『A Date in the Park』 ポルトガルの公園で奇妙なデートを楽しむアドベンチャーゲーム 感想 攻略
ポルトガル・リスボンの公園で「デート」を楽しむ短編ホラーアドベンチャーゲーム、『A Date in the Park』の感想&攻略記事です。ネタバレや実績の解説も含みます。制作サークルはCloak and Dagger Games様。制作者様の公式サイトはこちらです。 → CLOAK AND DAGGER GAMES
A Date in the Park
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『A Date in the Park』は、よく晴れた日、デートをするために公園を訪れた男性の物語です。脅かし要素として猟奇的でグロいシーンが存在します。
『A Date in the Park』はSteam上で無料でプレイできるゲームです。公式サイトによれば、クリアまでの所要時間は約1時間だそうです。私はゆっくりプレイして100分でクリアしました。
- 実在する公園をモデルにした舞台
- 90年代デジタルゲーム風のグラフィック
- 日常の中に潜むぬぐいがたい違和感を描くストーリー
- 和やかな空気から一転、非日常へと転落するギャップ
上記の項目が魅力的な作品だと思います。デイヴィッド・リンチ作品などにインスピレーションを得て制作されたそうです。
※作中登場する、「彫像の頭部に刻まれた『A』」についての考察記事も書きました。
≪関連記事:『A Date in the Park』 ② 彫像に刻まれた“A”の考察 ~復讐の女神アドラステイアとCatarina~≫
以下は、ストーリーのネタバレを含む感想です。詳細な攻略情報も含まれます。未見の方はご注意ください。
『A Date in the Park』のあらすじ
最初に、『A Date in the Park』のあらすじを書きます。
主人公のLouは、1週間前、ロンドンからポルトガルのリスボンに越してきたばかりの男性です。
彼はある夜、バーで魅惑的な女性と出会います。彼女の名はCatarina。出会ってから数時間で、Louは完全に恋に落ちました。Catarinaに運命的なものを感じたのです。
「ああ、ここだ。『Tapada das Necessidades』」
A Date in the Park(訳文は引用者)
別れ際に彼女とデートの約束をしたLouは、翌日のよく晴れた日、Tapada das Necessidades(リスボン市内の公園)を訪れます。しかし、指定の場所にCatarinaの姿はありませんでした。
彼女を探して公園内を歩き回るLou。Catarinaは公園の中には居るようで、Louを焦らすようにあちこちに痕跡を残しています。
「こういうデートって、ポルトガルでは普通なのかな?」
A Date in the Park(訳文は引用者)
姿を現さない彼女をいぶかしみつつも、会いたい気持ちが勝るLou。「ロマンチックだ」とポジティブな気持ちでこの状況を楽しみ始めます。
はたしてLouは、Catarinaに会うことができるのでしょうか。そして、2人の奇妙なデートはどのような結末を迎えるのでしょうか。
ゲームの概要と攻略(実績解除込み)
『A Date in the Park』は、一本道のアドベンチャーゲームです。進行にはマウスを使用します。全画面でしかプレイできないらしいので、起動する前に他のアプリケーションを終了した方がいいかもしれません。
ゲームを終えたい時は、タイトル画面で"QUIT"を選択しましょう。プレイ中なら、右上のオプションから終了することができます。また、マウスを画面上方に持っていくとアイテム欄が開きます。アイテムはクリックで使用できます。
前提として、『A Date in the Park』は左右クリックでオブジェクトを調べることが重要なゲームです。
- 左クリック:主人公がそのオブジェクトに対して働きかける。アクション(行為)を担う。
- 右クリック:主人公がそのオブジェクトを観察する。説明を聞きたいならコレ。
上記の通り、左右クリックの役割に違いがあります(実績解除とも関わる大事なポイント)。ちなみに、移動のショートカットをしたいときは、画面端を右クリックすればOKです。
この項目では9つの実績の説明と、実績解除込みの攻略情報を書きました。
9つの実績について
まず、実績の「タイトル名」と「アイコン」、「どうすれば解除できるか」の3点についてそれぞれ解説します。
1.Eye of the Beholder
・アイコン:LouとCatarinaの写真
・実績解除:アイテム欄のポラロイド写真の上で右クリック。写真についての説明を聞く。
2.A Friend in Need
・アイコン:duckling(子ガモ)
・実績解除:まず子ガモを助ける。公園をすべて見回ってから再び「カモの池」へ戻る。子ガモが親から見捨てられるので、アイテム欄のハンカチを使って救助し、名前をつける。
3.Explorer
・アイコン:主人公の横顔
・実績解除:Catarinaを探して公園のすべてのエリアを回る。すべて見回ると、落ち込む主人公のメッセージが自動的に出る。
4.An Old Head
・アイコン:彫刻の頭部
・実績解除:T字路の左の方にハトの群れがいる。ストーリーが進行すると群れが去り、同じ場所に石像の頭が出現。これを調べればOK。
5.Lost in Translation
・アイコン:庭師の青年
・実績解除:西の池のほとりでたたずむ庭師の青年を発見し、話しかける。a. 左クリックで調べて会話(通じない)、b. Catarinaとのツーショットを見せる(ガン無視される)の2つのアクションを終えると実績解除。
※注意:青年は話を進めると消えてしまうため、初遭遇時に必要なアクションを済ませること。
6.Hanging on the Telephone
・アイコン:電話に向かう主人公
・実績解除:北東の庭師の小屋で、「プレゼント」を発見。恐怖した主人公が最短ルートで逃げ出す際、備え付けの電話のあるエリアを通る。受話器が外れて通話状態になっているので、左クリックで調べて会話する。
※注意:無視して次のエリア(ゲート付きの建造物エリア)に進むと、電話エリアに戻れなくなるので注意。
7.Statue Fan
・アイコン:石像を調べる主人公
・実績解除:公園内にある3つの彫像をすべて調べる。公園中央のゲートのある建造物エリアに、「英雄の彫像」が1体。北東の大きな建物の左右に、「神の彫像」が2体。
※左クリックではなく、右クリックで主人公の説明を聞くこと。2つの彫像については、建物の扉横の掲示に説明がある。
8.Boom or Bust?
・アイコン:影の差す通路
・実績解除:北西にあるドーム状の「アドラステイアの家」(Casa de Adrasteia)の扉を右クリック。すると主人公が扉の中を覗きこむ。建物の奥に光の届いていない通路のような空間があるので、そこを右クリックする。
9.A Good Samaritan
・アイコン:庭師のナップサック
・実績解除:西の池から庭師がいなくなった後、ナップサックを調べると小屋の鍵を入手できる。正規ルートではこの鍵を使い、庭仕事に使う伸縮自在鍬をゲットする。用が済んだ後、小屋の鍵をきちんとナップサックに戻す(鍵のアイコンを左クリックしてナップサックの上に持っていく)。
攻略の流れ
次に実績解除込みの攻略について、順を追って解説します。未見の方は、ネタバレにご注意ください。
1.公園の入り口前
入園するため、受付ブースの窓口を左クリック。「入園料は3ユーロです」と言われるので、アイテム欄の【財布】を左クリック→窓口を左クリック。お金を払ったら、地図をもらって公園内へ入る。
※アイテム欄の写真を右クリックすると、"Eye of the Beholder"解除。
2.カモの池
Catarinaがいないことを確認。カモの親子が現れるので、子ガモを左クリックで助ける。
3.西の池
主人公の指示に従い、西の大きな池へ移動する。池と庭師を発見し、やはりCatarinaの姿がないことを確認。
※庭師の青年に、左クリックと【写真】突きつけで計2回話しかけると、"Lost in Translation"解除。
地図を見ながら公園内のすべてのエリアを見て回る。見終えると、自動で主人公のメッセージが流れる。
※"Explorer"解除。
4.カモの池
再び戻ってくると、子ガモが親ガモに見捨てられるイベントが発生。【ハンカチ】を使って救助し、名前をつける。 ※"A Friend in Need"解除。
「カモの池」エリアから、左右のどちらかにエリア移動する。すると、誰かの足音を主人公が聞きつける。再び「カモの池」へ戻ると、ベンチの上にボックスが置かれている。これを左クリックで調べると、手紙付の風船が出てきてどこかへ飛んでいく。
5.西の池
風船を追いかけて西の池へ。「池の中に落ちた風船を取れないものか」と考える主人公。庭師がいなくなっているので、ナップサックを探って【小屋の鍵】を入手する。
6.庭師の小屋
公園の北東、二つの石像がある建物の裏手へ移動。小屋を発見。【小屋の鍵】を使って扉を開け、中を調べて【伸縮自在鍬】を入手。
7.西の池
【伸縮自在鍬】を使って風船をゲット。Catarinaからの手紙(一枚目)を読む。
※ここで用済みの【小屋の鍵】をナップサックに戻すと、"A Good Samaritan"解除。
「歌」を探しに池から東へ向かう。
※この時点までに、T字路左にいたハトの大群が消え、彫像の頭部が出現している。調べると"An Old Head"解除。
※また、ドーム状の「アドラステイアの家」の扉を右クリック。主人公が中を覗きこむので、奥の影の差す通路を右クリックすると、"Boom or Bust?"解除。
8.2体の彫像がある建物
建物に近づくと「歌」が聞こえるので、建物に向かって右の彫像(頭部なし)に接近する。彫像の下のパイプを調べ、中に小さな物体が入っていることを確認。パイプ内に手が届かないので、パイプに水を流して押し出す必要あり。
9.上記の建物の側面
一旦彫像から離れ、建物の側面のエリア(落書きされている壁の傍)に移動する。
A Date in the Park
壁の脇にはポンプの機械が立っている。これを調べると、左に赤と緑の丸ボタン、および右に3つの細長いボタンのついた機械を操作できるようになる。
右の3つのボタンを正しく押した上で緑のボタンを操作すると、建物正面に水が流れる。右の3つのボタンについては、彫像2体の配置をヒントに操作する。わからなくても適当に試してその都度緑のボタンを押していれば、いつかは正解にヒットする。
10.2体の彫像のある建物
エリア移動し、右の彫像に再び接近。パイプから小さな小箱が押し出されている。これを調べ、Catarinaの手紙(2枚目)を入手。手紙に従い、建物裏手の庭師の小屋へ。
※この建物の彫像2体と道中のゲート付建物の彫像1体、あわせて3体の彫像が公園内には存在する。すべての彫像について右クリックで説明を聞くと、"Statue Fan"解除。
11.庭師の小屋
イスの上にボックスが乗っているので調べる。中身を確認した後、公園の入り口を目指して道を戻る。T字路に来ると、サイレンの音が聞こえる。
12.電話のあるエリア
受話器が外れ、通話状態になった電話を発見。
※電話に出ると、"Hanging on the Telephone"解除。
あとは、公園の入り口へ向かうのみ。エンディングが待ち受けています。
ストーリーの感想
『A Date in the Park』は、タイトル通り、「公園でのデート」をテーマにした作品です。
魅力的な女性("Catarina")とデートの約束をした主人公が、公園を訪れるところから物語はスタートします。Catarinaを探し、広い公園内を歩き回るのがこのゲームの主旨です。
平穏にひそむ不穏
平凡な状況下での「何かがおかしい」という感覚。それが『A Date in the Park』の全体に通底するものであり、作品のテーマとも言えると思います。
ゲームの進行はスムーズであり、流れる雰囲気は終盤まで実に和やかです。愛しい女性に会いたくてウキウキする男性が、静かで気持ちの良い公園内をピクニック気分で探索します。姿の見えない彼女を追い求め、メッセージの謎かけを解いていく流れは、さながら変則的なデートのよう。いわば日常パートと言っていい序盤~終盤手前までは、特筆するような事件は起きません。
しかし、穏やかな時間の中にも、妙に不安を煽るような描写が見え隠れします。
たとえば親ガモに殺されかける子ガモ、主人公のシャツににじむカモの血、忽然と消えた庭師の青年、大量のハトが群がる彫像の頭部(壊されてまだ間もない)……など。そもそも主人公の愛しのCatarina自体、デートに誘ったにしては奇妙な行動を繰り返します。
しかし、「恋は盲目」状態の主人公は、そういった違和感や不審な点を楽観的にスルーします。ゆえに、より客観的なプレイヤーは、主人公と微妙に認識が一致しないことを不安に思いつつ、プレイを続けることになるわけです。
日常から非日常へ、その落差
Catarinaを探す日常パートは、終盤に至って突然終わりを告げます。非日常パートはそのままエンディングへの導入であり、物語は急転直下で結末へとなだれ込みます日常→非日常の切り替わりが鮮やかで、エンドロールまでずっと物語の推移を注視してしまいました。
不満があるとすれば、日常パートに対して非日常パートが短すぎることでしょうか。「プレゼント」発見から、エンディングに入るまでの流れが短すぎる気がしました。
せめて入り口まで逃げるルートを自由に選べるようにするとか、もっと彼女の気配に怯えるイベントを入れても良かったんじゃないかと思います。落差の演出が見事だったので、非日常パートももう少し長く楽しませてほしかったです。
「操作」から「鑑賞」へ ~エンディングまでの流れ~
日常と非日常の落差の激しい『A Date in the Park』。奇妙のデートに待っているエンディングはかなり印象深いものでした。以下、終盤~エンディングまでのネタバレを含みます。
主人公の認知とプレイヤーの認識のズレ
日常から非日常へとガラッと移り変わるときのイベント、ありていに言えば「プレゼント」発見イベントにはびっくりしました。画面いっぱいに「プレゼント」が映し出されるので、正直言葉を失いました。そこからの、あの怒涛の殺戮エンディングにも驚かざるを得ませんでした。
ただ、意外性はありつつも、一方で「あーあるある」と納得してしまう鮮やかなラストでした。たとえるなら、短編映画のようなオチだと感じました。だから、1時間以上操作してきた主人公がああいうことになっても、悲しむ以上に納得してしまいました。
これは、終始ラブ・イズ・ブラインド状態の主人公の認知と、プレイヤーの認識がズレていたからだと思います。
LouにとってのCatarinaは、昨夜出会って数時間話しただけの女性です。Louは彼女の電話番号さえ教えてもらっていません。極めつけにCatarinaは、Louをデートに誘いつつもなぜか一向に姿を現しません。
LouはCatarinaを運命の女性だと信じているので、一切彼女を疑いません。しかしプレイヤーとしては、「本当に大丈夫か?」と思わざるを得ないんですよね。だってどう考えても怪しすぎるからです。
だからボックスを見つければ嫌な予感に襲われるし、「プレゼント」を発見したときも、驚きこそすれ納得しました。驚愕して動揺しまくりの主人公を、どこか突き放して見つめてしまったんですよね。
終盤の「プレゼント」発見あたりから、このゲームは「操作するもの」から「鑑賞するもの」にシフトした印象があります。
その原因は、主人公とプレイヤーである自分の心の距離がはっきりと開いてしまったからです。「いや、Catarinaはモロに怪しかったよ。まったく気づいてなかったみたいだけど」、と。だからこそ、ずっと操作してきたはずの主人公の悲劇を予定調和だなと感じ、あの悲惨なオチを映画のラストみたいだと思って眺めてしまいました。
この感想は、「つまらないラストだった」という意味ではありません。むしろ、意外性とお約束をうまく両立させたラストだったという風に感じました。
描写の収束と悲劇
また、『A Date in the Park』はオチへのフリ(伏線の張り方)も巧いゲームだと思います。
たとえば、子ガモを助けたときにシャツに滲んだ血は、血まみれの死体を横に置けば返り血に見えます。何度かあった子ガモに噛まれて痛がる主人公のモーションは、警官にとってはジャケットの中の得物を取り出そうとする動作にしか見えません。ポルトガル語を理解できないことは、銃を構えた警官を前にして何も弁解できないという最悪の事態を招きました。
日常パートではなんということもなかった一つ一つの描写群が、ラストで一気に収束して悲劇を招く……よく考えられた構成だと思います。
例の子ガモは、親に見捨てられた元凶への復讐を果たしたことになるのでしょうか。最初は適当に"Swan"という名前を付けたのですが、いったんラストを見た2周目では、"Devil"と名付けるほかなかったです。
キャラクター&グラフィック&小ネタ雑感
この項目では、キャラクターやグラフィックの雑感を書きます。作中のポルトガル語のセリフを訳したりしていますが、正直ガバガバです。間違っていたらすみません。
主人公のパーソナリティー
主人公のLouは、自然が大好きで環境への配慮を欠かさない男性です。ティッシュではなく使い古したハンカチを持ち歩いているのも、ティッシュの原料になる木々を救いたいから。風船を取るにも枝を折って使うことはしたくないと断言します。
しかし無頓着なところがあり、子ガモに素手で触ったりします。子ガモが見捨てられて死にそうになれば反省して助けるものの、あくまで恋するCatarinaを優先し、子ガモの治療は後回しです。
総合すると、「自然や動物が好きな理想家だけど一貫性をイマイチ欠く人」というイメージでした。終始Catarinaにくびったけ(死語)なので、若干の脳内お花畑感は否めません。少しは怪しめよ、とプレイヤーとしてツッコまずにはいられないところがあります。とはいえロマンチストな性格ゆえに、こういうストーリーの主人公には最適だったのでしょう。
Louを見ていると、某裁判ゲームの主人公(の大学生時代)を思い出しました。Catarinaを理想化し、彼女に関して駄々をこねるところとか。とはいえ、「相手の本質を見抜けているか」という点でくっきりと明暗が分かれています。
グラフィックの効果
グラフィックについては、90年代のデジタルゲーム風だそうです。雰囲気の良さと不気味さを両立したグラフィックだと個人的には思います。
自然や建物などの背景は、雰囲気がよく臨場感もあり、「こんな場所でピクニックしたら気持ちいいだろうな」と感じる出来です。
実在するリスボンの公園 をモデルにしているそうですが、確かに雰囲気がリアルに表現されています。ドーム状の建物あたりはほぼそのままです。古色蒼然としたたたずまいながら、現代的な設備を加えられた建物も現実味があります。
一方、人物の輪郭や顔は絶妙にぼやけていて、どれだけ画面が明るくてもそこはかとない不気味さが漂います。ぬるぬると動くキャラクターの動作も怖いです。
昨今のゲームのグラフィックは「くっきりはっきりしっかり」というか、質感や動作のリアリティーを重視する傾向にありますよね。しかし、昔のコンピューターゲームのグラは、細部がよく見えません。そのぼやけた感じ、はっきりとは見えない感じが、プレイヤーの恐怖を煽る一因となります。
もちろん、昔のゲームのグラの粗さは技術上の制約ゆえでもあります。しかし、この作品をプレイしてあらためて、ホラー作品と相性の良いグラフィック表現だったんだなと感じました。初期の「クロックタワー」シリーズなども、「グラが粗いから怖い」部分が少なからずあるのではないでしょうか。2つの箱と演出の妙
※映画『セブン』のネタバレを含みます。ご注意ください。
Catarinaは相当怪しい女性ですが、"Love is blind."を地で行く主人公はまったく気づきません。しかし、制作者様はおそらく、プレイヤーがCatarinaを怪しむことをきちんと想定していたのだろうと思います。その表れが、2つのボックスとそれに絡む演出です。
Catarinaの用意した1つ目のボックスは、「カモの池」エリアに出現します。足音を聞きつけて主人公が移動すると、すでにベンチの上にボックスが置かれています。
このボックスを見た瞬間、「うわー絶対に開けたくない」と思いました。「クピドからの贈り物」とか言って浮かれている主人公に同調できず、開けるのをかなりためらいました。なぜかと言えば、ほぼ瞬間的に、映画『セブン』の残酷なオチが脳裏をよぎったからです。ボックスの大きさもそれっぽかったんですよね。
たぶん制作側もプレイヤーの連想を見抜いていたはずです。だから、1つ目の箱の中に入っていたのは「人の頭くらいの大きさの赤い風船」でした。
プレイヤーは「なーんだ」と緊張を緩めます。しかし、一度抱いた微妙な不安感は拭いきれません。
その後、2つ目のボックスが登場します。プレイヤーは「まだ2つ目だからなーきっとまたヒントでしょ?」とやや油断しつつも、「もしかして今度こそ……」という疑念を捨てられません。そこで今度は、「アレ」が入っているわけです。
プレイ時は、「やっぱりそういうアレじゃん!」と心底驚きつつ、同時に「お約束」を目にしたときの満足感も抱きました。
ヒトは、不快でないレベルの意外性を楽しむ生き物だそうです。この2つのボックスによる、プレイヤーへの揺さぶりは上手いなーと思います。
庭師の青年のセリフ
主人公のLouは、ポルトガル語ができません。聞き取りやスピーキングはおろか、リーディングもままならないようです。標識を見て「何が書いてあるのかわからない」と発言しています(よくそれで移住したなあと思うレベル)。
そのためLouは、受付の人や庭師の青年の話をよく理解できません。それがのちの悲劇に繋がることは上でも書きました。
このゲームのベース言語は英語ですが、受付の人や庭師の言葉はポルトガル語で表記されます。
受付の人や電話先の人、警官については、だいたい言っていることがわかりました。しかし庭師の青年の話については、Louと一緒に「?」状態になってしまいました。そこでクリア後に再プレイし、青年が何を言っていたのかを調べてみることにしました。
"Senhor tenha cuidado."
A Date in the Park
"Vi uma mulher estranha entre os arbustos."
"Tinha um olhar estranho... pareceu-me maluca."
以上が庭師の青年の発言です。これを翻訳サイトや辞書サイトに頼って意訳すると、下のようになりました。
気を付けてください。 茂みの中に奇妙な女性を見ました。 不気味な感じに見えましたよ……頭のいかれた女みたいだった。
実に的確なアドバイスで驚きました。やはりLouの最大の敗因は、ポルトガル語ができないことだったようです。
実績の中に、"Eye of the Beholder"というタイトルのものがあります(おそらく、『美しさは見る人の目の中にある』のもじり)。
Catarinaを魅力的な女性だと感じていたのは、おそらくLouだけなのでしょう。あらためて、「恋は盲目」だと思わざるを得ない事実です。
エンドロールで流れる歌が好きです。あけっぴろげな陽気さが逆に不気味で、作品の雰囲気にピッタリだと思いました。
こういうグラフィックのアドベンチャーゲームっていいなと今回感じました。他にも似たような作品があれば、プレイしてみたいと思います。映画的でまとまりの良い、面白い作品でした。
※本編でロウが不思議がっていた「彫像の頭部の"A"」に関し、4体の彫像のモチーフとなった神々についても調べつつ考察記事を書きました。よければ併せてお読みください。
→ 関連記事:『A Date in the Park』 ② 彫像に刻まれた“A”の考察 ~復讐の女神アドラステイアとCatarina~
※「怖い女性」と「サスペンス」が印象に残る作品について、いくつか感想記事を書いています。
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