『きらきら星の道しるべ』 幽霊とひと夏の旅をするRPG 感想 ※ネタバレ注意
おばけの少年とひと夏の旅をする短編RPG、『きらきら星の道しるべ』の感想記事です。制作者はPOPO様。作品の公式サイトはこちらです。 → kirakirabosi
きらきら星の道しるべ
![]()
『きらきら星の道しるべ』のエンディングは1つ。ストーリーは一本道です。クリアまでの所要時間はver1.10(初見プレイ)では4時間弱、ver4.1(最新バージョン)では2時間半でした。
『きらきら星の道しるべ』は、少女と幽霊の少年が「未練」を探して冒険に出かけるRPG作品です。シュールで可愛らしい世界が魅力的なゲームでした。
個人的に惹かれたポイントは、ゲーム全体を通して「ひと夏の楽しい旅」の雰囲気がうまく表現されているところです。知らない場所を旅するワクワク感。良しの友だちとにぎやかに遊ぶひととき。そして必ずやってくる旅の終わりと別れの淋しさ。そういったものが優しい世界の中にギュッと包まれているような作品だと思います。
「夏のひと時」という舞台設定は、ミルクティとラムネの関係にいっそうの切なさを加えるものでもありました。2人の出会いから旅が始まるので、ボーイ・ミーツ・ガールの趣きも強いストーリーです。ボーイ・ミーツ・ガール系の作品が好きなので、『きらきら星の道しるべ』のストーリーはかなりツボに入りました。
以下は、ネタバレを含む詳細な感想です。未見の方はご注意ください。初期(リメイク前)バージョンと最新バージョンをどちらもプレイしているので、両者の比較も含みます。
『きらきら星の道しるべ』のあらすじ
最初に、『きらきら星の道しるべ』のあらすじを書きます。
きらきら星の道しるべ
主人公の「ミルクティ」は、リンゴ山のふもとに引っ越してきたばかりの女の子です。
さっそく自分の部屋に入ってみたミルクティは、なんと未練を残したおばけと出会ってしまいます。おばけの名前は「ラムネ」。ラムネはミルクティと同年代の男の子であり、生前の記憶を失っていました。
成仏できないラムネは、「記憶探しの旅に同行してほしい」とミルクティに頼みます。ずっとひとりぼっちだったラムネの身の上に同情し、頼みを引き受けるミルクティ。かくして、ミルクティとラムネたちのひと夏の冒険が始まったのでした。
リンゴシティ、サンシティ、そしてシーシティ。各所でおばけたちと遭遇しつつ、4人は未練を探して旅を続けます。そんな中、ミルクティは不思議な夢を見るようになりました。
きらきら星の道しるべ
楽しい旅が終わりに近づいたとき、ミルクティは意外な真実と向き合うことになります。
初期バージョンと最新バージョンの比較
『きらきら星の道しるべ』は、リメイクによって新要素が色々と追加された作品です。
これは個人的な話ですが、初期バージョンをダウンロードしてから実際にプレイするまでにタイムラグがありました。そしてその間に、リメイクバージョンが発表されたんですよね。だから、初期バージョン(ver1.10)でクリアした後に、リメイク後のバージョン(ver4.1)もあらためてプレイさせていただきました。
せっかく2つのバージョンをプレイさせてもらったので、両者を比較しつつ、「(ver4.1では)ここが変更されてる」と気づいた点について触れたいと思います(網羅的ではない&勘違いしている箇所があるかもしれません)。
①戦闘画面
きらきら星の道しるべ
戦闘様式の変化がリメイクでの一番大きな変更点だと思います。初期バージョンでは、ミルクティ視点のフロントビュー(画面上方に配置された敵と真正面から向き合う)でした。一方現行バージョンでは、サイドビュー(対峙したPCと敵を横から眺める)になっています。
また、戦闘の見せ方の変化に加えて、ミルクティたちや敵が戦闘中に動くようになりました(アニメーション要素)。技に合わせた動作やエフェクトも細かく設定されていて見ごたえがありました。
②技や攻撃など
まず、ソーダの技の攻撃判定が「全体」から「単体」に変更されていました。初期バージョンでのソーダの攻撃は使い勝手が良すぎた感があるので、納得の調整です。
また、「ミルクティのコマンド内容」も大きく変更されていました。初期のバージョンでは、他3人と技の構成がけっこう違っていたんですよね。最新バージョンではそのあたりが統一され、他3人と共通の構成になった印象です。
③キャラクターボイス
リメイク版の『きらきら星の道しるべ』では、メインキャラ4名とサブイベキャラ2名、そして町長さんにCV(キャラクターボイス)がつきました。
スゴイと思ったのは、メインキャラ4名のボイスにまったく違和感がないことでした。ミルクティもラムネもソーダもチョコも、ボイスがキャラにぴったりだなーと。演技もナチュラルなので台詞がすっと頭に入りました。
④サブイベント
リメイクバージョンでは、「ビスケット」と「アメ」(異世界の住人)が絡むサブイベントが追加されました。後で確認したところ、別作品のキャラクターだそうです。
⑤ソーダのストーリー追加
最新バージョンでは、ソーダの掘り下げが増えています。ソーダのミルクティへの好意は初期バージョンでは終盤になんとなく感じられる程度のものでした。しかし最新バージョンでは、「ソーダってミルクティのこと好きなのかな」と自然に感じとれる演出や描写が追加されていました。
最初はチョコとソーダをだいたい同列に捉えていましたが、最新バージョンをプレイしてソーダへの印象がかなり変わりました。
⑥顔はめパネル
リメイク版では、観光地によくある「顔をはめるパネル」が各街に用意されていました。カメラマンも登場し、ノリノリで写真を撮ってくれます。欲を言えば、パネルにまつわる一枚絵が見たかったです。
⑦サンシティのアイドル
サンシティのカリスマアイドル、「クラッシュポテポテ」爆誕。チケットを手に入れてコンサート会場に入る仕様に笑いました。クラポテの楽曲はすごく耳に残りますね。ヌカヌカ★スーン! しばらく会場をうろうろしてしまいました。
ところで、『ヌカヌカ★スーン』と『君が好き』(公式PVのBGM)は、どちらもぽて子さんという方が作曲されたそうです。あのアップテンポでハイテンションな感じ、なんとも独特で癖になります。ぽて子さんのサイトはこちらです。 → ぽて子の時間
⑧砂漠の温泉
リメイク版では、「砂漠の温泉」が新名所として登場します。イベントも追加されました。
⑨能力アップアイテム
最新バージョンでは、各ステータスが上昇するアイテムをゲットできます。「むきむきのこ」とか「たふたふクリーム」とか、ネーミングが相変わらず可愛いです。
⑩サンサン牧場での回想
リメイク版のサンサン牧場での回想について、主にソーダの反応が変更されていました。初期バージョンはギャグ寄りのリアクションでしたが、最新バージョンではシリアスな反応に変わっていました。
⑪おまけ部屋
リメイクバージョンでは、エンディング後に「おまけ部屋」を閲覧可能です。充実した内容で、プレイヤーとしては嬉しい限りでした。
その他、「アイテムを調べたときのメッセージ表示速度」や「砂漠のモブお姉さんの服」にも変化があったように思います。総括としては、どちらのバージョンでも楽しくプレイできました。
ハッピーなグラフィックと世界観
もはや触れるまでもないことですが、『きらきら星の道しるべ』はグラフィック面が非常に充実した作品です。フリゲの中でもこのこだわりっぷりは群を抜いているように感じました。マップを隅々まで見て回るのがどれだけ楽しかったことか。グラフィックによって独特の世界観が創り出されていたと思います。
きらきら星の道しるべ
特に、シーシティのグラフィック全般はスゴイの一言でした。最初に街並みを目にした瞬間からおおーっと静かに感動していましたが、浜辺に繰り出すともっとテンションが上がりました。
どこを見渡しても可愛い。可愛すぎる。なんてハッピーな眺めなんだろうと思いつつ、ひとつひとつのオブジェクトをつぶさに見てしまいました(キャラの反応ももちろん面白かったです)。
コスチューム変更
最後の街であるシーシティに到着した後、速攻でコスチュームを揃えて海辺のバカンス気分を満喫しました。
実はこのゲームには着せ替え要素があり、キャラのコスチュームを変えることができます(セーブアイコンにも反映されます)。これがまた非常に楽しい機能でした。
キャラの衣装を任意で変更できるコンシューマー作品は、昨今よく見かけます。しかしフリゲではまだ珍しい機能だと思うので、この作品の着せ替え要素もかなり新鮮に感じました。
着せ替え要素だけでも嬉しいのに、コスチュームの種類が豊富でどれも可愛らしいのがまた素晴らしいです。新しい街を訪れたりシーンが移り変わったりするたびに、いそいそと衣装を変更してしまう自分がいました。
優しい世界とただ一つの悲しみ
後述しますが、『きらきら星の道しるべ』にはコミカルでシュールな要素が散りばめられています。しかし根本的には、物事や人のあり方がとても優しいことが印象に残ります。
たとえば病院はタダで受診できるし、町長さんたちはフレンドリーだし、車に当たっても怪我一つしません。主人公ミルクティとその仲間たちは、他者のために行動できる心優しい人間であり、彼女らが道中出会う人々も優しく親切です。立ちふさがるお化けにしても話せばわかるレベルの敵で、ミルクティたちを害することはありません。
言ってしまえば、『きらきら星の道しるべ』には明確な悪が存在しないのです。理不尽な悪に苦しめられる人、悲しむ人もまた存在しません。
もちろん、ただ善き世界・優しい世界であるだけならば、「温い」とか「リアリティーに欠ける」といった感想も出てくると思います。
しかし、優しさ溢れる『きらきら星の道しるべ』の世界には、たった一つだけ、「どうあっても覆せない悲しみ」が存在します。優しく親切な人々も、その悲しい現実を解決することだけはできないのです。
結末を知ると、「その唯一の悲しみを際立たせるために優しい世界が展開されてきたのではないか」と思ってしまいました。
シュールでハッピーな世界に親しんでプレイしてきたからこそ、シリアスなただ一つの事実がしみじみと悲しいんですよね。これだけは本当にどうにもならないんだな、と痛感してしまうというか。
ちょっと脱線しますが、個人的に好きな映画の一つに、『50回目のファースト・キス』という作品があります。常夏の楽園ハワイを舞台に、特殊な事情を抱えた女性と彼女に恋する男性の奮闘を描いた、コメディータッチのハートフルなラブロマンス映画です。
その映画でもまさに、「優しさに溢れた世界と覆せない1つの悲しみ」という構図が展開されます。この作品をプレイしながら、つい懐かしく思い返してしまいました。
世界の優しさによって悲しみを描き出す作品ってとても好きです。そして『きらきら星の道しるべ』において、世界の優しさを最も効果的に演出していたのは、そのグラフィックではなかったかと思います。キュートでハッピーなヴィジュアルイメージは、プレイヤーに「この世界に理不尽な悪はない」と直感させてくれるからです。
以上の理由から、この作品のグラフィックは、まさに全体の世界観を創り出すだけのパワーを秘めていたと感じました。
ストーリー&キャラクター雑感
この項目では、ストーリー内容やキャラクターについて感想を書きます。ネタバレを含むのでご注意ください。
ほのぼのシュールなゲーム世界
物語の舞台は現代風のシティです。プレイし始めてまず、作品世界のシュールさに惹かれました。
りんごやサクランボのお化けがうろついていたり、倒すとそれらを食べることができたり、ポリバケツを探るとバナナやゼリーが手に入ったり(もちろん食べられる)、ショップでは店員がロックンロールに踊り狂っていたり、車にぶつかれば車の方が爆発したり……いくつか書き出してみても、なかなかにとち狂っています(もちろん褒め言葉)。ラブデリっぽいというか。
しかし上でも述べたように、シュールである一方、優しくて楽しい世界でもあります。お医者さんはタダで傷を治してくれるし、ムキムキマッチョ(あるいはナイスバディ)な町長さんは市民に対してフレンドリーで親切です。
明確な悪が存在せず、話し合えば敵とも分かり合えるストーリーも、作品の雰囲気とマッチしていると感じました。
主人公と仲間たち
味方パーティは計4人。主人公のミルクティ、おばけの少年ラムネ、茶色くてやわらかいチョコ、おばけ研究者のソーダです。
名前がまずコミカルだなと思いました。ドラゴンボールやジョジョ5部的なノリのネーミングですね。
4人の武器が子供のおもちゃモチーフなのは、子供たち同士の楽しい旅感を演出するためでしょうか。可愛いウェポンだなーとずっと思っていましたが、真相を知るとちょっと切なくもありました。
きらきら星の道しるべ
ところで、最初は犬のクッキーがパーティインするのかと思っていました。そうしたらいきなりチョコが登場したので、目が点になりました。
シルエットが完全にアウト。犬のクッキーが「こいつを連れてけよ」的な感じでいきなりチョコを紹介するのも、アウト感に拍車をかけます。そもそもチョコって名前と色自体がアウト・アンド・アウト。
とはいえ、すぐに馴染んで細かいことは気にならなくなりました。ときどき思い出したように「このキャラって結局なんなんだろう……」と悩みはしましたが。
あと、チョコは歩行ドット絵が非常に可愛いと思います。常にぴょんぴょんしているせいでしょうか。コスチュームはどれも面白いですが、「かじられた」と「コーン」が特に好きです。前者はへの字口が可愛いし、後者は揺れるときのくたんっという傾きが超可愛い。わりと好きなキャラだったので、チョコについてはもっと掘り下げがほしかったところです。
旅とバカンス
『きらきら星の道しるべ』をプレイしていて、「旅してる」感の強いゲームってやっぱり好きだなあとあらためて思いました。そして、「バカンスしてる」感のあるゲームも大好きだということに気づきました。
少し脱線します。「夏のゲームといえば?」と言われたとき、私の場合はすぐに『スーパーマリオサンシャイン』が思い浮かびます。ゲームの舞台は夏、実際にプレイした時期も夏だったせいか、「夏になるとやりたくなるゲーム」の筆頭です。
『スーパーマリオサンシャイン』は、舞台となるドルピック島の避暑地感が非常にイイんですよね。
島のあちこちにワープして冒険するのですが、どのスポットも趣向は違えど南国らしい風光明媚な場所ばかり。けっこうギリギリの状態で敵と戦っていても、常に知らない土地でバカンスを楽しんでいる感覚がある……そんな面白いゲームです。
話を戻します。『きらきら星の道しるべ』は、旅感+バカンス感の強い作品だと思います。ミルクティの自宅近くのリンゴシティはさておき、サンシティやシーシティを観光しているときは本当にワクワクしました。プロトタイプっぽいリンゴシティからガラッと風景が変わるのがすごくいいなーと。もう一つシティステージが欲しかったくらいです。
特に楽しかったのは、サンシティのバザー周辺でした。基本的に街のモブキャラ全員に話しかけて探索するタイプなので、「このお姉さんの服可愛いなー」とか「この商人さんこんなん売ってるわー」とか思いながら隅々まで見回ってしまいました。サンシティの住人はたいてい片言でぷんすこしているので、そこに土地柄を感じて笑ってしまったり。細かいところまで作り込まれているので、探索の楽しみも大きかったです。
また、一番テンションが上がったのは、シーシティに行くときのドライブシーンでした。あの一連のシーンを見られただけでも、このゲームをプレイした甲斐があったなと感じました。
旅をエンジョイしてる感、こんなに遠いところまでやってきたワクワク感とともに、「もう最後の街に着くのかな」という寂しい予感をプレイヤーに抱かせる名演出だったと思います。
あと、シーシティのハニーウサギショップで買い物ができなかったのは真剣に残念でした。「マジか~」と完全に観光客気分で思いました。ハニウサのグッズが欲しくてたまらなかったです。着ぐるみとか超買いたかったですね。
どんでん返しの結末
シュールでコミカルなストーリーが展開される一方、要所要所でしっかりと伏線が張られていました。特にミルクティの夢は、どう見てもラムネたちとの過去の記憶に見えたので、なんとなく不穏なものは感じていました。
一気にシリアスムードになった深海ステージ後の回想で、遺骨とペンダントの関わりに気づいて戦慄したのはいい思い出です。
最初に見たのはバッドエンドでした。予想をあまりせずにその場その場のストーリーを楽しんでいたので、シリアスで切ないオチによけいにショックを受けました。チョコとソーダの反応に苦しくなり、ラムネの告白に胸が痛くなり、最後に「おばけなのは~」が来て色々と反則すぎるだろうと思いました。エンドロールまでガッツリ泣かせにくるし。
その後にトゥルーエンドを見て、切なくも幸福感のあるラストに本当に感慨深くなりました。エンドロールも最高のサプライズでした。
ただひたすらに楽しかった旅が衝撃的な真実によってまったく異なる色合いを帯びる点が、シナリオ構成的に見事だと思います。伏線が丁寧に張られていること、優しい世界観が一貫していることにより、プレイヤーがラストのどんでん返しを素直に受け入れられる点も巧いです。
先述したように、初期バージョンをクリアした後、最新バージョンでもエンディングまでプレイしました。2周目ではこれってそういうことか……と思えるポイントが多かったです。ミルクティのパパとママやラムネの言動にグッときたりもするので、2周目プレイはかなりオススメです。
2つのエンディング(トゥルー&バッド)
『きらきら星の道しるべ』には、2つのエンディングが存在します。分岐するのは物語の終盤です。
深海エリアのラスボスと戦ったあと、遺骨と一緒にラムネが一人残されます。ラムネが「ペンダントを持っていくか持っていかないか」によって、エンディングは2つに分かれます。
バッドエンド 「ずっと一緒」
ペンダントを持って帰らず、深海に残してくるとこのエンドになります。ラストの視点人物はミルクティです。
このエンディングを初めて見たときは、かなりのショックを受けました。おそらくペンダントが重要アイテム(=エンド分岐の条件)で、地上に持って帰らなければバッドエンドになるんだろうなとは思っていました。しかしまさか、あそこまでシリアスな展開になるとは予想していなかったんですよね。
特にショッキングだったのは、それまでガキ大将的な明るさとやんちゃさでパーティを引っ張っていたラムネが、進んで心中しようとするラストでした。ストーリー自体のどんでん返しと併せ、2人の会話を食い入るように見守ってしまったのを覚えています。
このエンドの場合、「ミルクティとずっと一緒にいるために、ラムネはわざとペンダントを置いてきた」という扱いになります。闇が深いというか、ラムネの愛が深いなと思います。
ミルクティをひとりぼっちにしてしまったことを、ラムネがどれだけ後悔し引きずってきたのか。海底にひとり置き去りにされたことで、ミルクティがどれだけ悲しみ苦しんだのか。2人の心の痛みが痛烈に伝わってくるバッドエンドでした。エンドロールでのセピア色の過去回想にも胸が痛くなりました。
生前結ばれなかったミルクティとラムネにとって、この結末はある意味ハッピーエンドと言えるのかもしれません。こういったメリバ的な結末はわりと好きです。
トゥルーエンド 「きらきら星の道しるべ(旧:きらきら星)」
深海からペンダントを持って帰るとトゥルーエンドになります。ラストの視点人物はラムネです。
ラムネはミルクティにペンダントを返し、ミルクティは未練が無くなって空に昇ります。夜空に輝くきらきら星になった愛しい人のために、ラムネはソーダやチョコとともに歌を捧げるのでした。
バッドエンドを先に見たからこそ、このトゥルーエンドの切なさと幸福感は格別のものがありました。バッドエンドとは異なり、スッキリとした明るい余韻の残る結末です。
このエンドでラムネが大人の姿に変化するのは、ミルクティの未練が消えたからなのでしょう。ラムネの苦しさを思いやれるミルクティは本当に優しいし、行くなとすがるラムネの愛もやはり深いなと思います。
避けられない別れを迎えたこのトゥルーエンドですが、けして不幸な終わり方ではなかったという印象です。プレイヤーである私が、「ミルクティはもう一人ではない」と実感できたからでしょうか。
ようやく薄暗い海底から帰ることのできた彼女は、これからもラムネやみんなを見守ってくれるのだろうと思います。そういう意味で、『きらきら星の道しるべ』というタイトルの回収の仕方には泣けるものがありました。
一応、バッドエンドのミルクティも、もうひとりぼっちではないんですよね。そしてどちらのエンドでも、ミルクティのひとりぼっち状態を解消するのはラムネです。うまい構成だと思います。
ところで、エンドロールの演出はお見事の一言でした。特に各街でさり気なく噂されていた謎の三人組バンド・STARSの正体は素晴らしいサプライズでした。予想もしていなかったので、伏線SUGEEEEEとテンションが上がりました。
旅の終わりにふさわしい盛り上がりと、夏が過ぎ去っていく寂しさ……表裏一体の感覚をひしひしと感じられる締めだったと思います。
*****
おまけ部屋を見ると、ソーダは切ない役回りだったんだなーと実感しました。ラムネといいソーダといい、愛情深くて優しいですね。
ミルクティが事故に遭わず、3人がシーシティに遊びに来て、ラムネとミルクティが平和に結ばれる(ソーダはそれを見守る)……そういう世界線もあり得たのかなとふと思ってしまいました。
「夏×友情×ボーイ・ミーツ・ガール」と、ことごとくツボを突かれる作品でした。楽しいし切ないしでプレイする人を選ばないゲームではないかと思います。感動しました。
※グラフィックの独自性に注目してしまう作品について、いくつか感想記事を書いています。
・『美術空間』 感想 攻略(ある芸術家の創り出した世界が舞台。圧倒的な美術空間が展開されるダークRPG)
・『SPIEGEL EI』 感想 考察(複雑な人の心象世界を様々な意匠によって表現する、探索型サイコADV)
・『どとこい』 感想 攻略(美少女=■。好感度が上がると解像度も上がるキュートでコミカルなギャルゲー)
- 関連記事
-
- 「人間界の王」とは何か? 『WIZMAZE』(ウィズメイズ)の伏線&元ネタ考察 ※ネタバレ注意 その4 (2018/11/06)
- 『WIZMAZE』 キャラクター感想(ナジーシャ・アルマヴィタ・痩身の男) ※ネタバレ注意 その3 (2018/10/21)
- 『WIZMAZE』(ウィズメイズ) ストーリー攻略&エンディング感想(Aルート・Bルート・Cルート) ※ネタバレ注意 その2 (2018/10/06)
- 『WIZMAZE』(ウィズメイズ) マルチシナリオ型ファンタジーRPG レビュー&世界設定を解説 その1 (2018/09/24)
- 『きらきら星の道しるべ』 幽霊とひと夏の旅をするRPG 感想 ※ネタバレ注意 (2018/08/14)
- 『美術空間』 ストーリー&キャラクター感想 裏エンド攻略 その2 ※ネタバレ注意 (2018/04/08)
- 『美術空間』 芸術に満ちた世界を往くサイドビューRPG レビュー その1 ※ネタバレ注意 (2018/04/07)
- 『SAVE』 復讐者がクトゥルフ神話ワールドを往くRPG 感想&攻略&考察 ※ネタバレ注意 (2017/04/03)
- 『ダージュの調律』 英雄になれない少年の苦悩を描くポエトリーRPG 感想&レビュー ※ネタバレ注意 (2016/06/29)