『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』 世界各国の要人と恋するノベルゲーム 感想 ※ネタバレ注意

かーめるん

「希望の灯火」を探し求める女性向け恋愛ゲーム(乙女ゲーム)、『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』の感想記事です。ネタバレを含みます。制作者は、沢良木由香里(さわらぎゆかり)様。作品ページ(Script少女のべるちゃん)はこちらです。 → 『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ 攻略対象キャラ6人

一部選択肢のあるノベルゲームです。主人公はホテルスタッフとして働くかたわら調香師を目指す女性。主要国の代表が顔を揃える式典に臨時スタッフとして駆り出され、同年代の各国要人たちと知り合います。

攻略対象キャラは6人+隠しキャラ1人。各キャラルートは12章で構成され、終盤の選択肢によってエンドが分岐します。1つのキャラルートをクリアするのにかかる時間は、だいたい3~4時間程度でした。

一般人である主人公が世界各国の要人(王子、貴族)と知り合う、ざっくり概観するならそういうゲームです。そのため、最初は身分差恋愛のロマンス感や苦しさを楽しむゲームなのかなーと思ってプレイし始めました。

しかし攻略を進めるうちに、以下の要素にガッツリ引き込まれました。

  • コミカルからシリアスまで対応、緩急のついたボリュームたっぷりのストーリー
  • ドラマチックで抒情的な演出、章区切りを利用した引きの良さ
  • 攻略キャラと主人公の複雑で細やかな背景設定
  • 恋愛だけではない、攻略キャラの立場を活かしたほどよい政治(経済)要素

一言で言えば、「めっちゃ面白い」に尽きます。数時間かけてキャラルートをクリアしたのに、「早く次のキャラルート読みたい~!」的なテンションになってしまう、それだけグイグイ物語に引き込まれるゲームでした。

『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』は、Script少女のべるちゃんでプレイ可能です。この作品にはリメイクバージョン(『セロシア・キャンドル -希望の灯火-』)も存在しますが、そちらは現在フリー体験版のみが発表されている状態です。

全キャラ攻略したかったので、基本的にはリメイク前のバージョンでプレイさせていただきました(※ダリオに関しては、体験版の方で攻略しました)。

以下は、ストーリーやエンディングのネタバレを含む詳細な感想です(ただし、隠しキャラおよび隠しルートに関しては言及しません)。未見の方はご注意ください。

あらすじ

『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』のあらすじを書きます。

主人公(デフォルトネーム:倉間マドカ)は、調香師を目指す25歳の女性です。かつて調香師だった母親とともにパフュームショップを開くことを夢見て、ホテルとバーの仕事を掛け持ちし、忙しく働いています。

ある日主人公は、勤務しているホテルの支配人から、「王室御用達のカムジェッタ・ホテルの臨時スタッフとして働いてくれないか」と打診されます。

実は、主人公が住むカムジェッタ国では近々、全世界親交式典が開催されることになっていました。ブルダム王国、イムリバ王国、スランビュー王国、ヴァンリーブ王国、そしてプルーシェ帝国。主要国の代表者が一堂に会するのは、先の大戦以来初めてと言ってもいいことです。ゆえに、全世界がこの式典の成り行きに注目している状況でした。

主人公は主要国すべての言語を話せることから、多言語に対応可能なスタッフを求めているカムジェッタ・ホテルに推薦されたのです。格式の高いホテルで働くことに気後れしつつも、主人公は給金の高さに釣られてこの仕事を引き受け、式典の1か月前からカムジェッタ・ホテルで働き始めました。

そして迎えた当日、主人公は式典パーティーで様々な人間たちと顔を合わせます。

ある男性からは初対面で辛辣なことを言われ、ある男性とは初対面で一触即発の喧嘩に発展し、一方で顔の好みがドストライクな青年に出会い、10年来の付き合いであるストーカー疑惑の男性もなぜか会場にいて……と、とにかく目まぐるしい一日を働き過ごした主人公ですが、その最後に待ち受けていたのは衝撃の展開でした。

なんと主人公が顔見知りになった彼らはみな、主要国の要人として式典に出席した人物だったのです。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ グレイのスピーチ

次々に壇上でスピーチする彼らを見て、驚き固まるしかない主人公。呑みこみきれない現実を前に、くじいた足と疲れ切った体を引きずってとりあえず帰宅することにします。しかし、帰路についたところで後ろから声をかけられ……。

ひょんなことから要人たちと知り合った主人公の運命とは? どの要人と親しくなるか、そして終盤にどの選択肢を選ぶかによって、主人公と攻略キャラの結末は様々に分岐します。

ゲームの概要と世界観について

『セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ』の舞台は、現代と同じ文明水準の世界です。ほぼ21世紀の現実世界と同じだと考えてOKだと思います。

登場する架空の主要国家は、カムジェッタ、ブルダム、ヴァンリーブ、プルーシェ、スランビュー、イムリバの全部で6か国(隠しキャラの国を加えるなら、計7か国)。

カムジェッタやヴァンリーブなどは欧米諸国(なかでもスランビューは東欧)、イムリバは中東国、ブルダムは東アジア諸国をモデルにしている印象です。一応人種設定も存在し、カムジェッタやプルーシェなどが白色人種の多い国である一方、ブルダムやイムリバは有色人種の多い国です。ちなみに主人公マドカは、後述するアマネやモルテザーと同じく有色人種です。

大きな特徴として、登場する国々の大半は「君主制」を採用しています(議会は一応存在するものの、立憲君主制というわけではなさそう)。そのため、主要国の要人である攻略対象たちは、第一王子であったり王位を継承できる家柄の人間であったりします。

主要国の中で唯一王政を敷いていない国が「カムジェッタ国」であり、主人公マドカが現在居住している&要人たちが式典参加のために訪れる国も、このカムジェッタです。

攻略キャラは6人(+1人)存在し、それぞれ出身国が異なります。1国に1人の攻略キャラがいるわけですね。以下では主要6か国について、基本的な情報を中心にざっくりとまとめてみました。

ブルダム王国

概要:ブルダム王国は、独自の文化を持つ東方の国です。人種や文化、生活習慣、国民性などの大部分について、日本がモデルの国家だと思われます。

特徴:ブルダム王国の特徴は、世界でも有名な学歴国家であるということ。小学校卒業後の試験によってエリートコースに進むか否かが決まるほか、少なくとも大卒でないとろくな仕事には就けません。その結果、学歴による社会の分断が激しく、貧富の格差が広がり固定化しつつあります。早期選別&学力至上主義な部分については、日本というよりシンガポールっぽい感じですね。

国民性:ブルダムには、真面目で規則正しい国民が多いと言われています。反面、しきたりや体裁にこだわりすぎるところがあり、やや息苦しさもあるお国柄のようです。

攻略キャラ:ブルダム出身の攻略キャラは、前の国王の息子であるアマネ・ブルダムです。現国王はアマネの父の弟(つまり叔父)であり、アマネの父が不幸な事件で亡くなったために王位を継ぎました。現国王には子供がないため、ゆくゆくはアマネが次の国王として即位することになっています。

ヴァンリーブ王国

概要:ヴァンリーブ王国は、経済的に豊かな力のある大国です。先の大戦ではプルーシェ帝国と真っ向から対立しました。そのため、プルーシェとの仲は現在でも冷えきっています。

特徴:その優秀な警察機構において有名なヴァンリーブ王国。今回の式典においても、同国のエリート警官たちが警護を務めています(ヴァンリーブとカムジェッタは特殊な軍事・警察契約を結んでいるので、その他にも色々と融通が利くようです)。

国情:ヴァンリーブは活気ある賑やかな国であり、国王夫妻・第一王子ともに健在です。ただし昨今、国内で王室転覆を企む特殊犯罪組織が暗躍していると言われています。

攻略キャラ:ヴァンリーブ出身の攻略キャラは、ヴァンリーブ警察の警部であるダリオ・ドゥーガルドです。他の攻略キャラとは違う立場にありますが、要人たちとは昔から個人的な付き合いがあるため、ごくフランクに接しています。

プルーシェ帝国

概要:プルーシェ帝国は、先の大戦でヴァンリーブと対立したもう一つの大国です。雪深く、暖かい日の少ない土地柄だそうです。

特徴:プルーシェ帝国の特徴は、他国との交わりを積極的に持たない、閉鎖的かつ排他的な国家であること。ヴァンリーブとの険悪な関係を脇に置いても、移民政策などの点で排外的な姿勢を貫いています。プルーシェ帝室、というより皇帝への畏怖の念は強く、帝室の人間に無礼を働いた者は非常に厳しく罰されることがあるようです。

攻略キャラ:プルーシェ出身の攻略キャラは、皇太子孫のベルナルト・カウペンガウゼンです。冷酷な暴君として名高い老皇帝を祖父に持ち、その人となりは若き日の皇帝に生き写しであると噂されています。ベルナルトがマスメディアの前に姿を現すのはこの式典が初めてであり、各国要人でさえも、ベルナルトの存在についてはほとんど関知していなかったようです。

スランビュー王国

概要:スランビュー王国は、豊かな自然と古い遺跡が美しい景観を織り成す国です。近年主要国入りしたばかりであり、先進国としての体面を意識した政策に傾斜しがちです。そのため、貧富の格差の拡大や犯罪発生率の上昇といった、内政面の課題への対応がおろそかになっていると指摘されています。

特徴:スランビューは、伝統的に有色人種への差別・偏見が激しい国家です。エリート層の人間でさえ人種差別的発言をたびたび行うため、ブルダム王国やイムリバ王国を筆頭に、国際社会からは非難の声が多くあがっています。また、一夫多妻制を採用しているなど、近隣の主要国とは文化的な隔たりも見受けられます。子だくさんの家庭が多いことも特徴の一つです。

攻略キャラ:スランビュー出身の攻略キャラは、公爵家の跡取り候補であるセルジュ・ブラディスラフです。スランビューの特殊な王位継承システムによれば、セルジュは条件さえ満たせば王位争奪戦に加わることのできる人間です。しかし、父である公爵の期待に反し、セルジュ自身は王位はおろか家督相続にすら興味を抱いていません。

イムリバ王国

概要:イムリバ王国は、乾燥地帯に位置する国です。軍事国家として世界に名を馳せ、各国に優秀な諜報員を潜り込ませていると噂されています。

国情:豊富な石油資源を有するイムリバですが、近隣諸国とは国境や資源をめぐって一触即発の緊張状態にあります。また、現国王が高齢であるため、近頃は有力な一族内部での家督争いが熾烈さを増しています。イムリバでは古くから毒による暗殺がお家芸であるため、要人たちの毒への警戒心は非常に強いようです。

攻略キャラ:イムリバ出身の攻略キャラは、王家に連なる有力な一族の三男であるモルテザー・イムリバです。イムリバの王位を継承する資格を持つのは、王家筋の一族において家長となった者のみ。イムリバの姓を戴くモルテザーは、家督を継承し王位を継ぐことを望んでいます。

カムジェッタ国

概要:カムジェッタ国は、「永久平和国家」を自称し、あらゆる戦争に関与せず中立を貫いてきた国です。カムジェッタ語は世界の共通語であり、近年では国をまたいだ式典や催しを数多く開催しています。
主人公マドカが居住し、導入部で全世界親交式典が開催されるのもやはりこの国です。各キャラルートに入っても、前半のうちはカムジェッタを舞台にストーリーが進行します。

特徴:カムジェッタの特徴は、他国と違って王政が敷かれていないことです。政治を取り仕切るのは議会、とりわけ貴族院です(民主化されたというより、実質的には議会を盾に貴族たちが王室に成り代わったようなイメージ)。王政が崩壊し王室が消えたのは、わずか10年ほど前のことになります。

国民性:国民性はおおらかで陽気。時間にルーズでおおざっぱな人間が多いという評価もあります。また、主要国の中でも公務員の腐敗が深刻であると指摘されています。

攻略キャラ:カムジェッタ国出身の攻略キャラは、第一王子であるグレゴリウス・カムジェッタです。王室は先に述べたようにすでに存在しないものの、国王とともに一応は王子として扱われています。

リメイクバージョンについて

先ほども書きましたが、『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』にはリメイク版が存在します。タイトル名は、『セロシア・キャンドル -希望の灯火-』。現在フリー体験版が公開されています。

リメイクバージョンとオリジナルバージョンの大きな違いは、まずキャラクターの立ち絵だろうと思います。

以下に画像を引用させていただいた通り、アマネ以外のキャラの立ち絵が変更され、絵柄が統一されました。前列の2人がダリオとアマネ、後列の4人が左からグレゴリウス、セルジュ、ベルナルト、モルテザーです。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ リメイク 攻略対象キャラ6人

その他、リメイク版にはサイドストーリーや各国観光といった追加コンテンツも予定されているそうです。

リメイクバージョンの体験版でプレイ可能なのは、今のところダリオルートだけです。リメイクとオリジナルでストーリーが一部変更される可能性もあるそうなので、完成版が発表されたらぜひプレイさせていただきたいなーと楽しみにしています。

各キャラクタールート&エンディング感想

この項目では、主要国の要人6人のルート&エンディングの感想を書きます。隠しキャラと隠しルートに関しては触れません。

  1. ベルナルト(理由:普段なら最初に攻略しないタイプのキャラだから)
  2. ダリオ(理由:リメイク体験版でもプレイしてみたくなったから)
  3. セルジュ(理由:ベルルートのセルジュが格好良かったから)
  4. モルテザー(理由:セルジュの幼なじみ繋がり)
  5. アマネ(理由:真相解明キャラ、グレイと迷って先に攻略)
  6. グレゴリウス(理由:裏・真相解明キャラ、トリに攻略したかった)

上記の順(&理由)で攻略しました。個別感想もこの順に書きます。先にことわっておくと、キャラによって感想の量に差があります。というより、グレゴリウスが一番好きなのでグレゴリウスの感想だけ超長いです。

主人公のことは基本的に、デフォルトネームである「マドカ」と記述します。ストーリーとエンディングの詳細なネタバレや、あとがき&裏話のネタバレを含みます。ご注意ください。

ベルナルト・カウペンガウゼン/Bernard Kaupengouzen

ベルナルトは、プルーシェ帝国の皇太子孫です。父母ともに健在ですが、主に資質の問題から、皇帝の息子であるベルナルトの父親ではなく、孫のベルナルトが皇位継承者と目されています。

プルーシェ帝国は閉鎖的な国であり、後継者であるベルナルトの存在も長く隠されてきました。ベルナルトは老いた皇帝の若き日の姿に生き写しであり、その人となりもまた、冷徹な暴君である祖父とよく似ているらしいと噂されています。

主人公マドカは、パーティー会場で転びかけたところをベルナルトに助けられます。同時に高圧的で辛辣な言葉を投げかけられたため、ベルナルトに対してけして良い印象は抱かなかったマドカ。しかし彼女は、ひょんなことからベルナルトの秘密を知ってしまいます。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ ベルナルト

ベルナルトは最初に攻略したキャラでした。主人公に対して好意的なキャラからケンカ腰のキャラまで一通り網羅されていますが、ベルナルトは、初登場時は辛辣な態度を通すキャラクターです。

ところで、恋愛ゲーをプレイするとき、「どのキャラから、またどの順で攻略するか?」は人によって様々だと思います。最初はついこういうキャラを選んでしまう、キャラ同士の関係性を意識して攻略を進める……など、自分なりのパターンが決まっている方も多いのではないでしょうか。

私の場合、「ラストに誰を攻略するか」を重視しがちです。だからエンディングをいくつかクリアした段階で、「最後に攻略するキャラ」を想定して攻略を進めます。傾向的には、主人公と関わりが深いorストーリー上重要なポジションを与えられているキャラを最後に残すことが多いです(たとえば今作の場合、アマネとグレイで迷った結果、後者をラストに攻略しました)。

一方、最初に攻略するキャラクターはだいたいフィーリングで選びます。もちろん一応の基準はあって、キャラ設定やストーリーが王道的で、とっつきやすいキャラだとといいなーと願ってチョイスします。

そういう基準でいくと、ベルナルトはまず1番手には選ばないタイプのキャラです。主人公に辛辣&冷酷そうなキャラは、できればゲーム世界に慣れてきた中盤あたりに攻略したい気持ちがあります。

じゃあどうして初手ベルナルトだったのかと言えば、「普段ならまず最初に選ばないキャラを攻略してみよう」と唐突に思ったからです。そして幸運なことに、この選択は個人的には大正解でした。ベルナルトを最初に攻略したおかげで、この作品をより楽しめたような気がします。

ベルナルト(以下「ベル」)は、「冷酷で厳格な男だ」「傲慢で暴君の祖父にそっくりだ」と噂されているキャラであり、実際本人もそのようにふるまっています。

しかし実は、ベルは冷酷でも厳格でも傲慢でも暴君でもなく、周囲のイメージに合わせて演技しているだけだったりします。素のベルは、神経質で体が弱く、大事の前には胃薬を手放せないような青年です。言ってしまえば、ヘタレなキャラなんですね。

ベルルートの面白さというかユニークなポイントは、たいていはルート中盤くらいで行われる「ギャップ披露」が、序盤でドーンと展開される点だと思います。かつ、「実はヘタレ」という落差を、(パッと見)高飛車&冷徹な男性キャラに持ってきた点も新鮮だなと感じました。

たいていの恋愛ゲームでは、ストーリーを進めて仲良くなった頃に、攻略キャラの意外な一面が見えてくるものだと思います。たとえば、気が強いように見えて案外臆病なところがあるとか、好意が高まると軽いノリで接してこなくなるとか。そういったギャップの発見は、「ずいぶん仲良くなれたんだな」というプレイヤーにとっての指標にもなります。

しかしベルルートの場合、「高飛車クールと見せかけて実は素直なヘタレ」という、言ってみれば大オチが序盤で開示され、以後はずっとヘタレなベルを相手に話が進むわけです。冷ややかで気位の高いキャラってなんだかんだ需要が高いと思うので、冷酷!残忍!なテンションが完全なる演技だと判明したときは、なかなか思い切ったキャラ造形だなーと感じました。

ただ、個人的には素のベルが好きです。愛称の「ベル」で呼びたいのも、ありのままのベルナルトに愛着が湧いたからだと思います。

ルートを攻略するとわかりますが、ベルはかなり弱点の多いキャラです。胃が弱い、気管支が弱い、気難しい、緊張しい、人見知り……パッと挙げてみるだけでも色々あります。必死で周囲の望む姿を演じているものの、本来のベルは恐怖を以て統治する君主には到底なれない人間であり、本人もそのことを痛感しています。

正直に言えば、「こうも情けない感じの描写が続くとは」と最初はやや唖然としました。おいおいと思いながら話を進め、ベルがガラの悪い男二人を前にマドカを置いて逃げたシーンで呆れがピークに達しました。ベルマジか、合理的ではあるけど仮にも攻略対象キャラがそんなことをしてもいいのか、ベルのカッコいいところをまだ見ていない気がするぞ、と。

しかしそこまでいってようやく、呆れながら「可愛い人」とベルを表現するマドカの気持ちがわかった気がしました。ベルは(終盤までは)正直なところ格好良くはないです。ところが、「ダメなところが可愛い男」選手権があったら、確実に本選出場できるレベルで「可愛い人」なんですよね。

そういう心境になると、以降は情けない自分を取り繕わず、マドカに素直な信頼を寄せるベルを応援したい気持ちになりました。ベルルートはベルの成長物語なんだと呑み込むこともできたので、四苦八苦しながら善い君主になろうと頑張る終盤のベルを見て感慨深くもなりました。

最終的にはベルを好きになれたので、もう少しルート内でベル本人にスポットライトを当ててほしかったなと感じました。具体的には、終盤で隠しキャラが美味しいところを持っていきすぎじゃないかなと思いました。そういうタイプのキャラではないのかもしれませんが、もうちょっとベルにストレートにカッコいい見せ場がほしかったなーというのが素直な感想です。

ところで、上で「ベルを1番に攻略して大正解だった」と書きました。ここで理由を述べると、「他キャラルートでベルを見ると楽しくなって一度で二度美味しいから」です。

実は、ベルの「病弱さ&気弱さ&素直さ」は、他のルートではかなり巧妙に隠されています(そこがベルルートのキモなので当然ではあります)。伏線として、部屋の清掃に神経を尖らせていたり友達に対してフレンドリーだったりといった描写はあるものの、他キャラルートのベルはヘタレで病弱なキャラにはまず見えません。

そして、それこそがすごく楽しいポイントです。クリア済でベルの本来の姿を知っているからこそ、クールに水煙草をくゆらせたり、「誰にでも言いたくないことの1つや2つや3つある」と語るベルナルト皇子がめっちゃ面白く見えるわけです。実は煙草苦手なのに頑張って吸ってるんだよなーとか、ベルの場合言いたくないことは3つ程度じゃ済まないだろうとか、思わず笑えてくるわけです。

そういう意味で、他キャラを攻略する過程でさらにベルに愛着が湧いた感があります。たとえばベルの次にダリオルートを攻略しましたが、ベルの唯一の友人であるノアの正体が明らかになったときは、真っ先にベルのことを思い出しました(マジで笑いました)。

ダリオ・ドゥーガルド/Dario Dugald

ダリオは、ヴァンリーブ王国の警部です。第一王子に付き添ってカムジェッタを訪れた彼は、式典でも要人警護を担当しています。

世界有数の警察機構で要職にあるものの、ダリオ本人は一般人です。しかし、アマネたち他国の要人とは昔から付き合いがあるようで、ごく気さくに付き合っています。唯一ベルナルトだけは腐れ縁のライバルであり、表向きは仲が悪いようです。

式典当日にダリオと顔を合わせたマドカは、初対面にも関わらず、彼と一触即発の険悪ムードに陥ります。しかしその夜、怪しい男たちに路地裏で命を奪われかけたマドカを救ったのは、他ならないダリオでした。以降ある理由から犯罪組織に付け狙われる羽目になったマドカは、ダリオの保護を受けつつ、組織を追う彼に協力することになります。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ ダリオ

ダリオルートのコンセプトは、「ジェットコースターのような恋」。ダリオが警官&特殊犯罪組織がストーリーに絡むこともあって、クライムサスペンスめいたスリリングな展開が続きます。エンターテインメント的な面白さで言えば一番のルートかもしれません。見どころたっぷりで先が気になって仕方がありませんでした。

特殊な言語で話す犯罪組織の人間のやりとりを聞き取ってしまったことから、マドカは彼らに命を狙われることになります。マドカが聞いてしまった言葉の意味と、犯罪組織のボスの正体が明かされたときは、「そういうことか」と膝を打ちました。

そこから怒涛のクライマックスになだれ込むわけですが、終盤の展開にはドキドキしっぱなしでした。ダリオの友人や身内に関して伏線がきちんと張られていたからこそ、クライマックスであれだけ盛り上がれたのだと思います。

こう書くと常にスリリングな印象が続くようですが、ダリオとマドカが着実に心を通わせるシーンや穏やかな日常シーンもあり、しっかりと緩急のついたルートになっています。
『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』は、緩急のある構成が何より巧みだなーと思いますが、それを強く感じたのは、まずダリオルートにおいてでした。

攻略キャラのダリオについては、真面目な話、「カッコいい」としか言いようのないキャラでした。ここぞというときに絶対に外さずキメにくる、それがダリオというキャラクターの印象です。これだけ格好良い攻略キャラも珍しいというか、「マジに格好良すぎる」と攻略中に何度思わされたかしれません。

一つ例を挙げるなら、「いつかお前の中でこの草原をセロシア・キャンドルの花畑以上の場所に~」からの、「ここにセロシア・キャンドルの花畑を作ろうと思っている」は反則だと思いました。どこまで隙が無いんだ~格好良すぎる~と思うしかなかったです。

短気で口が悪いものの、面倒見がよく根は優しい。そんなダリオのキャラクターはストレートに魅力的で、マドカが口喧嘩を繰り返しつつも彼に惹かれる理由がよくわかりました。

一方で、国と仕事に対しては真摯であり、若干危ういくらいに滅私奉公の覚悟を抱いていることは意外なギャップでした。他ルートで明かされる真実を思うと、マドカにとって特別な存在である父親の姿がダリオに被るのも納得です。
終盤になるにつれてマドカがダリオに「生きてほしい」と望むようになり、ダリオもそれに応えて変化していく……という流れも綺麗でした。マドカの中で、父親とダリオの面影が最後には分かれる描写もよかったです。

ダリオとマドカは、「第一印象は最悪」という古くは『自負と偏見』から続く恋愛ものの黄金律を押さえた二人です。しかし、実は当人同士も忘れているつながりがあったりします(おまけエピソードより)。アマネとの関係といい、エピローグのタイトル名といい、ダリオはかなり美味しいポジションにいるキャラだなと感じました。

セルジュ・ブラディスラフ/Serge Vladislav

セルジュは、スランビュー王国の公爵家の人間です。グレゴリウスやモルテザーとは幼馴染みであり、今回の式典には父に付き添って出席しました。

草花を愛する寡黙な自由人であるセルジュは、田舎での質朴な暮らしを好んでいます。一方で他人と積極的に関わることを避け、何より生家である公爵家を忌避しているようです。父のブラディスラフ公爵は五人兄弟の末っ子であるセルジュを跡取りと見込んでいるものの、当のセルジュに家督相続の意思がないことを嘆いています。

主人公マドカは、セルジュの兄に思わぬちょっかいをかけられ、絶体絶命のピンチに追い込まれます。セルジュは気乗りしないながらも奥の手を使ってマドカを救いますが、そのことが更なる波乱を二人にもたらすことになります。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ セルジュ

セルジュルートの特徴は、なんといってもツカミのインパクトがピカイチなことだと思います。第一章からエンジン全開で、なんて波乱万丈な幕開けなんだろうとワクワクしました。
もちろん序盤が面白いだけでなく、セルジュというキャラの魅力や背景設定を丁寧に描写しつつ、終盤までプレイヤーの心を掴んで離さないルートだったと思います。

選択理由の中でも書きましたが、ベルルートでのセルジュの決然とした態度がまず印象的でした。

血と心の通った「家族」であったプルーシェ帝室を襲った悲劇に対し、セルジュは憤りを露わにし、「自国の政府に掛け合ってベルナルトに加勢する」とまで言い放ちます。それまでの寡黙さ、政事への関心の薄さとはかけ離れた激しい反応に、「何がそこまでセルジュの逆鱗に触れたんだろう」と大いに興味をそそられました。

そういった興味を抱きつつプレイしたせいでしょうか。セルジュが生家であるブラディスラフ公爵家を敬遠し、父母を拒絶する理由が明かされるシーンでは、心を揺さぶられました。セルジュ視点での過去エピソードを読んでから見返すと、セルジュの告白をより悲しく思いました。

まずこのシーン、別荘の周囲の景観が夢のように美しいんですよね。月明りの下、風が吹いて湖が波打つたびに夜光虫が輝きを放ち……と、非常に幻想的です。セルジュはその景色を前に、この別荘を以前所有していた人のことを教えてくれます。

セルジュが「家族というもの」に絶望し、周囲の人間を信じられなくなった経緯は、事実として受け取るだけでも胸が痛くなるものです。しかし、別荘周辺の自然の美しさと併せて提示されるからこそ、いっそう悲壮感のあるエピソードになっていると思います。

セルジュの愛した人がおそらく喪失感を抱え、ひとりきりで湖を眺めていたこと。その人がまさにその別荘で悲劇に見舞われ、貶められ、今はもう帰らぬ人であること。そしてセルジュが、その日から絶望に暮れて生きてきたこと。

そんないくつもの悲しい出来事が、湖を前にうち沈むセルジュの姿にオーバーラップして見えるような心地でした。湖と夜光虫は、ここではセルジュとセルジュの大切な人をつなぐものとして機能していた気がします。

「彼」は孤独のうちにあって湖を眺めていました。美しい夜光虫の輝きに心を慰められたのか、「彼」はセルジュにもこの光景を見てほしいと思っていたようです。
セルジュは「彼」のものだった別荘を買い取り、やはり「彼」と同じように、独りきりで生活し始めました。しかしセルジュにとって、「彼」が見てほしいと願った情景はただ美しいだけではなく、自身の罪を思い起こさせるものでもあったわけです。

だから、夜の湖が綺麗であればあるほど、セルジュが孤独と後悔のうちに生きてきたことが心に迫ってくるようでつらくなりました。淡々とした語り口ながら、「本当の家族」を失った彼の悲しみが伝わってくる、名シーンだったと思います。

セルジュ本人に関しては、心を閉ざしている序盤から、徐々にマドカと打ち解けていく過程が細やかに描かれていた印象です。

あとがきにもありましたが、セルジュ自身はマドカのトラブルに巻き込まれた形なんですよね。だから最初は、マドカと関わるにも渋々といった態度が目立ちます。そもそも彼は過去のトラウマから周囲に対して心を閉ざし、幼なじみであるグレイやモルテザーとさえ目を合わせられない状態でした。

そんなセルジュが、裏表のないマドカにだんだんと心を開き、抑えてきた感情を取り戻し、いつしか仮初めの関係を惜しむようになる……それがセルジュルートの概観と言えます。

初期状態でも、セルジュの飾らない優しさや抱える心の傷の深さはわかります。しかし仲良くなるにつれて、セルジュの芯にある強さや他者への思いやりがよく分かるようになるんですよね。だから、マドカが自分でも気づかないうちに、ゆっくりとセルジュを好きになる流れにも共感できました。

個人的に印象に残ったのは、セルジュが街路に花を植える奉仕活動をしているくだりです。初見では、草花が好きなセルジュらしいなーと単純に思っただけでした。しかしのちに、その活動に単なる緑化以上の深い意図があるとわかり、セルジュの思慮深さや現実的な思考に感銘を受けました。

彼は隠遁生活を望む自分を指して「利己的」と言いますが、マドカも感じた通り、実は市井の人のために無欲に働くような人間です。
後半明らかになりますが、スランビューは社会的弱者が国の発展に取り残される構図が急速に目立ち始めた国です。セルジュはそうした現実をとらえ、弱い立場の人のために、名声も金銭も求めず自分のできることを実行し続けています。

制作者様の裏話の中に、「セルジュは実は一番要人向き」というお話がありました。後半スランビューが危機に陥ったときの行動力もそうですが、「自分の立場でできること」を理解した上で淡々と実行するセルジュは、たしかに胆力のある人だと思います。
終盤に入る中、彼の要人としての能力や今まで積み重ねた行いが評価される展開には、なかなかのカタルシスがありました。

ただそれだけに、セルジュが完全にスランビューとの関係を断つ結末は読めませんでした。

セルジュとマドカの幸せを思えば、人種差別が激しいスランビューに残るよりは、カムジェッタに来た方が良いのはたしかです。しかし、スランビューの問題が完全に解決したとは言いがたいままラストに向かったので、ちょっと気がかりに思いました。裏話にもあった、もともとの結末の方が個人的にはしっくりきたかなーという印象です。

まあ、ヘレナ姉さまの婚約者(モルテザー似)が王位を継承すれば、スランビューの状態も少しはよくなるのでしょうか。弁は立つもののうっかり失言と問題行動の多いジョルジェが国王になったら、スランビューが主要国から外れるのは確実らしいので、婚約者にはぜひ頑張ってほしいものです。

あと、セルジュルートはひょっとすると、全キャラ中一番甘い展開が多いんじゃないかと感じました。モルテザーが冷やかすくらいくらいに二人が仲良くなる手前のシーンとか、けっこう踏み込んでるなーとプレイ中は驚きました。淡泊に見えて実は率直で情熱的なところも、セルジュの魅力ですね。

モルテザー・イムリバ/Morteza Imriva

モルテザーは、イムリバ王国の有力な一族の人間です。に籍を置いており、今回は兄二人の体調不良により代理としてカムジェッタに赴きました。

物腰柔らかで人格者然としたモルテザーは、他国の関係者にも覚えめでたい人物です。しかし、彼と親しいグレゴリウスやセルジュら要人たちは、モルテザーの裏の一面をよく知っています。

主人公マドカは、偶然にモルテザーの裏の顔を目撃してしまいます。以降、反応が素直なマドカをからかっては楽しむようになったモルテザー。彼はマドカの語学の堪能さを見込み、彼女を新しい秘書として雇用することを思い立ちます。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ モルテザー

モルテザールートは、良い意味での意外性をたくさん感じられるルートでした。モルテザーのことが好きになれる、かなり満足感のあるストーリーだったと思います。

「穏やかに見えて苛烈」と形容されるモルテザー。攻略キャラの中では一番の年長者であり、パッと見は人当たりの良い要人然とした人物ですが、実はドSで腹黒いキャラだったりします。
その二面性は他キャラルートでも容易にわかるポイントなので、ルート序盤の展開にさほど驚きはしませんでした。

しかし、穏やかな外見と苛烈な一面を通過した先に、「もろく弱い内面」が見えてきたときは正直言って驚きました。

たとえば後半、モルテザーが倒れる場面があります。物理的なダメージを負わされたためではなく、ある過去に言及されたために、精神的動揺がピークに達して倒れるわけです。その事実は、モルテザーが普段の彼(の外面)とは乖離した「弱さ」を抱えていること、そしてその深刻さを伝えてくれるものだと思います。

あえて誤解を恐れずに書くなら、攻略キャラ6人の中で、もっともシリアスな「弱さ」を抱えているキャラはモルテザーだと思います。

モルテザーの弱さや脆さといったものは、彼のもともとの気質に起因するものではありません。過去に精神に痛手を負わされ、その傷がまだ癒えていないがためのものです(同じように弱さを抱えているとはいえ、精神的には健やかで、家庭環境が悪くはないベルとはそこが違います)。

言ってしまえば、現在のモルテザーは「マイナスの状態」にあります。モルテザー自身、自分が多くを失い、痛みを抱えてしまったことを自覚しています。彼が家督と王位を欲するのも、根本的には「失われたものを少しでも取り戻したい」という切なる願いゆえです。

つまり、モルテザーは「痛みと喪失を知っている人間」なんですね。その事実は、モルテザーの優しさを思うに重要なことだと思います。

攻略中に、モルテザーが他者に見せる繊細な優しさや思いやりに感じ入ってしまうことが何度かありました。
「繊細な」と書いた通り、けして単純な優しさではなく、相手のことを心から考えた上での優しさです。それは外面の温厚さや内面の苛烈さから来るものではなく、彼の抱える弱さから来るものなのではないかと感じました。

「弱さ」を抱えてはいても、モルテザーは「弱い人間」ではないと思います。弱い人間は、自分の抱える弱さを悪意に変え、他者を傷つけることがあります。しかし、モルテザーはむしろ他者に対して優しく、周囲をないがしろにはしない人です。

シリアスな場面では、モルテザーは時に親しい人に辛辣な言葉を投げることがあります。しかしそれは建前や必要に迫られてのものであって、その本心に気遣いや情があることは十分に感じられるのです(幼なじみのセルジュ&グレイルートでのモルテザーには、彼のそういった気質がよく表れていると思います)。

そういうわけで、ストーリーを追う中でモルテザーのことがとても好きになりました。マドカとの交流を通し、モルテザーが少しずつ心の平穏を取り戻す過程も細やかに描写されていたと思います。
マドカにとってのモルテザーが「鏡写しの自分」であること、モルテザールートのテーマが「赦し」であることも含め、二人が心を通わせる流れはとても自然なものでした。

また、モルテザールートを攻略して、ベルルートのプルーシェ内乱イベントでモルテザーが煮え切らない反応を見せていた理由が理解できました。ベルルートでははっきりしない対応だなと感じましたが、モルテザーも相当苦しい立場にあったんだとわかって申し訳ない気持ちになりました。

プルーシェ内乱イベントはモルテザールートの山場です。このイベントは、モルテザーはもちろん、彼の幼なじみであるグレイやセルジュ、そして主人公マドカの見せ場でもあったと思います。モルテザーをさりげなくフォローする親友二人の優しさに感じ入り、マドカが涙をこらえて自転車をこぐシーンではつい目頭が熱くなりました。

エピローグでの「イムリバを強く優しい国にする」という宣言は、まさにモルテザールートの締めにふさわしい言葉だったと思います。平常運転ながらも、素直になって気持ちを伝え合うモルテザーとマドカを祝福したい気持ちになりました。

アマネ・ブルダム/Amane Bulldam

アマネはブルダム王国の第一王子です。今回は叔父である国王とともに式典に出席しました。

実直で何事もそつなくこなすアマネは、礼儀正しく公務に熱心で、国内外の評判が高い王子です。年に見合わぬ落ち着いた雰囲気があるものの、彼を昔から知る者は、「子供の頃のアマネは今とは違っていた」と言います。

主人公マドカは、式典で出会った好みど真ん中のイケメンであるアマネに思わず見惚れます。一方のアマネは、マドカが調香したパフュームに気づいて動揺した様子を見せます。アマネと仲を深める過程で、マドカは忘れていた過去の記憶と向き合うことになります。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ アマネ

アマネは、攻略キャラの中でも一番手と言っていいキャラクターです。

各攻略キャラのルートにおいては、たいていストーリーを象徴する花が出てきます。ベルならシザンサス、セルジュならカランコエ、モルテザーならジャスミンといった感じです。
アマネの場合、その象徴となる花は、タイトル名にも入っている「セロシア・キャンドル」。ここだけに注目しても、アマネというキャラクターが重要なポジションにあることはわかります。

アマネルートは、この作品における真相解明ルートに位置づけられます。真相とはもちろん、他のキャラルートでさまざまに匂わされる「主人公マドカの過去」です。

他のルートではさらっと通過する篠島ミツル名誉回復イベントの詳細も含め、カムジェッタに移住する前のマドカの過去、そしてアマネとマドカの隠された過去が明らかになります。

制作者様の裏話によれば、アマネは要人の中ではもっともオーソドックスでまともなキャラだそうです。
たしかに、他キャラがわかりやすく説明しやすい派手な個性を持っているのに比べ、アマネは落ち着いたキャラクターだと思います。アマネ自身が他の要人(縁者のダリオを除く)に対して一歩引いた態度をとっているのも、そう感じる理由の一つかもしれません。

しかし、いざキャラルートを攻略してみると、アマネの魅力がひしひしと伝わってきました。同時に、このゲームの原型がアマネとマドカの恋物語であることもよく理解できました。クールで優しいアマネが秘める、マドカへの一途さが何より印象的なルートだったと思います。

アマネがかつてマドカと近しい人間であったこと、おそらく悲劇が起こってマドカと引き離されただろうことは、他のキャラのルートを読んでいても分かることです。それでも、マドカとその家族を襲った事件の残酷さ、それによってアマネとマドカがどれだけ傷ついたかを知ったときは、痛ましい気持ちになりました。瀬伍門許すまじ。

ルートの中盤を過ぎたあたりから、抑制的かつ自罰的に振る舞うアマネが気の毒に思えてならなかったです。アマネがマドカに対して無償の献身や愛情を捧げるほどに、プレイヤーとしては、「アマネにも幸せになってほしい」と思わずにはいられませんでした。

アマネは「マドカが幸せならそれでいい」という思考ができる人だったりします。たとえば、クリア特典のおまけエピソード(他キャラルートにおけるアマネの心境をつづったもの)とか、アマネが一途すぎて切なくなるくらいでした。

あと、運命の三つ巴手前の、アマネが幼少期からマドカとの約束を心の支えに生きてきたことがわかるくだりには泣けるものがあります。ひたむきさにグッとくると同時に、ブルダムでのアマネの孤独がうかがわれて心が痛みました(父を亡くし、母とも心理的距離ができてしまったから仕方がないのか)。

そういったもろもろの事情もあり、「報われてほしい」と一番感じたキャラはアマネだったかもしれません。たとえば、「一緒にダンスを踊るなら相手はマドカと決めていた」という告白には、いじらしすぎる~と思うほかなかったです。

また、アマネは素敵な年下キャラでもありました。彼は主要攻略キャラ6人の中では最年少であり、25歳のマドカよりも5歳年下です。そのわりに、年下キャラにありがちなツンツンした態度ではなく、素直かつクールな態度を貫くのが新鮮でした。基本的に大人びたキャラであり、マドカに対する負い目があるからでしょうか。

そして、そんなアマネがあからさまに拗ねるという意味で、「ダリオへの嫉妬シーン」は貴重だったと思います。シンプルに可愛かったです。年下らしからぬ気負いのなさと年下ならではの気後れを、良いバランスで成立させているアマネの造形は魅力的だと思います。

ところで、メインだけあってアマネエンドのハッピーエンド&エピローグは非常に印象的でした。最後に流れる歌は、歌詞も曲調もアマネルートにぴったりですね。あらたまった敬語でマドカに指輪を差し出すアマネと、タイトル(『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』)が綺麗に回収される展開に感動しました。

グレゴリウス・カムジェッタ/Gregorius Comejetta

グレゴリウス(通称グレイ)は、カムジェッタの第一王子です。カムジェッタでは10年前に王政が崩壊したものの、形式上王子として扱われています。

常に明るく笑顔を絶やさない、要人たちのムードメイカー兼トラブルメイカーであるグレゴリウス。カムジェッタのお国柄かお気楽な雰囲気を漂わせている彼ですが、実は自国の政情を注視しています。

主人公マドカとグレゴリウスは、ホテルスタッフと常連客として10年来の付き合いです(互いが15歳と16歳の頃からの知人)。好意をアピールし続けるグレイに、ストーカー疑惑を抱きつつ交流してきたマドカ。しかし式典当日、彼がカムジェッタの王子であることを知って驚愕します。

セロシアキャンドルをあなたに捧ぐ スクショ グレゴリウス

モルテザーを攻略した後、アマネとグレゴリウスのどちらをラストに残すべきかでひとしきり迷いました。ベルの感想の中でも書きましたが、最後に攻略するキャラは「ストーリー上重要ポジションにある」か「主人公と関わりの深い」キャラにしようと考えていたからです。

上記二つの基準を踏まえるなら、キャラの紹介順的にもポジション的にもアマネだろうと思いました。ただ、いくつかのルートをプレイする中で、「グレゴリウスも相当重要なポジションにいる、マドカの過去に関わるキャラなのでは?」と強く感じたんですよね。そういうわけで、トリとしてグレゴリウスを攻略することに決めました。

この選択は、個人的には正解でした。というのもクリア直後に、「もう他のルートを攻略できそうにない」という心境になったからです。恋愛ゲームでそういう風に感じることって初めてで戸惑いましたが、同時に、「ここまで『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』をプレイして本当によかった、グレゴリウスルートを最後に取っておいてよかった」と心から思いました。

そういうわけで、グレゴリウスの感想はちょっと長くなります(基本的に「グレゴリウス」呼びで統一していますが、文章が長くなったり繰り返しのある部分では「グレイ」と書いています)。

ミステリアスなグレゴリウス

実はこのゲームの攻略を進める中で、一番気になっていたのがグレゴリウスというキャラでした。導入部をプレイするだけでもわかりますが、グレゴリウスはマドカに対して好意マックスのキャラクターです。好意をアピールしすぎて当のマドカにハイハイと流されるくらいに、マドカのことが大好きなキャラクターです。

一方、グレゴリウスに関しては「ナンパな女好き」という評価もありました。だから最初は、よくいるリップサービスに余念のないプレイボーイキャラなのかと思っていました。ついでに本人が積極的に三枚目として振る舞っていることもあって、明るいお気楽キャラなのかなーとも思っていました。

しかし2人くらい攻略したところで、「グレゴリウスは言動通りのキャラクターではなさそうだ」と感じ始めました。端々で実は思慮深かったり、マドカの過去を気遣っているらしい描写が見受けられたんですよね。
また、三枚目&いじられキャラに見えるのは、性格に加えて個性豊かで忙しい要人たちに集団行動をさせる(イベント企画人としての)役割や話にオチを提供する役割を担っているせいでもあるらしいと感じました。

そもそも本当にお気楽なだけのキャラなら、シリアスシーンで印象的な活躍はできないはずです。しかしグレゴリウスはシリアスシーンにおいても一定の出番があるので、なおさら外面だけで判断してはいけないキャラだろうなと思いました。

そして更にプレイして、「グレゴリウスはガチでマドカのことが好きなんじゃない?」と感じるようにもなりました。感じると同時に、今までのグレイの言動を思い返して「マジで?」と動揺しました。

今までギャグシーンの一環でしかなかったグレイのマドカへの言葉(「運命の人」「心に決めた相手はマドカだけ」)が、すべて本心からの告白になってしまうからです。いったんそう認識すると、サブリミナルめいて挿入されるマドカへの好意のアピールを、単なるお笑いシーンとして流せなくなってしまう自分がいました。

しかし他方、グレイはマドカと他の攻略キャラが結ばれる手助けをすること、結ばれた二人を祝福することを一切ためらいません。たとえばアマネルートでは、アマネとマドカの再会を進んでセッティングし、自らマドカの手をとってアマネのもとに導いたりします(グレイルートを除いて、グレイの内面やマドカへの気遣いを一番わかりやすい形で見られるのは、アマネルートのような気がします)。

「マドカのことが好きなのに、マドカが他のキャラと結ばれることに対する葛藤はないのか?」「やっぱり本気で好きなわけではないのか?」……と、他のキャラルートを攻略しつつも、グレゴリウスの動向や言動は常に気になるポイントでした。

そして悶々と考えるうちに、いつの間にかグレゴリウスは、私にとって最もミステリアスなキャラクターになっていきました。ゆえにそのルートへの期待感もまた、非常に大きなものになっていた記憶があります。

グレゴリウスルートの感想

グレゴリウスルートを概観してまず印象に残るのは、「他ルートとかぶらない展開が多い」ということです。

実際にプレイするとわかりますが、このゲームにはどのルートでも一定共通して発生する事件(イベント)が用意されています。たとえば、「プルーシェ内乱イベント」や「ヴァンリーブの特殊犯罪組織イベント」、「“ブルダムの悲劇”に関する会見イベント」などです。

ルートをまたいで同じイベントが起こることにより、「そのときあの攻略キャラは何をしていたのか?」ということが掘り下げられ、ストーリーに奥行きが出るようになっています(個人的には、『セロシア』の大きな魅力の一つだと思います)。

しかしグレゴリウスルートでは、そうした共通イベントが起こらないか、起こってもあまり存在感がありません。たとえば、“ブルダムの悲劇”会見イベントは中盤に発生するものの、それは「移民規制の強化」というルート独自のストーリーの流れに組み込まれ、単体としてはフィーチャーされません。

グレゴリウスルートのストーリーは、最初から最後までほぼカムジェッタで完結し、他キャラの出番も少ないです(他のルートでは、たいてい前半の舞台はカムジェッタ、後半の舞台は攻略キャラの出身国という風に国境を越えます)。それまでのルートにはないイベントが発生し、カムジェッタの事情が初めて見えてくることもあり、新鮮味のある内容が多かったです。

また、グレゴリウスルートは他ルート以上に、苦しい展開続きだった印象があります。「苦しい」というのは、グレゴリウスとマドカの恋路に障害があるという意味ではなく、グレゴリウスがつらい立場に立たされる展開が続くので見ていていたたまれないという意味です。
この独特の「苦しさ」の主な原因は、グレゴリウスの地位が不安定であることと、グレゴリウス自身の性格の2つだろうと思います。

先に何度か述べましたが、カムジェッタは主要6か国の中では唯一君主制を採用していません。10年前に王政は崩壊し、政治権力は議会が握るようになりました(ルート後半になればわかりますが、これは単なる民主化ではなく、貴族院が王室に取って代わったような状態です)。

だから、グレゴリウスは形式上「第一王子」ではあっても、その行使できる権力は非常に限られています。

グレゴリウスルートでは、王政崩壊後のカムジェッタの政治が良いとは言えないこと、国内問題が山積していることが明らかになります。ブルダムからの移民であり、ホテルスタッフとして勤務しているマドカの立場が悪くなるような展開も存在します。
しかしそのとき、グレゴリウスは必ずしも爽快な解決をもたらすことができません。彼の努力とは関係なく、彼の手で掬えるものが限られているからです。

グレゴリウス自身はそのたびに無力感を覚え、開き直って身近な人しか救えない自分の行いを指して「偽善」と言ったりもします。彼が諦めずに行動していることがわかるだけに、プレイヤーとしても、マドカと一緒に苦しい気持ちになりました。

そして、グレゴリウス自身の性格も、そういった苦しさに拍車をかけるものだったと思います。
グレゴリウスは「苦しい」「つらい」といった弱音を吐かないキャラクターです。感情表現が豊かで明るい一方、負の面をさらけ出すことはめったになく、非常に我慢強いわけです。そしてその我慢強さは、彼が窮地に立たされる自身のルートであっても変わりません。

自分のルートかつこれだけ歯がゆい展開が続けば、激情に駆られるとか本音を吐露するとか、「グレゴリウスが負の感情を露わにする展開」があるだろうと予想していました。
しかし、ようやく激情に駆られたと思ったら、マドカとアンリを犠牲にしようとする父親や議会に対する怒りであったりする。また、やっと悲しみを見せたと思ったら、責任を取って死に行く前にマドカに笑って見せようとして、こらえきれずに零す涙であったりするわけです。

感情が波立つことがあっても、グレゴリウスは他者に心乱れた自分を見せようとはしません。グレゴリウスを指して「どこまでも優しい」と表現するセルジュは、幼なじみであるグレゴリウスの本質をよくわかっているんだろうなーと思います(優しさを形容するとき、“誰よりも”ではなく“どこまでも”をチョイスするのもさすが)。

攻略中はグレゴリウスの強さに感じ入る一方で、そんなに我慢しなくていいのに、そんなに背負い込まなくていいのにと思わずにはいられませんでした。たとえその行動がグレゴリウスの冷静な決意に支えられたものであっても、そもそも状況が彼一人にとって苦しすぎるだろう、と。

だから、「どうして彼だけが、たくさんのものを救わなくてはいけないのだろうか」「――どうして私には、彼の重荷を持てるだけの大きな腕(かいな)がないのだろうか」と悩み苦しむマドカには、ひたすら共感するほかなかったです。

とはいえ、苦しい展開が連続したからこそ、あの天からの“赦し”には感動しました。罪人が許された奇跡、マドカとグレゴリウスの聖夜の出会い、アンリの励ましと要人たちの思い、そういったものすべてが繋がってあの美しい展開を作り出しているように感じました。

たしかにファンタジーめいているものの、序盤(というか冒頭)からクライマックスに向けて丁寧に構成が整えられていったので、特に気にはならなかったです。むしろどうにもならない状況だったからこそ、人々の祈りに応えた優しい救いが与えられてよかったと思いました。

似た者同士のアマネ&グレゴリウス

制作者様の裏話によれば、グレイルートは裏・真相解明ルートだそうです。アマネルートと併せることで、「ブルダムにいた頃」と「カムジェッタに来てから」のマドカの動向が、完全に明らかになるわけですね。

たしかに各ルートで、アマネとマドカに面識があるらしいことに加え、「グレイがマドカの事情を知り得ているらしいこと」はうっすらと匂わされていました。そういう意味で、アマネやグレイの攻略は後の方に残すとより楽しめるような気がします。

実際にプレイして、アマネとグレイはマドカとの関わりという点において対照的かつ補完的であり、よく似た思慕をマドカに寄せているキャラだと感じました。上でアマネについて、何より「マドカへの一途さ」が印象的だったと書きました。実はその評価は、グレイについてもそのまま当てはまるのが巧みだなーと思います。

たとえばマドカとの関係を軸に眺めてみると、アマネとグレイの共通点と異なる点が同時に見えてきます。アマネはマドカを失ったことで絶望のどん底に叩き落され、以降は彼女への贖罪を常に意識して生きてきました。
しかし、アマネを苦しめたマドカの喪失は一方で、失意に暮れていたグレゴリウスにマドカとの出会いという救済をもたらしました。その後、クローバーホテルでの再会も経て、グレゴリウスはカムジェッタとマドカを見守ることを決意。不安定な立場に倦むことなく、この10年間を過ごしてきました。

マドカへの思いが行動理念や原動力である点、それぞれの理由からマドカを見守るポジションに自らを置きがちという点で、二人は共通しています。
しかし、マドカと別れた/マドカと出会ったというポイントにおいて、秤が重みによってどちらかに片方へ傾くように、二人の不幸/幸は綺麗に切り替わっています。

また、二人の対照性は、実はマドカの母であるアンリの態度を眺めてみるとわかりやすいです。

ブルダムの悲劇の当事者であるアンリは、アマネに対しては頑なな態度を崩せません。頭ではアマネが悪くないとわかっていても、心の部分でどうしても割り切れないからです(夫を失っただけでなく、思い出すだけで気絶するレベルのリンチを受けたらしいので当然だと思います)。

一方グレゴリウスに対しては、アンリは素直な感謝と信頼を寄せています。マドカとアンリが強制的に連行されて糾弾を受けるシーンでは、グレゴリウスに庇われて泣き出すアンリの姿が非常に印象的でした。

グレゴリウスとマドカ

他ルートでのマドカは終始すげない態度なので、「肝心のグレゴリウスルートではどういう感じになるんだろう」と地味に気になっていました。いざプレイし始めると、ルートの序盤から「この人はそういう人、実は良い人」とマドカがデレてくれたので正直おおーと思いました。

他のルートではけちょんけちょんにあしらっている分、全編通してマドカが思いのほか素直でニヤニヤしました。マドカの好意の自覚が自宅でゴロゴロしながらというのも、付き合いの長い二人らしくて好きです。

あと二人が10年間どういう風に付き合ってきたのかも相当気になっていたので、過去エピソードを見られて嬉しかったです(彼氏と大げんかして別れたときに、グレゴリウスがホテルから連れ出して愚痴を聞いてくれたとか)。
マドカが砕けているというか、15歳の頃から知っているグレゴリウスに対してやや甘えた態度で接しているのも新鮮でした。「兄と妹のような関係」とルート説明にありましたが、実際に見ると納得の一言でした。

また、マドカとグレゴリウスの出会いもきっちり練られていて、ストーリーの核心に絡んでくるのもたまらないポイントでした。

そもそもマドカとアンリの秘密出国を助けたのがグレイであり、そのグレイは王政崩壊直後の聖夜にマドカと出会って救われ、のちにクローバーホテルで再会したときにも元気づけられていて……と、なんとも運命的です。グレゴリウスがマドカを「運命の人」と言い切る理由も理解できました。

マドカの方もグレゴリウスとの出会いを思い出した上で、何度も彼に救われていたことに気づきます(10年の時をまたいで、口角上げ&「笑って」を繰り返すくだりには泣きました)。そこから彼を救うために行動しようと決める流れはとても綺麗でした。腹をくくったマドカが格好良かったです。

グレイの助命嘆願のくだりでは、アンリが力強くマドカを励ましていたことも印象的でした。他ルートでは重病で倒れる印象が強いアンリですが、グレイルートでは亡き夫と自分のことも踏まえてエールを送ってくれるので頼もしく思いました。
他のルートでも感じたことですが、アンリが自分たちを受け入れてくれたカムジェッタに強い愛着と恩義を抱いているのはすごく良いなと思います。

グレゴリウスはルート終盤に命がけで危ない橋を渡りますが、その行動にしてもそれまでの行動にしても、たいていは根底にマドカへの思いがあります。その事実を見直すたび、「すごいな」と驚嘆してしまう自分がいました。「そんなに背負い込まなくてもいいのにと何度も思った」と上で書きましたが、グレゴリウスがつらさを我慢できるのは、ひとえにマドカがいるからなんですよね。

「国のため」「移民のため」「国民のため」……と、外から眺めたときのグレゴリウスの理念や行動は、純粋に多くの人を救うことに繋がるものです。しかしその内面を覗くと、動機に必ずと言っていいくらいにマドカの存在が絡んでいます。
外と内のどちらに注目したとしても、「どこまでも利他的な人」というアンサーが導かれます。ただそれでも、社会を変革しようとする人間の原動力が、実はただひとりの人への愛情であるというコントラストにはしびれるものがあります。

もっとも、グレゴリウスはマドカを兄目線で見守ることに落ち着きすぎていて、恋愛的に成就するのか途中で心配になりました。アマネと同じで物分かりが良いというか、「マドカが幸せならそれでいい」という達観した思考をしがちなんですよね。

だからこそエピローグの仲良しっぷりには安心しました。マドカの特大級のデレがなんとも嬉しく、真面目モードのグレゴリウスの告白にも感動しました。本当に幸せ空間という感じで、プレイヤーとしても心から喜べるラストでした。

*****

最初にも述べましたが、『セロシア・キャンドルをあなたに捧ぐ』は、構成が見事な作品だと思います。大事な章の終わりでは、たいてい「次はどうなるの?」とプレイヤーの興味を引き付けてから、"to be continued..."となるんですよね。引きの良さにくぅ~っとなる場面が何度もありました。

あと、重要シーンでの気合の入った演出も見事です。個人的に印象的だったのは、やはりセルジュの過去が明らかになる場面でしょうか。セルジュとマドカのやりとりに合わせて夜光虫がボウッと光る、そのタイミングとSEの良さに感嘆しました。

また、分量的にはどのルートも相当多いですが、それを意識させないように章単位でも場面単位でも区切りがつけられています。緩急の付け方がまた巧みで、最後まで飽きずにプレイすることができました。

最後に、主人公のマドカにしても攻略キャラにしても、等しく魅力的なのが素晴らしいと思います。誇張なしにどのキャラにも好感が持てるので、プレイしていて楽しかったし非常に快適でした。

感動あり笑いありの面白いノベルゲームでした。リメイクバージョンの完全版が発表されたら、ぜひプレイさせていただきたいなと思います。

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