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『大逆転裁判2』 第1話~第5話までのストーリー感想 ※ネタバレ注意 その2

2018/08/05
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大法廷バトルADV、『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』(CAPCOM)のストーリー(全5話)に関する感想記事(その2)です。時系列およびストーリー内容のネタバレを含みます。

大逆転裁判 ホームズとアイリス スクショ CAPCOM

『大逆転裁判2』、CAPCOM

全5話で構成される『大逆転裁判2』のストーリーは、非常にボリュームとスケールの大きいものでした。今回の記事その2では、『大逆転裁判2』の第1話~第5話までの感想を各話ごとに書きます。基本的には初見時に思ったこと・感じたことに焦点を当ててまとめました。詳しく書くときりがないので、印象に残ったポイントをいくつか絞り、トピックとして挙げたりしています。

再三になりますが、ストーリーとキャラクターの核心部分についてネタバレしています。前作および逆転裁判シリーズネタが頻出です。また、キャラクターやストーリー展開について、一部批判的に言及している箇所があります。ご注意ください。

※「大逆転裁判」シリーズの感想記事一覧

・その1:『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟』 前作の振り返り&1年越しのレビュー
・その2:『大逆転裁判2』 第1話~第5話までのストーリー感想 ※ネタバレ注意(現在閲覧中)
・その3:『大逆転裁判2』が拓いた新境地 感想 考察 レビュー ※ネタバレ注意
・その4:『大逆転裁判2』 特典DLC 「遊べる! 大逆転物語」 感想

第1話「弁護少女の覚醒と冒險」

あらすじ:日本は東京の大審院で、再び英国人殺害事件の裁判が始まろうとしていた。被害者はかつてジョン.H.ワトソン教授を暗殺した謎多き女性、ジェゼール・ブレット。そして罪を問われることになったのは、事件当時彼女に付き添っていた女学生、村雨葉織(むらさめはおり)であった。親友である葉織の窮地に、御琴羽寿沙都は「成歩堂龍太郎」と名乗って女人禁制の法廷に立つ決意をするが……。

第1話・「弁護少女の覚醒と冒險」。ドキドキしながらスタートし、この第1話の抜群の導入に一気に引き込まれたことを覚えています。懐かしいジェゼール・ブレットの姿が見えた時点で「!!」となり、すでに死んでいると分かって更に「!?」となりました。さすがにツカミがバッチリです。

大逆転裁判2 1話 龍太郎

『大逆転裁判2』、CAPCOM

第1話の印象を一言で表すなら、ズヴァリ「成歩堂龍太郎の冒険」でしょうか。前作で惜しまれつつ日本に戻ったスサトさんが、窮地にある友人を救うべく男装して法廷に立つ……という熱いストーリーが展開されます。

龍太郎を見て思ったのは、「龍ノ介とスサトちゃんは顔のパーツが似てるなー」でした。2人とも目がくりくりとしています。龍太郎の仕草は龍ノ介リスペクトですごく可愛かったです。キョドるところまで同じという。

一方で「これは熱い」と思ったのは、固めた拳で机を叩くモーションでした。この動作の大元は、他でもない亜双義一真なんですよね。前作では第1話にて亜双義がそのモーションを用い、衝撃の第2話を経て、第3話から龍ノ介が同じモーションを使用するようになりました。

前作のモーション継承も胸熱でしたが、今作の「拳ドンver. スサトちゃん」にも相当テンションが上がりました。旧作における「神乃木→千尋さん→成歩堂」ラインの如く、「亜双義→成歩堂→スサトちゃん」のラインで弁護士魂が受け継がれたようで、にくい演出だなーと思いました。

第1話の被告人は、村雨葉織(ムラサメハオリ)。スサトちゃんの親友であり、帝都勇盟大学で学ぶバリバリの理系女子です。スサトちゃんはああ見えて写真の機械などが好きらしいので、それもあってハオリちゃんと気が合うのでしょうか。

パッケージをチラ見した段階でも可愛いと思いましたが、実際にゲームをプレイしてみても言動含めてカワイイ女の子でした。パッケージに大きく描かれていたわりに、第1話(とエンディング)にしか登場しなかったことがちょっと残念です。『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟- 公式原画集』(以下、公式原画集)を見ると、ハオリちゃんの設定はかなり練られていて面白いなと思います。ツマミちゃんにならなくて本当によかった。

また、前作で登場したホソナガ刑事も再登場します。ただし、またも護衛任務は失敗。この人に「○○を守れ」系の任務を回すべきではないですね。潜入のためとはいえ、服装も遊ぶ気満々にしか見えません。一応すごく有能な人なのに、1話時点では「顔を見せに来ただけだろう」と思うほどに活躍らしい活躍がなくて気の毒でした。

第1話の真犯人であるマメモミは、なんだかノリが犯人っぽくないキャラだなーと思いました。ややウザい証人(でも案外良いヤツ)くらいのポジションに収まりそうな雰囲気がある気がしたんですよね。他に選択肢がないとはいえ、犯人だと確定したときは正直驚きました。

そして、スサトちゃんの父であるミコトバ教授も再登場。実に元気な姿で隣に立っているので、前作ラストの危篤の報せはやっぱりウソだったんだなと察しました。威圧感のあるジゴク判事と一緒に去っていったこともあり、この時点ではうさんくさいなーと感じていました。

第2話「吾輩と霧の夜の回想」

あらすじ:舞台は変わり、大英帝国の首都・倫敦へ。寿沙都から手紙を受け取った成歩堂龍ノ介とアイリス・ワトソンは、過去の事件記録を見直し回想する。留学中の夏目漱石が遭遇した二つ目の事件は、彼が住むいわくつきの下宿で発生した。下宿人を毒殺しようとした疑いでまたも逮捕された漱石を救うため、龍ノ介は再び法廷に立ったのだ。

第2話「吾輩と霧の夜の回想」は、時をさかのぼって過去の事件を紐解くエピソードです。被告人はおなじみ夏目漱石さん。前作の第4話でビリジアン・グリーン殺人未遂事件の被告人にされた彼は、めでたく無罪放免となった直後、なんと再び異なる事件の被告人になっていたのです。ツイてなさすぎる。2-2では、その2つ目の事件を龍ノ介が解決する模様が描かれます。

挙動不審モードの漱石さんはやっぱり面白いなーと改めて思いました。主にモーションが。パニクってカオナシっぽく震えているモーション、本当に好きです。あと、裁判終了後の漱石さんは文句なしに格好良かったです。無事に日本に帰国できて本当に良かったなーと思いました。

漱石さんに関しては、なんだかんだアノシャーロック・ホームズのおかげで生きながらえたという事実が面白いですね(前作の事件で誤認逮捕されたことが結果的に漱石さんの命を救った事実には正直なところ驚きました)。

第2話には、同じくおなじみのグレグソン刑事も再登場します。直前に前作をおさらいプレイしたので、明らかに龍ノ介たちへの態度が軟化していて戸惑いました。「前作ではそんなに態度よくなかったよね?」「これ前作4話の事件の直後だよね?」と。あとホームズもそうですが、会話の流れでさらっとシェイクスピアを口ずさむシーンはカッコいいなと思いました。

大逆転裁判2 2話 アルタモント夫人

『大逆転裁判2』、CAPCOM

本番の裁判パートですが、陪審員団の中で一番好きになったキャラはアルタモント夫人です。経営者然とした素敵なマドモワゼルであり、正直に言って好みでした。「我が社の弁護士に……」と言われてプレイヤーとしては真剣にグラつきましたが、龍ノ介はいたってマジメでした。第2話は倫敦の瓦斯(ガス)事情など、当時の生活状況を反映したネタが見られる点でもお気に入りです。

また、第2話の事件の証人と被害者(?)は、どちらも前作でチラッと登場していました(他の伏線も含め、漱石さん第2の事件は当時から構想されていたのでしょう)。かなり気になっていたので、今作でバッチリ登場して嬉しかったです。

大逆転裁判2 2話 ペテンシー

『大逆転裁判2』、CAPCOM

被害者であり元凶でもあったウイリアム・ペテンシーのモーションは、今作で一番印象に残っています。へなへなくにゃくにゃと動くわ動く、どれだけパターンがあるんだとツッコミ半分ワクワク半分でした。ちなみに一番好きなモーションは、タイホくん(作・イトノコ刑事)みたいに手をワキワキしているパターンです。調査パートでいきなり蘇生した場面の動きも良かったです。

ただ、ペテンシーの所業自体は外道だなーと思います。殺すつもりはなかったと言われても、いやいやウソつけ言い訳するなとしか思えませんでした。

そして再登場ラッシュの中、前作で夫婦喧嘩のとばっちりを食って(ついでに漱石さんに放置されて)人事不省に陥ったビリジアン・グリーン(隠れ美人設定アリ)も再び登場します。かつ、彼女こそが第2話の犯人でした。

ビリジアンはわりあい普通の感性を持っている人です。犯人とはいえ豹変もしません(後ろ向きポーズを見たときは、『逆転裁判3』の美柳ちなみを思い出して恐怖しましたが)。

ただ、普通の女性であるがゆえにその強い情念が際立っていて、個人的には好きなキャラでした(上に挙げた美柳ちなみや『逆転裁判2』2話の実行犯も、情念の濃いタイプの悪役で好みだったりします)。同情すべき事情もあるので、分類としては旧作の1-3や2-3の犯人寄りかもしれません。

前作4話の大家夫婦とパット&ロールにしても、この話のペテンシーにしても、「そんなつもりじゃなかった」が最初に来て、自身の行為が引き起こした事態から逃げようとする姿勢が目立った気がするんですね。

そんなスッキリしない言動をする証人たちの中、ビリジアンは「犯人に鉄槌が下されることを願って毒を塗った」とわざわざ言い直します。この態度は、一人殺しておいてまだ言い訳を並べ立てるペテンシーと比べるまでもなく率直で潔いなと思いました。「こんなヤツのために捕まりたくない」という発言も、個人的には「そりゃそうだろうな」と納得しかなかったです。

そして、ビリジアンに同情の余地があるからこそ、最後の龍ノ介のフォローには救われた気持ちになりました。龍ノ介の道徳的な一言は話によってはしっくりときませんが、この話を締めるには最高だったと思います。「生きるべきか死ぬべきか」という超有名なセリフが最後に活きてくるのが上手いです。

プレイヤーとしても、ただビリジアンのために、ペテンシーが生きていてよかったと感じました。

第3話「未来科学と亡霊の帰還」

あらすじ:秋の頃、英国の倫敦では万国博覧会が盛大に開催されていた。しかし、大衆の目前で行われた大規模な科学実験で事故が発生。半年間の謹慎を終えた龍ノ介は、実験の責任者であったベンジャミン・ドビンボー博士の弁護を担当することになる。華やかな実験ショーの裏に潜む「悪意」とは何か。調査を進める中、龍ノ介は10年前に英国を震撼させた重大事件の存在を知り……。

第3話・「未来科学と亡霊の帰還」は、見るべきものの多い内容盛りだくさんなエピソードです。まず、実に半年ぶりにヴォルテックス卿と対面することになります。

国際科学捜査シンポジウムの開催を前に、ひとりで大盛り上がりするヴォルテックス卿。その勢いに鳥もバタバタと飛び立ちます。龍ノ介相手に喋り倒した末、11時間以上遅れて会議に出席すべく去っていくヴォルテックス卿を見ていると、無性に親しみがわきました。

大逆転裁判2 3話 亜双義の使命

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ところでヴォルテックス卿は、前作で何度か口にしていた「亜双義の使命」について改めて言及します。気になっていたポイントを今作でちゃんと解決してくれそうだなーとここで安心した覚えがあります。

そして、第3話ではなんとバンジークス卿の執務室を訪問することができます。『逆転裁判 蘇る逆転』で「ミツルギの執務室に行けるよ」ってなったとき並みに嬉しかったです。事前情報はシャットアウトしていたので、部屋の右隅に黒マントの人物を見つけて大いにドキッとしました。調べるのも一番最後に回しました。

粘りに粘って執務室を調べ倒したわけですが、バンジークス卿のノリと反応がよくて最高でした。龍ノ介とアイリスの大喜利に対して逐一ツッコんでくれる律義さがゴージャスです。ジオラマを調べたときの会話が特に好きですね。おいおいツッコミキャラかよ~とより好きになりました。

一方、ワイングラスパリンパリンについては、「だってこの者が的外れな発言を繰り返すから……」と本気で龍ノ介のせいだと思っていそうなところは天然ボケ感満載でした。やっぱり面白いなーと大笑いしました。

謎多き「仮面の従者」と依頼人のベンジャミン・ドビンボー博士

大逆転裁判2 3話 仮面の男

『大逆転裁判2』、CAPCOM

第3話の最大の見どころは、バンジークスに寡黙に付き従う仮面の従者ではないかと思います。ゲームをプレイしながらメモをとっていましたが、仮面の従者に話しかけた後のメモ内容が我ながらヤバかったです。

さっきも書きましたが、プレイ前に公式サイトを一切見ないようにしていました。パッケージもさっと見た程度でした。だからまったくの不意打ちで仮面の従者を見て、「これ亜双義なんじゃない?」と動揺マックスでした。具体的には、「この人亜双義なんじゃない? いや過度な期待はよくない! でもこれ絶対亜双義じゃない?」みたいな内容を1行85文字のところを6行くらい書いていました。「クローン説」や「タイムマシン逆行説」まで挙げているのを後で見返して苦笑いしました。レイトンか。

仮面の従者に関しては、龍ノ介が内心すぐに反応し、スサトちゃんが躊躇せずに呼び止めることにグッときました。2人とも察しが良い。プレイヤーとしても気になるところにさくっとツッコんでくれて嬉しかったです。

大逆転裁判2 3話 ドビンボー

『大逆転裁判2』、CAPCOM

また、第3話の依頼人であるベンジャミン・ドビンボー博士(実際貧乏。科学者である彼の懐事情は第3話で重要になるトピックの1つ)は、そんなバンジークス卿の大学時代の親友です。博士の口から、バンジークス卿の過去の姿や「ある事件」に巻き込まれて性格が変わったらしいことが語られます。

ドビンボー博士は性格的にはまったく後ろ暗さのない人です。こういうタイプの人間と親友である時点で、バンジークス卿もいい人なんだろうなと予測できます。バンジークス卿もドビンボー博士も「おっとりした、気のいいヤツ」なので、それもあって仲が良かったんだろうなと思いました。

第3話のストーリーはわりあいシリアスであり、依頼人のドビンボー博士もつらい状況に置かれるので、その当人のポジティブさは良い清涼剤でした(今回の詐欺被害を暴露本に書いて出版しようとするところとか)。

あと、捜査パートのハイライトは、手を繋いで歩くアイリスと龍ノ介でした。想像すると可愛くてテンションが上がりました。本当にさらっと描写が入ったので、混雑した場所に2人で出かけるときは普通に手を繋いでいるんだろうなと察しもつきます。龍ノ介が真剣にうらやましいです。

裁判1日目と御琴羽寿沙都の帰還

来たる裁判1日目、「科学実験が成功したか否か」が大きな争点になるのは新鮮で面白かったです。控え室と裁判冒頭で「これ弁護の方針を定めるのが難しいんじゃない?」と思いましたが、やはりドビンボーとの利益の食い違いがくっきりと浮き彫りになる展開に。

理論を守りたいあまりにバンジークス卿に同調するドビンボーを見ていると、旧作3-2の優作さんを思い出しました。ドビンボーの目が覚めるまでの過程では、バンジークス卿の友への優しさが際立っていた印象です。

この裁判で目を引かれたのは、秘密の関係性にただならぬ関心を抱くレディである陪審2号さんでした。率直に言って好みドストライク。セレブなアルタモント夫人もいいですが、陪審2号さんの上品な人妻感はその上を行きますね。当世風でエレガントなのに、なんとも言えずセクシーな服のデザインがすごく好きです。一目見て心奪われたので、のちの第4話冒頭でテンションMAXになったのは言うまでもないです。

あと、証人のゴッツくんもごっつかわええ子でしたね。Béééééééééééé! マルマッチと風船のやりとりをするモーションが滑らかですごいなーと思いました。

この第3話にて、御琴羽寿沙都が満を持して大英帝国に帰還します。第1話の後、ジェゼール嬢の命を奪ったマメモミに面会に行ったスサトちゃんは、龍ノ介に気になる報告をしてくれます。この報告を聞いて、やっぱり亜双義は生きているのかもしれないなーと思いました。

一方で、「(生きているかもしれないなんて)軽々しく言わないで」と言うスサトちゃんの発言にはうんうんと頷くばかりでした。一度希望を持ってしまうと、裏切られた後が本当につらいんですよね。仮面の従者の正体がハッキリしない第3話終盤までは、プレイヤーとしても悶々とするばかりでした。

大逆転裁判2 3話 龍ノ介とスサト

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ところで、龍ノ介とスサトちゃんの仲睦まじさには、プレイヤーとしても「はーすごいな」の一言でした。龍ノ介の良いところは、「帰ってきてくれて嬉しい」とか「傍にいてくれて心強い」とか、自分の素直な気持ちをきちんと伝えるところだと思います。

スサトちゃんの机を半年前のまま埃一つなく保っているところといい、「ダルマの目を入れるのはスサトさんだけ」という発言といい、パートナーへの愛と信頼がひしひしと伝わってきました。これだけ真摯にラブコールされたら、スサトちゃんがほだされるのも納得です。

蝋人形師の「マダム・ローザイク」

また、第3話では、蝋人形師の「マダム・ローザイク」がキーパーソンとして登場します。彼女のデザインコンセプトは「魔女」ラビリンスシティから抜け出してきたかのような衣装を見るに納得の一言です。

大逆転裁判2 3話 マダム・ローザイク

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ゲーム内で動くのを見ると特に、ローザイクは突出した美人だなーと思います。塗さんデザインの女性キャラは美形が多いですね。実は腰近くまである(まとめているので正面からは見えにくいが、背面から見ると実はずいぶん長いと分かる)ロングヘアも、ザ・塗さんデザインの美人という印象です(例:『逆転裁判4』のみぬき、『レイトン教授VS逆転裁判』のジョドーラ)。

マダム・ローザイクは、10年前のプロフェッサー事件にも関わった重要なキャラクターです。10年前の彼女が弱冠16歳だった事実には驚愕しました。実在の蝋人形師、タッソー夫人も若くして蝋人形作りに携わっていたようなので、才能とプロ意識に年齢は関係ないのかもしれません。

16歳当時に出会ったドレッバーに「綺麗な人」という印象を与えたところを見ると、昔から今と変わらず美しかったのでしょう。なんだか10年後も今と変わらぬ美しさを保っていそうな雰囲気があります。

ところで、個人的に気になったことがあります。それはローザイク蝋人形館に、先月(9月)からバンジークス卿の蝋人形が展示されているらしいことです。

法廷でも証言していましたが、蝋人形の制作に際しては必ずモデルの顔から型を取るそうです。この掟はローザイク家の人間にとって絶対。ゆえに、バンジークス卿がその例外だとは考えにくいんですよね。「いったいどういう経緯でOKしたんだろう」「どういう流れで顔の型を取らせたんだろう」と考えると、どうにも笑いを禁じ得ませんでした。

また、蝋人形館には、裁判の行方を左右することになったプロフェッサーの蝋人形が保管されていました。初めてその蝋人形を見たときは、バンジークス卿の日本人嫌いを思い出して嫌な予感がしたことを覚えています。顔こそ見えないものの、肌の色が白人種っぽくない気がしたんですよね。

裁判2日目と亜双義一真の「大いなる帰還」

第3話の裁判2日目は、ある意味でこのゲームで一番盛り上がった法廷パートだったかもしれません。展開が二転三転し、終盤にどんでん返しがあり、裁判後にも驚愕の告白と感動の再会が用意されているという、まるで満漢全席のように贅沢な裁判でした。最終話並みの山場だったような気がします。

とりわけ龍ノ介がコートニー・シスを追い詰める際のひらめきには感服しました。旧作1-3の「トノサマンはかたなかった」並みの見事な発想力。推理において主人公に一歩先を行かれている展開ってすごくドキドキするし、追って謎を解き明かせると本当に気持ちいいんですよね(ただ、写真の血の跡はもうちょっとタラーっと垂らしておいてほしかったです。骨格に沿って自然と流れたのかと思いました)。

一方、バンジークス卿も輝いていました。前作ですでに分かっていましたが、やっぱり良い人(グラスや机へのあたりは強いけど)。落ち込むドビンボーにすかさずフォローできる優しさがグッドです。「ときどき、この検事さんのコトが、わからなくなる‥‥」「ときどきこの検事さんの顔が分からなくなる‥‥」という少女漫画みたいな龍ノ介の感想にはちょっと笑いました。

そして、大いに紛糾した裁判の後に待っていたのは、亜双義一真の「大いなる帰還」でした。ここでようやく、仮面の従者こと亜双義一真と龍ノ介たちの再会、そして亜双義と「蝋人形」の再会が同時に果たされます。

前者の再会シーンには目頭が熱くなりました。亜双義がまずスサトちゃんにお礼を言うところ、龍ノ介に「友よ」と呼びかけるところが最高にグッときます。このシーンの3人の表情の変化は実に細やかで見入りました。

正直なところ、亜双義生存説には否定的だったんです。今作をプレイする前は。前作で龍ノ介が亜双義を心から悼み、彼の死を受け止めて成長していったからこそ、「亜双義が生き返ってしまうのはちょっとなあ……」とか思っていました。

でも、仮面の従者を見かけたくらいからそんな思考はぶっ飛びました。たとえ無理やりでもなんでも、亜双義が生きていてくれて本当によかったと思いました。

ところで、亜双義の3Dモデルは前作から若干変更されているようです。精悍さが増したというか、ここまでイケメンだったっけと初見ではびっくりしました。公式原画集によれば、髪を伸ばしたほか、印象をより鋭く&あか抜けた感じにしたそうです。さすがは塗さん。

また、「プロフェッサー=日本人バレ」は「やっぱり」でしたが、その正体が亜双義父だとは思いもしませんでした。しかし驚きは不思議となく、ここに至って完全に役者が揃ったんだなーとひとりで感じ入りました。

ちなみに亜双義と父のゲンシンですが、「あんまり似てないな」が初見の印象でした。というか、マスクを外して出てきた顔が「誰?」すぎて、あの顔に亜双義の面影を見出したスサトちゃんはさすがだなと思いました(公式原画集で絵を見ると、目元などがよく似ていると思いました)。

最後に、龍ノ介とスサトを大法廷に呼んでくれたバンジークス卿は、後半見事にステルスに徹していましたね。なんて空気が読める貴族。あの蝋人形は見事に一刀両断されてしまったので、マダム・ローザイクに返しに行くとき相当気まずいんじゃないかなーと思いました。

まあ亜双義の気持ちは分からないではないです。異国の地で死刑囚として大衆の見世物にされている父親の像なんて、ひとつぶった斬りたくもなるでしょう。

第4話「ねじれた男と最後の挨拶」

あらすじ:亜双義一真との再会から一週間後、ベイカー街221Bに凶報が舞い込む。グレグソン刑事が空き家で殺害され、下手人として≪死神≫ことバロック・バンジークス検事が逮捕されたというのだ。悲劇の陰には、10年前に起こった「プロフェッサー事件」の存在があった。バンジークスを助けるべく彼の弁護を引き受けた龍ノ介。しかしその前に、検事として復活した亜双義が立ちはだかり……。

ミコトバとジゴクの訪英

第4話冒頭では、ミコトバ教授とジゴク判事が大英帝国にやってきます。ジゴク判事が外務大臣を兼任していると知ってびっくりしました。あっても司法長官かと思っていました。とんでもなく忙しそうです。

一方、「スサトの面倒を見てやってください」とミコトバ教授。意味深ですね。このあたりのやや歯切れの悪い説明から、おそらくスサトちゃんのお母さんが亡くなったのをきっかけに留学したんだろうなあと察しました。お祖母さんがいたとはいえ、スサトちゃんはかなり寂しい幼少期を送ったんだな、とも。

ミコトバ教授は、当時の父親にしては放任主義というか腰が引けているのが印象的でした。前作でも未婚の娘を男と2人きりで洋行させていましたが、進歩主義の一言では片付けられない適当な親だなーと正直思っていました。
道中付き添ってくれるお目付け役の女性もナシ、現地で迎えてくれるきちんとした家庭もナシって、時代的にはまずあり得ないんじゃないか、と。明治時代の親なら、スサトちゃんが結婚するときのことを考えて、何事にも慎重を期して取り計らうべきじゃないのかと感じていました。

そういう違和感もあって、前作時点では「スサトちゃんとアソウギは結婚の約束をしているのかな」とわりとマジメに考えていた覚えがあります。それなら教授が2人きりの渡英を許可したのもギリギリ理解できるかな、と(あと、スサトちゃんが亜双義を名前で呼ぶことも気になっていました。今作で明かされた情報によると、2人は兄妹同然の関係だったようですね)。

まあスサトちゃんは聡い女子なので、諸々のリスクを承知しつつ、亜双義の手伝いをするために渡英を決意したのでしょう。ミコトバ教授も亜双義を信頼していたし、何より娘の強い決意を目の当たりにして見守るしかなかったのだろうと思います。

そんなこんなでこの時点でのミコトバ教授への心象は良くなかったので、写真や紹介状(の裏面のチケット)といった証拠品になりそうなアイテムが出るたびに、「あれ、これ教授死ぬやつやん……」と勝手に予想していました。だいたい「娘のことを頼む」自体、「故郷に帰ったら結婚する」「故郷に帰ったら学校に行く」並みのフラグ発言じゃないか、と。後の展開を思うと、とんだ的外れな予想だったなと思います。

依頼人アンナ・ミテルモンと221Bに舞い込んだ悲報

大逆転裁判2 4話 アンナ・ミテルモン

『大逆転裁判2』、CAPCOM

セクシーな陪審2号さん(アンナ・ミテルモン)がまさかの再登場。もうテンションがぐーんと上がりました。ゴージャス!

依頼人の夫であるミテルモン氏の職業は看守。「エブリデイ・ミテルモン」という名前に笑いました。前作だと「コゼニー・メグンダル」が面白くて大好きなんですが、今作も「エライダ・メニンゲン」を始めとしてネーミングセンスがキレキレだなあと思います。はたして「偉いダメ人間」なのか、「えらい(=とんでもない、関西弁における強調表現)ダメ人間」なのか。

ただ、このあたりで「グレグソン死す」の一報が舞い込みます。「うわマジか」「まあ知ってた」「でもマジか」的な反応をしてしまいました。前作の例の電報に名前を連ねていたこと、ジーナ・レストレードが順当に刑事ポジに入ったことから、順当にフラグが立ってるなーと感じてはいたんですよね。今作になって妙に態度が柔らかくなり、好感度の上がる発言が増えたことも嫌な予感を煽る一因でした。

とはいえ、なんだかんだ言って愛着が湧いていたのでかなりショックでした。めずらしくシリアスに動揺しているホームズと、♪「核心」の始まるタイミングが印象的なシーンです。

ところで、「トバイアス・グレグソン=伝説の刑事」という設定は、前作時点ではまだなかった(あるいは固まっていなかった)のではないかと思います。「ホームズの小説に登場してからにわかに注目度が上昇、給金の増減を気にしてアイリスに全力で媚びを売る」という前作の描写と、「渋い伝説の刑事」という今作の扱いの間のギャップが大きすぎる気がするので(もちろん、超重要任務を任されて暗躍はしていましたが)。

そもそも、現場主義で秘密任務を請け負っている一匹狼なら、小説に何度も出されて知名度が上がるのはまったく嬉しくない事態だと思うんですよね。バンジークス卿と親交が深かったという設定も、前作時点でそれらしい描写がなかったのでやや唐突感がありました。

獄中のバロック・バンジークス

大逆転裁判2 4話 獄中のバンジークス

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ほぼ同時にもたらされた「バンジークス卿逮捕さる」の一報については、「そうくるのか」の一言でした。「凶器のピストルといいめっちゃミツルギやん」と。

留置所に入れられた検事名物、「貴公には関係のないことだ」「‥‥もう二度と。ここへ来ないでもらえるとありがたい」発言を見たときは、「で、出たーッ! お約束のアレ!」って感じでした。さすがはバンジークス卿、ファンの期待を裏切らない。陰気な憂いのある横顔もすごくデ・ジャヴです。

極めつけの「(拳銃を)どこかにしまっておいたらどこかに行った」は、ミツルギの「うっかり触ってしまった」以上のうかつさだと思いました(ミツルギの場合は動揺もあっただろうし無理もないと思います)。率直に言って笑いました。これはさすがに「‥‥ハッ! とんだ“おっちょこちょい”だな」(by亜双義)くらいは言われても仕方がない(その亜双義もDLCで「おっちょこウッカリ」認定を受けていたことを思うとさらに笑えます)。

最終的にバンジークス卿は龍ノ介にデレてくれます。何度も戦う中で、憎い日本人である龍ノ介を弁護士として信頼するようになった、と。

真面目な話、このあたりの吐露は重かったです。そもそも最初の方で「英国の司法を信頼していない」と言い切るんですよね、バンジークス卿。現職の検事なのに。

彼がもともと孤独を好むニヒリストなら、ふーんくらいの感想で終わる発言です。しかしかつてのバロック・バンジークスは、人を信じ正義を信じて無邪気に笑っていた好青年でした。そんな若者が周囲の何ものをも信頼できなくなり、死神の名を背負って孤独に生きることになったわけです。この10年間、本当につらかったんだろうなと胸が痛みました(実際5年間ほど休職していたのは、精神的に耐えられなくなったことが理由のようです)。

『大逆転裁判2』における補完・掘り下げの中でも、バンジークス卿の過去はとりわけきちんと段階を踏んで描かれていたように思います。彼の過去を知ったこそ、「我が弁護を願えるだろうか」の一言をもらえたときは非常に嬉しかったのを覚えています。

検事、亜双義一真

復活し検事となったアソウギが身にまとうのは、真っ白なコスチュームに赤いヒラヒラ。龍ノ介の黒の学生服と対照的な色合いであり、ミツルギの検事服のカラー反転バージョンといった印象です。

「なにその真っ白い服」と最初は二度見しましたが、最終的には凛々しいしムキムキでカッコイイなと思いました。公式原画集によると、ボディラインを意識したコスチュームだそうです。

大逆転裁判2 4話 亜双義とヴォルテックス

『大逆転裁判2』、CAPCOM

予想はしていたものの、亜双義が明日の法廷の担当検事であるとわかったときは「戦いたくないなー」と思いました。どこかスッキリとしない、不穏な雰囲気が漂っていたので。「ヴォルテックス卿は暫定ラスボスなんだからあまり仲良くしない方がいいぞ」と不安にもなりました。

正直な話、プレイヤーとしては亜双義の動向が気がかりでならなかったんですよね。3話のラストで亜双義をそのまま行かせた(そして仮面だけ持って帰った)らしい龍ノ介とスサトちゃんには、「いやいやもうちょっと追いすがれよ、奇跡的に再会したのに」と思ってしまいました。ストーリー上の都合で仕方が無いとはいえ。

第4話の裁判パート

極秘裁判開幕。陪審員が排除され、懐かしい逆転裁判シリーズ形式の裁判が行われることになりました。「傍聴人が『公平な』司法関係者のみ」「女王陛下のお達し」という説明は、のちの展開的に大事な言及だったと思います。

そして注目の亜双義検事ですが、挙措動作の1つ1つがカッコイイのでおおーと思いました。大逆転裁判シリーズはモーションへのこだわりが素晴らしいですね。

裁判中にまず驚いたのは、前作から再登場した元御者のベッポ(サンドイッチ)です。余談ですが、『写真と文によるーヴィクトリア朝ロンドンの街頭生活』(ジョン・トムソン)という1870年代に出版された本によると、ベッポのように自分の体に看板をかけてたたずむ人たちは、「板男」と呼ばれていたそうです。

写真と文による ヴィクトリア朝ロンドンの街頭生活(ジョン・トムソン) アティーナ・プレス

写真と文による/ヴィクトリア朝ロンドンの街頭生活

上記の本の著者いわく「最低の仕事」だそうですが、誰にでもできることから、多種多様な人々が食うにやまれず板男になったとか。同じく前作に登場した親方もなぜかホテル・バンドールにいましたが、オムニバス組合はなくなってしまったのでしょうか。世知辛い話です。

他の証人については、「悪のマホーネ(塗さん談)」ことビーナスちゃん(※「マホーネ」は『レイトン教授VS逆転裁判』のヒロイン)が可愛くて印象に残っています。可愛さと胡散臭さと服の薄汚い感じが絶妙なバランスを保っているキャラだと思います。「本当は?」の天丼に笑いました。

裁判そのものに関しては、中盤なのに龍ノ介がいやに冴えていて、プレイヤーとしてはなんだか落ち着かない気分でした。進めていくと『赤毛連盟』と「ヒュー・ブーン」ネタが結びつき、ミテルモンが出現してびっくりしました。龍ノ介に弁護席に立ってもらった亜双義は運が良かったですね。龍ノ介がいなければ、この場でミテルモンを引きずり出せなかったのではないでしょうか。

精神を守るために記憶を作り変えていたミテルモンに、あくまでも証言を迫る亜双義。旧作2-4の、キリオさんを追い詰めるミツルギを思い出す展開です。このシーンでのミテルモンの卒倒演出は軽くホラーでした。さすがに審理続行とはならず、すべては翌日に持ち越されることに。

≪死神≫の正体

法の裁きを逃れた犯罪者を追跡して粛清する≪死神≫、グレグソン刑事はその恐るべきチームの一員でした。フィッシュ&チップス好きの無愛想な刑事として登場し、ロンドン中の犯罪者を震え上がらせる≪死神≫の作戦立案担当者にまでなってしまったグレグソン。これはキャラ的に出世と言ってしまっていいのでしょうか。

あと、「アン・サッシャー」についてはそういうことかと膝を打ちました。アン・サッシャーって「普通の名前ですけど何か?」な雰囲気がよけいに笑いを誘いますね。レイ逆の「ジョバンニ・ジコール」をふと思い出しました(“ジコール”だけでも露骨すぎて笑っていましたが、“ジョバンニ”との併せ技だと気づいてしまったときはリアルに20秒くらい笑い転げた記憶があります)。

ところで、このあたりで「≪死神≫の犯行とプロフェッサー事件の手口は似ている」とスサトちゃんが1日目に話していたことを思い出しました。

もっと後になってなるほどなーと思ったのは、バンジークス卿が「プロフェッサー事件が英国社会の浄化に繋がったのかもしれない」と認識していたことです。つまり、「犯罪は当然よくないとしても、プロフェッサーの犯行には意義があったのかもしれない」と考えていたことになります。終盤で明かされるプロフェッサー事件の真相を思うに、バンジークス卿が上のような捉え方をしていたこと自体が重要なヒントだったのかもしれません。

亜双義の執念と“狩魔”の由来

捜査パートでバンジークス卿の執務室を訪ねると、亜双義から様々な情報を聞くことができます。英国にたどり着いた経緯はムチャクチャすぎる波乱万丈すぎるなあと思いました。亜双義をロンドンまで導いたのは、ある種の運命と彼自身の並外れた執念だったのだと思います。

ようやく開示された亜双義の過去を知ると、どうにもやるせない気持ちになりました。お父さんが異国で死刑囚として死に、お母さんも心労から亡くなり……16年前の亜双義少年(8才)がキラキラとした顔で笑っているだけに、その後に味わったであろう孤独と絶望を思うとやりきれなかったです。

前作の亜双義は、絵に描いたようにハイカラ・バンカラ・男前な好青年でした。ちょっとカッコよすぎるなーと思うレベルに熱い親友キャラでした。それだけに、これだけ重く暗い過去を背負っていたことを知って衝撃を受けました。
まあ単なる学業優秀な学生らしからぬ気迫(“飢えた者”の雰囲気)は前作からあったので、平凡な家庭の出身ではないんだろうなーと予想はしていましたが(逆転裁判シリーズの主要キャラはだいたい家庭的に不幸だし)。

大逆転裁判2 亜双義 誰の手も借りずに

『大逆転裁判2』、CAPCOM

あと、この会話場面で何が一番胸に刺さったかと言えば、「誰の手も借りずに」という亜双義の発言です。

たしかに言葉通り、父母を亡くしてからの約10年間、亜双義は自分の決意をミコトバ父子に隠し通しました。何もかもを自分の胸の内に秘めて生きてきたわけです。「(龍ノ介と出会うまでの)亜双義に心を許せる人間がいなかった」という事実は、当の亜双義にとっても、近しい人間だったスサトちゃんにとっても重たい話だと思います。

そういう意味で、『大逆転裁判2』をプレイしていて一番ハッとした瞬間は、亜双義の上記の発言に対するスサトちゃんの反応を見たときだったかもしれません。何も言いはしないんですが、ひどく傷ついた表情と反応をするんですよね。

そもそも誰のために若い彼女が法律と英語を学び、はるばる海を越えて遠い異国までやってきたのか。亜双義にも並々ならない事情があったので責めるつもりは毛頭ありませんが、スサトちゃんのこれまでを考えると無性に胸が痛かったです。

ともあれ、亜双義が執念の男であったことは意外でもあり、好感の持てるポイントでもありました。私情まみれなのはアレですが、手続きを踏んで許可が出ているのならあの世界的にはOKなのでしょう。逆転裁判の検事って私情を仕事に持ち込むことが多いし(まあ10年前のバンジークス卿にしても今回の亜双義にしても、事件の関係者を検事席に立たせるのはよろしくないと思いますが)。人が人を裁くのであり、法は道を示すだけ……という考え方も、私はけして間違ってはいないと思います。

また、ここで名刀“狩魔”のエピソードが出てきたときはテンションが上がりました。亜双義家は武芸者の家系で剣技の名門。そして亜双義父の弟子の中に、名刀狩魔の名を貰って姓とした者が存在したそうです。つまり、亜双義→狩魔→御剣……と師弟の系譜が続いていったことになります。

初代ライバル検事である「御剣怜侍」自体、「刃物のような切れ味の鋭さ」と「サムライ」からのネーミングです。お遊び的な要素とはいえ、シリーズを代表する検事であるミツルギとカルマが、刀を持つ武芸者イメージでアソウギに結ばれるのはなかなか胸熱だと思います。まあ、狩魔家は意外に歴史が浅いんだなーとも思いましたが。

"相棒"の正体

大逆転裁判2 4話 ホームズ

『大逆転裁判2』、CAPCOM

終盤になってようやく、「ワトソン教授の正体」と「ホームズの相棒の正体」が明かされました。余談ですが、この場面の共同推理でのホームズは、今作でも三指に入るカッコよさだと思います。

和装から洋装に着替えたミコトバ教授が、一気に「ザ・ワトソン」とでも言うべき容姿になるのがデザインの妙ですね。マジメな話、相棒バレには心の底からびっくりしました。「相棒はそもそも英国人じゃなかったのか!」、と。スサトちゃんが大歓喜ですよ、これ。愛読していた小説の主人公の相棒が自分の父親だったなんて。

アイリスが「自分のパパ=ホームズの相棒=ジョン.H.ワトソン」と勘違いしたカラクリも巧いなーと思いました。「相棒」が残した事件記録の筆跡と、ワトソン教授のサインが入っている解剖記録の筆跡が同じだった。しかし、実は解剖記録の文章自体を書いたのは当時ワトソンの助手を務めていたミコトバであり、ワトソン教授は最後のサインをしただけだった……という。

ミコトバ教授の反応を見るにまずアイリスの父ではなさそうだと思い、「いったいアイリスのパパは誰なんだ」とプレイヤーとしても大いに混乱しました。

第5話「成歩堂龍ノ介の覺悟」

あらすじ:極秘裁判が再開され、ついにプロフェッサー事件の謎が紐解かれることに。最終日、判事席に現れたのはハート・ヴォルテックスだった。事件に巻き込まれ多くのものを失った関係者が顔を揃える中、龍ノ介はひたすらに真実を追い求める。はたして、霧に沈んだプロフェッサー事件の真相を解き明かすことはできるのか。龍ノ介の「覚悟」が切り開く道とは。

明かされる「暗殺者」の正体

極秘裁判が再開されるも、ホームズとミコトバ教授は戻らず。開廷前に気になったのは、ずっと姿の見えない慈獄判事でした。ミコトバ教授が善玉と判明した以上、ちょくちょく黒い描写があって過去の事件と関わりのある慈獄判事は、ヴォルテックスグループなのでは……と疑い始めていました。

ちなみにヴォルテックスに関しては、そろそろラスボスにならないとパッケージでYしてる人でしかないので、もちろんすべての黒幕なんだろうなーと予想していました。

裁判が始まり、龍ノ介が「引っかかることがある」と言い出したときは、「そういえば亜双義、11月1日に列車で帰ってきたって言ってたな……」と思い出してぞっとしました。

「亜双義が事件現場にいた」という流れになった時点で、リアルに喉がカラカラになって目がしばしばしました。前作の第2話冒頭のショックと絶望感が蘇ってヤバかったです。せっかく生き返ったのに今度は殺人者になる可能性があるのか、と。死神の刺客バレのすぐ後に、「誰も殺していない」と明言がきたときはマジでホッとしました。

ここでいったん休廷に入るわけですが、朗らかな龍ノ介&スサトちゃんとの間に埋めがたい溝を感じてしまってつらかったです。親友のヤバい事実が発覚したのに、めっちゃ楽しそうにウサギの耳を引っ張っているんですよね。まだ全容も分かっていないのになんで2人してそんなに呑気なんだろう、このノリと切り替えの速さにはちょっとついていけない、と正直思いました。

ホームズとミコトバ

出張調査中のホームズ&ミコトバコンビに視点が切り替わり、バラブロック号の調査パートへ。ミコトバ教授は思いのほかとぼけたキャラでした。「チュウウウウウウウ」って。そしてそれ以上に、いきなり軽快に踊り出したことにびっくりしました。

タップダンスこと「ミコトバステップ」に関しては、公式原画集に面白い制作秘話が載っています。演出、BGMともに気合が入っていて見ごたえのあるパートですが、経緯を考えると納得だなーと思いました。

また、共同推理でのホームズの明察っぷりは爽快でしたね。やっぱり今までのはお遊びでようやく本気を出したのか、と。4話の共同推理で見せたアイリスへの洞察が凄かったので違和感はなかったです。相棒と久々に調査できてテンションが上がったんだろうなと和みました。

少し脱線しますが、このパートを見てますます、スサトちゃんは龍ノ介についていきそうだなーと思いました。亜双義やホームズをキラキラとした目で見ているけど、パートナーとしては龍ノ介のような抜けたところのある男性を選ぶんじゃないかな、と。

ミコトバ教授って、唐突なタップダンスといいノリノリでクルクル回転する龍ノ介に似ているんですよね(龍ノ介のノリの良い身振りは寄席が好きなせいなのか。それとも子孫と似た感じで、演劇をやらせてみたら性に合ったりするのでしょうか)。押しが弱めでとぼけているし、チュウウウウウウと「ちゅうのすけ」でネズミイメージが被っているし。

つかの間の休息

ホームズ宅でディナー。ただ、色々と不満や疑問のつのる一幕でした。まず、龍ノ介の「普通の人」感にここではややがっかりしました。前作でも今作でもあんなに「親友」「相棒」と連呼していたのに、ここにきて「今のアイツは昔のアイツとは違う」ってどういうこと? と思いました。

亜双義が「死んでいた」頃は、言ってみれば理想化して何度も力をもらっていたわけじゃないですか。それがいざ生きていて自分の知っていたものとは違う顔を見せられると、「前とは違う」と距離を置いてすんなり親友とは呼んでやらないんだ、と。亜双義がこの10年間何を思って生きてきたのか、その過去を本人の口から聞いたのに、です。

前作で龍ノ介の亜双義への友情と惜別に本当に感動したからこそ、この場面でもそれを貫いてほしかったです。「暴走しているみたいだけど友人としてアイツを信じている」「行き過ぎたら自分が止める」くらいは言えないものかと思いました。

黒い噂の絶えないミツルギを若干怖いレベルで信じていた(そして裏切られたと信じ込むと「あいつはもう死んだよ」に振り切れた)成歩堂と比較すると尚更です。成歩堂と龍ノ介ではキャラ造形からして違うとはいえ、龍ノ介の「普通」な反応が少し薄情に思えるのが残念でした。

あと、スサトちゃんが違う意見を出してくれないのも肩透かしでした。一応10年前から亜双義を知っているのに、ダークサイドに堕ちた亜双義に対する意見が(大学で初めて亜双義と出会った)龍ノ介とほぼ同じって、関係性をまったく生かせていないんじゃないかな、と。

法務助士になるまでは亜双義と接点がなかったのかなとプレイ中は解釈しましたが、公式原画集を読むに、一緒の家で暮らしていたっぽいんですよね。それで「今のアイツは昔のアイツとは違う」発言に異論を出せないって、亜双義はどれだけうまく自分の闇を隠し切っていたのだろうと感嘆してしまうレベルです。亜双義の父に対する強い思いを垣間見るとか、つい本音を聞いてしまうとか、そういう情緒的な交流はほぼなかったのでしょうか。

そういった諸々のモヤモヤ感もあり、ラストの疑似家族推しに心から乗り切れませんでした。なんか唐突だなーここはすごく和気あいあいとしたムードだけど亜双義は今頃何をしているのかなー教授とスサトちゃんはもうちょい亜双義を心配してもいいんじゃないかなー……と色々と余計なことを考えてしまいました。

もともと、「家族みたいな雰囲気の集団」はいいなあと思うんですが、「『私たちって家族みたいだね』とわざわざ言及する展開」があまり好きではないせいでもあります。

このパートで印象に残ったのは、アイリスの歪みのない可愛さと、ファンタジーじみたホームズの調査力ですね。日英間の打電内容を知っていたのは、もしかしてマイクロフトの存在を示唆する描写なのでしょうか。

V.S.慈獄政士郎 ~亜双義の使命~

大逆転裁判2 5話 亜双義の決意

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ホームズ&ミコトバによって捕縛されたジゴク判事をまじえ、極秘裁判再び。ここで、亜双義の留学の条件が、グレグソンの暗殺だったことが明かされます。実行するつもりはさらさらなかったようですが、それは日英両国の権力者のメンツを潰すことです。「父の真実を知るために生きてきた」と語る通り、その後のことは自分の生死も含めてどうでもよかったのかもしれません。

冷静に話していますが、とんだ無鉄砲野郎です(エンディングで話を聞くとその印象に拍車がかかりました)。しかしその捨て身の執念が悲しいというか、2の亜双義らしい気もします。

あらためて、トランクに詰め込まれてやってきた龍ノ介が「とっておきのワイルドカード」だったことがよくわかります。そして龍ノ介の存在を神の一手に変えたのがホームズです。「龍ノ介がいなかった場合、亜双義がどういう道を辿ったのか」は大いに気になるところです。あと、「3人揃って英国に着いていたらどうなったのか」ということも。後者は後者で、正史と同じくらいドラマに満ちていそうだと思います。

また、亜双義のスサトちゃんへの頑なな距離の置き方は、彼女の身の安全を図るためのポーズだったのかもなーとここにきて感じました。まず同行を断固拒否しろよって感じですが、そこは作劇上、龍ノ介とスサトちゃんを結びつけるためにやむを得なかったのでしょう。

ところで慈獄判事、いくら犯人とはいえ日本の外務大臣なのに、あっさりと証人になってあっさりと拘留されましたね。極刑とまで言われていましたが、「国Aの裁判所で国Bの閣僚クラスの政治家が裁かれる(しかもAとBは名目上対等の同盟国)」って、プロフェッサー事件以上に両国間の関係を爆破しかねない大問題のような気がします。

とはいえ、三下悪役のような言動をした挙句証言台“を”ブレイクさせたジゴク判事はすごく面白かったので、まあいいかと思いました。

龍ノ介がよくわからない

タイトル通り、このあたりでいよいよ龍ノ介のことがよくわからなくなりました。引っかかった点は2点あります。1点目は、昨日の発言との食い違いです。というより、食い違いが有効に解消されなかった点です。

昨夜の龍ノ介は、「今の亜双義は昔の亜双義と一緒なのかわからない」と言い、「亜双義=親友である」と即答しませんでした。だからプレイヤーとしては、そのあたりの葛藤を踏まえつつ、亜双義への友情を確認するくだりが差しはさまれるのだろうと思っていました。

しかし、実際は前振りもなく亜双義への親友連呼が始まり、「???」状態になりました。「龍ノ介は結局どう思っているの?」「暴走ここに極まれり(暴走と言い切るのも個人的にはどうかと思いますが)な亜双義をこのタイミングであっさり『親友』と呼べるのなら、昨日のもったいぶった一幕はなんだったの?」と思いました。なんだか一貫性がないな、と。

2点目は、「お前(亜双義)のためじゃない、真実を追求するためだ」発言です。初見では「え?」と思いました。ここでそれを言う意味がわからないというか、単に感じの悪い発言にしか見えませんでした。

龍ノ介はプロフェッサー事件に関しては部外者と言ってもいい存在です。それなのに当事者のバンジークスや被疑者の息子である亜双義を抜きにして、「僕はただ真実が知りたいから事件を追及するんだ」と表明するのは、かえって性質の悪い野次馬でしかないんじゃないか? と思いました。

まあ旧作の成歩堂や御剣にも真実原理主義者じみたところはありましたが、それにしてもこのシーンでの龍ノ介の発言には当惑させられるばかりでした。せめて「依頼人のバンジークス卿に関わることだから」くらいは言ってもよかったんじゃないかと思います。弁護士なんだから。

場面としては盛り上がるところのはずなので、ここで「覚悟完了した龍ノ介カッコイイ」ではなく、「審理を続けさせてほしいと頼む"親友"からわざわざ距離を取る龍ノ介ってちょっと薄情」と思ってしまう自分が一周回って憎らしいです。

とりあえず2点挙げましたが、せっかく美味しい親友同士の対決なのに、ナルホド対ミツルギのそれと違ってあまり燃えなかったのが残念でなりません。亜双義の意外な手ごたえのなさは、準備不足感と相まって旧作3-5で再登場した狩魔冥(急遽依頼され来日、飛行機の中でざっと事件の資料に目を通す)っぽかった気がします。しかしそのミツルギ対メイだって、十分に燃える好カードだったと個人的には思うんですよね。

何が惜しかったかと言えば、亜双義の執念に対し、龍ノ介とスサトちゃんが一緒になってひたすら引いていたことでしょうか。亜双義が人生を賭けてシリアスに裁判に挑んでいる一歩、龍ノ介もスサトちゃんもその深刻さにまともに向き合っていない気がしたというか(実際立場と背景が違いすぎるから仕方がないのですが)。

龍ノ介は自立アピにしては妙に冷ややかになっているし、スサトちゃんはスサトちゃんで、亜双義の幼なじみであるという要素を活かさず龍ノ介の反応にひたすら追随するだけです(これは主人公に厳しい前作の言動を批判されたせいかもしれませんが)。一番亜双義と親交の深い2人にそういう引き気味な反応をされると、亜双義がボケを拾ってもらえない芸人みたいになるというか、やや空回りしている風になって見ていて熱が引きました。

あとそもそも、前作と比べて龍ノ介の置かれた環境がイージーモードすぎる気もします。しっかり者で有能な助手、可憐な天才少女、世界的な大探偵、信頼の置ける法医学者と「家族」描写をしたばかりなわけで、そんな最強パーティにインしている状態でひとりきりの亜双義と戦っても、そりゃ面白くないだろうなーと後で思いました。

終盤の龍ノ介の冴えっぷりについていけない描写を見ても、シナリオ的に「龍ノ介v.s.亜双義」は通過点の一つであって、亜双義は(復活したミツルギのように)主人公を脅かす手ごわいライバルという扱いではないのだろうと思います(表面上はともかく、実質的には)。

証人たち(ミテルモン&バリケード、グーロイネちゃん)

大逆転裁判2 5話 バークリーコンビ

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ミテルモンとバリケードは、よく見ると敬礼やびっくりのモーションが同じでした。いいコンビです。

「申し訳なさそうなバリケード→ツッコむor煽るミテルモン→胸倉掴んでガクガク揺さぶり」の流れが実に面白いですね。漫才か。ミテルモンの正論が鮮やかすぎて笑うしかなかったです。

あと、第3話で登場したシスの娘、グーロイネちゃんも思いのほか可愛かったです。可愛いだけではなく、この裁判では大人顔負けの凛々しさも見せてくれました。

――死体をひらくのは、≪真実≫のため。
――でも。ママは‥‥とじてしまった。死体の中に‥‥≪秘密≫を。
――‥‥‥‥それは、ダメなこと。

『大逆転裁判2』、CAPCOM

上の発言はとりわけ印象に残っています。それまで「サイコな解剖大好きっ子」というイメージが強かったので、信念を持って仕事をしているんだなーと好感を持ちました。

ところで、グーロイネちゃんの姓名はマリア・グーロイネです。一方母親はコートニー・"シス"。一応血の繋がりはありそうですが、ファミリー・ネームの違いに秘密はあるのでしょうか。

亜双義の慟哭

ヴォルテックスの存在感が増すにつれ、チクチクといびられる亜双義。「父親の亡霊に憑りつかれているようだ」→「貴公の身柄は拘束される」→「“復讐ごっこ”はおしまいだ」という、完膚なきまでのいたぶりは凄まじいなと思いました。的確に亜双義の心を砕きに来ています。

ヴォルテックスは、『蘇る』に登場したガント局長タイプのラスボスというイメージです(有無を言わせぬ迫力はガントに劣るものの、政治家的な立ち回りが上手いのが特長)。

そして、このあたりの亜双義の慟哭シーンは、迫力があるなんてものじゃなかったです。両手で机を叩いたとき、ガチで亜双義が泣いているんじゃないかと思って焦りました。今作はキャラのモーションが練りに練られていると思いますが、このシーンの亜双義のモーションは三指に入るくらいに印象的でした。

亜双義が叩き潰されたところで、ホームズの助けが入ってホッとしました。ピンチになると「助けてくれホームズえもん!」と思ってしまう自分が悔しいですが、実際こういう場面でのホームズは半端ないくらいに頼もしい存在です。煽りの巧さもピカイチ。

大逆転裁判2 5話 亜双義 顔を上げる

『大逆転裁判2』、CAPCOM

傍聴席からの審理要求の声に「‥‥‥!」となる亜双義の表情を見て、そういえばまだ24歳なんだなーと今更のように思いました。その後、「なんだと‥‥!」を繰り返してバンジークスにこだわるグダグダ亜双義に、正論で喝を入れた龍ノ介はとことん主人公だったと思います。

プロフェッサーの正体

大逆転裁判2 5話 バンジークスの兄自慢

『大逆転裁判2』、CAPCOM

プロフェッサーの正体が明かされていく流れにはドキドキしました。というか、「緋色の文書=クリムトの遺書」と発覚した場面が驚きのピークでした。

驚きのあまり眼に秘めた暗黒の力を解き放ちそうになっているバンジークス卿とか、プロシュート兄貴っぽい言い回しで兄自慢をするバンジークス卿(そして冷静にツッコむ龍ノ介)とか、シュールな笑いどころが周辺にあるのが逆に悲しい。

とはいえ、「クリムト・バンジークス=プロフェッサー」には違和感がなかったです。バンジークス卿がプロフェッサーの社会浄化的な犯行に一定の理解を示していたことは伏線だったんだな、と。犯行の手段であった猟犬が貴族を思わせるものであることなど、これまでの描写が一気に繋がってくるのも快感でした。

あと、「バスカビル」の回収の仕方もなるほどなーと思いました。例の首輪はクリムトの奥方が実家から持参した家宝であり、バンジークスいわく数年前に夜盗に奪われたそうです。その夜盗こそが、今作2話の回想で登場した大泥棒セルデンだったわけですね。

それにしても、兄の真実はバンジークスにとってダメージが大きすぎる話だと思います。今後貴族として英国社会でまともに生きていけるのか不安になるレベルの醜聞です。最後の最後で明かされるあの真実がなければ、いくらバンジークス卿が納得していたとしても、プレイヤーとして後味悪く感じてしまっただろうと思います。

ヴォルテックスの扇動

満を持して(「案の定」「予想通り」とも言う)ラスボスと化したヴォルテックス卿。最終話だけあって文句なしに輝いていました。

大逆転裁判2 5話 ヴォルテックスの扇動

『大逆転裁判2』、CAPCOM

ヴォルテックス卿は、大衆を軽蔑しきっているくせに大衆心理を利用するのがすこぶる上手い悪役だと思います。耳に心地よい言葉を並べて自分を正当化するのも巧ければ、大衆が喜びそうな筋書きを考えるのも巧い(記事その3にも書きましたが、「大衆の恐ろしさ」は今作の隠れテーマのような気がします)。

≪関連記事:『大逆転裁判2』が拓いた新境地 感想 考察 レビュー ※ネタバレ注意 その3

信念(“犯罪を絶対に許さない”)自体は立派ですが、手段を選ばない上に支配欲が強すぎるのが怖いキャラだと思います。ジゴク判事もそうですが、法曹よりは政治家にでもなった方がよさそうなタイプですね。「他人を意のままに操る天才」と龍ノ介は形容していましたが、クリムト、ゲンシン、グレグソン、バロック、ワトソンをそれぞれ煽り騙し操ったことを考えても的確な表現です。

心理操作のみならず、ヴォルテックスは脅迫という直接的な手段を用いた悪役でもありました。逆転裁判シリーズにおいて「脅迫者」というのは、ひょっとすると殺人以上にゲスなことをした存在として扱われるものだと思います。コナカしかり、オートロしかり、アイガしかり、ガントしかり、ヤハリしかり。

ヤハリはまあ冗談として、ヴォルテックスはそれら脅迫者キャラの中でもぶっちぎりの戦績と能力を誇っています(ガント局長もスゴイと思いますが)。社会的地位の高さ、脅迫した人間の数、年月、及ぼした被害の範囲、切り捨てる際の冷酷さ……実に見事だと思います。

クライマックス手前、弁舌を振るって傍聴席の「公平な」司法関係者を煽り立てる手腕にはなかなか痺れました。龍ノ介&バンジークス&亜双義が協力して挑んでも、「秩序」を楯にダイナミック隠蔽を図る胆力と抜け目のなさ。傍聴人たちがこぞって同調し始めたときにはプレイヤーとして大いに失望しました。英国司法の闇がヤバい。

「女王陛下の名のもとに」

大逆転裁判2 5話 バーチャルリアリティ

『大逆転裁判2』、CAPCOM

このシリーズにおける最大のファンタジー、それは間違いなくアイリスとホームズ。電影中継装置にはもはや笑うしかなかったです。凄すぎる。

ホームズが出てくるとすべてがカーニバルと化してしまうのだから、たしかにバンジークスの言う通り悪夢ではあります。とはいえその「悪夢」は今回、ヴォルテックスにとっての悪夢だったようです。「女王陛下の名のもとに」というさらっと繰り返されてきた宣言がキレイに生きる、痛快な展開でした。

余談ですが、「女王陛下」は20世紀の幕開けとほぼ時を同じくして亡くなります(ゲーム内では帰国済みですが、現実の夏目漱石はそのとき英国に滞在していて、女王の葬儀の模様や民衆の反応を書き留めています)。

『大逆転裁判2』5話は、おそらく1900年末(19世紀最後の年)の出来事なので、こういう展開を書くにはギリギリのベストタイミングだったと言えるのかもしれません。

はかり知れない大罪

ついに沈没したヴォルテックス。法廷全体を使った大掛かりなブレイクシーンは圧巻の一言でした。最初は大天秤の下敷きになるのかとハラハラしたほどです。バーンと燃え上がるラスト(別にダジャレではなく)は、ド迫力すぎて思わず笑ってしまいました。しかしこの10年間、ヴォルテックスの犯してきた罪を思えば納得の演出だと思います。

今回の交換殺人は、ヴォルテックスが司法長官になるにあたって、過去の事件の関係者を口封じするために計画されたようです。

法で裁き切れない悪人に制裁を加えるのは、たしかに頭から悪いと言いにくいことです。ヴォルテックスの思想には一定理解できる部分があります。ただ、理解はできても賛同してはいけないなーと思いました。「そんなことのために何人のすばらしい者が」と一喝するバンジークス卿が好きです。

また、終盤の龍ノ介への賞賛はなんというか凄い勢いでした。亜双義、スサトちゃん、ホームズ、バンジークスと、龍ノ介はまず出会いに恵まれていたと思います。そして、かつて龍ノ介を支え助けた人たちが、最終的には成長した龍ノ介によって様々な形で救われるまでを描いたのが、『大逆転裁判2』の物語だった……と言えるのかもしれません。なんとも上手い構成だなと思います。

審理中の龍ノ介の真実原理主義者っぷりはどうかなあと思う部分もありましたが、真実は幸福なものじゃない、でも正しく前に進むためには必要だったというラストのフォローはよかったです。そこの自覚はちゃんとあったんだなーと。

バンジークス卿の、「真実から目をそらす者に闇に立ち向かう資格はない」という納得の言葉自体もすごくいいものでした。ただ、この時点では色々と申し訳なかったですね。龍ノ介を思いやってフォローをしてくれるのは嬉しいけど、むしろ誰かのフォローが必要なのは今後のバンジークス卿の方なんじゃないか……と思えてしまって。

バンジークス卿が得た“報い”

そういった事情もあって、閉廷後の2つのサプライズには救われる思いになりました。1つ目のサプライズはなんといっても、アイリス・ワトソンの真実です。もう本当にびっくりしました。

どうしてバンジークス卿は兄の奥方の懐妊を知らなかったんだろうとは思いましたが、そんなことはこの際どうだっていい。10年前に親しい人間を根こそぎ奪われ、今回の裁判で家門の名声も傷つけられたバンジークス卿に、こういう形で救いが与えられて心から良かったと思いました。正しさと真実をあくまで追求したことへの報いですね。

10年前の事件は、関わったあらゆる人間に痛みを与えるものだったと思います。というのも、明かされた真実が複雑で正邪を割り切れないものだったからです。「ヴォルテックスが100%悪い」と言える事件ならまだよかったと思います。しかし現実には、犠牲になったクリムトもゲンシンも、それぞれがその手を血で穢していました。

当時散々に苦しんだだろうバンジークス卿や亜双義は、10年の時を経て判明した真実に再び衝撃を受けることになりました。その他、ゲンシンの親友だったミコトバ教授もひとかたならぬ苦悩を抱えただろうし、ゲンシンを裏切ったジゴクにしても、何かしらの葛藤はあっただろうと思います。

そういったことを前提にすると、痛みを受けた関係者にとって、アイリスの存在は本当に大きな救いなのではないかと実感しました。バンジークス卿はもちろん、名付け親のミコトバ教授にとっても。あと亜双義にとっても、(主にゲンシンとの絡みで)アイリスはけっこう意味深い存在になるんじゃないかと思います。

2つ目のサプライズは、バンジークス卿と亜双義の和解(?)です。「お祝いを言わせて~」→「“呪い”の間違いでは?」というちょっと辛辣なやりとりの後、互いに謝る2人は大人でした。法廷では後半歩調を合わせていたとはいえ、どちらもまだ衝撃醒めやらない状態でしょうに、素直に切り替えられるのはさすがだと思います。

検事局を去ろうとするバンジークスをあの場で止められたのは、亜双義だけだろうなと思いました。同じくらいに10年前の事件に縛られていた亜双義が言うからこそ、「やっと、そこから解き放たれた、今。貴君の戦いは始まるのではないか?」という言葉が響くんですよね(なんだか御剣と冥が対話する2-4のラストを思い出しました)。

驚いてちょっと笑ったバンジークス卿に対する、「やっと、倫敦に着いたのだ。‥‥学ぶことは、多い方がいい」という台詞も味わい深かったです。父親との約束、父親の真実を求めて生きてきた亜双義が、ようやく自分の人生を歩き始めるんだな、と。

亜双義もバンジークスも憑き物が落ちたような穏やかさだと思い、これからやっと2人の関係が始まるんだなと感慨深くなりました。

アイリスにしても亜双義にしても、それぞれバンジークス卿と良好な関係を築いていってくれるといいなと切に思います。今後の社会的バッシングは容易に予想できることです。それでもバンジークス卿はもう孤独ではありません。かつてのように人を信じ、再び幸せを感じられるようになるのではないかと思います。英国の内外に信頼できる友人や仲間がいて、見守るべき姪もいるとわかったわけですから。

多くを奪われた分報いもあった、それが真実を追うことの価値なのかもしれません。

「あたしのパパ」

アイリスとホームズの221Bでのやりとりは、率直に言って泣けるものでした。自身のルーツをずっと気にしていたアイリスが発した、「もう‥‥名前なんて、どうでもいい」は特に胸に沁みました。それを受けての、ホームズの大人な感動っぷりにもグッときました。やっぱりこの親子は世界一ですね。何度も見てきた2人のそっくりな指差しモーションに目頭が熱くなりました。

ちなみに、公式原画集には、ホームズの子育て奮闘記がチラッと掲載されています。今の緩い雰囲気のホームズは、アイリスと過ごした時間あってこそのものなんだろうなーと感動もひとしおでした。

成歩堂龍ノ介、亜双義一真、御琴羽寿沙都 ~三者三様の覚悟~

第5話の終盤では、龍ノ介、亜双義、スサトちゃんそれぞれの「覚悟」があらためて強調されたように思います。まず、誰かの代わりに歩いてきた道が、いつしか自分で選び、一生をかけて行く道となった……という龍ノ介の述懐には胸が熱くなりました。

「自分にとって最善な道を選んで行くのではない、自分の行く道を最善だと思えるものにするのだ」という言葉を聞いたことがあります。龍ノ介は物語スタート時は弁護士ですらなく、親友を失ったりその罪に問われたり、四苦八苦しながらこれまで歩いてきました。しかし彼は周囲に助けられながら、与えられた選択肢の中で最善を尽くし、必死で頑張り抜いたんですよね。

亜双義が見抜いたように、もともと龍ノ介は弁護士としての才能を持っていたのでしょう。しかし最終的に弁護士を天職(Callingという単語がピッタリ)だと実感するに至ったのは、ひとえに龍ノ介のたゆまぬ努力あっての結果だと思います。

今回の事件において複雑な立場にあった亜双義は、グレグソンに対して感じた殺意を率直に告白し、それを「魔物」と表現します。今作でダークサイドを存分に見せてくれた亜双義ですが、やはり基本的には正義漢なのでしょう。だからこそ、自分の中に垣間見た醜い衝動を重く受け止めたのかな、と思います。

名刀狩魔を一度は振り抜いたことを考えても、罪を犯した者/犯さなかった者の差が実はそれほど大きくはないことを自覚したのかもしれません(とはいえ、それでも亜双義はグレグソンの命を奪わなかったわけで、その違いはやはり非常に大きいはずです)。

自分の醜い一面と向き合うために検事になるというのは、相当な決意だと思います。グレグソンに殺意を抱いた瞬間を常に思い返し、自分の正しさを問い続ける道を選ぶことと同義ですから。しかしその重たい覚悟が、克己心に富む亜双義らしいなとも感じました(自責的な動機は、ミツルギが検事を志望した理由と似ている気もします)。

そして最後に、弁護士の道を往く龍ノ介にお供したいとスサトさんが言ってくれたときは、「やっぱり」と「よかった」がない交ぜになった嬉しい気持ちになりました。裁判が終わった日には我慢したのに、うっかり「一緒に来てほしい」とゲロってしまう龍ノ介には笑いました。

この場面で「思ったとおりだ」と笑い、「本当に‥‥変わらない。おまえらしいことだな、成歩堂!」と言う亜双義の言葉は色々と深かったですね。龍ノ介の持つ類いの素直さは、亜双義にはないものだと思います。

バンジークス卿の裁判が終了した夜、スサトちゃんは亜双義のもとへ向かったようです。この段階に至ってもスサトちゃんの名前を呼ばない亜双義には苦笑しました。いったいスサトちゃんが法務助士になる前はなんと呼んでいたのか、大いに気になるところです。まあ、もしこの場面で名前を呼ぶ機会があっても、亜双義は「御琴羽法務助士」で通したんだろうなと思います。べつに噛むからという理由ではなく、スサトちゃんが少しでも後ろ髪を引かれることがないように。

スサトちゃんも龍ノ介も「義理がたい」と言い、(龍ノ介の)そばにいてやってくれと頼む亜双義からは、2人への親愛の情が感じ取れていいなと思いました。

しばしの別れ

剣を交差させる龍ノ介と亜双義、いつか日本に行くと言うホームズやアイリスにジーンとし、エンディングの序盤でさらに感動しました。

ワトソンの声がアイリスの声になる演出、本当に大好きです。「‥‥わたしは、そっと目を閉じる」「そのとき。あたしは‥‥なつかしいあの声を聞くはずだ」「‥‥また会おうね。なるほどくん!」……普通にタイピングしているだけでも当時の感慨が込み上げてくる気がします。

最後のスサトさんのコメントは微笑ましかったです。だるまさんに目が入っているのが芸細だと思います。マジメな話、時代も時代なので龍ノ介とスサトちゃんは結婚するんだろうなーと素朴に思いました(ミコトバ教授からもすでに頼まれているので問題はないはず)。

あと、前作でもあった龍ノ介たちが歩いていくエンドロールには涙腺を刺激されました。屋根裏部屋から出発し、最後は日本の法廷に到着する……という。

龍ノ介の前に居るのは亜双義だけなんですよね。一緒に道を歩む人はスサトちゃんで、進んだ先の未来で相対するのは亜双義前作から波乱万丈の展開続きでしたが、こういう構図に落ち着いてよかったと思いました。

英国にしても日本にしても、世紀末を飾る一大スキャンダルで司法の権威が失墜した感があるので、今後龍ノ介や亜双義たちは相当苦労すると思います。そうでなくても10年と少し後には世界大戦が勃発する(そしてヨーロッパが荒廃する)ため、英国にいるキャラは特に心配です(まあそこはフィクションなので回避可能かもしれませんが)。

しかし、いつか法廷で龍ノ介と亜双義が対峙し、名刀狩魔が亜双義の手元に戻るときが来るはずだと信じています。

*****

今回の記事その2では、第1話~第5話の詳細な感想を書きました。次回の記事その3では、以下の内容を中心に書きます。

  • 各話の共通点や最終話キャラ配置の考察
  • 主人公・成歩堂龍ノ介に関する感想
  • 画集のネタバレを含むキャラ雑感
  • 「大逆転裁判」シリーズの拓いた新境地

記事その3(次回)『大逆転裁判2』が拓いた新境地 感想 考察 レビュー ※ネタバレ注意 その3

※前回の記事その1では、『大逆転裁判』の感想や伏線確認を中心に書きました。

・記事その1:『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟』 1年越しのレビュー(前作も振り返りつつ) その1

数量限定の特典ダウンロードコンテンツ(DLC)、「遊べる! 大逆転物語」の感想記事も書いています。

・DLC感想:『大逆転裁判2』 特典DLC 「遊べる! 大逆転物語」 感想 ※ネタバレ注意

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かーめるん
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