『テニスの王子様 ドキドキサバイバル』(ドキサバ/ぎゅっサバ) テニプリ原作の乙女ゲームin南の島 レビュー その1
テニプリ原作、南の無人島でサバイバル生活をする恋愛アドベンチャーゲーム(乙女ゲーム)、『テニスの王子様 ぎゅっと! ドキドキサバイバル 海と山のLove Passion』(DS版ドキサバ/ぎゅっサバ)のレビュー&感想記事です。開発元はKONAMI。ゲーム内容のネタバレや原作ネタが含まれます。
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※この記事(その1)では、『ドキサバ』の概観&レビューを書きました。その2以降、海側山側の各サイド&各学校ごとに個別の感想(44人分)を不定期にアップしていこうかなーと思います。
初めて『ぎゅっサバ』をプレイしたのは数年前です。携帯機でプレイできる面白いゲームはないかなーと思っていた頃、ちょうどこの作品のことを教えてもらいました。端的に言えば、(良い意味で)ツッコミどころ満載のゲームでした。本当に面白かったです。楽しくて笑える乙女ゲームって大好きなんですよね。
すごくハマったので途中で攻略を中断し、原作テニプリの完全版を購入して最初から最後まで一気読みしました(それまで未読でアニメをちょっとだけ観て知っている程度でした)。スポーツものらしい熱さと個性的なキャラ、勢いとノリの良さがグレートに面白かったです。
もともと「超次元スポーツもの」が大好きだったりします。展開がハチャメチャだったりでツッコミどころが多くて、それでいて熱い感じの(例:『少林サッカー』)。
テニプリも熱さとぶっ飛びと笑いを兼ね備えた漫画なので、かなりツボに入りました(まだそれほどぶっ飛んでいないルドルフ戦あたりもけっこう好き)。派生ゲームをきっかけにハマるのってそこそこ邪道かもしれませんが、ともかくこの機会に原作を読むことができてよかったです。
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以下は、『ドキサバ』の感想込みのレビューです。ストーリーや攻略対象キャラの概要、PS2からDSに移植された際の変更点、メインストーリーのオチのネタバレなどを含みます。未見の方はご注意ください。
『テニスの王子様 ぎゅっと! ドキドキサバイバル』のあらすじ
最初に、『テニスの王子様 ぎゅっと! ドキドキサバイバル 海と山のLove Passion』のあらすじを書きます(大筋はPS2版の『ドキサバ』と同じです)。
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夏休みに南の島へバカンスへ行くことになった、中学2年生の「小日向つぐみ」と「辻本彩夏」。
2人は偶然、全国各地の強豪テニス部に所属する男子中学生たち(=テニプリのキャラクター)と同じ船に乗り合わせます。全国大会を目前に控えた彼らは、無人島で行われる半サバイバル合宿に参加するべく、榊グループ所有の豪華客船で目的地へと向かっていたのです。
船上パーティーで同年代の中学生と和やかに交流したつぐみと彩夏。しかしその夜、なんと船が嵐に見舞われ沈没してしまいます。男子らと一緒に命からがら脱出した二人が流れ着いたのは、合宿予定地の無人島でした。
中学生たちは奇跡的に全員無事だったものの、顧問の先生や船長を始めとした大人たちは消息不明。助けが来るのは約1週間後。合宿参加メンバーは「山側」と「海側」に拠点を分け、それぞれ手塚と跡部をリーダーとして、自給自足の生活を送ることになります。
想定外のスタートを切った南の島での強化合宿。テニス部員らと行動を共にすることになったつぐみと彩夏は、無事に島から帰還することができるのでしょうか。
『ドキサバ』の概要
任天堂DSソフト、『テニスの王子様 ぎゅっと! ドキドキサバイバル 海と山のLove Passion』(ぎゅっサバ)は、週刊少年ジャンプで掲載されていた『テニスの王子様(テニプリ)』の恋愛アドベンチャーゲームです。
「南の島へバカンスに行く途中に遭難する」という設定からも分かるように、ゲーム内の季節は夏真っ盛り。正確には「7月末~8月初め」の期間を想定したゲームです。
原作の時間軸的には、関東大会後~全国大会前に当たります。そんな超重要な時期に「無人島で半サバイバル合宿をしよう」と思い至る顧問の先生たちはヤバイスゴイ。すぐさま実現できる榊太郎もスゴイ。
攻略対象キャラは、総勢44名の合宿参加メンバーです。乙女ゲームで44人ってハンパない多さだと思います。学校別にキャラを書き出すと以下の通りです。
- 青学:手塚、大石、不二、菊丸、河村、乾、桃城、海堂、越前(9人)
- 不動峰:橘、神尾、伊武(3人)
- 氷帝:跡部、忍足、宍戸、向日、芥川、日吉、鳳(7人)
- ルドルフ:赤澤、観月、裕太(3人)
- 山吹:亜久津、千石、南(3人)
- 六角:佐伯、黒羽、天根、葵(4人)
- 立海:幸村、真田、柳、仁王、柳生、丸井、桑原、切原(8人)
- 比嘉:木手、平古場、甲斐(3人)
- 四天宝寺:白石、千歳、謙也、遠山(4人)
ちなみに、氷帝の樺地とルドルフの柳沢も合宿に参加していますが、攻略はできません。「ガチの病み上がりなのにサバイバル合宿に参加している幸村」と「全国大会に出場しないのに参加しているルドルフ勢」に若干の大人の事情を感じます。
一方プレイヤーが操作する主人公はというと、1人ではなく複数人存在します。具体的には、中学2年生の「小日向つぐみ」と「辻本彩夏」の2人が主人公です(名前は変更可能)。
実は上記のテニプリキャラ44人は同じ拠点で生活するわけではなく、「山側の合宿所」と「海側の合宿所」に分かれて活動します。
青学、不動峰、四天宝寺の生徒は山側のメンバーであり、ルドルフ、山吹、六角、比嘉の生徒は海側のメンバーです。氷帝と立海の生徒は学校ごとに偏らず、複数人ずつ山側と海側に分かれて生活します。具体的には、上の画像(※DSの選択画面を参考に作成)の左半分が山側の合宿所にいるキャラ、右半分が海側の合宿所にいるキャラです。
山側のリーダーは手塚、海側のリーダーは跡部です。そして、合宿とは無関係なのに遭難してしまったつぐみと彩夏の2人は、それぞれ山側と海側を手伝うことになります。
つまり、山側メンバーの24人を攻略する場合はつぐみ視点、海側メンバーの20人を攻略する場合は彩夏視点でゲームが進行します。手塚を攻略するときはつぐみが主人公になり、跡部を攻略するときは彩夏が主人公になります(逆に言うと、つぐみで跡部を攻略したり、彩夏で手塚を攻略することはできません)。
PS2からDSに移植された際の変更点
ここまで『ぎゅっサバ』について説明してきましたが、実は『ぎゅっサバ』はDSに移植された作品です。
『テニスの王子様 ドキドキサバイバル』は、もともと2006年~2007年にPS2のゲームソフトとして発売されました。主人公が2人存在するのは、山側メンバーを攻略できる「山麓のMystic」(主人公:つぐみ)と、海側メンバーを攻略できる「海辺のSecret」(主人公:彩夏)の2本立てだったからです。DS版では2本のソフトが1本にぎゅっとまとめられ、『ぎゅっサバ』になったわけですね。
ところで、山側のつぐみ視点で告白に失敗すると、友人の彩夏も同じく失恋しますよね。一方海側の彩夏視点で玉砕すると、友人のつぐみも失恋……とはならず、「相手からOKをもらった」と報告されます。
「その友人間での格差なんやねん」と初見でツッコみたくなるあの違いは、「山麓のMystic」が「海辺のSecret」より約1か月早く発売された(=山側のつぐみ視点で攻略を終えた後に、海側の彩夏視点でプレイする人が多かった)ことと関係があるのではないかと思います。
『ぎゅっサバ』では、「主人公2人の容姿や服装」が変更されています(たとえば彩夏は黒髪ストレートから茶髪くせっ毛になっています)。また、視点人物でない方の主人公がアドバイザー兼友人として登場するのはPS2版と同じですが、『ぎゅっサバ』では主人公2人にボイスは付いていません。
また、PS2版『ドキサバ』における攻略対象キャラは総勢40名でした(山側と海側で均等に20人ずつ)。『ぎゅっサバ』では新たに四天宝寺のキャラ4人が山側に追加され、攻略対象キャラは計44人に増えています。最大の追加要素と言えます。
その他の大きな変化は、DSのタッチ機能とマイク機能を用いたイベントが追加されたことでしょうか。それに伴い、一部のキャラはギャラリーで鑑賞できる一枚絵が増えました。
『ぎゅっサバ』のタッチイベントは、ときメモGS2(DS移植版)のデート後の帰り道イベントみたいな感じですね。適当なところをタッチすると親密度が上がり、キャラとの距離が近くなっていきます。親密度を最後の段階まで上げると、特定のキャラに限って一枚絵付きのイベントに突入します。
一方のマイク機能は、毎回のキャラ選択時、一緒に過ごしたいキャラの名前を呼ぶときに使用します。ずっとマイクを使って名前を呼び続けていると、最終日付近に返答が微妙に変化することがあります(キャラによっては一枚絵付きのイベントが用意されています。マイクイベントの追加スチルはクオリティが高く、どのキャラについても一見の価値ありです)。
ただ、マイクの精度がそれほど良くないので、頻繁に呼んでいないキャラが「今呼んだ?」と出てきます。毎回の名前呼びを全キャラ続けるのは相当キツイと言わざるを得ません。スチル付きのキャラだけ挑戦しようとしても、やはり事前セーブと根気は必要になると思います。
一応『ぎゅっサバ』だけではなくPS2版『ドキサバ』の方もプレイしました。その上で両者を比較すると、気軽にプレイできるのはやはりDS版の方だと思います。1本で山側も海側もプレイできる点がいいですね。また、マイクイベントはともかくタッチイベントはそこそこ楽しいです(とはいえ、キャラや雰囲気が崩れるという意味で苦手な方も多い追加要素だと思います)。
ただ、主人公2人の立ち絵的な意味では圧倒的に『ドキサバ』の方が好きです。PS2版の容姿の方がつぐみも彩夏もテニプリキャラとしっくり馴染んでいるような気がします(初出がPS2版の方なので当然かもしれません)。あと、DS版では一枚絵に映る2人も当然新規に描き直されていますが、周囲の景色やテニプリキャラとの違和感があってちょっと微妙だなと思いました。
個性の強い2人のヒロイン
では、ゲームの感想を詳しく書いていきます。『ドキサバ』をプレイしてまず印象に残ったのは、主人公(ヒロイン)2人の個性の強さでした。
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恋愛ゲームでの主人公の扱われ方は、大きく2つに分かれています。1つ目は「個性を極力削ぎ落として顔を出さない」、2つ目は「1人のキャラとして扱う」。女性向けの乙女ゲームは2つ目を採用していることが多い印象です(1つ目の例:ときメモGS無印&2など)。
『ドキサバ』も後者、つまり主人公2人が一個のキャラとして扱われているタイプの乙女ゲームだと思います。山側ルートでは彩夏が、海側ルートではつぐみが、それぞれビジュアル付き(PS2版ではボイスも有)の友人兼アドバイザーとして登場することもその印象を強めています。また、特につぐみは、いくつかの一枚絵で思いきり顔が描かれています(手塚ルートや忍足侑士ルート。彩夏は跡部ルート)。
タイトルに挙げた通り、つぐみも彩夏もある程度パーソナリティーがカッチリと設定されているらしいことが個人的には印象に残りました。
たとえばつぐみは家事全般が得意であり、成績が良く、大人しく物静かな女の子です。弟が1人いるほか、船長である父が行方不明になったことに落ち込んでいて、そのことがシナリオにもガッツリと絡んできます。
一方の彩夏は、料理が得意(※見た目は壊滅的)、運動が得意、勉強は苦手、男子と気さくに付き合えるがなかなか女子扱いされない、雑学に詳しい、兄が1人いる、叔父や父がペンションを経営している……といった背景設定があるようです。
もちろん家族構成などはプレイヤーの選択次第でいくらでも変更できます。具体的には「兄弟はいない」/「1人っ子だ」と答えることも可能です。ただ、主人公によって出てくる選択肢が一定共通しているんですよね。
たとえばつぐみ視点で兄弟について問われると、常に「弟がいる」という選択肢が出ます。しかし、「兄がいる」という選択肢は出てきません。一方彩夏視点では必ず「兄がいる」という選択肢が提示されますが、基本的に「弟がいる」という選択肢は提示されません(もし見落としがあったらすみません)。
よって、「つぐみには弟がいる」&「彩夏には兄がいる」が少なくとも背景設定orキャライメージとして想定されているんだろうなと個人的には感じました。
上記のみならず、隠れた設定を感じる場面は他にもいくつかありました(たとえば一定の傾向に沿って受け答えをすると、「お前(君)らしい」と攻略対象キャラが反応するなど)。
こういった「主人公の個性の強さ」(=シナリオからうかがえる一貫したキャラ設定の存在)は、賛否分かれる要素だとは思います。たとえば「主人公=自分」として楽しみたいプレイヤーにとっては、主人公の個性の強さはさほど歓迎されるものではありません。「プレイヤーは勉強することが好きなのに、主人公は自他共に勉強が苦手なキャラだと認識されている」といった齟齬が生まれやすくなるからです。
一方、主人公を1キャラクターとして見るプレイヤーにとっては、主人公の個性の強さは(よほどクセが強くて態度が悪くない限り)それほど気にならない部分だと思います。
私は第三者視点で乙女ゲーを楽しむタイプです。そのため、ヒロイン2人の性格や嗜好、背景がある程度定まっている『ドキサバ』はプレイしていてかなり楽しかったです。第三者視点での楽しみが多い乙女ゲームではないかと個人的には思います。
小日向つぐみと辻本彩夏について
主人公の「小日向つぐみ」と「辻本彩夏」は、対照的な性格をした2人です。そして、乙女ゲーのヒロインとしても性格の分担がキッチリできているという印象を受けました。
「小日向つぐみ」は穏やかで芯が強く、いわゆる女の子らしさのあるヒロインです。乙女ゲーの主人公としては「無難」な性格のキャラクターだと思います。
ここで言う「無難」はけしてマイナスな形容ではありません。恋愛ゲーの主人公に必要とされるものは、基本的には「無難さ」、つまり「非難されにくい良識的な言動」だと個人的には思っています。一人称で楽しむにしても第三者視点で楽しむにしても、いったんヒロインの言動に嫌悪感を抱いてしまうと気持ちよくプレイできないからです。そういう意味で、つぐみのキャラクターはプレイヤーが安心して寄り添えるものだったと思います。
ただ、つぐみはその人格・気質とは関係のない部分で十字架を背負っている気もしました。それはズバリ、「父親が生死不明」という設定です。そのシナリオ上の設定ゆえに、つぐみは「父親のことで落ち込みテニプリキャラに慰められる」くだりを攻略対象キャラの人数分、つまり24回繰り返すことになります。
後で詳しく書きますが、シナリオに一発ネタ感のあるシリアス要素を組み込むのって、キャラ描写的にも周回プレイ的にも得策ではないような気がしました(「気になったところ(山側のキャラシナリオ)」)。
意気消沈描写を毎回見せられると神視点のプレイヤーもさすがに辟易する、慰めるテニプリキャラの対応がどうしても紋切り型になってくる、真相を知っているとキャラ間のやりとりが深刻であればあるほど茶番感がぬぐえない……などが理由として挙げられます。
わかりやすく言うと、つぐみを不安定で湿っぽい状況に置くのではなく、「遭難しちゃったけど頑張るぞ」という普通の方向性で活動させてほしかったです。その方が「父親の生死がまだわからないのに」と余計なことを考える必要もなく、つぐみと一緒に自然な形でドキドキサバイバル生活を楽しめたんじゃないかなーと個人的には思います。
次に「辻本彩夏」ですが、楽天的でサバサバとした性格の、男子にも自然に絡みに行くタイプの女子です。そして、乙女ゲーの主人公としてはかなり弾けたキャラクターだと思います。「つぐみで安定路線を取って彩夏でぶっ飛んだ方向に挑戦したのでは」と感じるような、なかなかインパクトのあるキャラでした。
正直なところ、私が『ドキサバ』にガッツリとハマったのは海編の主人公が辻本彩夏だったからだと思います。アクとクセは強いもののアッサリした性質で嫌味っぽさがなく、お気楽なキャラながら一本筋が通っていて、おバカ系なのにEQはバッチリ高そうで、そして何より面白い。めっちゃ好きです。海編が抜群に楽しかったのも好きなキャラシナリオが海編に多いのも、彩夏の存在に負うところが大きいなーと振り返って思います。
先にも書いた通り、私は第三者視点で攻略対象キャラとヒロインのやりとりを眺めていたいタイプです。だから、単独で面白い上にテニプリキャラと絡んでも打率の高い彩夏は、私にとってすごくチャーミングなヒロインでした。テンポが良くコミカルな男女のやりとりが好きなこともあり、起伏に富んでいる彩夏とテニプリキャラの会話はとにかく魅力的でした。
『ドキサバ』のストーリー感想(44人攻略済み)
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先ほども書いた通り、『ぎゅっサバ』には攻略対象キャラが44人もいます。ただ、プレイし始めた時点では青学メンバーの名前をうっすらと覚えている程度の認識だったんですよね。だから真面目な話、「誰から攻略しようか」と大いに悩みました。44人ってさすがに選択肢が多すぎるので。
そして悩んだ結果どう攻略したのかと言うと、最初から最後まで完全にランダムで選びました。つまり、44人のキャラクターに「山側の越前」から「海側の甲斐」まで順にナンバーを割り当て、アプリで1D100を振って攻略順を決めました。
「せっかく人数多いんだし」と思いつきで始めたことですが、意外にも楽しくプレイできました。序盤でちょっと気になっていたキャラを引いて「ラッキー」と思ったり、同じ学校の生徒や兄弟が連続して驚いたり、ダイス決定ならではのワクワク感がありました。残りのキャラが減ってきた終盤で「いったい誰がラストに来るんだろう」と予想するのも面白かったです(ちなみにラストは乾先輩でした)。
共通シナリオの感想(海側・山側)
※以下には、『ドキサバ』の共通ストーリーの核心的なネタバレが含まれます。未見の方はご注意ください。
ゲーム冒頭で合宿参加メンバーは山側と海側に分かれ、それぞれ手塚と跡部をリーダーとして活動することになります。山側にいるキャラは、青学・不動峰・氷帝・立海(+移植で四天宝寺)のテニス部員。海側に行ったキャラは、六角・山吹・ルドルフ・比嘉・氷帝・立海のテニス部員。
氷帝と立海は海と山の二手に分かれますが、部長である跡部と幸村はともに海側です。また、六角と比嘉が海側に配置されているのは話を作りやすくするためでしょうか(両校とも海のイメージが強く、後の全国大会で因縁が生まれる)。
海側と山側、それぞれのサイドでは異なるストーリーが展開します。山側の方はメンバー内にもともと不和がなく、事を荒立てない大人びたキャラクターが多いのが印象に残りました。一方、海側には最初から強硬な反乱分子(比嘉中メンバー)が存在し、幾度となくギスギスとした空気が流れます。個人的な感想ですが、波乱があって物語として面白いのは海編かなと思います。
各サイドのストーリーは、それぞれのリーダーの性格に合わせた内容になっていた印象です。たとえば海側のリーダーには、多少強引でも有無を言わせずリーダーシップを発揮する跡部がピッタリだったと思います(シナリオ的にはそのせいで波乱が生まれる訳ですが、グループの雰囲気とリーダーの性格の相性という意味ではしっくりときます)。
シナリオ全体については、全国大会前に半サバイバル合宿をする(しかも遭難を偽装して大人たちは身を隠し、中学生だけで共同生活をさせるという仕込みあり)というツッコミどころ満載の設定が面白かったです。ただ、生徒だけで生活をさせるつもりなら、あらかじめ毒キノコやトリカブト、落石といったリスクを除去すべきだろうとは思いました。実際シナリオによっては何人かが怪我をするので、普通なら教師陣が確実に責任を問われそうな気がします。
とはいえ、だいたいの疑問やツッコミどころは「テニプリだから仕方ないね」で解決する範囲内に収まっていたと思います。
気になったところ(山側のキャラシナリオ)
先ほども書いた通り、『ドキサバ』で気になったポイントは山側のキャラシナリオの冒頭部分です。具体的には、序盤に必ず入る「父親のことで落ち込むつぐみをテニプリキャラが慰めたり鼓舞したりする」くだりをやや食傷気味に感じました。
数回なら普通に眺められるんですが、さすがに20回以上似たようなパターンを繰り返されると若干のマンネリ感が否めません。「このやりとり前にも見た」と後になるほど思いました。キャラによっては勇ましすぎる励ましをしたりもするので、「自分でもわからない相手の家族の生死に関して、出会った直後にそんな頼もしげなことを言うのもなあ」と感情移入できなくなる場面もありました。
何より周回していると、つぐみがいつもメソメソしているような印象を受けてしまうんですね。実際は1回きりのことであって、「父親が行方不明なら不安になるのも当然」と頭で分かってはいても、周回を重ねれば重ねるほど「ああ、ここで泣く展開だろうな」とちょっと距離を置いて見てしまう自分がいました。
まとめると、「紋切り型すぎて次の展開を容易に想像できてしまう」、「周回しているとどうしても湿っぽさが鼻につく」という2点がちょっと気になりました。
「行方不明の父親」自体は、終盤のドラマを盛り上げるのにもってこいのファクターです。ただ、「父親はちゃんと生きていました」という落としどころは、「そりゃそうだろう」感も相まって一発ネタに近いオチだと思うんですよね。だから、そのオチをシナリオの必須要素として組み込み、主人公を強制的に深刻な状態に置くのは、(恋愛ゲームかつ周回プレイを前提とするなら特に)すごく良いとは言えない感じの構成だなと感じました。
つぐみの性格と年齢的に、試練として与えるのは「無人島生活に順応できるか/救助は本当に来るのか/周囲とうまくやっていけるのか」レベルの不安でも良かったと思うんですよね。それに対してテニプリキャラが「大丈夫だ」と励ましたり、「くよくよするな」と鼓舞してカッコいいところを見せたり……という流れなら、学生の身の丈にも合っていて自然だし、何より重すぎない展開にできたんじゃないかと個人的には思います。とりたてて深刻なバックグラウンドのない彩夏主人公の海編でもキャラ同士のやりとりやストーリーを充分に楽しめたので、なおさらそう感じました。
また、落ち込むつぐみにあえて厳しいことを言い放ったり(日吉)、やや配慮のないことを言ってギクシャクしたのちに和解し距離が縮まったり(切原)、勇ましいことを言うのではなく別のことに目を向けさせて元気づけたり(菊丸)……と、一味違う対応をしてくれるテニプリキャラもいました。上記のキャラのシナリオは、全体を通して面白いなーと感じることが多かったです。
個別キャラシナリオの感想・山編
詳細な感想は学校ごとの感想記事に譲りますが、この項目でも「山側→海側」の順にキャラシナリオの雑感を書こうと思います。
ピックアップの基準として、「テニプリキャラが魅力的だったシナリオ」と「テニプリキャラとヒロインのやりとりがよかったシナリオ」の2つに分けて書いていきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
まずは山側のキャラについて、「テニプリキャラが魅力的だったシナリオ」をざっと挙げてみます。
- 越前(探索イベントが多いのはさすが主人公。年下枠だけど生意気クール系で純粋にカッコイイ)
- 柳(先生と会話しているような序盤から、意外に嫉妬もするし動揺もする恋愛パートへ。声がすごく好き。ラストの種明かしイベントへの入り方が特殊でテンションが上がる。糖度高めのエピローグもグレイト)
- 千歳(落ち着いた話し方と包容力のある対応が好き。エピローグの仲良し感に和む)
- 大石(途中で揉めるものの大石の手塚への信頼が伝わってくる)
- 乾(ラストの手塚への質問イベが良い)
- 柳生(恐怖の館で展開される怪異に際し、探偵役になって颯爽と立ち回る見せ場あり)
次に、「テニプリキャラとつぐみのやりとりが魅力的だったシナリオ」と理由を以下に書いていきます。
まずは菊丸ルート。のびのびとした明るい自由人キャラなので、思い詰めがちで慎重なつぐみとのコントラストが映えるなあと思いました。上にも書きましたが、要所要所でつぐみを元気づける描写が菊丸のキャラにマッチしていてすごく良かったです。
向日ルートも菊丸ルートとだいたい同じ理由で好きです。お気楽で若干レックレスな性格なので、つぐみとは相性がいいなと思いました(つぐみの方も向日に対しては年の上下に関係なく気安く接している感があって和みました)。イチオシはドリームキャッチャーイベント。全贈り物イベントの中でもとりわけ素敵な内容だと思います。
日吉ルートは日吉がまったくの通常運転なので、つぐみ視点としては新鮮味があってよかったです。キツイことも意地悪もバンバン言う一方、責任感の強さがしっかりと描かれるシナリオなのもいいですね。
切原ルートは最初に攻略したこともあって印象に残っています。妙にラッキースケベイベントが多かったです。切原とつぐみは性格的に正反対と言ってもいいくらいの2人で、それゆえに衝突し雨降って地固まるな展開だったのが面白いなーと思いました。
基本的には同年代と接する方がつぐみも気負わずに話している感じがあり、プレイヤーとしても観ていて楽しかったです。伊武ルートもけっこう良い感じでした。
最後に、山編で文句なしに良いと感じたのはタカさんルートでした。つぐみへの励まし~通常イベント~種明かしイベント~デート~エピローグまでまったくハズレがありませんでした。タカさんの良い人っぷりを実感できる、つぐみが早い段階からタカさんの長所に気づいて評価している、他キャラルートと比べてもかなり積極的にタカさんにアプローチしている、2人のやりとりがとにかく可愛い……といった点が好きなポイントです。
個別キャラシナリオの感想・海編
続いて、海編のキャラシナリオについて書いていきます。海編主人公の彩夏がツボに入るキャラだったこともあり、基本的にはどのキャラのルートも楽しくプレイできました。
まずは「テニプリキャラが魅力的だったシナリオ」をいくつか挙げてみます。
- 赤澤(洞窟イベといい種明かしイベといい、とっさの時の判断力と頼もしさが印象的。おおらかで包容力のあるところも好き)
- 佐伯(文句なしの男前。冷やかし感覚でプレイし始めたのに、最終的にはあまりに余裕あるイケメンっぷりに感服するほかなかった。彩夏が翻弄されっぱなしなのも新鮮)
- 桑原(苦労性で優しいジャッカルの魅力がよくわかる)
- 幸村(さすがはラスボス、エピローグの破壊力が凄まじい。独占欲が強く率直なところも印象的。最終的に彩夏が半ば信者と化していたのも面白かった)
続いて、「テニプリキャラと彩夏のやりとりが良かったシナリオ」をいくつか挙げてみます。
まずは裕太ルート。同年代感が強くて2人の可愛らしさに終始和みました。鳴き砂の浜で遊ぶ2人の一枚絵がマジで欲しかったです。このコンビについては、彩夏が完全に一枚上手で裕太を翻弄しているのも可愛いなーと思います。
葵ルートも彩夏がお姉さんっぽく接しているのが新鮮でした。1年生キャラですが、リョーマとはまた違う切り口で見ていて面白かったです。
次に、天根ルートはやっぱり同年代感があって好きでした。イチオシはオヤジギャグ製作イベント。見ていて楽しいし、ダビデの好感度が上がる理由としても納得の行く内容でした。
同じ「好感度上がるのも納得」系としては、丸井ルートの食材探索イベントが挙げられます。一連のイベントはブン太のキャラクターを際立たせるだけでなく、ブン太の好意が高まる動機としてもうまく機能していた印象です。
「彩夏とのやりとりが面白い」というくくりで絶対に欠かせないのは亜久津ルートで、「彩夏のキャラは亜久津に合わせて造形されたのでは?」と思うくらいに面白かったです。強面の亜久津に物怖じせずに話しかけ、ついには口説き落とし、エピローグでは将来の結婚まで視野に入れる彩夏に笑いました。マジメな話、亜久津と話すたびに彩夏の個性が爆発していて、第三者視点での楽しみが大きいルートでした。
また、木手ルートも好きです。シナリオ的には海編で一番練られていて、シリアスあり波乱ありの大人っぽいルートという印象です。警戒心と自制心が強いキャラなので途中であからさまにイチャついたりはしませんが、木手が裏表のない彩夏に惹かれていく過程が丁寧に描かれていました。ヒビカスイベントの破壊力と逆告白時の喜びっぷり、エピローグのノンストップの甘々感が印象的でした。
沖縄勢のルートは、遠距離恋愛前提のシリアスな流れも含めて見どころが多かったです。ポジション的にヒールな一匹狼なので、攻略するにつれて比嘉中メンバーとの一体感が高まるというか、ストーリーへの没入感が増すのもルートの特長と言えます。
ちなみに44人全員を攻略した現在、『ドキサバ』で一番好きなルートは鳳ルートと千石ルートです。同率1位です。どちらも「テニプリキャラの魅力が伝わってくる&彩夏とのやりとりも楽しいし萌える」という、ソーグッドなシナリオでした。
鳳ルートは妙にラッキースケベイベントが多かったです。ザ・乙女ゲーというか少女漫画っぽい展開が盛りだくさんで(あと一枚絵もなぜか多い)、素直にニヤニヤしました。ただそれ以上に、鳳と彩夏のやりとりにすごく惹かれたんですよね。
性格的には対照的な2人で、でも案外感性や好みが似通っていて、仲が良くなる過程に起伏があって描写も細やかで……と細かく挙げていくとキリがありません。詳しいことは学校ごとの感想記事に譲ります。ただ、最初からエピローグまで余すところなくツボでした。
千石ルートも千石のキャラクターが魅力的に描かれているほか、彩夏とのやりとりに萌えるしグッとくるしで超良かったです。上で亜久津に合わせて~と書きましたが、「彩夏は千石さんとのマッチングの良さも意識して造形されたんじゃない?」と感じるくらいでした。
女の子好きのキャラが戸惑う王道展開、見ていて相性良いなーと感じる楽しいやりとりに加えて、彩夏が千石への好意を自覚する場面がシナリオに組み込まれていたのが何より良かったです。あと、「このキャラにはこの主人公じゃないと」感が強いルートだったのも好きな理由の1つです。
書いていて思ったんですが、つぐみにしても彩夏にしても、特別好きなルートには「主人公側が攻略対象キャラに好意を示す(or好意を自覚する)」くだりがシナリオ内に存在します。タカさんルートしかり、鳳ルートしかり、千石ルートしかり。好意のベクトルの大きさが男子と女子で同等くらいの方が個人的には好みなのかもなーと今回あらためて思いました。
攻略の難易度やボイス、スチルについて
『ぎゅっサバ』にしても『ドキサバ』にしても、攻略の難易度は低いです。話しかけていれば好感度が上昇する仕組みなので、どんなにゲームが苦手な人でもクリアできるフレンドリーな作品だと思います。
好感度が下がるのは、おそらく相手に嘘をついたときだけではないでしょうか。ターゲットのもとに通い続けさえすれば、好感度MAXもたやすいはずです(むしろMAXにしない方が難しい)。
ただ、『ぎゅっサバ』で追加された三角関係エンドや割り込みエンドは、フラグ立てやスケジューリングを含めて相当攻略が難しいです。こういう要素を入れるあたりはさすがコナミ。やりごたえがあって楽しかったです。
一枚絵については、構図が似通っていたりキャラによって枚数に差があった印象です。その他、DSで追加されたタッチイベントのスチル、および主人公2人の立ち絵にやや物足りなさを感じました。まあ他の乙女ゲーでもキャラ間でスチルに差が出ることがあるので、44人もいれば仕方がない気もします。
また、ドキサバは基本的にフルボイスです。声優さんの演技もグレイトでした。千石やタカさん、不二、観月、木手がボイス的な意味で特に印象に残っています。
***総評としては、とても楽しい乙女ゲーでした。ぶっ飛んだ展開やシチュが好きなので、ドキサバの非日常感にはワクワクしました。このゲームをきっかけにテニプリという快作を知ったこともあり、色々な意味で思い出の作品になりました。
実は、他にもいくつかテニプリ関連のゲームを遊びました。PS2のソフトですが、『テニスの王子様 最強チームを結成せよ!』が抜群に面白かったです。キャラゲーとしての作り込みが半端ない上に、原作キャラを自由に集めて試合を組めるのが超楽しいんですよね。「KO勝ち」というスポーツゲームらしからぬ概念があるのもテニプリらしくて笑いました。ナックルサーブ最強説、あると思います。
あと、まだきちんとプレイしてはいないんですが、『ぎゅっサバ』と一緒に『モアプリ(テニスの王子様 もっと学園祭の王子様 -More Sweet Edition-)』も購入しました。勧めてくれた友人いわく「学プリ(モアプリ)の方が好き」とのことなので、そちらを遊ぶのもすごく楽しみです。
ドキサバ感想その2からは、学校別に各キャラクタールートの感想を不定期に書いていく予定です。更新したら追記します。
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※以下は拍手コメントへの返信です。(追記:2020/06/28)
> ことこさん
はじめまして、コメントありがとうございます! 記事を読んでいただけてとても嬉しいです!
オススメしていただいたゲームですが、早速ダウンロードしてきました。公式サイトを拝見しているだけでもめっちゃ面白そうなので、これから大事に遊ばせていただこうと思います。こうしてオススメのゲームを教えていただけると本当に嬉しいしハッピーな気持ちになります。今回はありがとうございました!
> たぬきさん
はじめまして、コメントありがとうございます!
海ヒロインとタカさんルート、本当にイイですよね~他の方の感想を聞けて私も超嬉しいです。たぬきさんのおっしゃる通り、タカさんルートはタカさんの私心のない優しさと二人のピュアなやりとりが本当に素敵ですよね。そこからあの「めっちゃええやん」としか言い様のない幸せエピローグに続くので、トータルで見て最高~!となるのすごくよく分かります。「ツッコミどころはあるけど大好きなゲーム」というご感想にもうんうんと頷いてしまいました。学プリも楽しんできます! 今回はコメントありがとうございました!
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