『Circle』 「まんまる」を育てる探索ADV 感想&攻略&考察 ※ネタバレ注意
「まんまる」をめぐる育成&探索ADV、『Circle』の感想&攻略&考察記事です。制作サークルはNanasi Project様。作品のダウンロードページ(ふりーむ!)はこちらです。 → 『Circle』
Circle
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『Circle』は、謎多き「まんまる」を育てるゲームです。1時間30分くらいでトゥルーエンド(?)に到達しました。極端な脅かし要素や追いかけ要素はありませんが、サイコホラーっぽい表現と絵柄が特徴的な作品なので、苦手な方は心構えをした方がいいかもしれません。
端的に感想を書くと、『Circle』は発想に優れた、サクッとプレイできる面白いADVでした。いくつかエンディングがあり、選択と探索の結果によって分岐します。
この記事には、おそらく最も真相に近づけるエンディングまでの攻略を書きました。エンディングのネタバレを含むので、未見の方はご注意ください。
『Circle』のあらすじ
『Circle』のあらすじを説明します。プレイし始めて最初に画面に映るのは、暗い部屋の中に浮かぶ「まんまる」です。
Circle
響く声に促されるまま、主人公は「まんまる」を可愛がり、外に出ては「まんまる」のために食べ物を探します。
いったい「まんまる」とは何なのか。ときどき訪ねてくる人々はいったい誰なのか。主人公の選択によって、「まんまる」と主人公の行く末は変化します。
トゥルーエンドまでの攻略について
『Circle』のストーリーは、「室内での育成&会話フェイズ」と「探索フェイズ」を交互に繰り返すことで進みます。
探索フェイズは、制限時間に気を付けながら食べ物を回収するパートです。いくつかのギミックを解く必要があるものの、この探索フェイズの内容によってストーリーが左右されることはありません(ただし制限時間には注意)。
エンディングの分岐に関係するのは、室内での育成&会話フェイズです。ざっくりと説明すると、以下の2点によってエンディングの内容が決まります。
- 「まんまる」をどれだけ可愛がるか
- 訪問者にどのような対応をするか
トゥルーエンド(仮)を見たい場合は、「まんまる」を撫でたり褒めたりして空腹になるまで可愛がり、訪問者を全員受け入れて傷つけないようにしましょう。
以下、チャートっぽくトゥルーエンドまでの道筋を書きます。
1.室内:「まんまる」のお腹が空くまで可愛がる。
2.探索:外に出て探索し、食べ物をゲットする。部屋に戻ったら食べさせ、空腹になるまで可愛がる。
3.室内:訪ねてきた謎の女性を迎え入れる。話を聞き、申し出を受け入れる。
4.探索:2番目のステージを探索し食べ物をゲットする。部屋に戻ったら食べさせ、空腹になるまで可愛がる。
ステージ2では、赤い人影を避けつつ探索することになる。左にいる黒いものから「ちから」を2回もらえば、道を塞いでいる障害物2つを撃破できる。赤い人間に触れると、残り時間とゲットした「ちから」が失われるので注意。
5.室内:訪ねてくる謎の集団を迎え入れる。話を聞き、「まんまる」を見せる。謎の集団は「まんまる」を殺そうとするが、「なにもしない」を選ぶ。相手を攻撃するとトゥルーエンドには到達できなくなる。
6.探索:外に出て3番目のステージを探索し、左奥の食べ物をゲットする。部屋を出てすぐの会話ポイントで、「施設送り→納得できない→文句があるなら出ていけ」という会話が再生されれば、トゥルーエンドフラグが立っている。
ステージ3は、赤い人影の謎かけをクリアしていく形式。「近くて遠い場所」「上の右上」「どっちの部屋?」「一番遠い場所」の4つの問答をクリアする。制限時間に気を付けつつ、言われたことを素直に聞いて探索していけばクリアできるはず。最悪しらみつぶしでもOK。一つ言うなら、「どっちの部屋?」という問いはどう選んでもOK。
7.室内:誰かが訪ねてきた気がしたものの、気のせいだで終了。「まんまる」に食べ物をあげて可愛がる。
8.探索:4番目のステージへ行き、人影の話を最後まで聞く。
9.室内:謎の少年を迎え入れる。ナレーションにしつこく止められるが、「迎え入れる」を選び続ける。ここまで「まんまる」をしっかり可愛がってすべての訪問者を受け入れていれば、トゥルーエンドに到達できる。
トゥルーエンド未到達の場合、トゥルーエンドに行くためのヒントが見られます(ちなみに、まんまるに対する通常選択肢の「一番下」を選ぶとその場でゲーム終了です)。ゲームの核心的なことも示されるので、一見の価値ありだと思います。
『Circle』の感想
Circle
『Circle』は短いながらも面白いADVでした。フリゲで例を挙げると、『ユトレピアの伝説』(RPG)や『SPIEGEL EI』(探索ADV)といったミステリアスなゲームが好きな方には、ツボにはまる作品なのではないでしょうか。
≪関連記事:【おすすめ】 世界の謎を追って冒険するミステリ&アドベンチャーなフリゲRPG5選 紹介&レビュー≫
さて、一言で『Circle』の印象を書くなら、発想に優れたミニ哲学ゲームです。特に、暗喩表現が巧いなと感じました(トゥルーエンドの、「まんまる」は心で褒めるってのは~といった補足説明も正直必要なかったくらい)。
他者と関わり心を近づけ合うことへの恐怖。周囲からの疎外感。それでも気持ちを分かち合い、理解し合える人が欲しいという期待。そういったものを、「まんまる」という名の心を育てる主人公と、彼を取り巻く人生を模したステージでうまく表現した作品でした。
変に回りくどい言葉遣いや気どった演出がなく、各キャラの感情が率直に綴られている点が印象に残りました。愛情の滲んだお母さんの語りかけや悩める謎の少年の吐露など、取り立てて奇抜ではないのに、不思議と心に響く言い回しが多かった気がします。
セリフは基本的にひらがなで書かれていますが、フォントや区切り方が工夫され、読みやすいのも良かったです。
「まんまる」や探索ステージが意味するものとは
この項目では、『Circle』のストーリーを考察していきます。プレイ中にとったメモをそのまま写しています。トゥルーエンドおよびトゥルーエンド後のエピローグのネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。
「まんまる」や人影の正体
・まんまる=心、恐怖も含む。主人公のまんまるは黒く、「黒い心」と表現されている。自分の心を慈しまなければならないと示唆されている。
・暗い部屋=胸のうち。ときどき他者が訪ねてくる。
・ナレーション=他者への恐怖心。心を守り育てたい。心の栄養(食べ物)は欲しいものの、主人公に外界と関わってほしくない。
・謎の女性=主人公の母親。主人公の「黒い心」を知っていた。
・謎の集団=家族、世間。主人公の「まんまる」を見るやリンチしようとした。
・謎の少年=他者と仲良くなりたい、理解してほしい、でも心を近づけ合うのが怖いという悩みを抱える人物。
『Circle』における色彩の意味
『Circle』における色彩について。トゥルーエンド手前でナレーションが言うように、主人公の感情は封印された状態にある。ゆえに『Circle』は、黒と白を基調とした世界をベースとしている。
ときどき現れる赤や青の色彩は、「感情」を示すものだと思われる。「感情を解放しよう」というナレーションの後に画面が赤青黄色でかわるがわる染められる表現がわかりやすい。
ステージ1やステージ4で多用される赤色は、おそらく怒りや恐れの象徴。一方、ステージ3の青色は、安らぎの象徴かもしれない。
各ステージに関する考察
『Circle』の各ステージは、主人公が生まれてから現在の状態になるまでの経緯をなぞったもの。断片的な記憶と感情によって構成されている。
ステージ1
ステージ1は子宮を模しているものと思われる。真ん中の白い物体は胎児だろうか。生まれたての主人公の世界だから複雑な感情もなく、完全に黒と白で構成されている。鼓動が聞こえる。背景で回る白い影は、ぞうさんにひよこ、きりんさんなど。もしかすると子供をあやすベッドメリーだろうか。メッセージは、主人公が産声を上げた日の記憶か。
ステージ2
ステージ2は主人公の幼年期を模していると思われる。「お湯に入りなさい」、「目の痛くなる薬で頭を洗いなさい」、「言うことを聞きなさい」、「あいさつをしにきたのかい」などのメッセージは、父親や母親、大人たちが発している言葉ではないだろうか。背景の赤い手と笑顔は、小さい子に対する「べろべろばー」に見えなくもない。追いかけてくる人影は干渉し攻撃してくる他者か。主人公にとっては周囲が煩わしかったり恐ろしかったりするから、どちらも赤で表現されているのかもしれない。
ステージ3
ステージ3は、謎の少年の心と接している世界? 背景には青い目、BGMは優しい音楽。謎の少年から向けられる眼差し自体は主人公にとって不快なものではなさそう。ただ、他者と意図的に心を近づけているから、今までの世界以上に苦しくつらいのかもしれない。
ステージ4
謎の人物との対話。おそらく相手は謎の少年。背景のぐちゃぐちゃの赤は、謎の少年の恐れや葛藤の象徴?
主人公の半生について
トゥルーエンド後のエピローグを見るに、どうも主人公は長い間人事不省に陥っていたようです(少なくとも外界をまともに知覚できていなかった様子)。また、記憶をいくらか失っている節がありました。
ここまでの推測を踏まえ、「暗い部屋」に閉じこもるまでの主人公について私は以下のように考えました。
母親らしき女性の言葉によれば、主人公は昔から「黒い心」を持っていたらしい。そして、自分の心を覗き干渉しようとする周囲の人間に、恐怖や怒りを抱いていた(ステージ2の赤色は、周りの人間への敵意か)。唯一母親だけは主人公を愛し、我が子の黒い心を知っても主人公を守ろうとした。
主人公は周囲と馴染めないまま成長し、視線や嘲笑に負けない力を手に入れた(ステージ2、障害を排除するための「ちから」)。
しかし他の家族(加えて近しい他人)は、主人公の心を知って恐れ、施設送りにしようとした。おそらく母親だけは、それを必死で止めようとしていた(ステージ3の会話)。
やがて主人公は、自分とよく似た葛藤を抱える少年と出会う(ステージ3、4の対話)。少年は心を明かすことを恐れながらも主人公と仲良くなりたいと思ってくれた(謎の少年の訪問)。主人公も同じように、少年と仲良くなりたいと思った様子。
しかし、主人公の中の他者への恐怖はすでに肥大しきっていた。主人公は恐怖を抑えきれず、感情に支配され、自分を見失った(赤青黄色がうつりかわる画面→暗転)。
謎の少年とのコミュニケーションに失敗し、「感情が爆発」した主人公は、しばらく自分の心の中に閉じこもっていた。外界との交渉も絶っていた。自分の出生から今までのことを思い返し、気持ちを整理しながら再び外に目を向けられる状態に戻るまでが、『Circle』本編の物語なのだろうか。
トゥルーエンディング後の独白を聴くに、目覚めた主人公の周りには母親しかいなかったようです。ということは、主人公が理解し合いたいと思った少年は、去ったか亡くなったかの可能性が高い気がします。もしかすると主人公が感情に支配された結果、暴走して少年に何かをしてしまったのかもしれません。
「黒い心」の詳細はよくわかりません。他者を傷つけかねない心のありよう、周囲の人間とは異なっている(だから排除される)ような精神性を指しているのでしょうか。あるいは直球で、サイコキネシス系の能力を指す可能性もあるのかもしれません。
*****先にも同じことを書きましたが、『Circle』は短編ながら印象に残る作品でした。謎の女性や謎の少年の話す言葉は、率直なのに奥深いものが多いですね。こういう精神をめぐる謎めいたゲームは、色々と想像できるのが楽しくて好きです。
※「精神の複雑さ」を題材にした作品について、いくつか感想記事を書いています。
・『SPIEGEL EI』(シュピーゲルアイ) 探索サイコアドベンチャーゲーム 感想&考察
・『月の扉』 19世紀英国が舞台のゴシックホラーADV 感想 攻略 ※ネタバレ注意
・『夢堕ちのインキュバス』 夢魔に恋する恋愛ゲーム 感想&レビュー ※ネタバレ注意
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