『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟』を1年越しにレビューする(前作も振り返りつつ) その1
大法廷バトルADV、『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』(CAPCOM)の感想&レビュー記事(その1)です。時系列やストーリー内容のネタバレを含みます。
『大逆転裁判2』、CAPCOM
『大逆転裁判2』の発売から1年が経ちました。特典DLCの感想記事からずいぶんと遅れましたが、今回から『大逆転裁判2』の本編の感想を書いていきます。以下の内容も含みます。
- 前作『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒險-』の簡単な感想
- 旧逆転裁判シリーズとの比較
第1話~第5話の感想が予想以上に長くなったので、記事を分割しました。今回の記事その1では、前作『大逆転裁判』の振り返りや伏線のおさらいと、『大逆転裁判2』プレイ後の印象をざっくりと書きます。
以下は、ストーリーやエンディングのネタバレを含む感想と考察です。『大逆転裁判』シリーズのみならず、「逆転裁判」シリーズについても、既プレイの方を前提に記事を書きます。作品の性質上ネタバレは致命的なので、未見の方はご注意ください。
※「大逆転裁判」シリーズの感想記事一覧
・その1:『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟』 前作の振り返り&1年越しのレビュー(現在閲覧中)
・その2:『大逆転裁判2』 第1話~第5話までのストーリー感想 ※ネタバレ注意
・その3:『大逆転裁判2』が拓いた新境地 感想&考察&レビュー ※ネタバレ注意
・その4:『大逆転裁判2』 特典DLC 「遊べる! 大逆転物語」 感想
・その5:『大逆転裁判1&2』(Switch版)のメインビジュアルを鑑賞する 感想&考察
『大逆転裁判2』のあらすじ
前作『大逆転裁判 成歩堂龍ノ介の冒險』では、成歩堂龍ノ介がシャーロック・ホームズと運命的な出会いを果たし、大英帝国のロンドンに拠点を得ました。
- 大逆転裁判1話:11月22日(1899年)/東京
- 大逆転裁判2話:1月9日(1900年)/洋上
- 大逆転裁判3話:2月18日/ロンドン
- 大逆転裁判4話:2月19日~20日/ロンドン
- 大逆転裁判5話:4月15日~17日/ロンドン
前作の時系列はだいたい上記の通りです。年代は作中ではっきりと明言されていません。しかし、史実通りの条約に関する言及があるので、大逆転裁判シリーズがまさしく世紀末に展開される物語であることは間違いないかと思われます。
『大逆転裁判2』は『大逆転裁判』5話から4か月後、つまり1900年8月にスタートします。作品の導入部を簡単に書くと、以下のようになります。
不慮の事故により早世した親友・亜双義一真の遺志を継ぎ、大英帝国の首都である倫敦にやってきた成歩堂龍ノ介。数か月前の裁判をきっかけに謹慎を命じられた彼は、名探偵シャーロック・ホームズの事務所に下宿し、ひたすら勉学に励む日々を送っていた。
そんな龍ノ介のもとに、日本に帰国した御琴羽寿沙都からの手紙が届く。手紙を一読した龍ノ介は、アイリス・ワトソンとともに、留学中の夏目漱石を見舞った「二つ目の事件」の記録に目を通すことにした。
龍ノ介とアイリスは当時からある疑問を抱いていた。それは、「なぜホームズはこの二つ目の事件を小説の題材にすることを禁じたのか」という疑問だった。
一方その頃、倫敦からはるか遠い大日本帝国の大審院では、再び英国人殺害事件の裁判が行われようとしていた。被害者はなんと、半年前にジョン・H・ワトソン教授を暗殺した謎多き女性、ジェゼール・ブレット。
罪に問われた親友を救うため、寿沙都は女人禁制の法廷に立つことを決意する。亡き亜双義、そしてパートナーである龍ノ介への思いを胸に、法務助士である彼女の一世一代の大舞台が始まろうとしていた。
時は世紀末。日本と英国、二つの国で、再び物語の幕が開く。その終着点にあったのは、かつて大英帝国を震撼させ、多くの人間に痛みを与えた大事件だった。
はたして龍ノ介は、英国司法に厚く垂れこめた霧を払い、失われた真実を見つけ出すことができるのか? 彼の「覚悟」が切り開く、ただ一つの道とは?
弁護士・成歩堂龍ノ介の世紀の大逆転が今始まる。
前作『大逆転裁判 成歩堂龍ノ介の冒險』を振り返る
前作である『大逆転裁判 成歩堂龍ノ介の冒險』をプレイした直後に、個人的に気になった未回収の伏線や謎についてメモしていました。テキストファイルを整理していたらそのメモを見つけたので、そのまま掲載します。
気になること・謎
- ジョン.H.ワトソン医学博士:なぜ殺されたのか、なぜ娘を残して日本にいたのか
- ジェゼール・ブレット:今後登場するのか、再対決するのか、どういう素性の人間なのか、なぜ領事裁判権を行使されたのか
- 亜双義一真:どのような使命を負っていたのか、なぜ暗殺の危険があったのか、龍ノ介に何を望んでいたのか
- ニコミナ:その後どうなったのか
- ヴォルテックス:彼の言う亜双義の意志とは何か、メグンダル裁判の行方を知っていたのか、どういう人物なのか
- バンジークス:死神の噂の真相、「絶対の信頼を寄せつつも裏切られた」という日本人とは誰か、5年前に何があったのか、5年間法廷に立たなかったのはなぜか
- ホームズ:ワトソンと離れたのはなぜか、どういう経緯でアイリスを預かったのか、帝都ロンドンの闇とは何か
- メグンダル:遺品の回収に差し迫った理由はあるのか、死してなお影響力を持つキャラなのか
- 夏目漱石:再登場するのか、どのような小説を書くのか
- ビリジアン・グリーン:再登場するのか、どのような人物か
- 下宿人たちの謎:夏目漱石が来る以前の下宿人とは誰か、宝石キラキラの下宿人および彼と揉めていた男の正体とは
- スサト:ミコトバ教授の容態、大英帝国に帰ってくるのか
- ジーナ:レストレード姓は刑事フラグか
- 『バスカビル家の犬』:なぜ公開できないのか、なぜスサトはタイトルを知っていたのか
- 極秘通信の内容:四人の人物の共通点とは、今後の物語との関わりとは、日本と英国は何を計画しているのか
- 水晶塔:今後事件の舞台になるのか
この謎や伏線のほとんどは、『大逆転裁判2』の中で回収されたと言えます。明確に触れられなかったのはメグンダルの合言葉("PROFESSOR")くらいでしょうか(メタなお遊び要素か、メグンダルが例の事件を印象深く覚えていたのか)。
ただし、上記を含めた膨大な数の気になる描写は、前作『大逆転裁判』においては回収されませんでした。『大逆転裁判』の評価が低い(低かった)大きな原因はやはりそこにあるのだろうと思います。
『大逆転裁判』の感想
個人的な感想を書くと、『大逆転裁判』はプレイしていてかなり楽しかった作品です。『レイトン教授VS逆転裁判』以来のタクシューさんの演出&テキストに、「これだよこれ~」と満足したことが大きいです。
そのほか、レトロで華麗なイラストやBGMにも魅了されました。刷新された世界設定やキャラクターにも、最終的にはバッチリ馴染めました。主人公である龍ノ介の成長する等身大の青年像も新鮮で良かったです。
ただその分、謎という謎を盛るだけ盛って投げっぱなしで終了したあのエンディングには、怒るというより呆然とするばかりでした。「これじゃ謎ばかりだなあ、まさかの第6話があるのかなあ」と期待するじゃないですか。でも何もなかった。「僕たちの戦いはこれからだ! → おわり」、端的に言うとそんなエンドでした。
せっかくようやくスサトちゃんと新しい事務所に落ち着いたのに、「これで終わり? 成歩堂龍ノ介の冒険はここで終わり!?」といっそ驚愕でした。落ち着いてから「そこで終わるんかーい」と新喜劇ばりにツッコみました。ツッコまないと悲しくてやっていられない気分でした。
あとで他の方の感想をいくつか見てみると、厳しく苦言を呈している方が目立ちました(もちろん、『私は好き』『ここは良かった』と褒めている方もそれなりに見ました)。
トリックに粗が多すぎ、事件内容がお涙頂戴すぎ、ストーリーの後味がスッキリしたものではない、ラスボスがイマイチ、最終尋問が出来レース、共同推理が微妙、キャラの料理の仕方が下手、モーションがくどい……など。そんなに言うほど悪いかなーと思うところもあれば、そこはたしかにそうかもしれないと思うところもありました。
ただ、何が一番問題だったかと言えば、やはり『大逆転裁判』が出た時点で続編の予定がなかった(少なくとも表には出てきていなかった)ことだろうと私は思います。つまり、「満足に謎が解決されずに消化不良&続編が出るかはわからない」のコンボが一番まずかったのではないか、と。
上でも述べたように、私個人としてはエンディングでズッコケた以外は『大逆転裁判』を十分に楽しみました。しかし、明確な続編予定がないのに謎を詰め込んだことについては今でも解せない気持ちがあります。せめて「前編後編の前編です」「次回作で謎を回収します」と前もって示していれば、クリアしたプレイヤーがあれほど不満を溜めこむこともなかったのではないでしょうか。
『大逆転裁判』については、『逆転裁判4』を彷彿とする大がかりな前宣伝をしていたことが印象に残っています。プレイ後に感じたのは、宣伝に力を入れる前に「こういう結末のゲームをプレイしたファンはどう感じるか」ということを検討してほしかったなーということでした。
何が悲しいかと言えば、結末以外はむしろ好きだということです。「終わり良ければ総て良し」という言葉は本当に真理を突いているなあ、続編が出てくれるといいなあ……と、埠頭を走っていく龍ノ介を見ながらしみじみと思いました。
そして昨年に満を持してリリースされた『大逆転裁判2』では、前作で感じた疑問点や謎が綺麗に回収・解決されました。今となっては『大逆転裁判』をプレイしても不完全燃焼な気分にはなりません。なぜなら、解答編としての続編がきちんと存在するとわかっているからです。
『大逆転裁判』を再び純粋な気持ちで楽しめるようになったという意味においても、『大逆転裁判2』には心から感謝しています。
『大逆転裁判2』が成し遂げた「大逆転」
『大逆転裁判2』の印象を一言で書くなら、「大作かつ力作」です。
私事ですが、公式原画集やサントラは当然として普段は手を出さないグッズ系の関連商品(ゆるま貯金箱とか)にも手を出してしまい、最終的には明治村にも出かけました。それだけ自分の中で熱が高まったというか、プレイ後の余韻が長く続く、満足度の高い作品でした。
レビュー等を拝見していて、「前作からの大逆転」という感想をいくつか見かけました。うまいフレーズですね。前作の謎を見事に回収しつつ高いクオリティーを実現させたという点で、その評価は的確なものだと思います。
ただ、私個人にとっての『大逆転裁判2』は、もっと異なる「大逆転」を成し遂げた作品として記憶に刻まれました。
個人的な話で恐縮ですが、逆転裁判シリーズはゲームボーイアドバンス時代からプレイしています。逆転裁判4、逆転検事シリーズ、逆転裁判5以降、レイトン教授VS逆転裁判、ついでにゴーストトリックも一通りプレイしています。
とはいえ、飽きることなく何度もぐるぐるとプレイしたのはやはり、逆転裁判(+蘇る)&逆転裁判2&逆転裁判3の旧三部作です(※以下、逆転裁判1~3を“旧三部作”、“旧作”、“123”と書くことがあります)。私の中の笑える文章やエンタメ、ADVの基準は、旧三部作に負うところが大きいです。そのため今でも123が大好きだったりします。
話は変わりますが、長く続いているシリーズは往々にして作品の傾向が多様化し、ファンが多層化しますよね。制作側でスタッフが入替る一方、ファン側でも様々な世代が混在するようになるので。ゆえにファンの中で、「自分はこの(時期の)作品が一番好き」というこだわりや主張が強くなりがちです。
特に一定の評価を得ている初期作品のファンの場合、その傾向が顕著だと思います。好きな作品を絶対視しがちというか。これはあくまで個人の意見であり、ついでに言うと自虐込みの認識です。
『大逆転裁判2』のレビューを拝見していてもう1つ気づいたことがあります。それは、「旧三部作(特に、評価の高い『逆転裁判3』)と同じくらい面白い」という意見が多いということでした。
単体として褒めるだけに留まらず、123を引き合いに出して高評価をしている方は、程度の差はあれ旧作に思い入れのある方なのだろうと思います。私自身も、逆転裁判123をプレイしているときと同じくらい『大逆転裁判2』を楽しみました。だからこそ、旧三部作と比較しつつ「同じくらい面白かった」と評価しているプレイヤーの『大逆転裁判2』への感動というか、喜びの大きさが想像できるような気がしました。
キャラクターや世界設定を一新しつつ、旧三部作を相対化するに足る面白さを実現できたこと。それこそが、『大逆転裁判2』の成し遂げた「大逆転」だと私は感じています。
※評価の相対化については、評価の高い『逆転検事2』にも当てはまると思います。しかし検事シリーズは、外伝/システムが違う/検事視点/旧作とシナリオ担当が異なるといった点から、とりあえず脇に置きます。
長々と書いてきましたが、要するにプレイしていて面白かったんですよね。理屈抜きに。ワクワクしたしドキドキしたし、ときめきました。懐かしく鮮やかな体験でした。大いに期待しつつもそういった気持ちをまた味わえることはないだろうと内心諦めていただけに、感動は大きかったです。
『大逆転裁判2』を世に出してくれたタクシューさんや塗さん、制作スタッフの方々には感謝の言葉しかありません。素晴らしい作品をプレイできて感無量でした。
*****今回は、【前作『大逆転裁判 成歩堂龍ノ介の冒險』の感想&疑問点】と、【今作『大逆転裁判2』が果たした「大逆転」】について書きました。
次回の記事その2では、『大逆転裁判2』第1話から第5話までの詳細な感想を書く予定です。
・記事その2:『大逆転裁判2』 第1話~第5話までの感想 ※ネタバレ注意
・関連記事:『大逆転裁判2』 特典DLC 「遊べる! 大逆転物語」 感想(「亜双義主人公の大日本帝国編」と「ホームズVSバンジークスの大英帝国編」の2本を収めた特典ダウンロードコンテンツの感想記事)
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