『ウサチースカ!』 ドデカいうさ耳を持つ女の子が主人公のADV 感想
うさ耳の女の子が主人公のADV、『ウサチースカ!』の感想&攻略記事です。制作者はくまのこ道様。作品の紹介ページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『ウサチースカ!』
ウサチースカ!
『ウサチースカ!』は、「どでかい耳」にコンプレックスを抱える少女、ウサチースカのお話です。分岐あり、ほんのり恋愛要素あり。エンディングは4つ。プレイ時間は30分ほどでした。
「○○○!」みたいな題名って可愛くて勢いがあって好きです。フリゲだと『いりす症候群!』とか『行商!』とか。『ウサチースカ!』についても、まずそのタイトル名が気になりました。
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実際に『ウサチースカ!』をプレイしてみると、主人公「ウサチースカ」のヴィジュアルのキュートさに頬が緩みっぱなしでした。すごくカワイイ。作品全体の雰囲気もほのぼのとしていて、プレイしていて癒されました。
以下はストーリーやキャラクターの感想です。それほど長い記事ではないです。エンディング等のネタバレを含むので、未見の方はご注意ください。
『ウサチースカ!』のあらすじ
まず、『ウサチースカ!』のあらすじを書きます。
ウサチースカ!
主人公は真っ白な耳を持つミルクラビト族の女の子、「ウサチースカ」です。優しく頼もしいお母さんである「ママチースカ」と平穏に暮らしているウサチースカの悩みは、非常に大きな耳でした。
同級生からは嘲られ、道行く人には「ないわー」と指差されるドデカい両耳。その両耳のせいで、ついにウサチースカはとんでもないトラブルに巻き込まれてしまいます。しかしその事件は、ウサチースカを狭い集落から広い世界へと連れ出す契機にもなったのです。はたしてウサチースカの運命や如何に。
ウサチースカの転機は、2人の人物との出会いとともに訪れました。どちらの人物と深く関わるか、また交流中の選択により、エンディングは4つに分岐します。
主人公ウサチースカについて
最初の感想ですが、主人公のウサチースカがすごく可愛かったです。「ふわふわとした可愛らしさ×ほどよく健康的」なウサチースカの外見がすごく好みでした。どこを触っても柔らかそうというか。ちょっとむちむちしているくらいがカワイイ。 青緑色の目も薄桃色の髪の毛と合っていて綺麗だと思います。
また、外見に限らず、ウサチースカは性格的にもいい子だなーと感じました。母親思いの素直なのんびり屋さんで若干甘えたなところもあり、主人公として可愛いです。ウサチースカの成長はこのゲームのテーマの1つだと思いますが、頑張るウサチースカをプレイヤーとして心から応援したくなりました。
あと、ウサチースカはボクっ子です。ボクっ子は普段それほど好みではないですが、ウサチースカの素直な性格に一人称が「ボク」だと、あざとさがなくてとてもキュートだなと思いました。
旅人ルートとサフィラスルート
「旅人」と「サフィラス」は、いわゆる攻略対象キャラクターです。ウサチースカとの出会い方や関わり方において対照的な2人であると言えます。選択肢によって、ウサチースカが2人のどちらと深く関わるかが変化します。
攻略的なことを書くと、最初の選択肢で「踏みとどまる」を選ぶとサフィラスルートに入ります。一方、「眠気に身を任せる」を選ぶと旅人ルートに入ります。実際にプレイしたときは、旅人→サフィラスの順に攻略しました。そこで、感想もこの順に書こうと思います。
旅人ルート
旅人ルートでは、ウサチースカの身代わりとなってさらわれたママチースカを救いに行くことになります。ウサチースカの旅に同道してくれるのが、謎の人間である「旅人さん」です。傭兵稼業を営んでいる彼は剣の達人であり、旅慣れた頼もしい大人でもあります。
ウサチースカ!
旅人さんの魅力は、ウサチースカとのほどよい距離感の取り方にあると思います。なれなれしいわけでも素っ気ないわけでもなく、スマートなんですよね、基本的に。
上の場面とも関連することですが、旅人さんはものの見方がフラットで何事にもあまり動じません。だからこそウサチースカの悩みに大げさに同情するでもなく、「気にするなよ」なんて安易なことを言うでもなく、「そうか」の一言を返せるのです。
しかし、つかず離れずでも旅人さんが優しい人だということはよくわかります。他人の事情にまったく踏み込まないわけではなく、ウサチースカが困っているときは迷わず手を差し伸べてくれるからです。
平たく言えば、旅人さんは、優しさが押しつけがましくない有言実行なイケメンだと思います。それでいて気取りがないし、真面目さゆえかとぼけたところもあるという隙のなさ。ウサチースカが旅人さんにどんどんと惹かれていったのもむべなるかなという感じでした。
ルート全体を通して、恋するウサチースカが可愛くて和みました。あと、ウサチースカ9歳(!)に驚愕する旅人さんには笑いました。12~15歳くらいかなーと思っていたので、プレイヤーとしても非常に驚きましたが(一体ママチースカは何歳なのか)。
サフィラスルート
サフィラスルートでは、ウサチースカが両耳目当てに誘拐され、都会のお屋敷に軟禁されてしまいます。ウサチースカをさらうように命じたのが、貴族の子息である「サフィラス」です。以後、ウサチースカはひたすらサフィラスにもふられる日々を過ごします。
ウサチースカ!
サフィラスルートはほとんど恋愛色がありません(ウサチースカからサフィラスに対し、恋愛的な感情がまだないらしいという意味で)。どちらかというと、2人の友情関係に焦点が当てられていた印象です。個人的にはそこが逆に良かったなーと思います。友情に的を絞ったことで2人の関係性が分かりやすくなっていた気がします。
ウサチースカとサフィラスは、大きく隔たっているようで実は共通点のある2人だと思います。というのも、サフィラスは母親を早くに亡くしているし、ウサチースカは父親の顔を知りません。
サフィラスは父にかまってもらえない寂しさから非常にわがままな性格になり、ウサチースカはラビト族にしては珍しく母にべったりで育ちました(ラビト族は親元を離れて自立するのがとても早いらしく、9歳で親と一緒に暮らしているウサチースカは変わっているそうです)。
2人の表面的な性格はもちろん異なっています。しかし、2人がそういう性格になった背景には、よく似た家庭の事情があったわけです。そういう設定を踏まえると、ウサチースカとサフィラスが互いの事情を認め合うシーンにはグッときました。2人とも本質的には寂しがり屋で甘えん坊なんだろうと思います。
個人的にウサチースカとママチースカの親密さはラビトらしくないという情報が意外でもあり、納得でもありました。サフィラスの掘り下げが、主人公であるウサチースカの掘り下げと並行して進む点でも、かなり好きな場面です。
サフィラスは最初の印象が悪かった分、屋敷に来た後の印象アップがサクサク進んだ感じがあります。「○してしまうと耳の状態が悪くなります」→「そうなのか分かった」の時点で「意外に物分かりいいなあ」と個人的には見直しました(単純すぎ?)。
ウサチースカとサフィラスは同年代らしいので、後になるほど遠慮のないやり取りが増えてくるのが良かったです。それと、サフィラスが花とニンジンを持ってくるくだりにはニヤニヤしました。ツンツンとデレのバランスが非常にいい感じだと思います。
エンディングについて
『ウサチースカ!』にはエンディングが全部で4つ存在します。END1、END2は旅人ルートを、END3、END4はサフィラスルートを経由します。
END1 これから
「眠気に身を任せる」→「手持ちのニンジンスープを振るまう」でEND1になります。ウサチースカの今後としては一番良いエンドなのかなと感じました。旅人さんが傍にいるし、サフィラスも救済されたし、経済的にも精神的にも安定した生活が送れそうです。何気にママチースカからも良い形で自立し始めてるんですよね。
そして旅人さんとの「これから」ですが、ウサチースカが前向きになれたことが最良だと思います。かなり積極的にアプローチできるようになったし。というかあの描写、旅人さんは邪魔が入らなかったらまた耳を撫でるつもりだったのでしょうか。やるぅ。
END2 ただいま
「眠気に身を任せる」→「食べられそうな野草を探す」でEND2になります。次点のグッドエンドです。
サフィラスパパの書付があるとはいえ、あの住民性があまり良くない集落にウサチースカを1人で帰すのか……と最初は若干思いました。しかし結果として、笑顔で別れるウサチースカのいじらしさと、彼女の寂しさに気づいてくれる旅人さんの察しの良さが際立ったように思います。
2つの理由から、私はこのエンドが好きです。まず、「ニンジンが苦手」と言っていた旅人さんがわざわざニンジンスープのレシピを覚えてくれたことが1つ。それから、レシピを通じてウサチースカとの繋がりを保とうとしてくれたことがもう1つ。
「距離感の取り方がほどよい」と上で書いた旅人さんですが、彼を単なる恩人に思えなくなっているウサチースカからすれば、そのそつのなさは寂しく思えてしまうんですよね。深いところに立ち入らない接し方はあちこちを旅する人らしいスマートさです。しかし旅人さんと離れたくないと感じている人にとっては、別れればそのまま終わってしまう関係では物足りません。
だから、寂しい一人暮らしをすることになるウサチースカに、旅人さんが歩み寄ってくれてよかったと感じました。最後までウサチースカに必要な言葉をくれる旅人さんは、やはりイケメンな人だと思います。
END3 さよなら
「踏みとどまる」→「事情を告げる」でEND3になります。このゲーム唯一のバッドエンドと言っていいと思います。こんな展開になるとは思わずけっこう動揺しました。
このエンド3では、サフィラスパパがけして悪い人ではないことが強調されていました。だからこそ、すれ違ったまま終わった父子の関係、およびウサチースカとサフィラスの関係が悲しかったです。そのすれ違いを高級ニンジンを使って表現するところがナイスだと思いました。
ウサチースカと分かり合えず、ママチースカとも会えなかったサフィラスは、これからどういう風に生きていくのか。なんともビターな結末です。
END4 またね
「踏みとどまる」→「何も言わない」でEND4です。グレイラさんが(ある意味)大活躍でした。意味深な過去といい気になるキャラクターです。しっかりとサフィラスを怒ってくれるママチースカの活躍も光っていたと思います。旅人さんは「強い」の一言です。
サフィラスもウサチースカも、お互いに大切な友だちを得て成長した良いエンドでした。サフィラスは筋を通せるようになり、ウサチースカはいい意味で図太くなり、これからもどんどんと良い方向に変わっていけるのだろうと思います。2人が互いに、「さよなら」ではなく「またね」と言える……というだけでも嬉しかったです。
*****楽しくプレイできて癒される作品でした。ウサチースカ可愛い。残念に思ったのは、旅人さんの名前が最後まで判明しなかったことくらいです。それもまた「これから」ということなのでしょうか。
また、ママチースカとパパチースカ(仮)の過去が意味ありげで気になりました。「パパチースカと結婚=集落追放」ってどういうことなのか。ママチースカもはっきりとは話してくれないし。パパチースカはラビトではなく、だからウサチースカの耳は普通とは違う……みたいな理由があるのでしょうか。異種族間の生殖や婚姻はOKなのかということも気になります。
世界観がカッチリしている系の作品ではないと思うのですが、種族や料理、交通手段にまつわる日常的な描写が多くて想像が膨らみました。たとえば、「ニンジンって色々種類があるんだ」とか「おひさまにんじんってなんだろう」とか。また、ラビトならではの言葉遣いが描写されていたのも印象的でした。「もちもちした、健康的に肉厚な耳」とか「耳の血管が真っ青」とか「耳がそわそわしてしまう」とか。
上のような作品世界ならではの表現は、単にユーモラスなだけでなく、ゲーム世界の掘り下げという意味でも機能していた気がします。あと、ウサチースカからの「ママチースカ」は面白くて思わず笑いました。
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