/ASTANZ 皇国の誇り

アスタンツ皇国は、大陸北部に位置する国家です。新暦の8国の中では最も歴史が古く、唯一「皇国」を名乗っています。かつてのアスタンツは文明度や技術力の点で最も先を行く国家だったらしく、当時「野蛮」だった他国に自国の技術などを伝えたそうです。

アスタンツはジフピアの戦い(475年)で滅亡し、以後は帝国領となりました。滅亡の経緯は、安易に第一皇子を停戦交渉の場に送り込んだ結果人質にとられ、大混乱に陥ったところを滅ぼされる……という、だまし討ちされたとはいえなんともお粗末なもの。

この事件はアスタンツ人の中で「ジフピアの屈辱」と呼ばれ、以後アスタンツ人はロマテア帝国に対して強い憎しみを抱くようになります。レシウル帝は常にへりくだってアスタンツを厚遇したものの、彼らの恨みが氷解することはついぞありませんでした。

アスタンツの旧皇室はペルヘルヌ家です。皇王ルバランと皇子ラシアはすでに亡く、唯一の生き残りであるピピカ姫は幼い頃からジャテンシ城下町で軟禁されています。
ロマテア帝国内戦中、蜂起した兵はピピカを解放し、彼女を旗印に反乱を起こそうとします。しかし鍛冶屋パパラッダの提言に従いピピカはアスタンツを脱出。自身の世話役であったオルハダ人のラタを伴い、抗帝軍に合流することになります。

第1章~第5章までのアスタンツおよびアスタンツ人は、あまり良い印象を持てない存在です。はっきり言ってしまえば、「弱いくせに態度だけはデカい噛ませ犬」ポジションにあります。視野が狭く子供っぽい性格の女性として登場するピピカともども、シナリオ上の扱いは良いとは言えないような気がします。

アスタンツ人にネガティブなイメージを持ってしまうポイントはいくつかありますが、最初に思い浮かぶのは、アスタンツを象徴する歩兵隊「ヴェスポリス」の言行がよろしくない点でしょうか。事あるごとに騒動を起こすものの、ゲスな発言を残してアッサリ敗れるだけなんですよね。良い印象を持ちようがないです。

また、第2章で皇太子サーシンが凶刃に倒れたときのアスタンツの反応も酷かったです。帝国と敵対中のコートマでさえ哀悼の使者を送る中、アスタンツ人だけは大喜びし、「天罰だ」と快哉を叫んだという描写があります。
のちにロマテア人のメラは当時を振り返って「最悪」と言及していましたが、プレイヤーとしてもドン引きしました。サーシンの命日にパーティーを開いていたという話(ウィラ談)にも同じく引きました。

支援会話なども見るとわかりますが、アスタンツ人はレシウル帝の統治下ではとことん優遇されていました。帝国本土の税率が50%であるのに対し、アスタンツ領の税率は10%でした。
さらに帝国防衛隊には「アスタンツ人が暴れても罰するな」という命令が出ていたらしく、店をめちゃくちゃにしたアスタンツ人を取り押さえても罪に問えないことはザラにあったそうです(メラ談)。

私個人はロマテア人視点でプレイしていたので、低い税率&免罪などの点で厚遇されながらもロマテアを怨み、執念深く攻撃しようとするアスタンツ人には好印象を抱けませんでした(個人的にレシウル帝が好きなのでなおさら)。

そんなアスタンツですが、フバーライン内戦から12年後の第6章で一気にその存在感を増します。

ある人物の最期を見て思うところのあったピピカは、アスタンツ人の意識改革を目指してロマテアとの宥和政策を推し進めていました。しかし、ペルヘルヌ家の分家出身のノフォウル・アフェナはこれに反発。打倒ピピカを掲げ、ロマテアからの独立を目指して反乱を起こしたのです。
かくしてアスタンツ領は内戦に突入し、帝国は親帝国派のピピカを支援すべく、12年ぶりに大規模な兵を動かすことになります。

第6章は常にアスタンツが中心になって進む章であり、ノフォウル一派などのアスタンツ人キャラが新しく登場します。ノフォウルらは敵とはいえ、第1章~第5章までの嫌味な悪役・やられ役のイメージを払拭し、彼らなりの信条や痛みを抱いて戦いを挑んできます。かつては頼りない印象のあったピピカも人間的に成長を遂げて再登場し、自身の信念を一歩も引かずに述べてくれます。

アスタンツの歴史やロマテアとの関係が掘り下げられたりもするので、第6章をプレイすることでアスタンツという国へのイメージは変わりました。その国なりの複雑なバックグラウンドが提示されると、単純な好悪から離れた解釈ができるようになってすごくいいですね。

アスタンツ人の頭髪は茶色です。作中に登場する主なアスタンツ人キャラは、ルバランの孫でラシアの娘であるペルヘルヌ家のピピカ、ペルヘルヌ家に仕える伝説の鍛冶屋パパラッダなど。また第6章では、ペルヘルヌ家の分家出身のノフォウルや、彼の部下であるネロポンとヘルゲートらが登場します。

アスタンツ人の特徴は、プライドが高く他国との関係に関して保守的な人が多いことです。「アスタンツが他国の母であった」という意識が強いため、他国に対してやや尊大な態度をとりがちなところがあります(カンツラいわく「都会意識が鼻につく」とのこと)。
目下その誇り高さはロマテア帝国への憎悪に転化されていますが、ピピカやジェペシェの存在により、徐々に変化が生じつつあるようです。

ところで、第6章になってノフォウルやヘルゲートといった逸材が出てきたことにちょっと驚きました。ピピカ解放やアスタンツ反乱を手引きしていたらしいノフォウルはともかく、「オッゾンの再来」という知略キャラに対する最高の賛辞を貰っているヘルゲートは、まさに降って湧いたような出現です。これが世代交代ということか、と最終的にはフェネックと同じような心境になりました。

ドルテ/DOLTE 不滅の砂漠の民

ドルテ王国は砂漠の不毛地帯に位置する国です。貧しい砂漠の民は魔法の才能を生かして強い軍を作り、たびたび隣国に侵略戦争を仕掛けてきました。その国軍であるデト・マギ「青い狐」と呼ばれ、大陸中の国に恐れられました。

新暦505年、ドルテはレシウル帝によって征服され、国王バルナク・デトとその息子ロフォスは処刑されました。現在生き残っている旧王室の人間は、ロフォスの子であるファテナとユラ。幼い頃から帝国の人質として生きてきた二人は、ドルテの民の救済とデト家再興を願って帝国への臣従を耐え忍んでいます。

ドルテ王国とデト・マギは第1章の強敵であり、レシウル帝をあと一歩というところまで追い詰め、クナタとカタリを殉職させました。しかしその後、砂漠の民は辛酸を舐めることになります。帝国に併合され重税を課されたために、領内では餓死者が続出したからです。
ドルテの民を大いに苦しめてスッキリしたレシウル帝は、「もうそろそろええやろ」と彼らを地獄から引き上げることを考えます。その手段とは、才媛と名高いファテナを自身の跡継ぎである皇太子サーシンに娶せることでした。

二人の婚姻はトルトナ家の人間がすれ違う原因の一つとなり、そのすれ違いは最終的に「三黒の夜」という破滅的な事態を引き起こします。

サーシンはファテナとの結婚に乗り気ではなく、父の手前承諾しつつもファテナを裏切っていました。ハルカが結婚後のファテナの幸福を危惧していたこと、レシウル帝がサーシンの隠し子の存在を知って激しく動揺したことを考えると、この婚姻がうまく運ばなかったことがのちの悲劇を招いたのかもしれません。

一夜も越さずに夫を失い、未亡人という宙ぶらりんの立場に追いやられたファテナ。しかし彼女はそこで諦めず、第4章である決断をして弟のユラも引き込み、最終的には帝国中枢における高い地位と発言権を獲得します。

デト家を帝国の内戦における影の勝利者に導いたファテナですが、彼女個人は戦いの中で恋叶わず、手痛い喪失を経験することになります。ある人物を特別視していたファテナの感情の変遷は、『グレイメルカ』のテーマとも関連付けられて丁寧に掘り下げられていたと思います。

ドルテ人の髪色は深い青色です。ドルテ人の主要キャラは、レシウルをしのぐ名君バルナク、わが身をドルテに捧げる氷の女ファテナ、姉ファテナを崇拝しつつ劣等感を抱くユラ、フェクテンに追随する謎の女性マテル、おにぎり大好きな重歩兵ミコラ&モコラなどです。第2章の初ボスであるパンピーも地味にドルテ人ですね。

砂漠の民は魔法を得意とし、ドルテ王国のデト・マギはケシマの里を卒業したエリート魔道師で構成されています。ファテナとユラもケシマの里を卒業した優秀な魔道師であり、弟のために一兵卒となったミコラも魔道師になれるだけの知性があったと言われています。

また、ドルテは道徳教育に力を入れているらしく、貧しくとも身を持ち崩して悪の道に走る人間が少ないそうです(例外:パンピー。あとデト・マギの一部は調子に乗ってモコラを虐めたりする)。言われてみればファテナ&ユラにしてもミコラにしても、自分をよく律する落ち着いた性格のキャラだなーと思います。

バーメイル/VERMEIL 未知の大森林

バーメイルは、大陸西部に広がる大森林を領土とする国家です。バーメイルに住むサドラ族は生態系や風習が非常に独特であり、他国との交流を一切持っていません。そのため、他の国の人間にとってバーメイルは未知の土地です。ロマテア帝国のウォレア帝も、バーメイルを侵略することは考えなかったと言われています。

バーメイルには特定の王族はいません。血筋に関係なく、実力でもって王を倒した者が次の王となる習わしだからです。今代のフィアカルタ大王は、その圧倒的な強さと情と道理をわきまえた人柄ゆえにサドラ族から厚い支持を得ています。

サドラ族が初登場するのは第2章です。20年間の没交渉を破ってロマテアに攻め込んだ彼らの目的は、大王の妻ニードレの報復戦争でした。
実は近年、ロマテア帝国に巣食う犯罪組織「リフィア」がバーメイルに出没し、武器の原料となるサドラ族の角を求めてサドラ族を狩るようになったのです。王妃ニードレもリフィアの襲撃によって命を落とし、フィアカルタは怒りに燃えて帝国へと乗り込んだのでした。

その1年後の第3章、帝国を追われてバーメイルに逃げ込んだハルカは、偶然にも大王の娘ロシェアを窮地から救い出します。フィアカルタは一時的にハルカらを客分として受け入れ、やがては友情を育むことになります。

その後、帝国の侵攻によってバーメイルを追われたフィアカルタたちは、ハルカらとともにオルハダに亡命。バーメイルを占領した新皇帝デミライトがサドラ族狩りを進めたこともあり、打倒デミライトを掲げる抗帝軍に合流して戦うことになります。

フィアカルタやロシェアの登場時期が早く活躍期間も長いこと、フィアカルタがハルカやメレオネ、クレミトと特別親しいキャラであることから、ストーリーにおけるサドラ族の存在感はかなり大きいと言えます。

サドラ族は他国人とは人種的に遠いようで、緑色の肌を持ち額に鋭い角を生やしています(ちなみに角は脳の一部。折られると絶命する)。知性に頼らず力isパワーな思想を持つ種族であり、血気盛んでたくましい者が多いようです。

グレイメルカ スクショ 第23話 フィアカルタ

豪快に海賊を撃退するフィアカルタ大王

サドラ族の特徴の一つとして挙げられるのは、独自の男女観です。サドラ族の男は、たとえ外国人の兵士であっても女に対しては手をあげません。また、恋愛や結婚に関するイニシアチブは女性が握り、結婚後の夫は妻の所有物となります(!)。フィアカルタも娘ロシェアの結婚について、男の自分が口出しすることではないと言い切っています。

主要なサドラ族キャラは、大森林を束ねる大王フィアカルタ、大王の一人娘で医術の使い手ロシェア、ロシェアの幼なじみで彼女を慕うサドラーチャーのガシガン、サドラ族には珍しく知略に長けるホードバンなどです。

愛するニードレを失ったフィアカルタとロシェア、幼なじみであるロシェアの恋を一歩引いて見守るガシガンなど、サドラ族キャラの間ではなかなか濃いドラマが展開されます。個人的に印象深いのは、ホードバンに一度は憧れ、幻滅して裏切ったガシガンの葛藤です。ウオラトリのエピソードにその経験が生かされるのがなんとも乙だと思います。

ストーリー全体を眺めたとき、クレミト戦争によって最も大きく変化したのは実はバーメイルなのではないかと思います。外部との関わりを持たなかったサドラ族は、内戦を通じて他国と交流を持ち、最終的には開港したり外国人も招いて毎年お祭りを開くまでになりました。

また、変わったのは他国との関係だけではありません。ロシェアやガシガンはサドラ族で初めて外国人を伴侶に選び、彼らの息子や娘も、それまでのサドラ族の伝統を覆すような事績を残すことになります。

ホードバンがサドラ族の伝統を覆そうとしたのは、ある意味で時代の先取りだったのかもしれません。未知の大地が未知ではなくなった後、バーメイルがどのような国になっていったのか。断片的に語られる部分も含めて興味は尽きません。

オルハダ/OLHADA 海と防衛の国

オルハダ王国は、大陸南西部に位置する国です。防衛に適した土地であり、大陸との結節点であるザントリバー砦は難攻不落と謳われます。海軍が非常に強いものの、南のアテナ諸島を拠点とする海賊の襲撃には長年頭を悩まされています。また、海賊となる国民も多いようです。

第2章開始の3年前、つまり新暦511年にオルハダ王国は滅亡し、帝国領土に組み込まれました。旧王室のタティアラ家は、最後の王が一族すべてを道連れに自決したため断絶。ロマテア帝国はアテナ諸島の海賊と結託してオルハダを攻め落としたので、憤りを覚えたオルハダ人は少なくなかったようです。

オルハダがクローズアップされるのは第3章から。クレミトを連れたソヴォはオルハダに逃げ込み、オルハダ人らの支持を集めて帝位奪還の戦いを開始しました。つまり、オルハダは抗帝軍発足の地であるわけです。クレミトは自らを受け入れ支援してくれたオルハダ人に深く感謝しています。

オルハダ人の髪は緑色。主要なキャラは、ピピカの護衛となった槍使いラタ、政治軍略の天才オッゾン、戦う医師ホワイト、口八丁手八丁のならず者ガンショップ、インパクトたっぷりな容貌を持つ大工のデスなど。
オッゾン、ホワイト、ガンショップ、ラタは人間性は大きく異なるものの、子供の頃にそれぞれ貧乏を経験したという点で共通しています。また、ラタとガンショップは惚れた女性にとことん尽くすところが似ていますね。

クレミトへの対応を見るに、オルハダには血の気が多く情に厚い人が多いようです(カンツラいわく「荒くれ」「野生児」)。一方で元宰相オッゾンは、オルハダの教育レベルの低さを指摘しています。
戦後のオルハダはオッゾン主導の下で大きく生まれ変わりますが、千年国家も可能と豪語していた彼の試みがうまく運んだのか気になるところです。

フバーライン/FUVER LINE 静かな大地

フバーライン王国は大陸北東部に位置する、大河メイトンリバーに抱かれた自然豊かな国家です。新暦445年にロマテア帝国に滅ぼされ、グレイメルカ作戦によって甚大なダメージを受けました。

帝国最大の被害者でありながら、不気味なほどの静けさをもってロマテアに服従してきたフバーライン。しかしその大地に染みこんだ怨嗟は浄化されることなく、黒い血のロマテア人に復讐する時を待ち続けています。

フバーラインの旧王室はエンプトリノ家です。ウォレア帝がフバーラインを侵略した際、エンプトリノ家の人間はそのほとんどが命を落としました。たった一人の生き残りであるクライデンは、現在ギルピット城に幽閉されています。

また、エンプトリノ家の人間の抵抗により、一部のグレリア(グレイメルカの感染者)は追討の手を逃れることができました。ゆえにグレリア第一世代の唯一の生き残りであるカレンクェスは、今なお同家に深い恩義を感じています。

『グレイメルカ』の主役となる国家はロマテア帝国ですが、本編の主人公であるハルカはフバーラインに濃いルーツを持っています。
彼の両親であるクナタとカタリはフバーライン人でした。そして単にフバーライン人であるのみならず、かつてロマテアが仕掛けたグレイメルカ作戦による犠牲者たちの子孫でもあったのです。

そもそも「グレイメルカ」とは、ウォレア帝の号令で開発され、多くのフバーライン人の命を奪った細菌毒を指す名です。グレイメルカに冒されつつも生き残り、ロマテアによる感染者狩りをも逃れて生存した者たちは、アリミアという村でひっそりとその血を繋いできました。

グレイメルカに蝕まれた人間は「グレリア」と呼ばれます。グレリアは短命であり、その肌は血の気のない灰色に、呼吸や気配は常人よりも静かなものになります。グレリアが生んだ子供は先天性のグレリアとなるため、やはり長くは生きられません。

『グレイメルカ』の第1章は、グレリアであるクナタとカタリが同胞の復讐を遂げるために帝国に侵入するところからスタートします。最終的に彼らはその目的を放棄し、一人息子のハルカが物心つかない頃に殉職。遺されたハルカは自身がグレリアであることを知らぬまま、グレリアの宿敵とも言えるトルトナ家の人間に囲まれて育つことになったわけです。

フバーライン人の髪色は。登場する主要キャラは、運命に翻弄された主人公ハルカ、ハルカの両親であるクナタとカタリ、アリミアの長カレンクェス、圧倒的な才能を持つ双子の魔道師キル&スイハ、飄々としたグレリアの青年テンマなど。

フバーライン人は物静かで表情があまり変わらず、人との交流を苦手とする者が多いと言われています。他国の人間とも積極的に関わりを持ちません(キルいわく「インドア」)。初対面の外国人とも気さくに付き合えるテンマを除けば、他はだいたい典型的なフバーライン人であると言えそうです。

また、トルトナ家の人間は不思議とフバーライン人と馬が合うようで、レシウル帝はクナタとカタリを深く信頼し、サーシンはフバーライン人の友人をきっかけにかの地を訪れたいと思うようになり、デミライトはハルカと唯一無二の関係を築きました。クレミトもまた、人生における重要な決断においてハルカを引き合いに出すほどに、彼に強い親愛の念を抱いていたようです。

クルプ/KULP こだわらない人々

クルプ王国は、大陸南部に位置する商業の国です。貿易が盛んなので比較的裕福ですが、国防や教育などに力を入れていないこともあり治安は悪い方です(奴隷商人も多いらしい)。また、アテナ諸島に渡って海賊になる者が後を絶たないと言われています。

クルプの旧王室はぺリポン家。当主であるタンツラは、感情やプライド抜きで利益を優先する判断を得意としています。
たとえばロマテア帝国がドルテ王国を侵略した後、クルプはあっさりと降伏し、帝国領の一部となって重税を回避しました。また、デミライトがクーデターを経て即位した際もいち早く承認を行っています。

機を見るに敏なタンツラの姿勢は、商売を生業とする国の君主として一定尊敬されています。しかしその一方、実の息子などからは「腰が軽すぎる」という評価を受けているようです。

クルプは8国の中では一番影が薄いというか、本筋にはかかわってこない国家です。後述するように、主要なクルプ人キャラがことごとく出身国にこだわりを見せないのがその理由だろうと思います。

クルプ人の髪は赤毛。作中に登場する主要なクルプ人キャラクターは、クルプ領主タンツラの息子である料理人カンツラ、メレオネの弟子である双子の魔道師ザリップ&ヘイントです。アテナ諸島を牛耳る海賊王スウテンロウも、もとを辿ればクルプ人のようです(髪色を見るに)。

カンツラいわく、「クルプ人は商売人」。実利的で話術の巧みな人が多いそうです。カンツラやザリップ、ヘイントも、現実的な思考と口が立つという点では共通していると言えます。

とはいえ上記の三人は、常に大陸中を旅しているためか自分の出身地にさほど執着がありません。カンツラはもともとぺリポン家の跡継ぎですが、料理一筋に生きるために実家やクルプの政治とは距離を置いています(父が色気を出すから息子の自分がクレミトを助けたことは伏せてくれ、と言ってしまうくらい)。

ザリップとヘイントは幼い頃に国外で両親を亡くし、そのままメレオネに師事して故郷には帰りませんでした。そのため、やはりクルプに特別の愛着は抱いていません。故郷にこだわるウオラトリやクロウに対し、ザリップは「そんなに故郷が重いものか」と疑問を呈していました(クルプ人に対する同胞意識はないとも語っています)。

他国出身のキャラは、程度の差はあれ自分の出身を意識し自国と紐づけられた地位を持っています。しかしクルプ人キャラはそうとは言えないわけですね。

カンツラやザリップやヘイントを「クルプ人」というカテゴリでくくってもイマイチしっくりこないのは、彼らが出身国との繋がりを重視せず、自分の才能に頼って生きているせいだと思います。逆に言えば、彼らのそういうさっぱりとした態度もある種の「クルプ人らしさ」なのかもしれません。

コートマ/COTOMA 白と金の国

コートマ王国は大陸の南東部に位置する雪国です。渓谷と海に囲まれた立地ゆえに、他国との接触は港を通じてフバーラインと貿易をする程度です。
国軍の主体は、大陸最強の歩兵と名高い「ゴールドロード」。5か国を支配下におさめたロマテア帝国に何度か攻め込まれていますが、天然の要害であるライアの谷とクレンフゥの活躍によって見事侵略をはねのけています。

コートマの王室はハンカ家です。一夫多妻制も手伝って国中に根を張る大規模な一族ですが、帝王学や武術を学ばない家風ゆえに「アホばっかり」とのこと(ペコ談)。歴史的にも暗君の多い国であり、家臣に恵まれて独立を保ってきたそうです。
今代の国王ネダバスも暗愚であり、政治軍事外交のすべてに通ずるクレンフゥ将軍が実質的に国政を切り盛りしています。

コートマ王国がクローズアップされるのは第3章の終盤からです。ロマテア帝国内戦の最中、クレンフゥ指揮するコートマ軍はドルテのサトホン城を攻め落とすことにいったんは成功。しかし盛り返した帝国に王城を取り返され、コートマまで攻め込まれてアペスハウス城が陥落してしまいます。

クレンフゥは国王ネダバスをフバーラインへ亡命させて国内でゲリラ活動を続け、ネダバスの娘であるペコは西走して抗帝軍に合流することになります。

コートマの掘り下げが始まるのは、他国出身のキャラがだいたい出揃った後のことです。そのわりにコートマの印象が(私の中で)薄くないのは、クレンフゥ将軍のキャラ立ちがすさまじく、クライマックスの第5章でネダバス&ペコ&クレンフゥにシリアスなストーリーが用意されているためだろうと思います。

特に終盤のストーリーに関しては、コメディリリーフ的な当初のコートマとのギャップが大きくてなおさら印象的でした。最初は「娘を嫁に貰ってくれ」→「天パだからお断り」とか「3から100まで美!」とか、とにかくコントめいたやりとりばかりだったんですよね。だから終盤になって重すぎる展開が続いてびっくりしました。

とはいえ、コートマ周りのストーリーは最初から最後まで面白かったです。主軸となるクレンフゥやペコのことも一人のキャラとしてすごく好きになりました。

コートマ人の髪色は、クレンフゥが強烈なこだわりを持つ金色。主要なコートマ人キャラは、エキセントリックな万能超人である将軍クレンフゥ、国王の唯一の子であり農村育ちのペコ、殺人鬼プラントを父に、新生リフィア首領のペレタを兄に持つ元山賊のアイスキャットなど。

また、第6章以降に登場するハロートの指導者エキも、髪色を見るにコートマ人なのかなーと思います(ハロート事件のシナリオをプレイしていないので、間違っていたらすみません)。プラント、ペレタ、エキという並びはなかなかにヤバイですね。ここだけを切り取ると、突き抜けたアウトローを生み出しやすい国土なのかもと思えてしまいます。

国のあり方は閉鎖的なものの、コートマ人は明るく能天気でおしゃべりな人種だと言われています(だから根暗なフバーライン人とはあまりそりが合わない)。
クレンフゥはたしかに饒舌であり、ペコも他国の人間とすんなり打ち解けているので納得の行く話です。アイスキャットは幼い頃から過酷な環境で育ったためか、いわゆるコートマ人らしさはないですね。

ニトン島/NITON 「大陸不干渉」?

ニトン島は大陸の北西沖に浮かぶ大きな島です。この島は、世界唯一の魔道師育成学校・「ケシマの里」を擁しています。

大陸に魔道師の学校を作ろうとした国も過去にあったものの、他の土地では魔道師の育成はうまく進みませんでした。どうもニトン島の風土自体に魔道師の資質に影響を与える何かがあるそうです。ケシマの里が「魔道師の聖地」と言われる所以はそこにあるのでしょう。

ところで、ニトン島は特定の国家の支配を受けていません(レシウル帝いわく「別領域」)。ケシマの里は創立当初から関係者が大陸の政治に干渉することを固く禁じ、いずれの国にも与しない独立の立場を貫いています(レシウル帝による従属要求もあっさりと撥ね付けています)。グレイメルカにおける魔道師って相当強いので、どの国もおいそれとは手が出せないわけですね。

ただし、ケシマの里が掲げる「大陸不干渉」方針は建前に過ぎないと言う者もいます。というのもケシマの里には、大陸各地から魔道師を志す生徒がやってくるからです。彼らは学校を卒業すると、たいてい祖国に戻って仕官しその国の戦力となります。

もっとも有名な例は、ドルテ王国のデト・マギでしょう。成員すべてがケシマの里を卒業した魔道師であるデト・マギは、大陸中にその勇名を轟かせており、「ケシマの里卒業→デト・マギ入隊」は砂漠の民にとってのエリートコースです。

このデト・マギの例を見ても明らかなように、ケシマの里は軍人として働く魔道師を大陸に供給し続けていると言えます(ちなみにドルテ王国の魔道師が強いのは、砂漠の民が他国の人間よりも魔道の才能に優れているから。一方、ロマテア人は全体として魔道師には向かない様子)。

また、強い魔道師が介入して戦争の行方を左右してしまう例もあります。顕著な例は、バーメイルを守るために抗帝軍に加勢し、その後も内戦に参加してクレミト政権樹立を助けたメレオネです。彼女はケシマの里で学んでこそいないものの、校長と個人的な付き合いがあり、たまにケシマの里で授業もしているニトン人魔道師です。

以上より、ケシマの里の「大陸不干渉」方針は有名無実となっている節があります。大陸の勢力図に暗然たる影響を及ぼすケシマの里を疎んじる者がいるのはそのためです。

サーシンを弑して皇帝となったデミライトは、中立を謳うケシマの里を批判し、ニトン島を帝国の帝国の支配下に収めようとしました。
第6章でアスタンツの独立を訴えたノフォウルも、アスタンツ内戦中のニトン船によるシベル港襲撃(byジェヘララちゃん)や、ニトン人でありながら帝国に与して干渉するメレオネを強く非難。「いすれニトン島は大陸の恨みに沈むだろう」と不吉なことを言い放ちます。

ニトン人の髪は紫色。作中に登場する主なニトン人キャラは、影魔法を創始した天才魔道師メレオネ、海賊に育てられた義賊のジェヘララちゃん、ケシマの里の校長クズンと教頭マーブレンなどです。

メレオネにしてもジェヘララちゃんにしても、若くしてニトン島を離れ大陸をさすらう生活をしていた点で共通しています。そしてハルカ(とカオル)と出会った後に、自身の故郷にそれぞれ根ざすようになったという点でも似ていますね(メレオネは家族関係の改善、ジェヘララちゃんは生きる意味の再発見)。

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今回の記事その1では、「あらすじ」「戦闘システム」「登場する8つの国」について書きました。次回の記事その2では、ストーリーの概要&感想や『グレイメルカ』の魅力をネタバレ多めで書こうと思います。

記事その2→『グレイメルカ』 帝国三代に渡る戦乱の歴史を追う長編SRPG 感想 考察 その2
記事その3→(後日アップします)

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