『Ruina 廃都の物語1』 「騎士の嫡子」ルートをベースにした小説版(ノベライズ) 感想
長編フリーゲーム、『Ruina -廃都の物語-』のノベライズ第1巻の感想記事です。ネタバレを含みます。
『Ruina 廃都の物語 1』、副題は「The Fairy Tale of the Forgotten Ruins」。枯草章吉氏の原作を、嬉野秋彦氏が小説化しています。ページ数は300Pと少し。忘却界の宮殿を突破するまでの冒険が描かれています。原作『Ruina 廃都の物語』の紹介ページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『Ruina 廃都の物語』

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「Ruina小説化」を知ったのはごく最近のことでした。びっくりしつつすぐに購入しました。ベースとなるルートが【騎士の嫡子】ということもあって期待感は大きかったです。
※原作である『Ruina 廃都の物語』(フリーゲーム)の感想記事も書いています。 → 『Ruina 廃都の物語』 長編ファンタジーRPG 感想&考察 ※ネタバレ注意
ただ、著者の嬉野さんの作品を読んだことがなかったんですよね。また、どういう解釈の下ノベライズがなされたのか、それが個人的なRuina解釈と噛み合うか未知数だったので、そこも含めて楽しみにしていました。以下は、ネタバレを含む概要と感想です。原作および小説を未見の方はご注意ください。
小説版『Ruina』の概要
原作である『Ruina 廃都の物語』は、大河を臨む大陸("大河流域世界")を舞台とする、ゲームブック風の長編ファンタジーRPGです。主人公のキャラメイクが可能であり、プレイできるルートは合計4つ。パーティに加わってくれるNPCは総勢10名にも及びます。
この項目では、ノベライズ版の内容に関して、「どのルートをベースにしているのか」「原作キャラはどのようなポジションにあるのか」などを簡単に書きます。
主人公とそのパーティ
今回の小説のベースとなるルートは、【騎士の嫡子】の女主人公ルートです。つまり、主人公はホルム伯カムールの一人娘、「ウェンドリン・グリムワルド」ということになります。偶然に洞窟を発見し、領主の娘として遺跡探索に加わります。
パーティの2人目として目立つのは、巫女の「テレージャ」です。大河流域世界の世界観や遺跡の謎を解説する重要な役どころです。とにかく喋りまくります。
パーティの3人目は、雑貨屋の娘でありウェンドリンの幼なじみである「ネル」です。ウェンドリンは基本的にテレージャ、ネルと組んで遺跡を探索しているようです。
『Ruina』は基本的に、2人と組む「3人パーティ制」です。しかし物語後半では、公国の騎士・「アルソン」がパーティに参加して戦います。
この小説のベースは【騎士の嫡子】女主人公ルートであり、かつ中ボスポジションの「テオル公子」の描写に多くのページを割いています。ゆえに、原作において「ウェンドリンの縁談相手(候補)」かつ「テオルの従弟」であるアルソンは相応に出番が多いようです。
その他のNPCについて
上記の主人公+4人以外のNPCもほぼ登場します。領主の館のメイドである「フラン」の出番はそこそこ多いです。【騎士の嫡子】がベースであることを考えるとやはり自然ですね。フランは原作通り子供の頃から奉公しているようで、ウェンドリンの身を案じています。今後の展開次第では探索に同行することもあるかもしれません。
「パリス」が登場するのは序盤のみです。ウェンドリンと一緒に探索に参加していたものの、チュナのただ1人の身内という事情もあっていったん探索から身を引きます。その後、どうやら悪徳商人ピンガーに接触しているようです(よりにもよって最悪のパターン)。【罪人の遺児】由来のエピソードがのちのち描かれるのでしょうか。
「シーフォン」は大きく分けると2回ほど登場します。パリスと不仲であること、ウェンドリンがシーフォンに好感を持っていないことなどが最初に説明されます。その後、宮殿のギミックを半分以上解くも重傷を負い、テレージャに治療を受けます。
「ラバン」と「キレハ」もチラッと登場します。ラバンについては主人公たちの古い知り合いで釣り好きであること、キレハについては遊牧民出身の女戦士であることが描写されます。キレハの台詞はごく少ないです。
どうやらシーフォン、ラバン、キレハの3人でパーティを組んで探索していたらしく、重傷を負ったシーフォンを他の2人が担いでくる描写があります。
「メロダーク」は神殿の人間として内密にテオルに接触する描写があります。仲間へのスパイ発覚はもっと後になりそうです。
そしてNPCのうち、「エンダ」は唯一登場しません。そもそもこの小説内に存在しているのか不明です。本編スタート時点で竜の塔は突破済なので、今後エンダが発見されるかどうか気になるところです。
『Ruina 廃都の物語 1』のあらすじ
この項目では、小説版『Ruina』のあらすじを簡単に書きます。
小説の冒頭では、洞窟を発見した直後のウェンドリンが偶然テオルに出くわします。テオルは少数のお供をつれてお忍びでホルムに来ていたようです。
本編はその1か月後にスタートします。遺跡が発見されたことにより、ホルムは探索者たちでにぎわっています。領主の娘であるウェンドリンも精力的に地下を探索し、忘却界の宮殿にまで到達しています。
※つまり、「ネル、パリス、ラバンらと洞窟探索→夜種の襲撃(チュナ昏睡)→1か月経過(シーフォン、アルソン、テレージャ、メロダークら登場)→竜の塔攻略(キレハ登場、エンダ発見)」までのプロセスは、小説では直接描かれません。地の文と台詞でさらっと触れられるのみです。
地下から地上へ戻ってきたウェンドリンは、正式な形でホルムを訪れたテオル公子と再会します。ウェンドリンとテオルのやりとりはその後も何度かありますが、主人公のウェンドリンは実力主義者で有能なテオルに好意的です(この描写は地味に大事な気がします)。
この小説の特徴の一つは、原作の重要キャラであるテオル公子のひととなりや考えをじっくりと描写していることです。
西シーウァ王国との国境近辺にあるホルムをもとより重視していたテオルは、地下遺跡の探索と夜種退治を国防上の重要案件に位置づけています。探索者の綱紀粛正にも熱心です。また、公国の中央集権化という野望のために、古代帝国の優れた技術にも関心を寄せています。そのために変人と噂の「ヘロデン教授」に目を付け、秘密裏に彼の研究を支援しています。
最後に、重要な防衛拠点であるホルムを手中に収めるべく、従弟のアルソンとホルム伯の娘ウェンドリンの婚姻を望んでいるのも原作通りです。
さて、小説内でメインに描かれるのは「宮殿」攻略の一部始終です。
ウェンドリンはテレージャやネルとともに宮殿を探索し、宮殿の主を倒すために必要なギミックを発見します(九つの罪人の魂)。しかし、なぜか夢にとらわれ昏睡状態に陥ってしまいます。テレージャとネルはウェンドリンをつれていったん地上へ戻ることを余儀なくされます。
その後、ウェンドリンは休養をとるかたわら、自らの出生に関わる夢を見ます。その間、シーフォンたちが宮殿のギミックを半分以上解決してくれます(有能)。
再度宮殿に挑戦したウェンドリンたちは、宮殿に向かってから行方不明になっていたアルソンを意外な場所で発見します。処刑機械に仲間の騎士を殺され、彼は地上に戻れずにいたのです。
その後アルソンはパーティに加入。総勢4人で処刑機械を倒し、9人の罪人の魂を磔刑台に捧げます。儀式は見事成功。満を持してタイタス十六世と戦った4人はこれを下し、宮殿を制覇したのでした。
『Ruina』ノベライズ版~読了後の感想
この項目では、読了後の感想を書いていきます。作品全体について、主に面白いと感じたところや良いなと思ったところに触れています。気になった箇所や不満点に関しては後述します(「気になったところ」)。以下、小説&原作のネタバレを含むのでご注意ください。
作品全体についての感想
まず、一読して面白いなあと感じました。『Ruina』の世界観、もっといえば「ホルムの町」が小説なりのアレンジも加えつつ再現されています。雄大な大河のほとりにあり、交易拠点であり、国境付近の重要な土地であり……という、主人公たちの暮らす土地のありようが丁寧に描かれていました。空気感がすごく出てるなーと個人的には嬉しかったです。
剣と魔法のファンタジーとしての一面もうまく描き出されています。処刑機械や皇帝との戦闘は、プレイ時のことを思い出しつつ楽しく読みました。今後も『Ruina』らしい工夫ある戦闘が見られるといいなと思います。
また、ゲームの細かい描写や要素を拾って活かすのもうまいと感じました。「ヘロデン教授」はその最たる例ですね。まさかこんなに重要人物っぽい扱いになるとは。ピンガー商会の描写といい、もしかすると【罪人の遺児】ルートがサブベースなのかもしれません。
あと、後半に夜種王の教授が出てきたときは不意打ちすぎて笑いました。ヘロデン教授以上の「まさか」でした。アルソンが普通に馴染んでいるのも含めてそうくるのか、と。
その他、ウェンドリンの秘密に関する伏線が丁寧に張られているのも良かったです。「カムールに似ていない」とテオルが感じていたり、「ウェンドリンは日に焼けにくい」とフランが指摘したり。グリムワルド家と妖精郷の伝承についても言及がありました。知っていることとはいえワクワクしますね。
しかし、「大河のほとりで母が赤子を拾う夢」については第1巻でそこまで触れるのかとびっくりしました。ほぼ核心。
また、印象に残ったのは、西シーウァ王国(あるいは大河神殿)との戦争の予兆がそこかしこにあったことです。「パーシャ王女」の話題が何度か出たり、レンデュームの裏切りの可能性を危惧するシーンがあったり、テオルやカムールが来る戦争を念頭に置いて動いていたり。【騎士の嫡子】と言えば戦争関連のストーリーが印象的なルートです。今後の展開にはかなり期待しています。
テオル公子の原作との違い
小説で印象的だったのは、やはりテオル公子です。なんというか、原作よりも有能で重厚な描かれ方をしている気がしました(けして原作テオルが小説テオルよりも劣って見えるという話ではないです)。もっとわかりやすく言えば、小説テオルには原作テオル+10歳くらいの落ち着きが備わっている印象があります。
あくまで私見ですが、原作テオルは切れ味の良いナイフのようなキャラだと思っています。
実力とカリスマと大志を併せ持つものの、独善的で傲慢で冷酷なところもある(それが為政者として悪いことだとは思いません)。基本的にはゴーイングマイウェイな野心家なので、プレイヤーとしては「共感できる点もあるけどなーんか気にくわないなあ」と感じてしまうタイプのキャラ……という印象でした。
一方、小説テオルはフツーに人格者っぽい感じなんですよね。他者を気遣うし酷薄な物言いはしません。同じ有能ではあっても原作テオルのギラついた感じはあまりなかったです。挿絵の印象のせいもあるのでしょうか。そういうわけで、小説テオルを形容するなら、「年をとって丸くなった原作テオル」という表現が自分の中では近いかなと思いました。
- 火車騎士団と一緒に後からドヤドヤとやってきて、雑魚夜種をスポーツ感覚で倒すついでに(その気はなくとも結果的に)主人公たちの手柄を掠めとる
- 夜種によって甚大な被害を被ったホルムの領主の子である主人公に、「この町で起きた犠牲は、必要なものだったのかもしれぬぞ?」とか言っちゃう
……など、若干ムカッとくる言動あってこそテオルだと個人的には思うのですが、小説版のテオルはそういうことをしそうにないなーと感じます。
気になったところ
次に、気になった点についてざっくばらんに触れます。私個人は【騎士の嫡子】ルートに思い入れが強いです。そのため、他の方から見ると細かすぎるツッコミを入れている箇所もあると思います。あくまで個人の意見と解釈なので、ほどほどに聞き流してもらえると有り難いです。
ウェンドリンの語尾
領主の嫡子で敬語はきちんと使えるのに、ウェンドリンの素の口調が「絶対しないし!」なのがちょっと不思議でした。お側付きのフランや幼なじみのネル、パリスは普通の話し方なのに、あの現代日本的な語尾はどこから来たのか。まさか亡きカムールの奥方がああいうツンデレJK口調だったのか。
まあキャラ付けの一環だと思うので、そこまで気になったわけではないです。
メインキャラの性格
率直に言うと、出番が多いNPCほど性格が悪くなっているような気がしました。『Ruina』をプレイしたのはけっこう前なのでアレですが、テレージャさんはこんなに嫌味で傲慢じゃないし、アルソンもこんなに狭量で押しつけがましくないんじゃないかなと思います。原作では(個人的に)癒やし枠のネルも、小説では微妙に性格がきついなーと感じました。
シーフォンの治療シーン
負傷したシーフォンをテレージャが治療するシーン(pp.187-92)は、はっきり言って酷かったです。麗しいテレージャの挿絵がある場面なのに残念です。
シーフォンが重傷を負って担ぎ込まれてくる
→テレージャ、もったいぶる
→ラバン、「治してやってくれ」と脱帽して頼む
→テレージャ、シーフォンをさらに煽る
→シーフォン、息も絶え絶えに反抗する
→キレハ、なぜかシーフォンをたしなめる
→テレージャ、ようやく治療に入る
ざっと書き起こしてみても、どうしてテレージャをこんなに性格悪く書くんだろうと疑問です。ラバンやキレハがテレージャに変に気を遣っているのも釈然としませんでした。瀕死の人間を前に嫌味を言って治療を渋るより、すぐに手当を開始して景気づけに軽口を叩く方がキャラ描写としてずっとカッコいいのになと思います。
また、ラバンは昔からホルムに親しんでいる人です。ホルムを訪れて1か月も経たないだろうテレージャより、もっと他に治療のあてを思いつくのではないかと思いました。
アルソンに対するカムールの姿勢
大したことのない疑問ですが、本人に教えられるまでウェンドリンがアルソンの出自(大公の甥)を知らなかったことには違和感を覚えました(p.40)。
ウェンドリンもカムールも本編開始時点ですでにアルソンと面識があるようです。アルソンは騎士であり、テオルの先遣として来た人間でもあるので、領主のカムールには真っ先にあいさつに行ったはずだと思います。
だから、「カムールが一人娘にアルソンの出自を伝えていなかった」というのはあり得ないんじゃないかと思います(まさかアルソンの素性をカムールが確かめないはずもない)。アルソンがウェンドリンにつきまとっているのなら尚更です。
アルソンの出身家(ベルン侯爵家)は、建国当時から続く由緒正しい名家(それも大公家に次ぐレベル)であって、当然グリムワルド家よりも家格は上です。そんな相手に対して単純に貴族として失礼があっては困るじゃないですか。実際原作でのカムールは、アルソンをウェンドリンに引き合わせ、娘にアルソンの身分を伝えた上で彼を領主の館に逗留させていました。
また、テオル登場時にカムールがアルソンの言葉を遮る描写も引っかかりました(p.42)。もちろん、原作でもカムールは「ハッハッハ。調子に乗るなよ小僧」と言ったりします。しかしあくまでぼそっと言うだけであって、若造のアルソン相手にも表向きは丁重に接しています。
カムールは気骨ある歴戦の騎士でありながら、基本的には実直でマジメな人です。「こんな頼りない青二才に可愛い娘をやりたくねえなあ」と内心思っていても、けして露骨に煙たがることはしません。だからこそ、ホルム陥落時に不満ありげなアルソンをきっぱりと遮って言い聞かせ、娘のウェンドリンを託して落ち延びさせる場面が輝くのではないかと思うわけです。
逆に言うと、アルソンの従兄でもあるテオルを迎える場面で、カムールがアルソンの言葉をやすやすと遮るものかなと思いました。テオルがアルソンを遮る描写のくり返しであって、全体から見るとすごくどうでもいいポイントなのはよくわかっています。【騎士の嫡子】女主人公ルートがベースだからこそ気になるのかもしれません。
シリアスなカムール
上とも絡みますが、カムールがシリアスすぎて残念でした。端的に言うなら「調子に乗るなよ小僧」カットが悲しい。
話自体がシリアス調なので、カムールにふざけたことを言わせる余地がないことはわかります。でもせっかく【騎士の嫡子】女主人公ルートがベースなのだから、娘を溺愛するあまりにキャラが崩れてしまうカムールを見たかったです。
小説カムールは、今のところ武骨で厳めしい面が目立っていますね。他ルートでのカムールっぽい感じです。「お前は隠れときなさい」「探索とか危ないから参加するふりくらいでいい」とか娘に言いそうにもないなと思いました。寡黙で冷静なカムールもカッコイイとは思うのですが、もうちょっととっつきやすい描写も欲しいなと思わなくはないです。
アルソンの描写
「愛と正義のアルソン仮面」な原作を思うと、全体的にしっくりこないなーと思う描写が多かったです。他の探索者への見下しだったり、命を落とした仲間を悼む様子がなかったり、荷物持ちを渋ったり、ウェンドリンと他の女性を差別したり、妙に押しつけがましかったり。
すごく感覚的な違いを述べると、原作アルソンは「何言うとんねんコイツ(呆れ)」的なキャラで、小説アルソンは「何言うとんねんコイツ(イライラ)」な感じのキャラだなーと思いました。
とりわけ微妙に思ったのは、「ウェンドリンの恋人気取り」描写でしょうか。これは、アルソンとウェンドリンの縁談話がテオル到着(=小説の本編開始時点)と同時に持ち上がることによる弊害だと思います。テオルが到着するまでのウェンドリンにつきまとうアルソンは、たしかに恋人気取りの困った(というか怖い)ヤツになるんですよね。
原作では、アルソンの登場時点でカムールは縁談話を把握済みです。おそらくアルソンから打診したか、公子であるテオルがあらかじめカムールに話を通したのだと思います。そして、ウェンドリンとアルソンが初めて顔を合わせる場で婚約の可能性が話題に出ます。その後テオル公子が登場し、アルソンとウェンドリンに婚姻を結んでほしいとあらためて念押しする……という流れでした。
どうして小説では、「領主の父親に縁談話を根回しせず、恋人気どりでその娘につきまとうアルソン(思い込みの強さマシマシ)」にしたんだろうと疑問に思いました。あと個人的な印象ですが、そもそもアルソンは女性に厚かましく迫る系のキャラではないんじゃないかと思います。
テオルとアルソンの明暗
私見ですが、この小説で一番良い描写をもらったのはテオルかなーと思います。一方、その従弟であるアルソンは、原作よりくすんだ感じのキャラとして描かれている印象を受けました。そのことが残念と言えば残念です。
小説アルソンからは、呆れるほどの善人感やその善良さゆえのうっとうしさをあまり感じませんでした。そして【騎士の嫡子】をベースにする&テオルを丁寧に描くのならば、ハイライトになるテオルとの対決シーンから逆算して、アルソンの善性をもっと描いてほしかったなーという感想を抱きました。
枯草さんのおっしゃる通り「アルソンは生まれた時からアルソン」で、欠点の多い序盤でも善人であることに変わりはなかったと思うので。
まあ、そもそも原作通りの展開になるかはわからないのでアレですね。アルソンは主人公でもないし。1巻を読む限り、これからアルソンは成長していきそうだなと感じました。できれば次巻以降、「本物の善人」と揶揄されることに納得できる描写があればいいなと思います。
2巻以降の展望
夏までに1巻の続きが出るそうです。宮殿の先というと、「大廃虚から古代帝国へトリップ」あたりが扱われるのでしょうか。
個人的に気になるのは、「パーティがこのまま固定なのか」です。1巻ラストでは、ウェンドリン・テレージャ・ネル(+アルソン)という布陣でした。
嬉野さんのあとがきを読むに、テレージャはメイン解説役として今後も続投しそうです。ネルもウェンドリン、テレージャとともに3人娘っぽい雰囲気になっているので、抜けることはなさそうな気がします。となると、パーティは上の3人で固定なのかなと思います。
やや疑問なのは、「アルソンは今後もパーティインするのか」です。テオルの縁者という意味で重要なので、なんだかんだついてきそうな気はします。その場合は、長期間ホルムに戻れなくなったときに上手な料理スキルを見せてほしいです。
またそれとは別に、フランが一緒に来ないかなーと思ったりします。1巻では気の毒なことにお目付役として失敗が多かったので、今後はウェンドリンに同行したがるのではないかと思いました。
では、他のキャラの出番はどうでしょうか。パリスはチュナの看病という事情&ピンガーとの接触というフラグを考えるに、探索には参加しないのかもしれません。【罪人の遺児】のエピソードを思うと先行きが不穏ではあります。ピンガーに妙なことをそそのかされる前に、誰かしらに心労をケアしてもらえるといいのですが。この1巻でも「呪い装備をうっかり身につける&序盤でフェードアウト」と微妙に不憫な扱いだったので。
メロダークは立場上やすやすと距離が縮まりはしない気がします。【騎士の嫡子】ベースならいくつか印象的なポイントもあるはずなので楽しみです。
個人的に気になるのは、やはりシーフォンとエンダでしょうか(初プレイ時のパーティメンバーだったので愛着のある2人です)。シーフォンは重傷を負うしエンダはそもそも影も形もないしで、今後2人がちゃんと登場するのか気になります。
*****他愛のないちょっとした雑感です。小説版アルソンは、領主の館への道すがら赤い花を摘んではウェンドリンにプレゼントしています。その花はもともと館の庭でウェンドリンの母が育てていたもので、種が風で運ばれたのかどうか外でも自生するようになったそうです。
赤いバラじゃないのかと最初は思ったのですが、後で読み返してなんだか微笑ましいなーと思いました。個人的には野の花を摘むアルソンさんは嫌いじゃないです。ウェンドリンは「もともとわたしのうちの花なのに」と不服そうですが、お母さんの育てていた花でもあるし、チョイスとしてはそう悪くない気もします(p.243)。
ストーリー以外では、カバーやページの質感がいい感じでした。ゲームのノベライズ版ってあまり読んだことがないのですが、章区切りのデザインもシックでいいなと思います。
また、キャラデザについて、男性陣は原作とかなり印象が違います。カムールとテオルは原作+5~10歳くらいの容姿に見えるし、アルソンはどこかの家の次男坊として火車騎士団に参加していそうな見た目です(適当に言ってます)。小説版ということで今後慣れていければいいなと思います。
女性陣はウェンドリンも含めてとても可愛いですね。ネルの衣装はアトリエシリーズの主人公っぽいひらひら感です。メイド姿のフランの挿絵とか見られたら眼福だろうなーとすごく期待しています。
個人的には、枯草さんのあとがきを読めることが何より嬉しかったです。なんと4Pもあります。
あとがきを読んであらためて、どうして自分は『Ruina』を好きなのかということをしみじみと考えてしまいました。ファンタジーってやっぱりいいですね。小説を読んで『Ruina』をもう一度プレイしたくなりました。あのほの暗くて懐かしい、プレイヤーを包み込むような『Ruina』の幻想世界にまた浸りたいです。
色々と書きましたが、安定感のあるノベライズだったんじゃないかと思います。次巻も楽しみです。
※フリゲ原作、『Ruina 廃都の物語』の感想記事も書いています。
関連記事:『Ruina 廃都の物語』 長編ファンタジーRPG 感想&考察 ※ネタバレ注意
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