『オトツカイ』 「音」を操り魔王を倒す謎解きパズルRPG 感想&攻略 ※ネタバレ注意
「音」を操る謎解きパズルRPG、『オトツカイ』の感想記事です。軽い攻略情報を含みます。制作サークルはカタテマ様。作品のダウンロードページ(Vector)はこちらです。 → オトツカイ
『オトツカイ』の主人公は、タイトル通りの“オトツカイ(音使い)”。闇に包まれた魔王の城の中、音を操り魔王の打倒を目指します。
『オトツカイ』、システムはシンプルながらよく練られた面白いパズルゲームだと思います。試行錯誤を繰り返し、ギミックを突破したときの快感が半端ないです。約3時間でクリアしました。
以下は、『オトツカイ』のエンディングのネタバレを含む簡単な感想です。エンディング感想やグッドエンドの軽い攻略情報などが含まれます。未見の方はご注意ください。
『オトツカイ』のあらすじ
最初に、『オトツカイ』のあらすじを書きます。
婚約者を魔王にさらわれた主人公は、単身魔王の城へ乗り込み、返り討ちに遭って命を落とします。悲嘆に暮れた婚約者は、願いを一度だけ叶えてくれる青い石に願いました。「彼の命をもう一度」……と。
真っ暗な魔王の城に差し込む一条の光が、彼女の願いの助けになりました。かくして主人公は暗闇の中で目覚め、「音」を頼りに再び魔王に挑みます。
音を操る「音使い」とは?(概要)
『オトツカイ』の主人公は、その名通りの「音使い」です。具体的には、音の発生源に接近することでその音をストックし、任意のタイミングで音に応じた物理的効果を発生させる能力を持っています。
たとえば以下のように、「明滅するランタン」に触れれば「光」の音をストックできます(※画面左下にストックした音が表示される)。
オトツカイ
続いて、「光」の音をストックした状態で暗くてよく見えない場所へと移動。Enterキーを押して「光」を使用すると、周囲を照らし出すことができます。
オトツカイ
「光」の音をストックすれば、周囲を明るく照らすことができる。これと同じ要領で、物体を殴打した音をストックして攻撃に使うことも可能です。
オトツカイ
たとえば主人公が敵に殴られると、その衝撃音は「殴」の音としてストックされます。そのストックした「殴」の音を使用することで、敵にダメージを与えることができるのです(敵に殴られると体力が減ってしまうことには注意)。
主人公が使用できる音は、上で挙げた「光」や「殴」のほか、「開」「繕」「風」など様々に存在します。
また、主人公の初期体力は5、歩行速度はゆっくり、ストックスロットは1つです。ダンジョン内のステータスアップアイテム(体力UP、スピードUP、ストック数UPなど)を手に入れることで、行動範囲やアクションの幅が広がります。
『オトツカイ』の魅力
『オトツカイ』はパズル要素の強いゲームだと言えます。魔王城(ダンジョン)のギミックに主人公は「音」を使って対抗します。その攻略の要になるものこそ、「音のストック」&「音の使用」という2つのアクションです。
音をストックし、使用する。そう表現すれば、『オトツカイ』はシンプルかつわかりやすいつくりのゲームです。しかし実のところ、試行と思考が必要とされる奥深いゲームでもあります。
まず、「どんな音を使用できるのか」という段階で色々と考えてしまいました。このゲームの鍵を握るのは何よりも「音」です。「これは使えそうだ」とすぐに分かる音もあれば、「これが使用できるってマジで?」と言いたくなる音もあります。
実は、『オトツカイ』にはBGMが存在しないんですよね。そして、聞こえてくるすべての音はストック可能です。いったんそのことに気づくと、様々な音を見つけられるようになりました。単なるSE演出と思いこんで聞き流すのではなく、音を耳にしたら発生源に近づいてみることが大事だと思います。
魔王と戦う前に、まずは能力強化アイテムを手に入れる必要があります。また、それらを入手するにも複数のギミックを解く必要があります。どの音をストックし使用するか。どういう手順で能力をアップし進めるか。最適解と言える手順はあるものの、ルートはいくつか存在します。
個人的には、ストックスロットが増えてからが本番だと思いました。一度に使える音の種類が増えるほか、ストックの順番(すなわち使用する順番)を工夫できるという点で戦略性が上がるからです。攻撃音を複数使う場合は、主人公の体力管理も重要なファクターです。
基本的には、「ゲームオーバー前提のゲーム」という印象があります(まももやムラサキと同じく)。HPを削りながらダンジョンを探索してヒントを探し、負けながら敵の攻略方法を練る。その試行錯誤が楽しいゲームです。
プレイしていて面白いと感じたのは、ラスボスの「音」を利用して中ボスを倒せることでした。普通のRPGだと、ラスボス戦に突入するとまず引き返せません。しかしこのゲームは、魔王に攻撃を受けてからでもさくっと退却することができます。
柔軟なプレイが可能という点で、『オトツカイ』は自由度が高いゲームだと思います。だからこそ試行があまり苦にならず、ギミックの一つ一つを解いたときの快感にはたまらないものがあるのでしょう。じっくり考えると楽しくなるゲームなので、まとまった時間が取れるときにプレイした方がいいかもしれません。
グッドエンドへの道行きと感動
『オトツカイ』のストーリーは実にシンプルです。キャラクターもほぼ主人公と婚約者の2人のみ。しかし、物語の語り方と魅せ方が相変わらず上手く、さすがはカタテマ作品と嘆息しました。
バッドエンドの巧妙さ
ストーリーに関して特に巧いと感じたのは、バッドエンドの中で巧妙にグッドエンドへの分岐を示唆していることです。
初見の人は、おそらくバッドエンドをまず見ることになると思います。そこでは、主人公の状態のネタばらしと2人の悲恋が描かれます。その後、婚約者から「プレイヤーへの願い」という形で、グッドエンドの条件が提示されるのです。要点を的確に押さえた、印象的なエンディングだと思います。
蘇った主人公の真相については、不死者のエリアに入れることや「繕」を利用できること、「一条の光(→光量不足)」といった表現で伏線が張られていたので、なるほどなーと思いました。真相を知ると、魔王の城が真っ暗闇であることにも納得しかなかったです。「音」に存在感を持たせるための暗闇だと思っていましたが、主人公の真相をカモフラージュする機能も果たしていたんだな、と。
ストーリーの演出は抑えめですが、それがかえって良かったです。2人の関係に心を打たれ、「彼女の願いになんとしても応えよう」と強く思いました。
グッドエンド攻略と感動のラスト
グッドエンドを攻略するにあたっては様々に試行しました。たとえば最初は何か一つ音を残せばいいのかと思い、「炎」を残してみるも不発に終わりました。
ちなみに2回目以降は、バッドエンド時の婚約者のモノローグが消え、主人公の腐崩死描写が簡略化されます。周回プレイヤーの手間を省いてくれる、ありがたい気遣いです。
『ムラサキ』でもそうですが、「ストレスなくすぐに再プレイできる」ことに対するカタテマ様のこだわりは素晴らしいなと思います。ゲームの内容ももちろん大事です。しかし、細かい操作周りの配慮一つでゲームへの印象はけっこう変わるので、そこが行き届いているゲームは凄いなあといつも思います。
脱線しました。ともかく、音は音でも特別な音を残さなければならないことがわかったので、ここは「蘇」一択でした。何度か試行して青い石の欠片が砕け、期待通りに「蘇」のエフェクトがきらめいたときはガッツポーズしました。
苦心してようやく到達したグッドエンドには心打たれました。見事な表現と演出だと思います。ずっと暗闇の中を這いずり回ってきたプレイヤーは、このエンディングで初めて、光溢れる外の世界を目にできます。作中でBGMが流れるのもこのシーンだけです。
心洗われるような「音」に包まれながら、まばゆい太陽の下、寄り添って歩いてゆく主人公と婚約者の背中を見送る。感無量とはこのことだな、と思わず独り言ちる自分がいました。
ストーリーラインはシンプルなのに、演出によってこれほど感動的な結末にできるんだ……と、あらためてカタテマ作品の物語る力の高さに感じ入った次第です。
*****『オトツカイ』、知的快感と感動を得られるゲームでした。とても面白かったです。『オトツカイ』は今から10年以上前に発表された作品ですが、面白いものはけして色褪せないんだなとつくづく感じます。
そして、現在でもカタテマ様の新しい作品をプレイできるのは、本当に嬉しいことです。最新作の『ムラサキ劔』についても、機会があれば感想記事を上げたいなと考えています。
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