『夢堕ちのインキュバス』 「夢魔」に恋する恋愛ゲーム 感想&レビュー ※ネタバレ注意
「夢魔」に恋する乙女ゲーム、『夢堕ちのインキュバス』の感想記事です。ネタバレを含みます。制作者は船様。作品のダウンロードページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『夢堕ちのインキュバス』
夢堕ちのインキュバス
『夢堕ちのインキュバス』は、悪夢に悩む魔法使いの少女が「夢魔(インキュバス)」を召喚するお話です。エンディングは計6つ(※ただし裏エンドあり)。全エンド回収までの所要時間は約2~3時間でした。
ちなみに「インキュバス」は男の夢魔です(cf:女の夢魔は「サキュバス」)。女性の夢に現れ、アレなことをする悪魔だと言い伝えられています。
可愛いイラストとファンタジーな設定に惹かれてプレイさせていただきました。イラスト、シナリオ、キャラクター。各要素の完成度が高く、魅力的な作品です。ストーリーに満ち満ちた謎が気になり、最後のエンドを見終えるまで夢中でプレイしてしまいました。
後で知りましたが、『夢堕ちのインキュバス』は、ふりーむ!ゲームコンテストの金賞受賞作品(女性向けゲーム部門)だそうです。納得の一言です。
以下、『夢堕ちのインキュバス』のストーリーやキャラクターの感想を書いていきます。各ルートやエンディングの具体的な内容についてはなるべく言及を避けました。とはいえ軽いネタバレは含まれているので、未見の方はご注意ください。
『夢堕ちのインキュバス』のあらすじ
最初に、『夢堕ちのインキュバス』のあらすじを書きます。
夢堕ちのインキュバス
魔法使いの少女・「パール」は、喋るぬいぐるみのオニキスと2人きりで暮らしています。近頃のパールには悩みがありました。それは、眠りにつくたびに恐ろしい悪夢を見てしまうこと。
オニキスは悩むパールに、夢の専門家である夢魔(インキュバス)を召喚してみようと提案します。促されるままに儀式を行ったパールの前に、角と翼を持つ「夢魔」が数人現れ……。
パールの悪夢の原因とは? 「夢魔」たちが口にする言葉の意味とは? そしてオニキスの意図とは? パールの選択によって、エンディングはまず6つに分岐します。
巧妙なシナリオと演出
『夢堕ちのインキュバス』は、第一にシナリオが面白い作品でした。舞台設定の意外な複雑さと、それを徐々にプレイヤーに悟らせてゆく演出の巧妙さ。そして主人公の悲しみと立ち直りを丁寧に描くストーリー。最初は世界観を理解するために距離を置いて見ていましたが、謎めいたキャラクターたちの言動にどんどんと引き込まれていく自分がいました。
「パールは魔法使いで攻略対象は夢魔」という初期の認識が、「夢魔たちの言葉に含みがあるしパールにも何か秘密がありそう」→「この世界ってもしかして……」と、どんどん変化していくんですよね。順を追って目を開かされる気持ちよさは、実際にプレイするとよくわかると思います。
「良い物語は本質的にミステリである」という言葉を別の記事でも引き合いに出してきましたが、まさにそれが当てはまる作品でした。
各キャラの何気ない言動で認知のズレを演出したり、特定のエンドでヒントを撒く手法も巧みです。また、詳細な言及は控えますが、キャラクターの配置と設定にもなるほどなあと唸らされます。タイトルの意味をきっちりと、全体の構成とも絡ませながら回収している点もお見事です。
主人公パールについて
また、主人公パールの造形も良かったです。礼儀正しく素直な女の子なので好感が持てました。どじっ子加減が絶妙で、空回りする姿も可愛いです。
個人的に好きだったのは、パールの上品な語り口です。『夢堕ちのインキュバス』は文章の良さも印象に残る作品ですが、それは「パールの語りがいい」ということでもあると思います。
ストーリー中で印象的だったのは、パールの悲しみが物語に組み込まれている点でした。パールの過去が明かされたときは、「可哀想だ」と思わずにはいられませんでした。彼女の悲しみが他の人のために生じたものであること、パールが悲しみを背負い込もうとしたことを知ると、その思いはさらに募りました。
パールの過去描写は丁寧に描かれているもののくどくはなく、ツッコミどころもなく、「とにかく適切だった」という印象です。プレイヤーとして自然とパールに同情し、彼女の救済を願わずにはいられませんでした。パールを救おうとする攻略対象キャラたちの思いも際立つ良い描写だったと思います。
ところで、乙女ゲームの中には「カウンセリングゲー」と冗談半分で言われるものがあります。「攻略対象キャラが何らかのトラブルを抱えている→葛藤する→主人公の助けもあってトラブルを解決→めでたしめでたし」という一連の物語の流れを、「(主人公による)カウンセリング」と見なすわけですね(女性向けに限らず、おそらく男性向け恋愛ゲーム(ギャルゲ―)にもそう言われるような作品はあると思います)。
- 攻略対象キャラの核心を効果的に掘り下げられる
- 主人公をその核心部分に関わらせることができる
- 主人公と攻略対象キャラの交流に起伏をつけることが可能
いわゆるカウンセリング恋愛ゲーの利点として挙げられるのは、以上の3点でしょうか。個人的にはけっこう理に適った形式だと思います。
そして、そういった観点から見ると、『夢堕ちのインキュバス』は「“逆”カウンセリングゲー」と言えるのではないでしょうか(そのせいもあってか、以前プレイした『AliceNightmare』をふと思い出しました)。
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逆カウンセリングゲーの場合、必然的に主人公の掘り下げが多くなります。主人公が好感を持てるキャラクターである必要性も、相対的に高くなる印象です。
『夢堕ちのインキュバス』の場合、視点人物は主人公のパールで一貫しています。ゆえにプレイヤーにとっても謎は謎のままであり、彼女と一緒に不可解な世界に戸惑うことになります。そして、ストーリーの謎はパールの立ち直りと並行して紐解かれていきます。つまり、パールの再起とストーリーの種明かしの両者を同時並行的に楽しめるわけです。
そういう意味で、パールが好感の持てる主人公でよかったなと思いました。ストーリーと主人公パールの双方に良い印象があったからこそ、今挙げたような楽しみ方ができたのだと思います。
「枯れ木と花の国」イベントの魅力
『夢堕ちのインキュバス』をプレイしているとき、「ここすごく良いな」と感じたところが2つあります。そのうちの1つが、各ルートに共通して存在する「枯れ木と花の国」イベントです。
イベントの内容を具体的に書くとネタバレに抵触するので、以下ではできるだけぼかして書きます。
「共通パート」とキャラの差別化
もともと、私は恋愛シミュゲーにおける「共通パート」を見るのが好きです。ここで言う「共通パート」というのは、「どのキャラを攻略しても見ることになるイベント」を指して書いています。
共通するがゆえに、ある物事Xに対し、キャラAはこうする、キャラBはこうする、キャラCはこうする……と比較をすることが可能。作り手の視点に立てば、「共通パート」は、「同じシチュエーションに全キャラを直面させ、各キャラの性格に沿った反応をさせるパート」と言い換えてもOKかもしれません。
キャラの差別化をはかるという意味においても、それぞれの個性を印象づけるという意味においても、共通パートはかなり効果的だと個人的には思います。
そして、『夢堕ちのインキュバス』における共通パートに該当するのが「枯れ木と花の国」イベントです。このイベントにおける各キャラの反応について熱を込めて語りたいのですが、ネタバレになるのでやめておきます(もう少し詳しい話は記事の下の、「キャラクター&ルート感想」の項目で書きました)。
一つ言えるのは、そのキャラごとの行動が違和感なくキャラにマッチし、かつキャラの個性を際立たせているということです。本当に上手いと思います。各キャラの設定がわかってくると、この共通パートでの言動にもより納得が生まれます。わかりやすい例は、ダイアモンドとエメラルドでしょうか。ルビーの対応も好きです。
寓意に満ちた世界
また、「枯れ木と花の国」パートは寓意に満ちているのが素晴らしいなと思います。
初見ではパールエンドを見た(キャラルートに入らなかった)ので、このパートには誰も現れなかったんですよね。「いったい花たちはなんなんだろう、枯れた木は何を意味しているんだろう」と思う一方で、「これはパールにとって何より悲しい悪夢なんだろうな」ということはすぐに直感できました。
次にダイアモンドルートでこのパートを再び見たときも、やはりはっきりとした意味はわからないのに、胸が締め付けられるような心地になりました。主人公のパールと同じく何も分からないのに、プレイヤーとして強く感情を揺さぶられたわけです。
それでは、どうしてそういう気持ちになったのか。それは、「枯れ木と花の国」パートがプレイヤーの共感をかき立てるような寓意性を持っていたからだと思います。
パールは訳も分からず悲しんでいます。プレイヤーにももちろん、彼女の悲しみの理由はわかりません。ただ、「皆の覆いとなり支えとなっていた巨木が枯れた」、「お別れするのは本当に悲しい」、「しかし逝かせてやらねばならない」……という風に、寓話的なエピソードが普遍的なイメージをプレイヤーに与えてくれるんですよね。
巨木を「頼りがいのあるリーダー」、枯死を「避けられない死」や「別れ」と見なし、「皆に慕われ皆の心の拠りどころだった存在が永遠に去った」と連想する。同時に、それにまつわる悲しみや喪失感をも想像してしまうわけです。
もちろん、枯れた木のエピソードは第一に「パールの過去」を示唆するものです。しかしそれにとどまらず、プレイヤーの持つ類似の記憶を喚起し、重ねて追体験させる効果も持っていると私は思います。別れがもたらす悲しみや痛みには、誰しも覚えがあるものです。
不思議なもので、事実を直接的に語られるよりも、寓話として婉曲的に語られた方が妙に心に引っかかる場合があります。たとえば、『動物農場』(ジョージ・オーウェル)は、ソ連史を大人の童話っぽく描いた小説です。
登場するのはロバやブタといった動物たちですが、その寓話性(アレゴリー)は明らかです。面白く読めるのに、作者の意図や主張が不思議と理解しやすいつくりになっています。
また、中世ドイツの職匠歌人である「ハンス・ザックス*」は、「ヴィッテンベルクの小夜啼鳥」という詩によって宗教改革者ルターを讃えました。
*ワーグナーの楽劇、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の主人公。
ハンス・ザックスはこの詩の中で、巧みなアレゴリーの技法を用いています。美しい声で夜明けを告げる「小夜啼鳥(ナイチンゲール)」は、教会への服従から人々を解き放つ存在、すなわちマルティン・ルターその人です。一方、哀れな羊(=信徒)たちを虐げる冷酷な「獅子」は、ローマ教皇に他なりません。
実在の人物を動物になぞらえることによって、より鮮烈なイメージが喚起されます。寓話的なエピソードの挿入によって、ハンス・ザックスは、ルターと宗教改革への礼賛を的確に表現し得たわけです。
事実は正確ですが、それゆえに余白がなく、直線的な想像以外を許さないところがあります。だからこそ、様々なイメージを想起する余地のある寓話は用い方によっては絶大な力を発揮するのだろうと思います。
そして、「枯れ木と花の国」イベントもまたその好例です。「枯れた巨木」というシンボルがあるからこそ、プレイヤーは悲しくてたまらないパールの心を自然と理解できます。パールの悲しみをただ眺めるだけではなく、自分の悲しみとも重ね合わせる余地が生まれてくるのです。巧いシーンだなあ、とプレイしながらひとしきり思ってしまいました。
BGMの良さ
ここも力説したいのですが、「枯れ木と花の国」パートはBGMがすごく良いです。このパートの雰囲気にピッタリです。
淡々としているようでどことなく息苦しく、聴いていると不安や違和感がひたひたと迫ってくる感じがします。「理由はわからないのにこんなにも悲しい」、BGMからそんなパールの葛藤の言葉が聞こえてくるような気さえします。
該当パートでは、ついつい操作の手を止めてBGMに聴き入ってしまいました。選曲が本当に絶妙だと思います。
キャラクター&ルート感想
この項目では、攻略キャラ4人の感想を書きます。攻略順は、ダイアモンド→エメラルド→ルビー→サファイアでした。個別感想もこの順で書きます。最初にことわっておくと、キャラによって感想の量に差があります。
イベントやエンディングについて、具体的な言及はできるだけ省きました(XがこうしてYがこうして~のような、具体的な内容は書かないようにしました)。特にエンディングについては、「2人が結ばれた」くらいの言及です。結ばれた結果のあれこれについては書いていません。
また、キャラクターの名前(※ダイアモンド除く)や設定についてもなるべく触れないようにしました。
ただし、キャラの性格や印象的なシーンについてはざっくりと書いています。ネタバレが含まれるので、各ルートを未見の方はご注意ください。
ダイアモンドルートの感想
他のキャラクターと違い、ダイアモンドだけは序盤であっさりと名前バレします。そのせいか、名前の方にすっかりと馴染んでしまいました。もはや「ダイアモンド」という通称の方に違和感を感じるレベルです。
というわけで、ダイアモンドだけは本名の方で書きます。書かせてください。以下、名前を未見の方はご注意ください。
キャラクターとしてはディアマントが一番好きでした。ルート的にも一番好きです。ロマンチックで感動的でした。「ここがすごく良い」と語りたかったもう1つのポイントは、ズバリ「ディアマントルート」です。
もう単純にディアマントとパールのやりとりが可愛くて可愛くて、プレイ中はニヤニヤしっぱなしでした。個人的に一番可愛いと思ったのは、2人して恥ずかしがって顔を隠すシーンです。
夢堕ちのインキュバス
可愛すぎる(確信)。見ていて恥ずかしくなるレベルで可愛い。
もともとディアマントのような大らかで明るく包容力のあるキャラは好きですが、内気で素直なパールと合わせるとより魅力的だと思います。そのため、2人のイメージの「太陽と月」は本当にしっくりとくる例えでした。ディアマントの良さも際立つし、パールも彼の明るさに照らされて輝き、元気になれるという。
ディアマントは、「パールに無いもの」を持っているキャラクターとして描かれているような気がします。それは教育方針と本来の性格ゆえにパールが持てなかったもの、端的に言えば、立場にふさわしい包容力と威厳なのかなーと思いました。
たとえば、枯れ木と花の国パートでのディアマントの振る舞いは、彼の立場にふさわしいものです。ああいう対応はディアマントにしかできないことだと思います。後から見返して上手い描写だとつくづく感じました。
ディアマントとパールを繋ぐ人物のことを考えると、2人が結ばれることはより喜ばしいことなのかもしれないと思います。また、ディアマントの意外な生い立ちを知ると、彼の言動やある人物への憧れ、境遇を同じくするパールへのいたわりをまた違う角度から眺められるのもいいですね。
まとめると、ディアマントとパールはルートからエンディングに至るまで終始見事に可愛すぎる2人でした。ずっと繰り返されてきたある動作が綺麗に回収されたことにも感じ入りました。
エンドロールの2人を見ると、“「可愛い」…それしか言う言葉がみつからない…”って感じの心境になりました。一言で言うなら、「ルート内容の完璧かつ幸福なる結実」でしょうか。もはや祝福しかない、いつまでも眺めていたいくらいに素敵な絵でした。
エメラルドルートの感想
続いて、「エメラルド」について。エメラルドは個別に召喚されたときの恐縮っぷりがまず印象に残りました。これは彼の立場を知ると納得の一言です。抑制的な態度と謙虚さが光るキャラだと思います(それでいて、パールと一緒によく転ぶどじっ子な一面もあるのが面白い)。
エメラルドについては、やはり「枯れ木と花の国」パートでの対応が彼らしくていいなーと思いました。他3人とエメラルドでは、立ち位置がやはり違うんですよね。その違いはパールへの対応の違いとなって表れてきます。
枯れ木と花を前に戸惑うパールに対するエメラルドの行動は、彼独自の立場にマッチしたものだったと思います。
自分の立ち位置をわきまえたエメラルドとの交流から、終盤にパールの自覚が導かれるのもいいなと思います。エンディング後のパールのあり方も他ルートとは明らかに異なってくるので、「パールの成長」という意味では一番王道的な結末なのかもしれないと思いました。
エンドロール絵にはやはり感動し、「ああ、きちんと約束が果たされたんだな」と嬉しくなりました。
ルビールートの感想
「ルビー」はダイアモンドの次に好きなキャラでした。毒舌年下キャラにしてはあまり攻撃的ではなく、男前かつ真摯なところが良かったです。
ルビールートで一番ぐっときたのは、「涙」をめぐるやりとりでした。「枯れ木と花の国」パートでの、「涙が枯れたら代わりに泣いてあげる」という言葉にまずグッときたんですよね。言葉にこもる思いやりと、ルビーの心根の優しさに胸を打たれました。
上記の発言は、「男として泣き顔は見せたくない」とルビー自身が言及していることを踏まえると更に心を打ちます。そもそも、誰かのために涙を流せる人はすごく優しい人だと個人的には思うんですよね。
ちなみに、ルビーの発言に嘘がないことは、のちの重要シーンでの彼の対応からもよくわかります。その重要シーンでは正直な話泣きました。ルビーのパールへの気持ちがひしひしと伝わってくる名場面だったと思います。
ルビーは素直な性格ではないですが、大事な場面では背伸びをせず、パールに自分の思いをしっかりと伝えるとことがいいですね。思いやりのある、実はまっすぐな人だなと思います。
エンディングへの流れもルビーらしくてよかったです。実にちゃっかりとしている。エンドロール絵で伏線が回収されていることにも感動しました。
サファイアルートの感想
最後に「サファイア」は、おそらく攻略対象の4人の中でもっともパールに近いキャラだと言えます。サファイアとパールは色々な意味で似た者同士です。そしてその事実はそのまま、サファイアはダイアモンドと性格的に正反対のキャラクターであるということを意味します。
上にも書いた通り、ダイアモンドはパールと対照的なキャラクターとして描かれています。サファイアとパールは気質的に似通っているため、パールの逆を行くダイアモンドは、サファイアとも性格的には対照的である……という話です。
正直なところ、ダイアモンドの裏設定を知ると、似た立場にあるサファイアが微妙に劣って見えてしまう気がしました。もちろん2人のスペック全体を見れば確たる差はなく、単純に「向き不向き」&取り巻く環境の問題だろうとは思いますが。
また、エンディングでサファイアの抜きがたい悩みが解決される流れにも、ややしっくりとこないものを感じました。サファイアの悩みが解決する(だろう)こと自体は本当によかったです。しかしその解決の仕方が外部要因に頼ったものに見えてしまい、少し微妙に思いました。
「パールと一緒に生きていこうと決めた直後にもう1つ良いことが!」というサプライズ描写なのかなとは思います。ただ、サファイアとパールの意識の変化自体を、現状の変革に繋げてほしかったなーと感じました。
サファイアは、パールの最高の理解者たり得る(同じ苦悩を抱えている)がゆえに、彼の立場にふさわしい資質にはやや欠けるキャラクターなのかもしれません。パールと2人で取り組むことで、サファイアの賢さや思慮深さがもっと周囲に認められるようになればいいなあと思います。
サファイアとパールに関しても、終盤のイラストとエンドロール絵はとても良かったです。特にエンドロール絵の2人は幸福を絵に描いたようで、見ていて幸せな気分になりました。
*****『夢堕ちのインキュバス』は、イラストが素敵な作品でもありました。特にスゴイと思ったのは、キスシーンの一枚絵です。どのルートのものも綺麗で可愛くて、本当に眼福でした。また、各エンドロールの絵も好きです。平たく言って最高です。
あらためて、『夢墜ちのインキュバス』は素敵な作品でした。感動できたし心から楽しめました。
※「謎めいたストーリー」や「寓意性」が印象的な作品について、いくつか感想記事を書いています。
・『her story』 感想 考察 ※ネタバレ注意(膨大な数のビデオクリップから「彼女の物語」を拾い集める新感覚ADV)
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