『アイシャの子守歌』 感想 考察

かーめるん

探索ホラーADV、『アイシャの子守歌』の感想、考察記事です。

制作者はあうぐ様。制作者様のサイトはこちらです。 → 共食いうさぎ

アイシャの子守歌 スクショ タイトル画面

廃墟の地下に取り残された女の子が、外に出るために建物内をさまようお話です。
クリアまでの所要時間は約30分。エンドは1つです。

『アイシャの子守歌』は公開直後くらいにプレイさせていただきました。最近やり直して個人的に新しい発見があったので、感想記事を書こうと思い立ちました。

ちなみにどうして最近プレイし直したのかというと、同制作者様の新作、『幸せなエミリー』をプレイしたからです。怖く悲しく、かつ面白い作品でした。演出面にいっそうの磨きがかかっていたように思います。特にラストの演出は息をつめて見守りました。主人公のエミリーと同じくらいにそのお母さんの心情にも焦点が当てられていて、あうぐ様の作品としては新鮮に感じました。

以下は、詳細なネタバレを含む感想です。考察もしていますがガッツリ主観です。未見の方はご注意ください。

あらすじ

まず、『アイシャの子守歌』のあらすじを書きます。

暗闇の中、主人公アイシャは意識を取り戻します。そこはせまい小部屋でした。彼女には「お兄ちゃん」がいます。しかし、危ない外に出かけてまだ帰ってきていないようです。

ドアにかかっていた鍵は、しばらくすると不思議なことに外から開錠されました。アイシャは小部屋から出て、建物の地下をさまよい始めます。地上へ、建物の外へ出るために。そして大好きな「お兄ちゃん」にまた会うために。

アイシャの子守歌 ゲーム画面 スクショ2

ここから出られたら、どんなに素敵だろう。 お兄ちゃんに会えたら、どんなに素敵だろう。

はたしてアイシャの願いは叶うのか。廃墟の暗闇を抜けた先で、彼女を待ち受ける真実とは……といったあたりが、ストーリーの見どころです。

『アイシャの子守歌』の真相

『アイシャの子守歌』を初めてプレイしたのは、2年ほど前のことになります。

あうぐ様の作品の中で一番好きなのは、個人的には『盲愛玩具』です。しかし「一番印象深い作品は?」と問われれば、『アイシャの子守歌』と答えるかもしれません。

どうしてかというと、クリア時にしっくりとくる物語の真相を掴めなかったからです。「つまりこういうことだったんだな」という個人的な納得を得られなかったので、心に引っかかり続けていた作品でした。疑問に思ったのは、主に以下のことです。

  • アイシャはどうして独りであの部屋にいたのか?
  • 誰が外から扉を開けようとしたのか?
  • ときどき現れる兄の幻影は何か?
  • どうして地上1階への通路がかき消えたのか?
  • なぜ3年前に廃墟になった建物に電力が供給されているのか?
  • どうして兄は帰ってこないのか?
  • ラストの幻影とループ表現をどう解釈するのか?

上記の謎について、当時は作中で手に入る資料や日記をつき合わせつつ色々と考えました。

たとえば、文字化けメールをリート文字っぽく変換できないかと悩んだり、そもそもアイシャがさまよっている廃墟はどこまでが現実に即したものなのかと疑ってみたり。その上で、とりあえずのストーリーを想像することはできました。

ただ、なんだかしっくりとはきませんでした。まあある程度は説明がつくけど、なんか違うなーと。しかしそれ以上のことは思いつかなかったので、当時はいったん考えるのをやめました。

そしてほぼ2年後、今回プレイし直したのですが、どういうわけかパッと天啓が降りてきました。
もちろんこれが真相かどうかはわかりません。しかし、「個人的に納得できる答え」だと思いました。しっくりきたんです、実に約2年越しに。

というわけで、今回は以下の2項目に分けて考えたことを書いていきます。

  • 初プレイ時に考えたこと
  • 最近プレイし直した上で考えたこと

初回プレイ時と2回目プレイ時を比較すると、主に「お兄ちゃん」への見方がガラッと変わっています。

前置きとして、①②の違いを超えて言えるのは、冒頭とラストで繰り返される下記の語りこそ、『アイシャの子守歌』のストーリーの核心であるということです。

ここから出られたら、どんなに素敵だろう。 お兄ちゃんに会えたら、どんなに素敵だろう。

この独白の解釈、このように願ったアイシャの心情についての解釈が、開始時とラストでまったく異なってくる。それこそが、『アイシャの子守歌』のミソであり、構成の巧みさだと私は思います。

①初プレイ時に考えたこと

結論
アイシャと兄は両親を亡くし、孤児となった。両親に妹のことを頼まれた兄は泣き虫のアイシャを必死に守ろうとしたが、やがて無力感に苛まれ、妹を重荷に感じるようになる。
2003年に戦争が再び始まり、すべてを終わらせたいと無意識下で願っていた兄は、廃墟に妹を残して外に様子を見に行き死亡。兄の言いつけ通りに地下倉庫の奥に隠れていたアイシャは、3日間戻らない兄を待ち続けた。そしてゲーム開始現在、すでに死亡したか衰弱死一歩手前の状況に追い込まれ、廃墟の記憶も巻き込んで兄と自分についての終わらない夢を繰り返し見ている。

上記の結論は、当時のプレイメモをそのまんま写したものです。初プレイ時の解釈は、以下のようなものでした。

  • 兄は建物の外で死亡済み(戦争に巻き込まれた)
  • アイシャも死にかけor死んでいる⇒物理的に地下から出られない状態にある
  • よって、建物を探索するパート=アイシャの夢orアイシャ(幽霊)の行動
そしてアイシャの夢(仮定)に、主に以下の2つが干渉し、本編の世界を創り出しているのでは……と考えました。
  • 建物の残留思念(Eメールに代表される往時の職員たちのやりとり)
  • 兄の思い(血文字や日記の断片として)

上記の考えを図示すると、下の画像のようになります。

aisha 図 furige-tabi.com

ざっくり言うと、あの廃墟はリアルに即したものではなく(つまりアイシャの夢)、アイシャは建物の地下で生き埋めになっているのではないかと思っていました。

まず気になったのは、2003年時点のあの建物に電力が供給されているのか? ということでした。『アイシャの子守歌』の時系列をざっと書き出すと、以下のようになります。

時系列
  • (2001年以前 戦争、治安悪化、発砲事件、テロなど)
  • 2001/01/?9 建物が閉鎖される(貼り紙より)

  • 2002/05/11 アイシャと兄が無人になった建物に住み始める(兄の日記1「今日から、この廃墟に住むことに決めた。(中略)戦争は終わったけど、治安は悪いままだ」)

  • 2003/01/10 戦争再開? 兄が戻らない? (兄の日記5/私の日記3)

  • 2003/01/13 アイシャが地下倉庫で目覚める(ゲーム開始、PCの時刻表示からおそらく17:20頃)

舞台となるあの建物は、2001年1月時点で閉鎖されています。休憩室に2000年のカレンダーがそのままになっていたので、社員たちの退去は2000年中に終わっていたのでしょう。

つまり、2002年5月にアイシャと兄が住み始めた時点で、あの建物は正しく「廃墟」だったはずです。そして、孤児の2人が正式な権利を得てあの家に移り、電力会社に月々の支払いをしていた……というのは考えにくい話です。

以上より、ゲーム開始時の2003年1月13日に、あの建物内で電力を使えるはずがないと考えられます。

ところがゲーム内では、換気扇もエレベーターもコンピュータも、制御盤などをいじれば問題なく使えるようになります。

このことから、アイシャが探索しているあの廃墟は現実そのままのものではないのだろうと考えるほかありませんでした。あの建物の地下すべては、アイシャの夢(+建物に染みついた思念やら兄の思いやら)の産物と言うべき環境なのでは、と。

その上で当時強烈に引っかかったのは、「地下1階と地上1階を繋ぐ通路が消えてしまうこと」でした。

建物の構造上、地下1階と地上1階を繋ぐ階段がないなんてあり得ませんよね。実際、階段はちゃんとあるはずだと思います。地上1階には地下への階段を示す▼マークがあります。

しかしその肝心の階段は、アイシャが近づくとかき消えてしまいます。そして最終的にアイシャを地上1階へと導くのは、現実的には動くはずのないエレベーターです。

このことは、「現実のアイシャが物理的にはこの建物から出られないこと」の暗示ではないかと思いました。

戦争が始まるとお兄ちゃんが言っていたわけだし、あの廃墟は爆撃か何かで破壊されたのではないか? アイシャは地下に取り残されて外に出られなくなったのではないか? 身動きのとれない状態で、建物を脱出し兄と再会する素敵な夢を繰り返し見ているのではないか? と連想したわけです。

このとき念頭にあったのは、"Take a key and lock her up"、すなわち「鍵をかけて彼女を閉じ込めろ」を含むメールの奇妙な英文でした。

上文は、有名な童謡「ロンドン橋落ちた」の歌詞の一部です。あの歌は橋を建てる際の人柱を暗示していると聞いたことがあったので、尚更「アイシャは生き埋めになったのでは」と思いました。

ただし、上のように考えたときに引っかかる描写が2点ありました。

1つ目は、「子守歌を歌おう あの子が泣かないように 子守歌を歌おう あの子が起きないように」というメッセージ。
2つ目は、「アイシャは結局は建物を出られていない」という点です。

前者については、まず出所を明確にできないメッセージだったことが気がかりでした。他のメッセージは、だいたいアイシャ/兄/親/MunaやAliなど会社の人たち……という風に由来が明らかです。ところが上記のメッセージは出どころ(誰の発言か)が曖昧です。

加えてこのメッセージには、「子守歌」という単語が入っています。このゲームのタイトルを思えば、「子守歌」は注目すべきキーワードであるはずです。そしてゲーム内で「子守歌」というキーワードが出てくるのは、このメッセージと後述する文字化けメールの中でのみです。

このメッセージは誰の思いなのか。消去法で「お兄ちゃん」なのかなと当時は思っていました。結果的に妹を置き去りにしてしまった兄の思いが、死してなお妹に夢を見せているのかな……と。

しかし、兄(や親)がアイシャに子守歌を歌っていた描写はまったくありません。よって唐突感・違和感は否めませんでした。

後者については、本編がアイシャの夢なら、どうして最後に「すべての願い」を叶えられていないのだろうと疑問でした。

冒頭の二文からして、アイシャは建物を出た上で兄と再会したいわけです。しかし、ゲームのラストでアイシャは建物から出られませんでした。
単純なアイシャの夢なら「建物を出て再会のちハッピーエンド」となりそうなものです。だから、そういう風に終わらなかったことを疑問に思わざるを得ませんでした。

以上のようにしっくりこなかったのですが、再プレイして素直に資料の文言を追っていくとひらめくことがありました。

ひらめいた後は、「どうして初プレイ時にはこの答えに至れなかったんだろう」と思ってしまいました。たぶん「アイシャ可哀想、お兄ちゃんも可哀想」とひたすら思っていたので、他の可能性に思考が及ばなかったのだと思います。

②最近プレイし直して考えたこと

結論
兄はいつも泣いてばかりのアイシャを重荷に感じるようになった。妹に笑ってほしいという思いは、妹の涙をもう見たくない、妹のもとから逃げ出したいという強迫観念に変わる。
2003年1月10日、兄はアイシャに戦争がまた始まるとをつき、先に地下倉庫に入るようにと告げた。アイシャが言われた通りにした後、兄は倉庫の扉を施錠し妹を閉じ込めた。そして、そのまま廃墟から出ていった。

1月13日現在、アイシャが閉じ込められてから3日が経っている。衰弱したアイシャは兄に置き去りにされたことにすでに気づいている。兄に迎えに来てほしい、この建物から出たい、この倉庫の扉の鍵を開けてほしい……そんな願いを胸にアイシャは空想し続けている。それらはすべて叶わない願いであり、現実を受け止めきれないアイシャの逃避である。アイシャが本当に眠る(=命を落とす)まで、空想のループは繰り返されるのだろう。

この説では、以下のメッセージを直球のヒントとして考えます。

"Take a key and lock her up"=「鍵をかけて彼女を閉じ込めろ」

つまり、「お兄ちゃん」は意図的にアイシャを地下倉庫に閉じ込め、一人で逃げたのではないでしょうか。

「兄の日記5」には、「アイシャが泣いているのは見たくない。もう二度と見たくない。/父さん、母さん。ごめんなさい。」という記述がありました。

兄が父母に謝っているのは、両親が生きている頃に、「私たちの代わりにa1sh4(アイシャ)を守ってあげて」と言い含められていたからだと思います。

また、血文字には、以下のような記述がありました。

  • FORGIVE ME
  • が追ってくる どこまで逃げても 溺れさせようとして

「涙」といえば、兄にとっては泣き虫の妹アイシャです。

そして、貼り紙の一つには次のような独白がありました。

追いかけてくるかもしれない。きっと、どこまでも追いかけてくる。
終わらせるにはこれしかない。そうだ、逃げるだけじゃ終われない。

単に逃げるだけではアイシャの涙からは逃げられないのです。単に置いていかれただけでは、アイシャは生きたまま、いなくなった兄を思って泣き続けるでしょう。

だから兄は、妹を地下倉庫に閉じ込めて、すべてを終わらせようとしたのではないでしょうか。もう今後はアイシャ(の涙)が自分を追ってこないように、と。

この救いのない説を思いついたのは、再プレイを始めた直後でした。

アイシャが目覚めたとき、倉庫のドアには鍵がかけられていました。しばらくすると「ガンガンガン」(ドアノブが回るが開かない)「カチャ」(おそらく鍵の外れる音)……と音をさせてドアは開きます。

つまり、倉庫のドアには外から鍵がかかっていたのです。アイシャは閉じ込められていたことになります。この重要な事実を、初プレイ時はなぜか完全にスルーしてしまいました。

「兄の日記1」によれば、廃墟の壁に穴はなく、ドアも鍵も壊れてはいません。だから兄は、「アイシャが一人で留守番していても大丈夫」と思ったわけです。

そしてこの日記の記述が本当ならば、ドアに外から鍵をかけられ閉じ込められてしまえば、アイシャは倉庫から出られないということになります。かつ鍵をかけられる人物はというと、状況的に(というよりメタ的に)アイシャの兄しかいません。

次に、「私の日記3」に注目しました。「また戦争が始まるなんて信じられない」とアイシャは述べています。

初プレイ時は、この発言を単に驚きの表現だと思っていました。しかしよくよく振り返ってみれば、「戦争がまた始まる」と言っているのは、1月10日における「お兄ちゃん」だけです。他のニュースソースはいっさい存在しません。

初プレイ時は、「戦争がまた始まる」という兄の発言を当然のように信じていました。以前にも戦争があった、治安が悪いといった記述を見ていたせいでもあります。しかし何より、兄がウソをつく可能性を端から考えていなかったからです。

しかし、倉庫が施錠されていたことに気づいた再プレイ時には、この発言を素直に信じることはできませんでした。
敵が攻めてくる、戦争が再び始まる……など、本当は事実無根のウソなのではないでしょうか。だからアイシャにとって戦争再開というニュースは寝耳に水で、にわかには信じがたかったのではないでしょうか。

「兄が鍵をかけてアイシャを閉じ込めた」とひとまず仮定します。

そうすると、「ガンガンガン、ガチャ」(ドア開く)→探索パート(地上へ脱出)→戻ってきた兄と再会……というプロセスは、すべてアイシャの空想ということになります。

というのも、兄が戻ってくるはずもなければ、倉庫の扉が開くはずもないからです。外から誰かがドアを開けてくれるということ自体があり得ないのです。アイシャが廃墟の倉庫に隠れたことを知っているのは兄だけで、その兄が倉庫に鍵をかけたのですから。

1月13日時点のアイシャは、生きているにせよ死んでいるにせよ(たぶん生存していると思いますが)、あの部屋の床にひとり横たわったままでいるはずです。

アイシャ自身はすでに、兄に置いていかれた事実をわかっているのでしょう。だからこそ最後の最後になっても兄と触れ合えず、建物から出ることもなく、ゲーム本編(=アイシャの空想)は終了するのではないかと感じました。

また、上記のように仮定したとして、兄に閉じ込められたアイシャは3日間何をしていたのか。散見される描写を見るに、たくさん泣いたのではないかと私は思います。

探索パートでわかりますが、管理室の地下は水没しています。外で雨が降っているからかもしれませんが、あの大量の水は地下倉庫で、アイシャの流した「涙」の暗示なのではないかと思いました。

そして泣いているアイシャについてのメッセージが、「子守歌を歌おう あの子が泣かないように 子守歌を歌おう あの子が起きないように」なのではないでしょうか。あまりにむごい現実にアイシャが泣かないように、優しい空想に浸るアイシャが目覚めないように、子守歌を歌おう……みたいな。

「子守歌」は、見捨てられたアイシャを見守る誰かの慈愛のメタファーなのではないかと思います。このメッセージを発しているのが誰かは不明ですが(突飛ですが、個人的には廃墟かな? と思ったり。すべてを知っている神視点っぽいので)。

次に、以下の文字化けメールの中で、「子守歌」は「ノイズ」と呼ばれています。

>4169736861
ノイズがe6848fe8ad98を蝕む。
e5b9bee5baa6も映像がe7b9b0り返される。
推測なのにe79c9fe5ae9fにしかe6809dえない。
e79ca0るまでe7b582わらないノイズは
まるで子守歌のように。

この文字化けメールは、現実と空想の区別のつかなくなったアイシャのモノローグではないかと思います。
残念ながら、この文字化けメールを解読することはできませんでした。たとえば3文目と5文目の"e7b"が共通していることを手がかりにできないかなーと思ったものの、うまくいきませんでした。

そこで、開き直ってフィーリングでメールの内容を考えてみました。

  • 「ノイズ」=ガンガンガン、カチャリ……という扉が開くときの音?
  • 「○○○○を蝕む」=「精神」とか「現実」とか?
  • 「○○○○も」=「何回も」?
  • 「映像」=謎。空想の中で扉が開くときの光景か。
  • 「推測なのに~○○えない」=「推測なのに本当or真実にしか思えない」的な。兄が妹を閉じ込めたこと?
  • 「○○るまで」=「眠るまで」? 子守歌からの連想。
  • 「○○わらない」=微妙だが「終わらない」か。

そしてメールの暗示も踏まえ、真相を以下のように考えました。

予想
「ノイズ」、つまり「空想のループが始まる合図の音」は、アイシャが眠る(=死ぬ)まで終わらない。
兄に置き去りにされてから3日目、アイシャは現実と願望をごちゃまぜにしながら、兄が自分を迎えに戻ってくる(=兄は自分を意図的に置き去りにしたのではない)という空想に浸っている。現実では誰が自分を倉庫に閉じ込めたのかわかっているから、兄と触れ合うことも建物を脱出することもなく、アイシャの空想は終わる。そしてループ。
空想は、アイシャが本当に眠る(=死ぬ)ときまで何度も何度も繰り返される。

上でも書きましたが、ゲーム開始時(1月13日17時20分)にアイシャはまだ生きているのではないかと私は思います。ただ、状況的にそれを喜ぶことはとてもできませんが。

気がかりなのは、1階に出たときに、外で雨が降っていたことです。

あの廃墟の環境がどこまで現実とリンクしているのかは不明ですが、地下4階の水没はアイシャの涙のメタファーではなく、現実の話だという可能性もあります。もし地下が水没してアイシャの倉庫まで達したら……と思うとゾッとします。「涙*が追ってくる(中略)溺れさせようとして」という言葉と併せるとよけいに不穏です。

*また、地味に気になったのは、PC内の写真です。「母」を示す写真にが、「父」を示す写真に大量の薬莢のようなものが映っています。

アイシャと兄の両親は既に亡くなっていますが、この二枚の写真は二人の死因を示すものではないかと感じました。そして同時に、「tears」というタイトルの写真が気にかかりました。"tears"といえば「涙」、涙と言えばアイシャです。

もしやこの写真は、アイシャの死因を示すものでは……と思い、目を皿のようにして見たのですが、何が映っているのか判然としませんでした。残念です。いったい何が映っているんでしょうね、あの写真。「く」の字を仰向けにして二つ並べたようなアレはいったいなんなのか。パイプなのか、脚なのか。

まとめ

以上、プレイ当初に考えた①説と、再プレイして考えた②説について書きました。しかし、②説の場合だとあまりに救いがないので、的外れな予想かもしれません。
個人的には救いがない悲しいオチ(not胸糞)って好きなんですが、それだけに自分で勝手に救いがないようにないように~と解釈している可能性はあります。

何にせよ悲しいのは、お互いを大事に思っていたアイシャと兄がすれ違ってしまったことですね。兄のストレスの溜めこみ方といい、ひぐらしの北条兄妹を思い出しました。

「戻ってきたでアイシャ~ホンマにごめんな~」とお兄ちゃんが改心してカムバック→なんやかんやでアイシャ助かる→一生分泣いたから泣き虫脱却!……なーんてハッピーエンドがあればいいのになーと②をまとめている間にちょっと思いました。

到底なさそうだとわかっているからこそ、プレイヤーもアイシャばりに空想に逃避したくなります。

*****

今回は考察メインの記事だったので触れませんでしたが、『アイシャの子守歌』はかなりホラーな作品です。

横視点ビュー極端なクローズアップ=可視範囲のせまさのせいで、操作していて本当に怖いんですよね。前後に進むことしかできない上にオブジェクトが一瞬で視界に入ってくるから、満足に備えができないわけです。プレイ当時は、お兄ちゃんが出てくるたびに本気でビビってしまいました。

今回再プレイして、『アイシャの子守歌』は私の中でより印象深い作品になりました。怖さ悲しみが本当にいいバランスだと思います。

あうぐ様の他の作品についてもいくつか感想記事を書いています。


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